オレンジロード(脚本)
〇海辺の街
〇海辺
沙英「うーん!」
沙英「今日もゴミ拾うぞー」
美涼「うー、眠い」
沙英「珍しく来たらこれだ」
美涼「あと数ヶ月で引っ越すと思ったら なんか来たくなって」
沙英「わかるわ」
美涼「ちょ!誰か琵琶湖に入ってるし!」
〇海辺
沙英「最近よく朝に出会う子だ」
美涼「あ、颯汰じゃん!」
沙英「知り合い?」
美涼「最近、転校してきた同級生だよ」
美涼「おーい!颯汰──おは──!」
颯汰「あっ!美涼!」
沙英「おはようございます! 美涼の姉、沙英です。よろしくね!」
颯汰「おはようございます」
美涼「朝早くから何してんの?」
颯汰「え──っと」
美涼「ハッキリ言いなさいよ」
颯汰「誰にも言わないか?」
美涼「言わないよ!」
颯汰「・・・」
沙英「うん、約束するよ」
颯汰「わかったよ」
颯汰「実は」
颯汰「ここで砂金を集めてたんだ」
美涼「さ、砂金──!」
颯汰「バカ!声大きいって!」
美涼「ゴメン!見せて見せて!」
颯汰「ほら」
美涼「うわー、コレすごいじゃん!」
颯汰「だろ!」
沙英「・・・」
美涼「お姉ちゃんヤバみだわ!」
美涼「ん?どったの固まって!?」
沙英「え──っと・・・」
沙英「言いにくいんだけど」
沙英「コレは砂金じゃないよ」
「えぇ!」
沙英「似てるけどコレは雲母といって別物」
沙英「その証拠にほら指で擦るとバラバラに」
沙英「水に浮かべるとユラユラと落ちていく」
沙英「コレは雲母の特徴なのよ」
颯汰「・・・」
美涼「そ・・・颯汰バカじゃなーい!」
美涼「琵琶湖に砂金があるわけないじゃん!」
颯汰「お前さっき信じてだろうが!」
美涼「聞き間違いじゃないのー?」
沙英「・・・」
美涼「なんか疲れた、先に帰るね!」
沙英「あっ」
沙英「ご、ごめんね颯汰くん」
颯汰「いや・・・別に気にしてませんから」
沙英「・・・」
颯汰「・・・」
沙英「なんで砂金を集めようと思ったの?」
颯汰「いや・・・その──」
沙英「答えづらかったらいいの」
颯汰「誰にも言わない?」
沙英「もちろんだよ!」
颯汰「美涼にもだよ!」
沙英「絶対言わないよ!」
颯汰「・・・」
颯汰「妹がいるんだけど」
颯汰「レジンで固めてアクセサリーを 作ってあげようと思って」
沙英「そうなんだ」
颯汰「でも偽物なんかいらないよね」
沙英「颯汰くん」
沙英「そんなことない」
沙英「たとえ偽物でも自分の為に」
沙英「一生懸命になってくれた事が嬉しいし」
沙英「でも、やはり気になるなら」
沙英「はちまき石なんかはどうかな!?」
颯汰「はちまき石?」
沙英「『論より証拠』 ついてきて!」
颯汰「ま、待ってくださいよー」
〇海岸の岩場
沙英「えーっと」
颯汰「ハァハァ・・・」
沙英「あったあった!」
沙英「これがはちまき石だよ!」
沙英「石の周囲を白や黒の筋が」
沙英「はちまきのように 一周している石のこと」
颯汰「へぇー」
沙英「昔は幸運のお守りとして 持ち帰って良かったけど」
沙英「販売する不届きものが現れたの」
沙英「それで家に置くと 病人が絶えないとか話が作られ」
沙英「持ち帰りは禁止になった」
颯汰「ええっ!ダメじゃん」
沙英「でも大丈夫!」
沙英「あの草むらの中を見て!」
沙英「これぞ知る人ぞ知る!」
沙英「隠れパワースポット!」
沙英「松ノ原龍神の卵地蔵よ!」
颯汰「全然卵っぽくない」
沙英「と、思うでしょ?その石の後ろを見て」
颯汰「大きい卵みたいな石がある!」
沙英「そっちが本体か──い!ってね」
沙英「ここで願いを込め、はちまき石を置けば」
沙英「龍神様が厄災を取り除き 一回だけ願いだけを叶えてくれるの」
颯汰「!?」
沙英「プレゼントの代わりに」
沙英「地元の人でも殆ど知らない場所を 教えてあげるのはどうかな」
颯汰「こんな大事な場所を」
颯汰「ありがとうございます!」
〇海辺
あの日から僕はお礼に
掃除を手伝うことにした
美涼「なんであんたがいるのよ!」
颯汰「黙って掃除しろよ!」
〇海辺
砂浜にはペットボトルや缶や
ビニール袋が流れ着いてくる
〇海辺
時には変わった物も
〇海水浴場
1ヶ月程したある日──
颯汰「あっ!BBQしてる!」
沙英「私、禁止だと言うこと伝えてくる!」
美涼「あっ!姉ちゃん! 私、警備員さん呼んでくる!」
颯汰「待って!」
〇海水浴場
沙英「うっ、お酒臭い」
沙英「すいません!ここBBQ禁止なんです」
マナー違反おじさん「うん?そうなの? 火が消えるまで待ってね、ヒック!」
沙英「いや、消してください」
マナー違反おじさん「そんなに怖い顔して可愛い顔が 台無しだよ──っとと」
ムギュ!
マナー違反おじさん「おっと悪い! 意外と胸大きいねハハハ・・・」
沙英「キャ────!」
颯汰「おい!離れろ!」
颯汰「てめぇ!」
マナー違反おじさん「あ?何?」
美涼「警備員さん、この人、痴漢に暴行! 警察も呼んでください!」
マナー違反おじさん「できるなら婦人警官がいいなぁ、ヒック!」
美涼「このクソ中年!」
美涼「ふん!なめんなよ!」
美涼「お姉ちゃん!」
〇海水浴場
〇屋根の上
〇屋根の上
〇屋根の上
〇二人部屋
あの日から姉ちゃんは清掃に行ってない
美涼「姉ちゃん晴れたよ清掃は?」
沙英「うん、今日もいいや」
美涼「そう・・・」
〇海辺
美涼「なんだよ琵琶湖好きなんじゃないのかよ!」
美涼「ん?」
美涼「え!?」
美涼「1人で何してるの?」
〇二人部屋
沙英「・・・」
美涼「姉ちゃん」
美涼「次の晴れた日に琵琶湖に行こう」
沙英「・・・」
美涼「夕方でもいいから」
沙英「・・・」
美涼「今日、水泳場行ったら 颯汰1人で掃除してた」
美涼「あのさ」
美涼「行きたくない気持ちはわかるよ」
美涼「でも・・・」
美涼「このまま琵琶湖を嫌いにならないでよ!」
美涼「あんなに好きだったじゃない!」
美涼「生まれてずっと一緒に泳いだり」
美涼「砂でお山作ったりした思い出の場所を」
美涼「嫌なままで・・・ ここを離れたくないよぉ」
美涼「うわ──ん!!」
沙英「美涼!」
沙英「私、私・・・」
沙英「ごめん──」
沙英「・・・」
沙英「次の晴れた日に行こう」
美涼「うん・・・」
〇海辺の街
〇海辺
〇海岸の岩場
沙英「綺麗ね」
美涼「うん」
颯汰「ハァハァ」
沙英「颯汰くん・・・」
沙英「掃除サボってごめんね」
颯汰「・・・」
颯汰「美涼から引っ越すって聞きました」
颯汰「これ良かったら・・・」
沙英「え!!これ私に!?」
颯汰「宝石の中には雲母が入ってます」
颯汰「離れていても 心は琵琶湖と一緒ってやつですね」
沙英「颯汰くん・・・」
颯汰「美涼!」
美涼「何よ!」
颯汰「お前にも作ってるよ」
颯汰「本当はもっと前に渡したかった」
美涼「バカ──!」
美涼「颯汰のバカ──!」
美涼「うわ──ん!」
〇朝日
颯汰「僕はちまき石にお願いしたんです」
沙英「なんて?」
颯汰「またここで会えますようにって」
「うん」
沙英「あ、忘れてた!」
沙英「願った石の厄災を取り除くため」
沙英「琵琶湖に水切りするの」
颯汰「水切り?」
美涼「水面に向かって石を投げ跳ねさすの」
美涼「水面ギリギリを狙うんだよ」
颯汰「やってみる!」
颯汰「えい!」
投げた石は
水を切って3回跳ね
波紋ができた
まるで水面に映る
オレンジの道を
走っていくように見えた
美しくてさわやかな青春ストーリーでした。タイトル回収の仕方もおしゃれです!
琵琶湖って泳げるんですね…初めて知りました。
美人姉妹と海岸、少年の日の淡い思い出としては自分の理想形です。
懐かしいようなほっこりするような気持ちで読みましたが、これを恋物語としてみるなら、少年はどちらを選ぶのでしょう。気になるところです。
オレンジロード、タイトルはそういう意味だったのですね!心温まるびわ子さまらしいお話に胸がほっこりしました☺️二人のために琵琶湖らしいアクセサリー作ってあげたのも素敵です✨
一度、冬にしか行ったことがないのでまた行ってみたいです〜琵琶湖👍