エピソード1(脚本)
〇おしゃれなリビングダイニング
石黒はるか「あなた、おかえりなさい」
石黒あや「お父さん、おかえりー」
石黒徹「ああ、ただいま」
石黒徹「はい、お土産」
石黒はるか「これ、駅前のケーキ屋の・・・?」
石黒あや「しかも、さっきお母さんと食べたいねって話してたやつ!」
石黒徹「そうだったのか? ならちょうどよかった」
石黒徹「帰りに覗いたら美味しそうだったから ついね」
石黒はるか「嬉しい・・・! いつもありがとう」
石黒はるか「ご飯の後みんなで食べましょう」
石黒はるか「すぐ用意するから、ちょっと待っててね」
石黒あや「お父さんのこういうところ、 ホントにすごいよね」
石黒あや「なんでいっつも お母さんの欲しいものが分かるの?」
石黒徹「それは、お母さんとお父さんが 心で通じ合ってるからに決まってるだろ」
石黒あや「はいはい、ごちそうさま」
石黒あや「そうじゃなくて、こう・・・」
石黒あや「夫婦円満の極意! みたいのないの?」
石黒徹「そうだな・・・ まああえて言うなら・・・」
石黒徹「どんな時でも お母さんの言葉を聞き逃さないこと、だな」
石黒あや「ふーん・・・なんか案外普通の答えだね」
石黒徹「その普通が大事なんだよ」
石黒徹「円満な夫婦関係は 日々の信頼の積み重ねなんだからな」
石黒あや「ふーん・・・」
石黒徹「さて、じゃあお父さんは お母さんを手伝いにいこうかな」
石黒あや「いいよ、手伝いなら私が行くから」
石黒あや「だってお父さんが行くと、 2人でイチャイチャするから ご飯遅くなるんだもん」
石黒あや「だから、お父さんは ご飯までゆっくりしてて」
石黒徹「そ、そうか? 悪いな」
石黒徹「(夫婦円満の極意か・・・・・・)」
石黒徹「(まあ、本当はあるんだけどな)」
〇ホテルの部屋
――今日の早朝 05:30
石黒徹「(そろそろか)」
起床する時間より30分前──
妻には、あるクセがある
石黒はるか「んー・・・ふふっ、しあわせぇ・・・」
石黒徹「(口がもぐもぐ動いてる・・・ ってことは、食べ物か?)」
石黒徹「なんで幸せなんだ?」
石黒はるか「ケーキがおいしいからぁ・・・」
石黒はるか「駅前の・・・けーき・・・」
石黒徹「駅前・・・ああ、あの店か」
石黒徹「どのケーキを食べてるんだ?」
石黒はるか「新しい・・・いちごの、パイの・・・」
目覚める30分前
よく寝言を言うのが彼女の昔からのクセだ
内容は、彼女が夢の中で見ている
『その時の願望』がもっぱら
それに最初に気付いたのは結婚する前
付き合い始めたばかりの頃
最初はただの寝言だと思っていたが、
それが彼女の願いだと気付いてからは
俺たちの仲は順調そのものだ
それもそのはず
彼女へのプレゼントも、
プロポーズの言葉もシチュエーションも、
全て彼女の希望のままなのだから
石黒徹「じゃあ、今日帰りに買ってくるな」
石黒はるか「ふふっ、しあわせぇ・・・」
石黒はるか「でも一番は、 徹くんと一緒にいるのが幸せなの・・・」
石黒徹「(こう言ってくれるから、 ついコイツの願いを 叶えてやりたくなるんだよな)」
〇おしゃれなリビングダイニング
こんなこと言ってたぞと
教えてやりたい気もするが、
もう少しだけ秘密にしておこうと思う
まだしばらくは、
気が利く夫のだと思われていたいから──
〇L字キッチン
石黒はるか「夫婦円満の極意?」
石黒あや「うん。何かある?」
石黒はるか「うーん・・・隠し事をしないこと、かな」
石黒あや「えー、それだけ?」
石黒あや「じゃあ、イイ旦那を捕まえる秘訣は?」
石黒はるか「どうしたの? そんなこと聞くなんて」
石黒あや「だって、私もお父さんみたいな 気が利く旦那さんが欲しいもん」
石黒あや「お父さんは心が通じ合ってるからって 言うけど、絶対それだけじゃないでしょ?」
石黒はるか「ふふっ、そんなこと言ってたの?」
石黒はるか「嬉しいから、お父さんのハンバーグ いつもより大きくつくっちゃお」
石黒あや「はいはい、ごちそうさま 2人ともすぐ惚気るんだから」
石黒あや「で? 秘訣は?」
石黒はるか「そうねえ・・・」
石黒はるか「妻の寝言にも耳を傾けてくれる人を選ぶ事 かしらね」
か、確信犯?!笑
旦那さんは疑う余地もなく寝言だと思って聞いて…純粋に信じていたけど、奥さんはまさかの知っていて…笑
でもそのバランスが丁度良いのかもしれませんね!
とても心温まる展開で、ラストの妻の言葉でぐんと深みが増しますね。非科学的な”心が通じる”ではなく、お互いを尊重した結果”心が通じる”この夫婦はステキですね。
お母さんもお父さんもかわいいです〜。秘密なんてなくても仲良くいられそうですけど、秘密にしておきたい気持ちがかわいいですね。私も良い恋をしたみたいで気分が上がりました。