ベンチループ

甘いうどん

ベンチループ(脚本)

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〇公園のベンチ
ミヤ「・・・・・・」
  彼女の名前はミヤ。動画配信サイトにて人気を博していた彼女は、その人気ぶりに承認欲求は満たされるものの
  人に見られる生活、日々視聴数のため過激になっていく企画、現実と乖離してるネットでの自分
  あらゆる不安で気が滅入っていた。度々気分転換でこの公園に来てはベンチに座っている
ミヤ「──はぁ、何も変わんないや」
ミヤ「目をつぶってみても、こないだ見たアンチコメントを忘れられないし、電車でファンに話しかけられたときは心臓バクバクだった」
ミヤ「やっぱりリアルで人と喋るのはつらいなぁ だからネットで仕事してるようなもんだし」
ミヤ「・・・・・・」
ミヤ「まあでも悩んでもしゃあないし、そろそろ12時過ぎるし、動画編集しに帰るか〜」
  ミヤは帰ろうとした。しかし、ベンチを離れしばらく歩いた頃、ある異変に気付く
ミヤ「は? なんでまたベンチ?」
ミヤ「いやまあベンチって公園に一ヶ所じゃないけどさ、私、公園に入っていちばん近いベンチを選んだはずだよね?」
ミヤ「そもそも、見える位置に公園の出口あるんですけど。えっ、なんで前に歩いたのに、後ろにあったベンチが前に来るの?」
  その後も、何度もミヤは公園の出口を目指したが、歩いているといつのまにかベンチの前に戻ってきてしまうのであった。
ミヤ「どうして!? なんで公園を出られないの!?」
ミヤ(いや、落ち着け私。よく分からないけど、ここで焦ったらもっと大変なことになる。方法を考えるんだ)
ミヤ「──とりあえず、走ってみるとか?」
ミヤ「おりゃぁぁーーー!!」
  しかし、結果は同じ。再びベンチの前。
ミヤ「なんでだぁぁぁ〜〜!!!!」
ミヤ「はぁ、はぁ・・・・・・死ぬ・・・・・・! 公園に出る前に疲れすぎて死ぬ・・・・・・!!」
  彼女は屈指の運動不足王者だったため、急に走ればこうなるのは想像に難くなかった。
ミヤ「なんで公園から出れないんだ 私の人生、ここで終わるのか?」
ミヤ(いや悲観的になるな。まだ試してないことは山ほどある)
ミヤ「そうだ! この公園は二ヶ所入る場所があるんだから逆の出口から出れば!」
  しかし、向こうの出口へ歩いてもいつのまにかベンチの前に戻っていた
ミヤ「そうは甘くないか・・・・・・くっそ」
ミヤ「じゃあ公園の出口まで決まった制限時間以内に辿り着いたら出れるとか?」
ミヤ「いやそんなゲームじゃあるまいし、そもそも速さならもう完全に無理ゲーだし・・・・・・」
ミヤ「ん? 待てよ? そうだ! 一人の力じゃどうしようもないなら誰かの力を借りれば良いんだ!!」
ミヤ(見渡したところ、公園には誰もいないがそれなら外部から助けを求めれば良い!)
ミヤ「・・・・・・」
ミヤ(私、友達いない!!!!!!)
ミヤ(絶対成功するって上京した手前、両親に頼るわけにも。まずい! あらゆる面から私の因果応報が積み重なってくる!)
ミヤ「うぅ・・・・・・!」
  その後もスキップをしながら進んでみたり、ジャンプだけで進んでみたり、ベンチの周りをくるくる回ったりあらゆる手を尽くしたが
ミヤ「何も変わらない・・・・・・」
???「そろそろ運動はしたかな?」
ミヤ「えっ? 誰の声? 誰かいるの!?」
???「ここにいるよ!」
ミヤ「いったいどこから えっ、もしかして!?」
???「そうだよ私、ベンチ! ベンチから喋ってるの!」
ミヤ「ベンチ!?」
ベンチの精霊「はじめまして! 私はベンチの精霊! このループは私の力で起こしたの!」
ミヤ「あなたがこのループを? なんでそんなことを・・・・・・」
ベンチの精霊「それはね、あなた度々このベンチに座りに来てたでしょ?」
ミヤ「えっ? まあ、気分転換に最近はよく来てた・・・・・・」
ベンチの精霊「私はね、すぐに見抜いたわ。 あなたがトップレベルの運動不足だってね! たるんだお尻の・・・・・・」
ミヤ「は?」
ベンチの精霊「・・・・・・目の下に隈ができてたから、不健康な生活をしてたのはすぐ分かったわ!」
ミヤ「なるほど・・・・・・もしかしてそれで私に運動を無理矢理させたの?」
ベンチの精霊「そう、あなたに健康的になってほしくてね」
ミヤ「ベンチの精霊さん、私のために・・・・・・」
ベンチの精霊「ふふ・・・・・・」
ミヤ「・・・・・・」
ミヤ「って余計なことすんじゃねえよ!」
ベンチの精霊「いたっ、いたっ、きみ、筋肉全然ないから全然痛くないけど、とはいえ老朽化の進んでるベンチを殴らないで〜!」
ベンチの精霊「私はね元バスケ部だったの!!」
ミヤ「バスケ部? 精霊じゃなかったの?」

〇公園のベンチ
ベンチの精霊「精霊っていうのは嘘・・・・・・実は私ベンチに憑いてる幽霊で、生前はバスケばっかりしてたの」
ミヤ「そこでずっとベンチだったからベンチの幽霊に・・・・・・」
ベンチの精霊「いや試合は出てたわ!」
ベンチの精霊「でも全国大会一歩手前で敗北した・・・・・・その未練があって幽霊として彷徨ってたところ、このベンチに辿り着いたの」
ベンチの精霊「私は運動が好き。でもできない。 だからあなたみたいな人を見ると、運動してほしいって思っちゃう」
ベンチの精霊「ごめんなさい、私のワガママよね」

〇公園のベンチ
ミヤ「・・・・・・決めたよ」
ベンチの精霊「えっ?」
ミヤ「私、ここの公園に定期的にジョギングしてくる。運動頑張るよ」
ミヤ「それで休憩でベンチに座ったときは、私と喋ってほしいな。友達になりたいのきみと!」
ベンチの精霊「いいの?」
ミヤ「もちろん! 仲良くしよ?」
  その後、ミヤの動画は平和な企画ばかりになった。運動不足の解消、そして友達との交流が、彼女を変えたのだ
  ──彼女の動画でいちばんバズったのは『ベンチを綺麗に修繕してみた』という動画であった

コメント

  • ベンチループという発想もすごいですが、ミヤに久しぶりにできた友達がベンチ(幽霊)というのもシュールな世界ですね。私も運動不足なので、近所の公園に行ったら幽霊たちに寄ってたかっていろんな所をループさせられそう。

  • ベンチループでハッピーエンドとは想定外でとても斬新でした! ユーチューブチャンネルで彼女の画期的な行動がバズったというのも、嬉しい社会現象ですね。

  • ベンチでループっていうアイデア、初めて聞きました!
    面白いと思います😁
    たくさん作ってがんばってください👍

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