アイビー

美晴 ソラ

本編(脚本)

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〇教室
「それじゃあ、今日はここまで。日直、号令」
「起立、礼」
「さようなら」

〇明るい廊下
  1日分の授業を終え、私は教室を後にする。
  私のように真っ先に帰ろうとしている子は少数派だ。
  大方の生徒は玄関に向かうことなく、
  人目を気にすることなく、寄って集っては、たむろしている。
  廊下に満ちる喧騒がこれから凍りつくことも知らずに。
  彼女だ。

〇学校の廊下
通りすがりの生徒A「見て、花蓮(かれん)さんよ」
通りすがりの生徒B「出た出た、ミイラ女w」
通りすがりの生徒A「ちょっと! 聞こえるって!」
通りすがりの生徒B「だって全身ぐるぐる巻きなんだもん」
通りすがりの生徒B「そっちだって本心は同じなんでしょ?」
通りすがりの生徒B「聞けば、こないだ部活帰りに声掛けられた時、すごい悲鳴あげてて、わざわざ顧問に助け求めてたって話じゃん!」
通りすがりの生徒A「そんなこと言われたって、背後をつけられたとは思わないじゃない!」
通りすがりの生徒A「だいたい、花蓮さんって帰宅部の筈だよ。あんな時間まで何してるんだろ?」
花蓮(かれん)「(ジッ)」
通りすがりの生徒A「ひぃっ!」
花蓮(かれん)「・・・・・・」
通りすがりの生徒B「行った・・・・・・」
通りすがりの生徒B「大丈夫!?」
通りすがりの生徒A「・・・・・・ぐすっ」
通りすがりの生徒B「行こ」

〇階段の踊り場
  その後も、花蓮さんとすれ違った者は、もれなく嫌悪感を露わにしている。
運動部の女子「うわっ! おば──」
花蓮(かれん)「・・・・・・」
運動部の女子「・・・・・・練習の邪魔だから、どいて!」
花蓮(かれん)「・・・・・・」

〇学校の昇降口
たむろしている女子A「それで、うちの母さんが嫌がらせに、弁当のおかず全部苦手なものばっかり詰めちゃうもんだから、マジ最悪!」
たむろしている女子B「うわ、お母さんえげつなw」
たむろしている女子A「でしょー? ただでさえ怒りっぽいのに性格も悪いし──」
たむろしている女子B「ちょっ、後ろ! 後ろ!」
たむろしている女子A「うしろ?」
たむろしている女子A「うわぁ!」
花蓮(かれん)「・・・・・・」
たむろしている女子A「か、帰ろ!」
たむろしている女子B「待ってよぉ!」
花蓮(かれん)「・・・・・・」
たむろしている女子A「急に出てくんな、バケモン!」
たむろしている女子B「キモいんだよ、バーカ!」
  心ない言葉を浴びせられても、花蓮さんは何も言うことなく、逃げる彼らの背中を見つめていた。
  包帯の隙間から覗く紅い瞳は羨ましそうに見えた。

〇学校の昇降口
  花蓮さんが帰り、私は下駄箱に手を伸ばした。
「上村さん」
私(語り手) 「持田さん?」
持田「花蓮さんのこと気になるの?」
私(語り手) 「別に・・・・・・そんなことは」
持田「否定する割には持田さんの後、つけているっぽいじゃない?」
持田「安心して、私もだから」
持田「だって花蓮さんってミステリアスでしょ?」
持田「無口で、幽霊みたいに背後から出てくるところとかね」
持田「だけどそこが魅力なのよ! オカルト研究部の血が騒ぐわ!」
持田「私ね、確信したの」
持田「花蓮さんはただの人間じゃない、ってね」
持田「・・・・・・一緒に追いかけてみない?」
私(語り手) 「今日、塾あるから」
持田「ちょっ、上村さん!」

〇学校の校門
  悪趣味な女だ。
  他人のプライベートにズカズカと足を突っ込むような真似を、私にも強要するなんて。
  それより──
  中庭に咲いているシロツメクサが荒らされている。
  それもクローバーがちぎられた跡がやけに目立つ。
  校門を出ると──
  花蓮さんがいた。
私(語り手) 「あれ? まだ帰って──」
花蓮(かれん)「・・・・・・」
私(語り手) 「えっ?」
  花蓮さんは白い布で巻かれた右手を差し出した。
  手のひらには四つ葉のクローバーが。
  貴女にあげると言わんばかりに、指先がぴくぴく、と動く。
  引き寄せられるように手を伸ばすと、白い手が私の手を強く握った。
  仄かな草の匂いがした。

〇学校脇の道
  雨が降り始める中、私は花蓮さんに導かれていく。
  私はどこへ向かっているのか解らない。
  行き先は沈黙を貫く少女のみぞ知る。
  花蓮さんの自宅だろうか?
  それに、この道の先には──

〇森の中
  家から真反対の方向に行ったことはないので、来るのは始めてだが・・・・・・
  なんとも不気味な森だ。
  さらに悪いことに花蓮さんの行方を見失った。
  名前も呼んでも、雨の音に掻き消される。
  不安は増幅の一途を辿っている。
  途方に暮れたその時、
「こっち」
  虫を思わせる、か細い声がした。
  一縷の望みを賭け、私は声のする方へと歩を進めた。

〇森の中
  日が沈み、雨の勢いも増してきたが、どうでもいい。
  何としても、彼女を探さなくては。
私(語り手) 「・・・・・・!」
私(語り手) 「花蓮さん!」
私(語り手) 「さっきの声、花蓮さんだったんだね・・・・・・」
花蓮(かれん)「ありがとう」
花蓮(かれん)「私のこと、守ってくれて」
私(語り手) 「・・・・・・何のこと?」
花蓮(かれん)「だって、私を追いかけようとしなかったじゃない」
私(語り手) 「あれは、持田さんの趣味に付き合いたくないからであって──」
花蓮(かれん)「私には解る」
花蓮(かれん)「貴女は優しい人」
花蓮(かれん)「私の秘密、教えてあげる」
  秘密を覆う白い布は螺旋のようにほどけていく。
  そして──
  制服が破れ、落ちた。
  そこに花蓮さんはいない。
  先ほどのクローバーの意味を理解した。
  『約束』
  私と花蓮さんだけの、秘密の約束。
  彼女の正体を知ってしまった以上、この事を他言してはいけない。
  裏切れば報復は免れない。
  そう──
  私は逃げられないのだ。
  ・・・・・・でも、そんなことはどうでもいい問題だ。
  ていうか──
「フフ」
  今すぐ逃げなきゃ殺される!!
「いやぁーーーーーー!!」
花蓮(本当の姿)「待ッテ!」
私(語り手) 「来ないで!」
花蓮(本当の姿)「貴女、優シインデショ?」
花蓮(本当の姿)「優シイカラ、コンナ怪物(ワタシ)デモ、」
花蓮(本当の姿)「友達二、ナッテクレルカモシレナイ!」
花蓮(本当の姿)「ソンナ思イヲ込メテ、」
花蓮(本当の姿)「四ツ葉ノクローバー、渡シタノ!」
花蓮(本当の姿)「ダカラ──」
私(語り手) 「いや、いや、いやぁ・・・・・・!」

〇森の中
花蓮(本当の姿)「・・・・・・ゴメンナサイ」
花蓮(本当の姿)「嫌ワレ者ノ私ニハ、コウデモシナキャ、」
花蓮(本当の姿)「友達ヲ作レナイノ」
花蓮(本当の姿)「誰カ二、私ヲ、認メテモライタカッタ」
花蓮(本当の姿)「・・・・・・デモ、ソンナ悲シミトハ、オサラバ」
花蓮(本当の姿)「ダッテ──」
花蓮(本当の姿)「ハジメテノ友達、出来タモノ♥️」
花蓮(本当の姿)「コレカラハ、ズット一緒ダヨ?」
花蓮(本当の姿)「愛美(アイミ)」

コメント

  • 花蓮さんがなぜ包帯でぐるぐる巻きだったのかを考えながら読んでいました。途中クローバーを渡したので良い子かと思ったら…!!甘い蜜には毒があるとはまさにこのことでした。

  • 想像していた以上にホラーでした…。
    まだ殺された方が優しかったかもしれません…。
    確かに化物と人間では繋がりは出来難いかもしれませんが…、姿まで変えてしまうとは…。

  • 花蓮を取り巻く悪意が生々しくて、一気に作品世界に取り込まれました。ハートフルな友情作品を予感させながらのまさかの展開に驚きです。

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