食べないで!

久望 蜜

自然の摂理に抗いたい(脚本)

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久望 蜜

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〇川に架かる橋の下
???「見て、あなた」
???「子どもが・・・」
???「可哀想に」
???「この子たち、うちで育てられないかしら?」

〇黒
風人(フウト)「マサト!」
風人(フウト)「起きろーよー!」

〇男の子の一人部屋
風人(フウト)「そろそろ起きないと──」
空子(ソラコ)「こら! マサト!」
空子(ソラコ)「さっさと起きなさい!」
真人(マサト)「ふぁいっ!」
真人(マサト)(またあの夢か・・・)
空子(ソラコ)「早くしないと、遅刻するわよ!」
拓真(タクマ)「まあまあ、ソラコさん」
拓真(タクマ)「ソラコさんこそ、会社に行く時間だろう?」
拓真(タクマ)「遅れてしまうよ」
空子(ソラコ)「マサト、あまりタクマさんに面倒をかけるんじゃないわよ」
真人(マサト)「はーい」
空子(ソラコ)「それじゃ、行ってきます」
「いってらっしゃーい」
拓真(タクマ)「さあ、僕たちもご飯を食べてしまおう」

〇おしゃれなリビングダイニング
風人(フウト)「もう! マサトが早く起きないから、朝から母さんの機嫌が悪かったじゃないか」
タマ「ニャ〜」
真人(マサト)「ごめんごめん」
拓真(タクマ)「母さんは、他人に厳しい人だからね」
拓真(タクマ)「でも、自分にはもっと厳しい人だ」
拓真(タクマ)「仕事も頑張っているし、立派な人だよ」
真人(マサト)「家事は、父ちゃんに任せきりだけどね」
風人(フウト)「それ、母さんには絶対いうなよ」
拓真(タクマ)「はは、まあ僕は家で仕事しているから、多少はね」
真人(マサト)(たまに見る変な夢は気になったけど・・・)
真人(マサト)(父ちゃん、母ちゃん、双子の弟、それにタマ)
真人(マサト)(皆との生活は、それなりに幸せだ)

〇黒
  どこにでもいる普通の家族。
  そんな生活が一変するとは、
  このときは思いもしなかった。

〇部屋の扉
真人(マサト)「ねー、母ちゃん」
真人(マサト)「学校の宿題でさー」
空子(ソラコ)「ちょっと、マサト!」

〇女の子の部屋(グッズ無し)
空子(ソラコ)「開けないで──」
真人(マサト)「へ?」
真人(マサト)「う、うわあああああ! 何これ、何これ!?」
空子(ソラコ)「こら、静かにしなさい!」
真人(マサト)「宇宙人!?」
空子(ソラコ)「私よ。母さんよ」
真人(マサト)「ええぇぇぇっ」
真人(マサト)「ど、どういうこと!?」
真人(マサト)「母ちゃんが宇宙人って・・・」
真人(マサト)「あ、わかった。ドッキリでしょ?」
空子(ソラコ)「残念ながら、これが私の正体よ」
空子(ソラコ)「私は遠い星から、人間の生態を調べにやってきた宇宙人」
真人(マサト)「え、じゃあ、俺も宇宙人なの?」
真人(マサト)「正体は、そんな姿だったり!?」
空子(ソラコ)「それについては、あなたに話さなければならないことがあるわ」
空子(ソラコ)「実は、マサトとフウトは橋の下で拾ったの!」
真人(マサト)「そんな・・・」
真人(マサト)(あの夢は、本当のことだったのか・・・)
真人(マサト)(って落ちこむところなんだろうけど・・・)
真人(マサト)(人間だったことに安心したし、複雑な気分・・・)
空子(ソラコ)「私の正体は、今まで家族にも内緒にしてきたのに・・・」
空子(ソラコ)「いい? このことは、皆んなには秘密よ」
空子(ソラコ)「タクマさんにもよ?」
真人(マサト)「何で? いえばいいじゃん」
空子(ソラコ)「私が人間じゃないなんて、いえるわけないでしょう」
空子(ソラコ)「バレれば、一家離散よ!」
真人(マサト)「え・・・そんなのやだよ!」
空子(ソラコ)「だったら、秘密を守りぬきなさい!」
空子(ソラコ)「拷問されても、喋っては駄目よ!」
真人(マサト)「拷問って、そんな大袈裟な・・・」
空子(ソラコ)「地球にやって来た宇宙人の半数は、消息不明になるという噂よ」
空子(ソラコ)「絶対に何かあるわ」
真人(マサト)「・・・よくわからないけど、わかったよ」
真人(マサト)「皆には内緒にしておく」
真人(マサト)「だって、俺たちの母ちゃんであることに変わりはないもんね!」

〇一階の廊下
真人(マサト)(すごい秘密を知ってしまった気がする・・・)
真人(マサト)「あ、宿題!」

〇部屋の扉
真人(マサト)(親の仕事紹介の作文・・・)
真人(マサト)(こうなったら、もう父ちゃんでいいや)
真人(マサト)「父ちゃーん」
拓真(タクマ)「あ、待て! マサト!」

〇書斎
拓真(タクマ)「開けるな!」
真人(マサト)「へ」
真人(マサト)「またあ!?」
拓真(タクマ)「ん? またって何だ? またって」
真人(マサト)「な、何でもない。こっちの話」
真人(マサト)「それで・・・父ちゃん、なんだよね?」
拓真(タクマ)「ああ、そうだ」
拓真(タクマ)「何だ、ずいぶん落ちついているな」
真人(マサト)「いや、びっくりしているよ、これでも!」
真人(マサト)「っていうか、何で熊なの!?」
拓真(タクマ)「んー」
拓真(タクマ)「僕の種族は、熊だけど人に化けられるんだ」
拓真(タクマ)「いわば、化け熊ってやつだ」
真人(マサト)「化け猫じゃあるまいし、そんな言葉は聞いたことがないんだけど・・・」
拓真(タクマ)「それより、お前に話さなければならないことがある」
拓真(タクマ)「実は、お前たちは拾ってきた子なんだ」
真人(マサト)「ふーん」
拓真(タクマ)「えっ、何でそんなにリアクションが薄いんだ!?」
真人(マサト)(あ、やばっ)
真人(マサト)「いや、すごくびっくりしているよ!」
真人(マサト)「父ちゃんたちの実の子どもじゃないってことはショックだけど、」
真人(マサト)「俺たちは人間ってことなんだね」
拓真(タクマ)「ああ、そうだ」
拓真(タクマ)「あと、僕の正体は家族には内緒にしておいてくれ」
真人(マサト)「何で?」
拓真(タクマ)「僕の正体が熊だなんて、いえるわけないだろう?」
真人(マサト)「いっても平気な気がするけど・・・」
拓真(タクマ)「駄目だよ! これで離婚なんてことになったら、一家離散だよ!?」
真人(マサト)「うーん。とりあえずわかったよ」
真人(マサト)「皆には黙っておく」
拓真(タクマ)「マサト、助かるよ。ありがとう」
真人(マサト)「実の子どもじゃなくたって、家族は家族」
真人(マサト)「俺にとって、父ちゃんは父ちゃんなんだから」

〇おしゃれなリビングダイニング
真人(マサト)「はあー・・・」
真人(マサト)「今日はなんて日なんだ・・・」
タマ「ニャ〜」
真人(マサト)「タマ〜、俺を慰めてくれよ〜」
タマ「とうとう、真実を知ってしまったのかニャ」
真人(マサト)「タマが喋った!?」
タマ「実は、タマは化け猫なんだニャ」
真人(マサト)「はあ!?」
真人(マサト)「この家には、化け熊と化け猫が暮らしていたの!?」
タマ「そうニャ」
タマ「タマは何でも知っているニャ」
タマ「お母さんが宇宙人なことも、お父さんが化け熊なことも、マサトたちのことも・・・」
真人(マサト)「じゃあ、相談なんだけどさ」
真人(マサト)「母ちゃんと父ちゃんの正体、それぞれに教えてあげたいんだけど・・・」
真人(マサト)「どうすればいいと思う?」
タマ「それは、絶対にバラしちゃいけないニャ」
真人(マサト)「どうして?」
タマ「その前に見せたいものがあるから、ついて来るニャ」

〇部屋の扉
真人(マサト)「ここは、フウトの部屋だろ?」
真人(マサト)「こんなところに、一体何が・・・」
タマ「中に入るニャ」

〇男の子の一人部屋
風人(フウト)「あれ、マサト?」
真人(マサト)「う、うわあああああ」
真人(マサト)「今度はお前かよ!」
真人(マサト)「何の化けものだ、これ!?」
風人(フウト)「失礼だな!」
風人(フウト)「僕は・・・スライム的なものだよ、多分」
真人(マサト)「何で、多分なんだよ」
風人(フウト)「だって、ものごころついたときには、マサトに擬態していたから」
真人(マサト)「俺に擬態していたの!? 双子じゃなくて!?」
風人(フウト)「うん」
風人(フウト)「あ、でも安心して」
風人(フウト)「マサトを食べて、なり代わろうとかじゃないから」
真人(マサト)「ちょっと信用できない見た目だけどな」
風人(フウト)「僕の主食は、普通の食べものだよ!」
風人(フウト)「ああ、あと宇宙人かな」
真人(マサト)「宇宙人!?」

〇草原の道

〇草原の道

〇草原の道

〇男の子の一人部屋
風人(フウト)「タコみたいな味でおいしいんだあ」
真人(マサト)(それって・・・)
タマ「ニャ〜」
風人(フウト)「あと、僕の正体は皆には秘密だからね!」
真人(マサト)「わかっているよ」
真人(マサト)(またこのパターンか・・・)

〇おしゃれなリビングダイニング
タマ「タマのいいたいことはわかったかニャ?」
真人(マサト)「ああ・・・」
真人(マサト)「フウトは、宇宙人を食べる」
真人(マサト)「つまり、母ちゃんを食べるかもしれないってことだよな?」
真人(マサト)「宇宙人の半数が消えているって、こういうことだったのか・・・」
タマ「それだけじゃないニャ」
タマ「宇宙人の好物は、熊らしいニャ」
真人(マサト)「は!?」
タマ「あと、タマがマサトに拾われるよりずっと前のことニャけど・・・」

〇山道

〇おしゃれなリビングダイニング
タマ「っていうシーンを見たニャ」
タマ「あれは、普通の熊だったニャけど・・・」
タマ「熊はスライムの天敵みたいだニャ」
真人(マサト)「ええと、つまり・・・」
真人(マサト)「母ちゃんの天敵はフウトで、」
真人(マサト)「父ちゃんの天敵は母ちゃんで、」
真人(マサト)「フウトの天敵は父ちゃんってこと?」
タマ「そういうことになるニャ」
真人(マサト)「うわあ・・・何で家族でこんなことに・・・」
タマ「これが自然の摂理。これが食物連鎖」
タマ「諦めるニャ」
真人(マサト)「とにかく、それぞれの正体がバレたら大変だ」
タマ「一家離散どころか、」
タマ「一家壊滅待ったなしニャね」
真人(マサト)「何とかしないと・・・」

〇綺麗な一戸建て

〇L字キッチン
空子(ソラコ)「今日は休みだし、私がご飯をつくるわ」
空子(ソラコ)「・・・・・・」
空子(ソラコ)「手が足りないわ」
真人(マサト)「いやいや!」
真人(マサト)「人間が極めたものだから、料理は手二本で足りるよ!」
真人(マサト)「こんなところで正体を出さないで!」

〇書斎
真人(マサト)「・・・何しているの?」
拓真(タクマ)「マサト!?」
拓真(タクマ)「いや、いいアイデアが浮かばないから、自分の姿を見れば何か思いつくかなって・・・」
真人(マサト)「正体がバレるかもしれないんだから、もうちょっと慎重にやってよ!」

〇家の階段
真人(マサト)「おっと」
真人(マサト)「うわっ! 落ちる!」
真人(マサト)「ん? 痛くない」
風人(フウト)「大丈夫?」
真人(マサト)「あ、フウトが助けてくれたのか」
真人(マサト)「ありがとう」
真人(マサト)「ただ、あまり正体を見せないほうが・・・」

〇おしゃれなリビングダイニング
拓真(タクマ)「僕の新作「くまのターくん」シリーズの絵本が届いたよ」
真人(マサト)「わあ、見せて見せて」
空子(ソラコ)「相変わらず、おいしそうね」
拓真(タクマ)「え? おいしそう?」
真人(マサト)「あ、だから、これでしょ?」
真人(マサト)「パンケーキ!」
拓真(タクマ)「ああ! 確かにおいしいそうだよね」
拓真(タクマ)「特に、このハチミツ・・・」
真人(マサト)「あはは、そうだね・・・」
風人(フウト)「僕はこのシリーズ、あんまり好きじゃないなあ」
拓真(タクマ)「え、どうして!?」
風人(フウト)「だって、熊ってそんなに好きじゃないんだよね」
風人(フウト)「野蛮だし、何考えているかわからないし」
拓真(タクマ)「そんなことないよ!」
拓真(タクマ)「熊は優しいし、可愛いよ」
風人(フウト)「どうせなら、スライムが主人公の話とかどう?」
空子(ソラコ)「何いっているの!」
空子(ソラコ)「それなら、宇宙人がいいと思うわ」
風人(フウト)「えー」
風人(フウト)「そりゃ、宇宙人を見るのは好きだけどさあ」
真人(マサト)「あー、それよりさ!」
真人(マサト)「宿題で作文が出ているから、父ちゃん見てくれない?」
拓真(タクマ)「ああ、いいよ」
真人(マサト)(皆、正体を隠す気なさすぎ・・・)
真人(マサト)(こんなんで、本当に秘密を守れるの?)
タマ「ニャ〜」

コメント

  • 久密さんこんにちは!
    過去作にお邪魔してます☺️

    まさと、苦労がこれから絶えないでしょうね🤣
    家族内で食物連鎖が起こってて発想が面白いです!

  • “バレたら食物連鎖”
    拾われたのが宇宙人ではなく他が全員宇宙人という発想から、もう一歩ひねったアイデアが最高に面白かったです!🤣

  • いや~面白い三すくみですね😆✨
    バレないように立ち回るのに様々な面白いアイデアが生まれそうでワクワクします!意外とバレてもバランス取れたりして…とか思っちゃいました(笑)

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