とある密室にて(脚本)
〇白
「カウントダウン スタート・・・100」
壁一面が真っ白な部屋にモニターが1台
部屋には窓がなく、ドアもなかった
部屋にはひとりの男と
ひとりの女が横たわっている
「99・・・98・・・97・・・96・・・」
「95・・・ピャりいいいガガギシュう」
95の表示と同時にモニターが奇音を発する
男「うわあああっ!」
女「キャアアアッ!」
男と女が同時に悲鳴を上げ、飛び起きる
「90」
男「なんなんだよ! アンタ誰だよ! ここはどこだ!」
女「そんなのあたしに言わないでよ! あなたこそ誰なのよ」
男「ワケがわかんねえ」
女「怖い・・・」
男「おい! 誰かいるんなら出てこいや!」
返事はない
女「ねえ、ちょっと・・・あれ見て」
女の方が幾分冷静なのか、
男に向かってモニターを指差す
男「なんだあれ」
「80」
男「80って、なんの数字だよ」
女「知らないわよそんなの」
男「また減ったぞ」
女「最初はいくつだったのかしら」
男「知らねえけど・・・」
男「100とか1000とか、そんな感じだろ」
女「どんどん減ってる・・・ 0になったらどうなるのかしら」
男「知らねえよ テストでも0点ばっかりだしな」
女「ふぅん・・・」
男「ケンカ売ってんのか?」
女「まさか 外見でバカをごまかそうとしてるけど 失敗してるって思っただけ」
男「おい」
女「学生は気楽でいいわね」
男「お姉さんは働いてんのかよ」
女「まあ、そんなところ」
男「適当だな」
女「今はそんなことどうでもいいでしょ」
男「そうだ。こんなところ早く出ていこうぜ」
女「どこから?」
男「どこから・・・って決まってんだろ」
女「どこから?」
男「ドアからだよ!」
女「どこの?」
男「あぁ?」
女「ドアは、どこに、あるの?」
男「どこって・・・ おい・・・どうなってんだ ドアはどこにあンだよ」
女「あたしがそれを聞いてるの」
男「いいかげんにしろよ! 俺たちをここから出せ!」
女「叫んでも無駄だと思うけど」
「50」
モニターが告げると同時に
映像が映り始める
〇通学路
土砂降りのなか、一台の乗用車と、
近くに倒れ込む少女の姿
運転席と助手席から男が降りてきて、
少女の肩を揺する
少女からは反応がない
男たちは何かを話していたが、
やがて車に乗り込み、その場を去る
〇白
男「なんで・・・ こんな動画が・・・」
女「あれって、あなたよね」
男「いや・・・違う・・・ 違うんだ・・・」
女「バッチリ映ってたと思うけど」
「40」
〇書斎
映像は続く。家の一室だろうか
男はひざまずき、父親らしき男にしがみつくが、殴り飛ばされる
男は部屋を出て行き、父親らしき男はどこかへ電話をかける
〇駐車車両
今度は廃車工場のようだ
男の乗っていた車が潰され、埋められる
〇白
男「ウソだ・・・そんな・・・」
女「・・・ひどい男」
男「オレじゃない!」
女「きっとあの娘は死んだのね」
男「違うんだ・・・・・・」
男は力なくうなだれる
「30」
女「まだ続きがあるみたいよ」
〇店の入口
カフェテラスの全景が映る
店内外に人が多い
やがてカメラがズームインして
一組の男女を捉える
〇白
男「もうやめてくれ・・・」
女「ウソでしょ・・・」
〇店の入口
男女は談笑し、
時折、女の左手が男の頬をなでる
その薬指には指輪が収まっている
〇白
男「いいかげんにしろよ! ・・・あれ、これってお姉さんじゃねえか」
男「まさかお姉さんも・・・」
「20」
〇ダブルベッドの部屋
場面は変わり、どこかのホテルの一室
男と女が並んで寝ている
裸の肩が布団からのぞいている
〇白
男「別の男・・・だよな」
女「ありえない・・・」
〇おしゃれなキッチン(物無し)
さらに場面は変わり、
キッチンに立つ女の姿
その後ろにはスーツの上着を着る男が映る
〇白
男「3人目だな」
女「・・・」
男と女の楽しそうな姿が途切れ、画面は砂嵐になる
〇木造の一人部屋
数秒後、ほの暗い部屋が映る
画面中央に男の姿を捉える
男の体は首を支点に宙を漂い、
手足は力なく揺れている
やがて男の顔がアップになる
〇白
「10」
男「最初の男、だな」
女「誰がこんな映像を・・・」
映像が途切れ、
部屋の隅からプシュという音がする
男「なんの音だ!? っ、い、息が・・・・・・」
男と女の顔が蒼白になり苦痛に歪む
女「なんであたしが・・・ たす・・・けて・・・・・・」
「3」
「2」
男「もうダメだ・・・ 誰がこんな・・・ことを・・・」
「0」
男と女は床に倒れ込み
小刻みに体を震わせている
数分ほど経っただろうか
モニターは数を刻むのを止め
彼らの鼓動も動きを止めた
そして役目を終えたモニターに
文字が表示される
「モニター前の各位 この度はご参加いただき 誠にありがとうございました」
「各位のご尽力により我々は救われました」
「衷心より御礼申し上げます」
「しかしながら 他にも救いを求めている者は多くおります」
「また次の機会にもお力を賜れれば 幸甚に存じます」
「「裁かれなかった罪と罰の会」より」
裁きを逃れようとするものには最良の裁きですね。本人達が自覚のないところから始まり、カウントダウンと共に確信させるシステムにとても共感しました。
なるほど、バレずに行ってきた悪事を第三者が裁いてくれる…、記憶や映像からするに人間ではないのか…。
しかし100のカウントダウンの中で自分の見たくないものを見せて苦しませる、結構怖いかもしれません。
たった100カウントのなかで、ここまで犯した罪を露わにされて、最後に殺されるなんて。
悪いことはしてはいけないってことですね。この人たちは裁かれたけど、きっと誰にもバレずに暮らしてる人なんてたくさんいるんだろうなあ。