早起きは一杯の得

綿崎 リョウ

幸せな朝(脚本)

早起きは一杯の得

綿崎 リョウ

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〇女の子の一人部屋
朝子「水は、こんなものかな」
  毎朝、欠かさずにおこなっている習慣がある。
朝子「今日は~♪ どの豆にしようかな~♪」
  普通の人よりも少しだけ早起きをして、ゆっくりとコーヒーを淹れて楽しむの
朝子「そうだ、この前買ったブレンドがいいかも」
  お気に入りのコーヒーショップでおすすめされた、期間限定の
朝子「うん、いい感じ」
  均等に整えられた豆に、心がときめく
  私はどんなタイプのコーヒーでも好きだけど、朝は浅煎り、爽やか系でスッキリとした気分を味わうのが好き
朝子「~♪」
  鼻歌を歌いながら、手挽きのミルで豆を挽く
朝子「ふふっ」
  ゴリゴリと、小気味良い音を立てて、ほのかに漂う香り
  手間がかかる、機械で自動でやる方が楽だという人も多いけど
  私にとってそれは外せない工程というか、ある種一番好きな時間だから
朝子「おっ」
  挽き終わると、ちょうどお湯も沸いたみたい
  私が好きなのは、シンプルなペーパードリップ
  コーヒー用のカップにお湯を注いでおいて、ドリッパーにペーパーをセットして
  挽きたての粉を入れて、表面が凸凹しないように均等にして、ドリッパーをサーバーの上に置く
  蒸らすため、軽く湿らせる程度に粉に水滴を落とすと、少しずつ広がる香り
朝子「ほわぁ・・・」
  そして、少し時間を置いて、ゆっくり円を描くように、お湯を注ぎ始めると──
朝子「ああ、最高・・・・・・」
  小さな部屋中に広がる爽やかな香り
  挽きたてじゃないと味わえない贅沢
  膨らんでいく粉
  急ぎ過ぎず、だけど時間をかけすぎることもなく
  ちょうどいい時間で、お湯を注ぎきる
  ある程度抽出できたら、ドリッパーを外して
朝子「よしっ」
  うん、今日も完璧
  サーバーの中には、香り高く、綺麗な色をしたコーヒー
  カップに入っていたお湯を捨てて
  そこに淹れたてのコーヒーを注ぐ
  今日のカップは、可愛い小さな花がいっぱいに描かれたお気に入りの物
  いい器は、最高のコーヒーをさらに彩ってくれる
朝子「それじゃあ」
  早速いただきます、と言いたいところだけど
朝子「ふぅ」
  まずはカップを近づけて、香りを楽しむ
  小さな器に入ったことで、また違った色を見せるようになったそれを堪能して
  少し、コーヒーを口に含む
  うん、味もいい
  心地よい酸味、身体を静かに目覚めさせてくれる濃度
  ふふっ、上手にできました
朝子「はぁ・・・」
  そうやって、少しずつ
  大好きなコーヒーを楽しんで
  穏やかに、心と身体が目を覚ましていく
朝子「やっぱりいいな、コーヒー」
  前日に嫌な事、悲しい事があっても、この時間で全てリセットできる
  心を落ち着けて、一日を始めることができる
朝子「さてと」
  そして、飲み終わる頃には支度を始めるとちょうどいい時間になっていて
朝子「今日も一日、がんばろー」
  私の一日は始まる

コメント

  • 豆を挽いてから飲み終わるまでの一連の儀式が、前日のリセットと今日のスタートを兼ねていて、朝子自身によるセラピーのような役割を果たしているようにも感じました。朝一番の幸福感で良い一日が過ごせそう。

  • とても贅沢で貴重な朝の時間ですね。物語のテンポも、焦らず自然体でコーヒーを丁寧に淹れているという感じで、読んでいて美味しいコーヒーが飲みたくなりました。

  • 1日の始まりのルーティンは人それぞれあると思いますが、こんな優雅な始まりは憧れてしまいます。
    どうしても朝は忙しくなりがちなので、こんなゆとりを作るのも、今年の目標にしようかな笑

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