超能力者は恋に鈍い~桜田斗真という人物~(脚本)
〇教室
「桜田くんってちょっと冷たいよね」
「なんか、達観してる感じ」
〇田舎の公園
人には言えないが、俺には秘密がある。
それは俺が超能力者と言うこと。
超能力者と言えど使えるのは念能力のみ。
利便性はあるが、秘密裏であり人目を
気にすると使いづらいところもある。
中島「おいおい、西高の桜田くんじゃねぇか」
高木「こんなとこでなぁにしてんのかな?」
こいつらは滝川高校の不良二人。
いじめられていた生徒を助けて以来、
目を付けられている。
桜田 斗真「まだ懲りないのか? 俺の側にいると、ロクなことがないぞ」
中島「ビビってんのか? 優等生。 せんせぇでも呼ぶか? ハハハ!」
桜田 斗真「どうなっても知らないからな」
俺の念能力は目にするもの例外なく、
好きに操つれる。人間なんてこの通り。
中島「どあぁっ! てめぇ高木! 何殴ってんだよ!!」
高木「ちげぇって! 手が勝手に動いて!!」
中島「何意味わかんねぇことっ おわぁ!!」
高木「わりぃ、中島っ! でも、手が勝手に・・・・・・」
こんなことは造作もない。
少々憐れだが、荒療治だと思って
我慢していただこう。
桜田 斗真「なんだ仲間割れか? 俺はお前らに用がないんだ。 二人仲良く遊んでろ」
二人の遠吠えを無視して公園を出る。
晴れた日の公園のベンチに座ることが
癒しだと言いうのに、気が削がれた。
〇繁華な通り
俺を冷たい人間だと評価する人も
多いが、それは別に人と絡む意義を
感じないからだ。
念能力があることで、俺は普通とは違う
ことを自覚してしまい、孤独を感じた。
仲間を探すにしても、超能力者です。
なんて話をしたところで馬鹿にされて
終わりだ。だから話さない。
それに、一人の方が気楽でいい。
桜田 斗真「そうだ、村田修の新刊が出てるんだ」
〇本屋
そんな俺だが、
一人だけ一目置いている人物がいる。
桜田 斗真「(新刊は、向こうの棚か。)」
桜田 斗真「(あれは、柊 美香。)」
柊 美香。
話しかけられたから、なんて理由ではなく
何か通ずるものがあるのだ。
「(こっちに来た。)」
柊 美香「桜田くん。 奇遇だね、こんなところで会うなんて」
桜田 斗真「ああ。 柊さんは何をしに来たんだ?」
柊 美香「村田修先生の新刊を買いに来たの」
桜田 斗真「奇遇だね、俺も買いに来たんだ」
柊 美香「そうなの? 村田修先生の本読んでる人、私の周りには いなくて。 良かったら、感想を言い合わない?」
桜田 斗真「(向こうから接触してきた。 ここは、あえて乗っかるとするか。)」
桜田 斗真「いいね。すぐは読み終わらないから、 一週間後なんてどう?」
柊 美香「うん。 頑張って読むね!」
それ以上何か話すことはなく、約束だけ
取り付けて俺は帰宅した。
〇カウンター席
一週間後。
俺と柊はカフェにいた。
外の景色には目もくれず、俺達は時間を
忘れて互いの感想を言い合った。
あの伏線が良かった。
台詞回しが独特で難解。
傍から見れば他愛ない話だった。
そんな会話が楽しくて、
俺は珍しく饒舌になっていた。
何となく、気分が高揚していたんだろう。
柊 美香「はあー、いっぱい喋った! 感想を言い合えるっていいね」
桜田 斗真「確かにね。 俺も久しぶりにこんなに話したよ」
柊 美香「桜田くんって、 話しかけ辛い印象だったけど、 結構話しやすいね」
桜田 斗真「(まあ、普段人とあまり話さないから、 そう思われても仕方ないか。)」
桜田 斗真「口下手なだけだよ。 柊さんとは話しやすいんだと思う」
桜田 斗真「(いつ以来だ、こんなに話したの。でも 悪くなかった。なにより気も合うし、 柊の人柄か?)」
桜田 斗真「良かったら、また話さないか?」
柊 美香「ほんと! なら今度はおススメの本を教えてね?」
桜田 斗真「勿論」
〇開けた交差点
俺と柊は、何を言うまでもなく
一緒に帰り道を歩いていた。
桜田 斗真「じゃあここで」
柊 美香「うん。またね!」
別れ際、エンジン音が鳴り響いた。
音に顔を向けると、猛スピードで歩道に
迫る車が見えた。
俺は咄嗟に、柊を突き飛ばしていた。
こんなことをせずとも、念能力で車を
逸らせば済むことだったのに。
ゴン、っと鈍い音がした。
ぶつかったはずなのに、痛みがない。
目を開くと、車が目の前で止まっていた。
そして俺と車の間に、柊の姿があった。
柊は、
驚くことに素手で車を止めていたのだ。
ざわつく周囲に、柊は俺の手を掴むと
足早にその場を後にした。
〇田舎の公園
しばらく歩いた先は、
俺の癒しの公園だった。
柊は振り向くと、
申し訳なさそうに俺を見た。
柊 美香「いきなりごめんなさい、驚いたよね。 私、あのね、超能力者なの・・・・・・」
桜田 斗真「(柊が超能力者?)」
柊 美香「私は念能力が使えるわけではないけれど、 自分の何倍も重いものを持ち上げられるの」
柊 美香「引くよね、こんなの・・・・・・」
桜田 斗真「(超能力としては特質しないが、あの車を 止めるだけの力がある。 超能力者で間違いはない。)」
表情の曇る柊に、
俺は何故か胸を締め付けられた。
だから隠し立てせず、正直に話した。
桜田 斗真「引いたりするか、俺も能力者だ。 柊さんが今言った念能力の」
柊 美香「そうなの!? 私だけじゃなかったんだ・・・・・・」
柊 美香「・・・・・・私達、似た者同士だね!」
柊の笑顔が眩しい。
俺と同じ存在がいる、
それだけで胸に開放感があった。
そして柊に恋心を寄せていることは、
まだ俺自身にも、秘密だった。
特殊な能力を持っていると、どうしても孤独になりがちだと思いますが、同じ仲間が見つかって良かったですね。
それだけじゃなくいい雰囲気になって、良かったなぁって思います。
きっと彼女も心を許してるから「助けたい」と思ったんだと。
超能力者は自分の正体を人に言えないから、いつも孤独な立場になるのかな。でも、超能力者同士なら様々な悩みを語り合う事ができると思うので二人の関係が更にうまくいけばいいね。
話が通ずる仲間、友達がいると楽になりますよね〜。
今まで誰にも言えなかったことが言えるって…。
小説しかり、超能力しかり、これからも仲良くしていってほしいです!