ビタークイーン(脚本)
〇おしゃれな教室
学生「七!この後暇?」
胡桃 七(くるみ なな)「ごめん今日バイト〜」
調整中「残念」
調整中「最近忙しいの?」
胡桃 七(くるみ なな)「ちと金欠でね」
学生「少しなら─」
胡桃 七(くるみ なな)「大丈夫」
胡桃 七(くるみ なな)「じゃお先」
〇黒
〇学校脇の道
また嘘ついちゃったな
〇黒
シフト無いのに
〇川に架かる橋
まいっか
胡桃 七(くるみ なな)「あと一ヶ月でクリスマスだし」
胡桃 七(くるみ なな)「で」
胡桃 七(くるみ なな)「さっきから着いてきて バレないと思ってるの?」
「ひゃっ」
「せっ先輩の落とし物届けたくて」
胡桃 七(くるみ なな)「あ、ごめんね!」
八雲 天(やくも そら)「ここれです」
胡桃 七(くるみ なな)「あ〜・・」
胡桃 七(くるみ なな)「鉛筆使わない・・から 私のじゃない・・」
八雲 天(やくも そら)「そっそうです! 落とし物なんて嘘ですっ!」
胡桃 七(くるみ なな)「え?」
胡桃 七(くるみ なな)「あ〜」
胡桃 七(くるみ なな)「ガッツあんね」
胡桃 七(くるみ なな)「ちょっといい?」
〇メイド喫茶
メイドさん「お待たせしました」
メイドさん「当店特製しゅわしゅわサワーです!」
胡桃 七(くるみ なな)「ありがとうございます」
メイドさん「ごゆっくり〜」
胡桃 七(くるみ なな)「で、何で私?」
八雲 天(やくも そら)「・・・」
八雲 天(やくも そら)「・・・ごめんなさい。私やっぱり──」
八雲 天(やくも そら)「わ分かりました」
八雲 天(やくも そら)「わ私人と話すのが苦手で」
八雲 天(やくも そら)「お友達いなくて」
八雲 天(やくも そら)「・・それで」
八雲 天(やくも そら)「す凄く寂しくなっちゃって・・・でも」
八雲 天(やくも そら)「お友達の作り方分からなくて」
八雲 天(やくも そら)「学校で一番有名な先輩に・・」
胡桃 七(くるみ なな)「そうなんだ」
胡桃 七(くるみ なな)「教えてくれてありがと」
八雲 天(やくも そら)「ぅうつけ回してごめんなさい」
胡桃 七(くるみ なな)「大丈夫!お名前は?」
八雲 天(やくも そら)「八雲天です・・」
胡桃 七(くるみ なな)「私は胡桃七 友達になろ天ちゃん」
八雲 天(やくも そら)「いいんですか・・?」
胡桃 七(くるみ なな)「勿論!また明日会お?」
八雲 天(やくも そら)「はい!」
胡桃 七(くるみ なな)「じゃあ最後に」
胡桃 七(くるみ なな)「メイドさん〜」
メイドさん「は〜い」
〇駅のホーム
八雲 天(やくも そら)「今日はありがとうございます」
八雲 天(やくも そら)「た楽しかったです」
胡桃 七(くるみ なな)「私も!」
胡桃 七(くるみ なな)「可愛い後輩ちゃんと、って 意外と無かったから新鮮だった」
八雲 天(やくも そら)「・・」
八雲 天(やくも そら)「また明日・・」
胡桃 七(くるみ なな)「じゃね〜」
八雲 天(やくも そら)「また明日・・」
〇黒
〇中規模マンション
〇ハイテクな学校
〇おしゃれな教室
〇黒
〇明るい廊下
「七!」
学生「明日皆でカラオケ行くんだけど」
学生「暇?」
胡桃 七(くるみ なな)「どうだろ」
胡桃 七(くるみ なな)「分かんない」
学生「・・そうか」
学生「気をつけて」
胡桃 七(くるみ なな)「うい」
〇学校の校門
胡桃 七(くるみ なな)「待たせちゃってごめん!」
胡桃 七(くるみ なな)「寒かったよね」
八雲 天(やくも そら)「先輩・・」
八雲 天(やくも そら)「先輩こそ大丈──」
八雲 天「はっくっちゅ」
胡桃 七(くるみ なな)「ひひっかわい」
八雲 天「ちょ先輩」
胡桃 七(くるみ なな)「暖かい所いこ」
八雲 天(やくも そら)「ははい」
〇レトロ喫茶
胡桃 七(くるみ なな)「カフェばっかりでごめんね」
八雲 天(やくも そら)「全然!」
八雲 天(やくも そら)「私、昔から体が弱くて」
八雲 天(やくも そら)「体を動かす系は苦手で」
八雲 天(やくも そら)「寧ろ嬉しいです」
胡桃 七(くるみ なな)「・・なら良かった」
胡桃 七(くるみ なな)「私もこういう青春が送りたかったのかも」
八雲 天(やくも そら)「・・ありがとうございます」
〇駅のホーム
〇電車の中
〇黒
〇テーブル席
一ヶ月後
胡桃 七(くるみ なな)「そら」
八雲 天(やくも そら)「どうしました?」
胡桃 七(くるみ なな)「私、天に言わないといけない」
八雲 天(やくも そら)「え?」
胡桃 七(くるみ なな)「今まで凄く楽しかった」
胡桃 七(くるみ なな)「こんなの初めてだから 陳腐になっちゃうけど」
八雲 天(やくも そら)「先輩・・・」
胡桃 七(くるみ なな)「やっと言える」
胡桃 七(くるみ なな)「私達──」
八雲 天(やくも そら)「え?」
八雲 天(やくも そら)「ま待って!」
八雲 天(やくも そら)「先輩 た楽しいって幸せだって」
八雲 天(やくも そら)「なのに!な何で!」
八雲 天(やくも そら)「そ そうだ・・私が駄目な子だから」
八雲 天(やくも そら)「悪いとこ治せるように頑張りますから!」
八雲 天(やくも そら)「だから会わないなんて・・・」
胡桃 七(くるみ なな)「落ち着いて 天は何も駄目じゃないよ」
胡桃 七(くるみ なな)「初めて私にできた最高の友達だもん」
胡桃 七(くるみ なな)「悪いのは私の方 天のこと大好きだよ」
胡桃 七(くるみ なな)「・・じゃあね」
八雲 天(やくも そら)「ま待って!まだ何も聞いてないです」
八雲 天(やくも そら)「先輩が悪い人だなんて 思ったことも 感じたことも 一回も無いのに」
八雲 天(やくも そら)「自分が『悪い』からって それだけ言われても な納得できません!」
八雲 天(やくも そら)「先輩が教えてくれたのに」
・・・
そうだね。言わないと
胡桃 七(くるみ なな)「私は──」
八雲 天(やくも そら)「え・・?」
〇大きな日本家屋
私には高校生の姉がいた
胡桃 七「お姉」
〇畳敷きの大広間
胡桃 七「パパとママは?」
胡桃 知詩(くるみ ちか)「お出かけした・・みたい」
胡桃 七「いつ帰ってくる?」
胡桃 知詩(くるみ ちか)「どうだろ・・分かんないな」
胡桃 七「・・・」
胡桃 知詩(くるみ ちか)「大丈夫!お姉がいるから!」
胡桃 知詩(くるみ ちか)「すぐ恋しくなって帰ってくるよ!」
その日から両親は帰ってこなかった
〇教室
お姉は明るくて優しくて
友達も沢山いて
〇大きな日本家屋
友達が家に来ることもあった
〇大きな日本家屋
季節が回る頃には
お姉は母親のようになっていて
友達もいなくなって
学校に行けなくなって
何も話さなくなって
誰も助けてくれなくて
どうすればいいか分かんなくて
〇イルミネーションのある通り
十年前の今日
〇黒
お金と手紙を残して死んだ
〇テーブル席
胡桃 七(くるみ なな)「お姉は私の所為で死んだ」
胡桃 七(くるみ なな)「でもこの罪を誰も裁いてくれなかった」
胡桃 七(くるみ なな)「なら」
胡桃 七(くるみ なな)「私の答えは」
胡桃 七(くるみ なな)「お姉を演じて」
胡桃 七(くるみ なな)「友達」
胡桃 七(くるみ なな)「思い出」
胡桃 七(くるみ なな)「幸せ」
胡桃 七(くるみ なな)「いっぱい集めて」
胡桃 七(くるみ なな)「そうすれば私は独りになって お姉の心を少しくらい味わえる」
胡桃 七(くるみ なな)「これが最後の生きる理由」
胡桃 七(くるみ なな)「だから」
胡桃 七(くるみ なな)「・・ごめん」
胡桃 七(くるみ なな)「こんなの気持ち悪いよね」
胡桃 七(くるみ なな)「言わなきゃよか─」
八雲 天(やくも そら)「先輩」
八雲 天(やくも そら)「話してくれてありがとうございます」
八雲 天(やくも そら)「私は言葉でしか先輩の苦しみを知れない」
八雲 天(やくも そら)「それもほんの少し」
八雲 天(やくも そら)「先輩の生きる理由を私は遮りたくない」
八雲 天(やくも そら)「先輩には生きて欲しい」
八雲 天(やくも そら)「だから」
八雲 天(やくも そら)「先輩がずっと背負ってきたこと いっそのこと全部受け止めたいです」
胡桃 七(くるみ なな)「天・・」
八雲 天(やくも そら)「・・・私気づいたんです」
八雲 天(やくも そら)「カフェが好きじゃなくて」
八雲 天(やくも そら)「だから・・」
〇店の入口
「ありがとう」
〇おしゃれな教室
〇黒
先輩はもういないのに
〇ハイテクな学校
いつもどおりをなぞってしまう
〇カフェのレジ
罪を背負って生き続けるのはきっと辛い
償って消えるなら それが
先輩の幸せだと思った
先輩の幸せは私の幸せだ
だから、だから、
〇黒
なのに、なのに、
〇大きな日本家屋
〇黒
〇ハイテクな学校
胡桃 七(くるみ なな)「制服着て外出るって」
〇黒
「随分縛られてるな」
〇ファミリーレストランの店内
全てから解放されて
幸せを願われたのに
今までをなぞるのは
私の生きる理由が無くなったからかな
〇黒
〇シックなカフェ
我儘に生きた癖に死にたいなんて
胡桃 七(くるみ なな)「天・・何で」
八雲 天(やくも そら)「外で話しましょ」
〇黒
〇学校の校門
八雲 天(やくも そら)「久しぶりですね」
八雲 天「先輩」
八雲 天(やくも そら)「この一年 カフェに行かないようにしてました」
八雲 天(やくも そら)「でも、今日我慢できなくて」
八雲 天(やくも そら)「先輩に会いたくて、夜まで捜したんです」
胡桃 七(くるみ なな)「うん」
八雲 天(やくも そら)「先輩に初めて話かけた日」
八雲 天(やくも そら)「私は凄く寂しくて」
八雲 天(やくも そら)「でも寂しいなんてなれっこで」
八雲 天(やくも そら)「いつもなら 明日には受け入れられる感情でした」
八雲 天(やくも そら)「でもあの日、 私は見切り発車の切符を灼いた」
八雲 天(やくも そら)「その所為で、先輩が傷ついた」
八雲 天(やくも そら)「それは私の罪で 私が償わなきゃいけない」
八雲 天(やくも そら)「先輩に穴をあけたなら 私が塞ぎたい」
胡桃 七(くるみ なな)「天・・・」
八雲 天(やくも そら)「先輩が楽になるならそれで良かった」
八雲 天(やくも そら)「でも本当は先輩と離れたくなかった」
八雲 天(やくも そら)「この一年ずっと辛かった・・・」
胡桃 七(くるみ なな)「言ってくれてありがとう」
胡桃 七(くるみ なな)「私も償いなんてどうでもよかったのかも」
胡桃 七(くるみ なな)「罪は消えなかった」
胡桃 七(くるみ なな)「罪を背負いながら生きることに 耐えられなくて」
胡桃 七(くるみ なな)「この一年ずっと辛かった」
胡桃 七(くるみ なな)「私も天と一緒にいたい」
八雲 天(やくも そら)「わ私も!」
胡桃 七(くるみ なな)「・・・ありがとう。天ちゃん」
八雲 天(やくも そら)「・・・ぎゅってしていいですか・・・」
胡桃 七(くるみ なな)「・・」
胡桃 七(くるみ なな)「お願い」
七と天の距離が縮まったかと思うと離れて、かと思うとまた近くなって。二人のもどかしい関係性が、この年代特有の揺れ動く繊細な感情のもどかしさとあいまって独特な雰囲気の物語になっていると思います。スチルの演出もその雰囲気に合っていて効果的でした。
2人の女子が淡々とする会話の中に、振り出しのフレーズも加わって、とても奥行きの有るストーリーだなあと感じました。人と人が心で結びつく瞬間は素敵ですね。
良い〜んじゃない?
文字だけのスチルってこの事ね。文字数稼ぎでないなら十分効果的な演出だと思います。まだ試行段階かもだけど、むしろ気持ちを大きく表現したい時にはこの方が良いかも。新しい可能性。