転生したから、父さんに復讐するぞ!(脚本)
〇黒
そうだ。
僕には前の人生の記憶と、
そのまた前の人生の記憶、
そのまた前の・・・
とにかくたくさんの記憶が
あるんだったんだ。
〇勉強机のある部屋
ヒジリ「ふ、ふふふ、思い出した・・・! ついにこの日がきたぞ!」
「転生おめ~!」
ヒジリ「な、なんだ!? 頭の中に直接声が響いて!!」
「いえーい」
ヒジリ「って、この声、アイか!?」
アイ「ぴんぽーん♪ おにい、気づくの遅すぎ」
ヒジリ「いや、西暦2000年代系世界で超能力あるとか思わないだろ!?」
ヒジリ「てか、テレパシーって前世の能力だったよな? もしかして、能力継続転生か!?」
アイ「そだよー。ぶいぶい。いいでしょー」
ヒジリ「おまえ、また特能持ちとか 当たり転生うらやましいっ」
アイ「おにいはいつもと同じ ど平凡転生みたいだね~」
ヒジリ「いや、西暦2000年代系世界なら ハーレム系モテモテ能力がある 可能性もッ!」
アイ「なんか前あったね。 でも、ヤンデレルート入って死んでなかった?」
ヒジリ「やめて! 思い出させないでッ!」
アイ「言い出したのは、おにいじゃん」
ヒジリ「うっ、こほんっ!」
ヒジリ「それより、アイ。 父さんと母さんはどうしてる?」
アイ「パパとママはいつもどおりだよ~」
ヒジリ「父さんも前の人生の記憶があるってことか」
アイ「うん。 パパママが転生してないほうが びっくりじゃない?」
ヒジリ「いやまあ、そうなんだけど・・・」
ヒジリ「父さん、僕について 何か言ってなかった?」
アイ「?」
アイ「特には?」
アイ「いつもどおりおにいが転生したら お祝いしよ♪ って、ママは言ってたけど」
ヒジリ「・・・・・・よぉくわかった」
アイ「?」
アイ「おにい、なんか変」
ヒジリ「ふふふふふ、僕はね、 前回の人生で父さんに 恨みつらみがあるんだよ」
アイ「え!」
ヒジリ「さあ、記憶が戻った今、 復讐の時間だ!!」
〇明るいリビング
アイ「おにい、復讐ってなにするの?」
ヒジリ「そんなの決まってるだろ」
アイ「椅子にブービートラップはもう古いよ?」
ヒジリ「そんなのしないよ!?」
アイ「じゃあ、靴の紐を切っておいて 不吉な気分にさせるとか?」
ヒジリ「地味に嫌だな!?」
アイ「違うの?」
ヒジリ「あぁ、そんなみみっちいことはしないよ」
アイ「あ、わかった! お風呂は言ってる時に給湯器止めて 水にしちゃうんだ!」
ヒジリ「えげつないっ!!!」
アイ「復讐の定番じゃない?」
ヒジリ「どこの世界の定番なんだよ・・・」
ヒジリ「いいか、アイ。 確かに給湯器はかなり心にクるとは思う。 でも、僕は父さんが一番嫌なことを してやるつもりなんだ」
アイ「一番嫌なことって?」
ヒジリ「簡単なことだよ。 親が一番嫌がる、それは・・・」
ヒジリ「子供が非行に走ること!!!」
アイ「・・・非行ってなにする気?」
ヒジリ「まず手始めに・・・」
ヒジリ「学校を休む!!!」
アイ「今日、学校休み」
ヒジリ「・・・・・・・・・・・・」
アイ「・・・・・・・・・・・・」
ヒジリ「くそっ、さっそく計画に狂いが!」
アイ「他にすることないの?」
ヒジリ「うーん・・・ 西暦2000年代系世界は 割りと犯罪判定広いから・・・」
アイ「日和ってるんじゃない! 飛び抜けろ!!」
ヒジリ「犯罪ダメ! 絶対!!!」
アイ「おにい、つまんない」
ヒジリ「うっ、いやもう捕まるルートは やりたくないっ」
アイ「おにいのトラウマを刺激したようだ」
ヒジリ「トラウマっていうか スパイ系のとかやったけど ほんとあれはもういい、って」
アイ「刺激的な方が楽しいのに」
ヒジリ「非平和ルートに進む世界の原因 アイのような気がしてきた・・・」
アイ「・・・・・・・・・・・・」
ヒジリ(こ、これ以上この話に触れては いけない気がする!!!)
ヒジリ「あー、そ、そうそう! 話を戻して、復讐は 父さんに会わないようにする とかどうかな!?」
アイ「それって効果あるの?」
ヒジリ「ほら、急に子供が冷たくなったら 嫌かもしれないじゃん」
アイ「でも父さんだっておにいが怒ってる原因 わかるんじゃないの? 転生したって知ってるだろうし」
ヒジリ「知ってんの!?」
アイ「テレパシーで伝えておいたよ」
ヒジリ「ぐっ、勝手なことを!!」
アイ「ママがおにいの転生祝いするって言ってた」
ヒジリ「それはありがとうございます!」
アイ「で、パパはでかけて帰ってきてない」
ヒジリ「でかけてたら会わない作戦は 不発じゃん!?」
アイ「おにい、どんまい」
ヒジリ「くぅ、早急に作戦を たてなおさねば・・・っ!」
〇明るいリビング
パパ「ママ~~! ただいま~~!」
ママ「パパ! おかえりなさい!」
アイ「おかえり」
???「クククッ、やっと帰還しおったか」
パパ「ヒジリ!?」
ママ「まあ!」
アイ「おにい?」
ヒジリ「気安く我が名を呼ぶではない! 我こそは蘇りし冥府の王!」
ヒジリ(ふふふ、どうだ! これこそ ミッション名「中二病大作戦!」!!!)
パパ「な、まさか・・・ そんな・・・ ヒジリ、お前が冥府の王だったなんて」
ヒジリ(急にわけのわからないことを 言い出す息子に困惑するといいんだ!)
パパ「流石は我が息子。 実はパパも時間の神だったんだっ!」
ヒジリ(ノッてきたーーーー!?)
ママ「ママも実は 大地の慈愛と豊穣の女神だったのよ♡」
ヒジリ(ママまでーーーー!?)
パパ「ママが女神だなんて! わかっていたよ、美しく優しい人」
ママ「パパ! ふふふ、女神になっても何度死んでも アナタとずっと一緒よ」
ヒジリ(中二病設定のまま 親のラブコメ見せられるのキッツ!!)
アイ「おにい、困惑する側になってる」
ヒジリ「テレパシーで思考を読んだ上に 的確すぎるツッコミがツラいっ!」
パパ「ヒジリ?」
アイ「おにいのまけ」
ヒジリ「うっ、僕はまともに復讐の一つも できないのか・・・っ!」
パパ「・・・・・・っ!」
ママ「どういうこと?」
ヒジリ「実は・・・」
ママ「あら~! そうだったの。 てっきり今回はあーいう設定で やっていくのかと思ったわ」
アイ「おにいは、あんまり能力継承して こないから無理がある」
ヒジリ「ひどくない!?」
ママ「ふふふ、どんなヒジリでも ヒジリはママのかわいい息子よ♡」
ヒジリ「母さん・・・っ」
ママ「で、パパに転生後まで 復讐を抱かせた原因って何なのかしら?」
ヒジリ「・・・それは・・・」
パパ「わかってるよ」
ヒジリ「え?」
パパ「パパが恨まれてる理由。だから」
パパ「ヒジリが転生してきたら 一番に償うって決めていたんだ」
ヒジリ「父さん・・・っ」
アイ「それで、原因ってなに?」
ヒジリ「あぁ、あれは・・・ 前回の人生で魔物に襲撃されて 家族がバラバラになる直前のこと」
ヒジリ「僕が大切にとっておいたブランブルパイを父さんが勝手に食べてたんだ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ヒジリ「だってあのパイ、あの世界特有のベリーでしかも超期間限定大人気パティシエが作ったやっと手に入れたものだったのにっ」
ヒジリ「父さんは全部食べちゃってせめて一口残しておいてくれれば再現できたかもしれないのにっ!!」
アイ「おにい、黙って」
ヒジリ「ヒッ!」
ママ「まあ、食べ物の恨みは怖いっていうしね~」
パパ「もともとヒジリは食に対して 貪欲っていうか 作るのも食べるのも好きだからね」
パパ「結構ヒジリはケーキとか 作っておいてくれたりしたから それかと思って食べちゃったんだよなぁ」
ヒジリ「あの時は末代まで呪ってやるって思ったよ」
アイ「それおにいも呪われるやつじゃん」
ヒジリ「うっ、たしかにっ!」
パパ「根に持たれてるのはわかってたんだけど パパはあの人生では結局 死ぬまで会えなくて謝れなかったからね」
パパ「ヒジリが転生してくるのを ずっと待ってたんだよ」
ヒジリ「そっか。 復讐なんて一人で勝手に考えてて ごめんよ、父さん」
パパ「いや、やなことだったんだから 怒ってかまわないんだよ。 だから許してもらえるように パパは頑張ってきたんだ」
パパ「これ」
アイ「それ、さっき帰ってきた時に持ってた箱?」
パパ「あぁ。 ちょっと料理教室のキッチンを 借りて作ってきたんだ」
ママ「あら、今回は珍しく料理教室に 通ってると思ったら 全部ヒジリのために?」
アイ「今回の人生だと、パパの手、 やばいくらい傷できてるって 思ってたけど料理練習してたんだ」
パパ「そうだよ」
パパ「ヒジリ、パパからの謝罪、 受け取ってくれるかな?」
ヒジリ「もちろん!」
パパ「じゃあ、夕食後にみんなで食べようか!」
〇明るいリビング
ママ「はーい、みんな。 パパが作ってくれたブルーベリーパイよ♪」
「はーい♪」
ヒジリ(パパ、わざわざベリーのパイを 選んで作ってくれたんだな)
ヒジリ(料理を今までの人生ほとんど しなかったパパに ここまでされたら許すしかないよね)
ヒジリ「明日からは前と同じように 仲のいい親子に戻ろ」
ヒジリ「いっただきまーす!」
ヒジリ「ぱくっ!」
ヒジリ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ヒジリ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ヒジリ「まっずっつっつつつつ!!!!!」
ヒジリ(やっぱり許さねぇえええええ!!!!)
中々に恨みの沸点低くてクスリと笑いました😂
次の転生でもまた何かしら復讐しそうな予感しますね…。根が良い子だからまた裏目に出るパターンになるのが想像できます😂
この家族は転生を繰り返すだけで歳は取らないんだろうか。だとすれば、経験値は増えるのにヒジリとアイがずっと子供のままなのは不思議な感じ。この設定のまま、家族以外の人々との関係がどんな感じなのかも見てみたいなあ。
まさかの家族全員転生経験者!笑
日常的な話でブルーベリーパイのくだりはクスッと笑えてほっこりしました。平和な気分になれてとても好きです!