ピーちゃんと私たちと(脚本)
〇女の子の一人部屋
笹川ハルカ「むにゃむにゃ・・・ あと5分・・・」
笹川ハルカ「──今何時!?」
笹川ハルカ「きゃああー、もうこんな時間!」
〇一階の廊下
〇明るいリビング
笹川ハルカ「もーお母さん なんで起こしてくれなかったのよー!」
笹川ハルカ
中学2年生
笹川ヨシカ「おはようハルカ 何度も起こしたわよー?」
笹川ヨシカ
主婦
笹川ハルカ「起きるまで起こしてくれなきゃ意味ないじゃん! もぉー遅刻だよ~」
笹川ユウキ「母さん何度も起こしてたぜ ねーちゃんが起きないのが悪いんじゃん」
笹川ユウキ
小学5年生
笹川ハルカ「え、そうなの!?」
笹川ユウキ「どーせ昨日も夜更かししてたんだろー」
笹川ハルカ「そ、そんなことな──」
笹川ユウキ「動画サイトでも見てたんだろ~」
笹川ハルカ「コラッ、姉に向かって生意気なー!」
笹川マサト「おはよう、ハルカ」
笹川マサト
会社員
笹川ハルカ「あ、お父さんおはよ!」
笹川ハルカ「ねぇ聞いてよユウキがまた生意気な──」
「『ハルカは昨夜2時過ぎまで起きていた』」
「『私はそれを見ていたぞ』」
「『人間には8時間の睡眠が必要とされると聞く』」
「『よってハルカの睡眠時間が足りていないのではないかと私は思うのだ』」
笹川ハルカ「ピーちゃん! 見てたの!?」
ピーちゃん
セキセイインコ
・・・セキセイインコ?
ピーちゃん「それより、急いだ方が良いのでは無いか?」
笹川ハルカ「あ、そうだった!」
笹川ユウキ「ピーちゃんの言う通り! 急いだ方がいいぜー!!」
笹川ハルカ「もー、ユウキ、生意気!」
「ユウキくーん 学校いこー!」
笹川ユウキ「あ、やべ! もう来たのかよアイツ!」
「もー、遅刻しちゃうよー?」
小川ヒナ「入りますねー? おじゃましまーす」
小川ヒナ
小学5年生
ユウキの幼なじみ
小川ヒナ「みなさん、おはようございまーす」
小川ヒナ「ピーちゃんも、おはよ 今日もかわいいねー」
ピーちゃん「ピー」
ピーちゃん
家族以外の前ではセキセイインコ
笹川ハルカ「お、おはよーヒナちゃん」
小川ヒナ「あれ? おねーさん、顔怖い・・・? なにか怒ってました?」
笹川ハルカ「そ、そんなことないよ! ほらっ、全然!」
笹川ユウキ「あのな、ヒナ ねーちゃんさっきまで俺に──」
笹川ハルカ「余計なこと言わないの!」
小川ヒナ「? よく分からないけど遅刻しちゃうよー? 早く行こっ」
笹川ユウキ「じゃ、行ってくるぜー ねーちゃん遅刻すんなよ!」
笹川ハルカ「もーいつも生意気なん──」
笹川ハルカ「って そんなこと言ってる場合じゃなかった!! 急げ急げー!」
〇シックな玄関
笹川ハルカ「じゃ、行ってきマース!」
ピーちゃん「ピピッ」
リビングから飛んできたピーちゃんが
私の肩にちょこんととまった
笹川ハルカ「あれ、ピーちゃん 今日はもしかして私と行くの?」
ピーちゃん「ピピッ!」
笹川ハルカ「そっか それじゃ、一緒に行こっか!」
〇通学路
笹川ハルカ「急げー」
お隣さん「ハルカちゃんおはよう」
笹川ハルカ「お隣のおじいちゃん おはよー!」
お隣さん「今日もピーちゃんと一緒にかい?」
笹川ハルカ「うん!」
お隣さん「学校頑張ってなー」
笹川ハルカ「ありがとー」
八百屋「おはようハルカちゃん 今日はピーちゃんも一緒か?」
笹川ハルカ「八百屋のおじさんもおはよ! 今日もアロハなんだね」
八百屋「おうよ! アロハは八百屋の命!」
笹川ハルカ「あはは それじゃ行ってきます!」
八百屋「おう 車に気を付けてな」
原島サトル「おっす、今日も遅刻か?」
笹川ハルカ「サトル! お、おはよう」
原島サトル「お前が朝起きられないのは昔からだよなー」
原島サトル
ハルカの幼なじみ
笹川ハルカ「そ、そんなこと・・・」
笹川ハルカ「わ、私! 急いでるから行くね!」
原島サトル「あんまり急いで転ぶなよー」
笹川ハルカ「ま、またね」
ピーちゃん「『人間の平熱は36.5℃』」
笹川ハルカ「な、なに!?」
ピーちゃん「私の足から伝わる今のハルカの体温は──」
ピーちゃん「37度を超えているように感じられる」
笹川ハルカ「!!」
笹川ハルカ「そ、そんなことな──」
ピーちゃん「やはり、夜更かしをしたからカゼを引いたのではないか?」
笹川ハルカ「いやっ、違うから! 大丈夫だから!」
笹川ハルカ「ピーちゃんの勘違い! うん、勘違いよ! うんうん!」
ピーちゃん「そう・・・なのだろうか」
笹川ハルカ「そ、そうだよ! そんなことより──」
笹川ハルカ「急がなきゃ! 遅刻する~!」
笹川ハルカ「ほらっ、走るよ!」
ピーちゃん「勘違い──か」
〇通学路
笹川ハルカ「急がなきゃー」
ピーちゃん「ハルカ、なぜ急ぐ?」
笹川ハルカ「遅刻だからだよー!」
ピーちゃん「それは理解している」
ピーちゃん「だが、それは良くない事なのか?」
笹川ハルカ「そうだよ! 始まる時間が決まってるの!」
ピーちゃん「その時間は誰が決めたのだ?」
笹川ハルカ「誰って──が、学校の先生、とか?」
ピーちゃん「先生は時間を好きに決められるのか」
ピーちゃん「なら先生に頼んで定刻を遅らせて貰えば良い」
笹川ハルカ「そんなこと出来るワケないよ!」
ピーちゃん「出来ないのか?」
ピーちゃん「そもそも、なぜ遅刻してはいけないのだ?」
笹川ハルカ「なぜって・・・かんがえたこともなかったけど──」
笹川ハルカ「・・・そう決まってるから・・・かな?」
ピーちゃん「遅刻するとどうなる」
笹川ハルカ「私が怒られるの!」
ピーちゃん「なぜ怒られるのだ」
ピーちゃん「ハルカが遅刻すると学校に損害が発生するのか?」
笹川ハルカ「そ、そんなことは無いけど」
ピーちゃん「ならなぜ怒るのだ」
笹川ハルカ「んー 言われてみればなんでだろ」
笹川ハルカ「・・・立派な、時間を守れる大人になるため?」
ピーちゃん「ほう」
ピーちゃん「時間を守れれば立派な大人なのか」
笹川ハルカ「それだけじゃ無いと思うけど」
笹川ハルカ「そういうのも必要なのかも?」
ピーちゃん「大変だな、人間の社会は」
笹川ハルカ「そう・・・かもね」
ピーちゃん「私ならこんなによく晴れた日は 自由に、ゆったりと飛びたいと思うけどな」
笹川ハルカ「え・・・?」
起きてから今まで
時間に追われて空を見る余裕なんて無かった
ふと見上げた空は、青々とよく晴れていた
笹川ハルカ「──ほんとだ」
ピーちゃん「気持ちの良い空だ」
ピーちゃん「こういう空を見るのは立派な大人になるのには関係ないのか?」
笹川ハルカ「・・・」
笹川ハルカ「ねぇ、ピーちゃん」
ピーちゃん「なんだ?」
笹川ハルカ「今日は、ゆっくり歩いて行こっか」
ピーちゃん「いいのか? 立派な大人になれなくなるぞ?」
笹川ハルカ「いいのいいの こんなに気持ちのいい日だもん」
ピーちゃん「そうか」
笹川ハルカ「うんっ!」
「時にハルカ」
「朝、数名とあいさつを交わしていたが」
「若い男の時だけ顔が赤くなっていたが」
「!?」
「アレはいったいなんだったのだ?」
「あの時の体温上昇はやはり、私の勘違いではないように思うが──」
「──そ、そ、それは・・・その」
「体調が悪いのなら家に帰った方が──」
「だだだだだ大丈夫だから!」
「ではなぜあの若い男の時だけ──」
「うるさいうるさいうるさーい!」
〇教室
先生「──で、理由を聞こうか」
笹川ハルカ「あ、あのーそのー・・・」
笹川ハルカ「あんまりよく晴れてたからついゆっくりー・・・なんて あはは・・・」
先生「バッカもん! ほら、早く席に座れ! 授業始まってるぞ」
笹川ハルカ「は、はいー! すみませんでしたぁー!」
笹川ハルカ「ふー やっぱり怒られた」
ピーちゃん「大変だな、人間は」
笹川ハルカ「怒られちゃったからねー・・・たはは・・・」
笹川ハルカ「でもね、ピーちゃん」
笹川ハルカ「そんなに大変でもないよ」
笹川ハルカ「私は」
家族以外の人の前ではインコのままでいるピーちゃんが可愛かったです。体温の上昇や赤い顔を指摘するピーちゃんに「人間は恋をする生き物なんだよ」と説明したら「大変だな、人間は」って言われそうですね。
インコ普通に喋ったたのもおもしろかったけど
あんなに可愛い見た目をしているのに
割と何でも思った事をズバズバ言うギャップも良かったです🤣
この先どんな感じになって行くのか続きが気になりました😄
急いでる時、焦ってる時、そんな時こそゆっくり進もう、みたい言葉があったような気がします…。まさにその通りだと思います!
インコちゃんが流暢な日本語喋るのは想像したら面白かったです笑