魔法少女、誕生!?(脚本)
〇モヤモヤ
魔法少女「スターフレイム!」
冥王「その程度か?」
魔法少女「このままじゃ負けてしまう!」
魔法少女「みんな、わたしに力を──」
〇黒
〇明るいリビング
美森 千紗「ママ! アニメつけるのやめてって言ったでしょ」
美森 彩芽「けどアンタ、このアニメ好きだろ?」
美森 彩芽「主人公がピンチになるたびに泣きながら応援してたじゃないか」
美森 千紗「いつの話だっつの!」
美森 千紗「オタク趣味はもう卒業したの!」
美森 千紗「高校では友だちとか彼氏とかたくさんつくって」
美森 千紗「夢のキャンパスライフを送るんだ~」
美森 彩芽「彼氏は1人でいいだろ」
美森 彩芽「それにキャンパスは大学だし」
美森 千紗「いちいちうっさいな!」
美森 彩芽「今の、魔法少女マジカルスターだっけ?」
美森 彩芽「高校にはファンがいるかもよ」
美森 千紗「今のはマジカルスターS! あたしが見てたのは初代!」
美森 千紗「リメイクされて今風になったのはいいけど」
美森 千紗「脚本家が変わったからキャラも前と違ってさ」
美森 千紗「特にスターパープルが解釈違いなんだよね」
美森 千紗「リメイクの新キャラとの絡みが・・・」
美森 千紗「やばっ、遅刻する!」
「いってきまーす!」
美森 彩芽「・・・いってらっしゃい」
〇教室
美森 千紗「マジで? やべー」
美森 千紗(よし、つかみは上々)
〇グラウンドの隅
マジカルスターごっこしよ!
あたしスターパープル──
女子A「まだマジカルスターなんか見てるの?」
女子B「幼稚園児みた~い」
あ・・・
女子A「ね、それよりこの服かわいくない?」
〇教室
美森 千紗(昔と同じ失敗はしたくない)
美森 千紗(そのためにわざわざ遠くの学校を選んだんだもん)
「・・・あの」
和田 実「そこ、オレの席なんで」
美森 千紗「あ、ごめん」
美森 千紗(隣の席の・・・)
美森 千紗(いかにもオタクって感じ)
美森 千紗(ま、あたしにはもう関係ないけど)
〇空
〇教室
美森 千紗(さっきからガリガリすごい音)
美森 千紗(なに書いてるんだろ)
美森 千紗(落としたフリして覗いちゃお)
美森 千紗「漫画?」
「そこ! 授業中にしゃべるな!」
美森 千紗「はーい」
〇学校の廊下
美森 千紗「でさー」
和田 実「美森さん」
和田 実「オレの魔法少女になってください!」
美森 千紗「はあ!?」
「魔法少女?」
美森 千紗「ちょっと和田くん!?」
和田 実「オレには美森さんが必要なんです!」
美森 千紗「ちょ、ちょっと」
美森 千紗「こっち来て!」
〇学校の屋上
美森 千紗「ここなら誰も来ないかな」
美森 千紗「さっきの・・・ 魔法少女になってくれってどういう意味!?」
和田 実「オレ、漫画描いてるんですけど」
美森 千紗「知ってるよ」
美森 千紗「授業中ガリガリうっさかったし」
和田 実「妹が入院してて 暇つぶしになればと思って」
美森 千紗「そーなんだ」
和田 実「けどオレ、漫画もアニメも見たことなくて」
美森 千紗「マジ?」
和田 実「どうしてもおもしろくならなくて」
和田 実「で、主人公が美森さんに似てることに気づきまして」
和田 実「美森さんに主人公の格好をしてもらえればインスピレーションが湧くかと」
美森 千紗「オレの漫画の魔法少女、ってことね」
美森 千紗「大事なとこ略すなっての」
和田 実「引き受けてくれますか?」
美森 千紗「悪いけどパス」
美森 千紗「この年になって魔法少女ごっこなんかしたくないんだよね」
和田 実「漫画を読んで判断してくれませんか」
美森 千紗「ま、読むだけなら」
和田 実「・・・どうですか?」
美森 千紗「主人公の動機があやふや、キャラのブレがすごい」
美森 千紗「自分が書きたいストーリーの都合でキャラを動かしてるでしょ」
和田 実「物語ってそういうものでは?」
美森 千紗「そーいうの、すっげー冷める!」
美森 千紗「もっとキャラの魅力を・・・」
和田 実「美森さん、オタクですか?」
和田 実「人は見た目によりませんね」
美森 千紗「人のこと言えるのかっつーの!」
和田 実「コスプレはともかく、漫画のアドバイスはもらえませんか?」
和田 実「妹におもしろい作品を読んでもらいたいんです」
美森 千紗「・・・ま、それぐらいなら」
〇ファミリーレストランの店内
〇学校の廊下
和田 実「この前はありがとうございました」
美森 千紗「妹ちゃん、喜んでた?」
和田 実「はい・・・」
美森 千紗「なに?」
和田 実「妹がイノセントヴァイスに会いたいと言い出しまして」
美森 千紗「あの漫画の主人公ね」
美森 千紗「・・・あたしにやれって言ってる?」
美森 千紗「この年になって魔法少女ごっこなんかしたくないって!」
和田 実「バイト代をお支払いしますよ」
和田 実「仕事ならごっこ遊びにならないでしょう」
美森 千紗「けど・・・」
和田 実「なにがそんなに嫌なんですか」
和田 実「魔法少女、好きでしょう?」
美森 千紗「・・・別に好きじゃないし」
和田 実「でも美森さん、すごく楽しそうでしたよ」
和田 実「必殺技考えてるとき、ノリノリでしたし」
美森 千紗「でも誰かに見られたら」
和田 実「誰かって?」
美森 千紗「・・・クラスの子とか」
美森 千紗「やっと友だちができたのに」
和田 実「好きなものを好きと言うことより」
和田 実「自分を偽って人に好かれることが大事なんですか?」
美森 千紗「和田くんにはわかんないよ」
和田 実「わかりました 無理を言ってすみません」
美森 千紗「あっ・・・」
〇空
〇総合病院
美森 千紗「・・・・・・」
〇病室の前
美森 千紗「和田くん」
美森 千紗「あのさ、さっきは」
和田 実「しっ」
「みなみちゃん、ほんとガキっぽ~い」
「魔法少女なんて幼稚園で卒業するでしょフツー」
〇病室
美森 千紗「・・・そんなことない!」
女子A「誰?」
和田 実「必殺、まぶしい光!」
〇白
「まぶしっ」
「超強力LEDライトです!」
「さあ今のうちに!」
「もうどうにでもなれ!」
〇病室
女子A「マジで誰?」
魔法少女イノセントヴァイス「あ、あたしは魔法少女イノセントヴァイス」
魔法少女イノセントヴァイス「人が好きなものを否定するのはよくないな」
魔法少女イノセントヴァイス「悪い子は破邪の光ヴァニッシュで成敗しちゃうぞ」
女子B「い、行こっ」
魔法少女イノセントヴァイス「絶対やばい奴だと思われた」
和田 実「いいじゃないですか どうせ二度と会わないし」
和田 みなみ「美森さんでしょ?」
和田 みなみ「兄がお世話になってます」
魔法少女イノセントヴァイス「いや、こちらこそ」
魔法少女イノセントヴァイス「じゃなかった あたしはイノセント・・・」
和田 みなみ「兄貴、彼女にコスプレさせたの?」
魔法少女イノセントヴァイス「彼女じゃないし!」
魔法少女イノセントヴァイス「てか妹ちゃん、魔法少女に会いたいって言ってたんじゃ」
和田 みなみ「ヒーローショーが見たいとは言ったけど」
魔法少女イノセントヴァイス「和田くん?」
和田 実「いや、その」
アナウンス「まもなく面会終了時刻です」
和田 みなみ「2人とも、また来てね」
〇ゆるやかな坂道
和田 実「・・・すみませんでした」
美森 千紗「楽しかったよ」
美森 千紗「ちょっと強引だったけど」
美森 千紗「やっぱ、魔法少女もオタク趣味も捨てらんないや」
美森 千紗「クラスの友だちに言うのはまだ無理かもだけど」
和田 実「あんな偉そうなことを言いましたけど」
和田 実「好きなものを好きと言うのには勇気が必要ですね」
和田 実「オレにもそういうものがありますし」
美森 千紗「なになに?」
和田 実「・・・秘密です」
美森 千紗「いいじゃん、教えてよ!」
和田 実「・・・そのうち」
美森 千紗「えー、なにそれ!」
美森 千紗「待ってよー!」
主人公ちゃんがかわいい
肝心の妹ちゃんが意外と冷静で「兄がお世話になってます」に笑ってしまった。最初に登場した千紗のママも見た目のパンチが効いてるけど千紗の内面をよく分かっていて、いい味出してました。魔法少女が千紗と実に恋の魔法をかけてくれるのか否か…。神のみぞ知るですね。
千紗さんの繊細な内面の描写が心を打ちますね。とっても可愛くて応援してくなります。
和田くんとの距離感、見ていてすごくドキドキしてしまいます。この後の展開も気になりますね。