麺は打ち切るものだぜ!(脚本)
〇田舎駅のロータリー
タケシ「三年ぶりか・・・」
タケシ「久しぶりに帰ってきたぜ」
〇田舎町の通り
タケシ「しかし、ちっとも変わらねえな」
タケシ「のどかだ・・・」
タケシ「心が休まるぜ」
〇西洋の城
心休まらない建物が目の前に!
タケシ(何だこれは・・・)
ふじお「おお、タケシ、よく帰って来てくれた」
ハツエ「そうなのよ、うちの店の前にできちゃったのよ」
〇雷
ハツエ「巨大資本をバックに持つラーメン屋が!」
タケシ「なんですと!」
〇西洋の城
これラーメン屋だったのか!
てっきりラブ○ホかと思ったぜ!
田舎にそびえ立つ城といったら、大体そんなもんだしな!
※個人の感想です
タケシ「しかし、巨大資本といって、たかがラーメン屋にこんな豪奢な物を建てるのか・・・」
ハツエ「そうなのよ」
ハツエ「これが、ラーメンをテーマにした一大アミューズ麺トパーク──」
ハツエ「「ネズミ―ランド」よ!」
よくその名前で保健所がOK出したな
ハツエ「キャラクターのムッキーも大人気でね」
〇メリーゴーランド
ムッキー
〇渋谷の雑踏
全国から集まった人達で大行列だし
もはや、行列の域を超えて大都会が出来てるじゃねえか
〇荒廃した街
それに伴って、治安も悪くなるし
佐宇座くん「ヒャッハー!水だ、水ダァ!」
自居土くん「湧き水をよこせぇぇ!!」
もう、何でもアリだな
〇西洋の城
ハツエ「地元の名水も使い尽くされてね」
ハツエ「そのせいで、うちのスープの味も落ちてしまって」
ふじお「余計に閑古鳥なんじゃ」
ふじお「世界一のラーメン職人になると言って、修行に出たお前を」
ふじお「道半ばで呼び戻すのは心苦しいんじゃが」
ふじお「どうか、お前の培ってきたその技術で」
ふじお「我が家を助けてくれんかのぅ!オヨヨ・・・!」
タケシ「親父・・・」
タケシ「・・・」
タケシ「分かったぜ」
タケシ「二週間くれ」
タケシ「二週間後には」
タケシ「この巨大ラーメン屋に対抗できる」
タケシ「革新的なタケちゃんラーメンを作ってやるぜ!」
「おお、我が息子よ!」
「ありがたや、ありがたや・・・」
タケシ「さあ、二人共」
タケシ「とりあえず家に戻ろうぜ」
タケシ「久しぶりに、二人が作るラーメンを俺に食わしてくれよ!」
ふじお「おお、そうじゃな」
〇ラーメン屋
しかし、対比えぐいな!
よくこれで巨大資本にケンカ売る気になったもんだ
〇空
〇古い畳部屋
タケシ(とは言うものの)
タケシ(全然アイデアが浮かばねえ)
タケシ(どうすれば皆の興味を惹きつけられる ラーメン屋ができるんだ)
タケシ(・・・)
タケシ「タピオカ・・・」
タケシ「豚骨ラーメンに浮かせてみるか」
タケシ(・・・)
タケシ「いやぁ、無いわww」
タケシ(しかし、あれ、なんであんなに流行ったんだろうな)
タケシ(大して味もしないのに)
タケシ(若い奴らって新しいもの好きだからな)
タケシ(好奇心旺盛っていうか・・・)
タケシ「・・・!」
タケシ(好奇心、好奇心・・・)
タケシ「これだ!!」
〇空
2週間後
〇ラーメン屋のカウンター
タケシ「ヘイ!ラッシャイ!」
ふじお「おお!初日というのに、結構流行ってるじゃないか」
ハツエ「お客さんのワクワク感が伝わってくるわ!」
タケシ「お、二人共、ラッシャイ!」
タケシ「どうだい?俺が手掛けた店は!」
タケシ「人々の好奇心を刺激しまくってるだろ?」
タケシ「この圧倒的な存在感!」
タケシ「ワクワクすっぞ!」
ふじお「確かに」
ふじお「存在感はあるんじゃが」
ふじお「なんだね?この、どんぶりに穿かせている布は・・・?」
タケシ「オウ!」
タケシ「みんな大好き、好奇心の象徴!」
〇黒
タケシ「パンティーだぜ!」
・・・
〇ラーメン屋のカウンター
ふじお「よく見ると、店員さんが頭に巻いているのって」
ふじお「バンダナじゃ・・・」
タケシ「オウ!」
〇黒
タケシ「パンティーだぜ!」
・・・
〇ラーメン屋のカウンター
ふじお「お客様にお出ししている、あのおしぼり・・・」
タケシ「オウ!」
タケシ「それは」
〇黒
タケシ「適温に蒸したパンティーだぜ!」
・・・だろうね
〇ラーメン屋のカウンター
タケシ「清潔感にこだわって、抗菌素材、純白のものを用意したぜ!」
「・・・」
〇黒背景
程なくして、タケちゃんラーメンはPTAからの一斉攻撃により潰れた
というか、タケちゃんは警察に捕まった
〇実家の居間
ふじお「くそう!あのバカのせいで借金が増えちゃったよ!」
ふじお「主人公みたいに登場したと思ったら、とんだザコキャラじゃったわ!」
これ以後、タケシが物語に登場する事は無かった
無茶しやがって・・・
〇空
そして、後日
〇田舎駅のロータリー
ミヨ子「帰ってきたわ」
ミヨ子「7年ぶりね」
以下、略!
〇西洋の城
ふじお「ミヨ子ぉ~、やはり頼りになるのはお前だけじゃぁ~」
ふじお「ヌードゥル・コンサルタントとしてグローバルに活躍しておる、その手腕でわしらを助けてくれえぇ~!!」
ミヨ子「パパ・・・」
ミヨ子「・・・」
ミヨ子「分かったわ」
ミヨ子「私に任せて」
ミヨ子「決戦は2週間後よ!!」
〇空
〇古い畳部屋
ミヨ子「とは言っても」
ミヨ子「どうしたものかしら」
ミヨ子「どうすれば人々から支持される、失敗しないお店が作れるのかしら」
ミヨ子「はぁ・・・」
手近にあった雑誌を読むともなく、パラパラとページをめくっていると
ミヨ子「ふふw」
〇貴族の応接間
このブレスレットを身に着けたら
宝くじが当たって億万長者になれました!
モテモテのウハウハです!
〇古い畳部屋
ミヨ子「何?この広告、ハハッ」
ミヨ子「こんな夢みたいな話、実現する訳・・・」
ミヨ子「・・・!」
ミヨ子「夢、実現、夢、実現・・・」
ミヨ子「こ、これよ!!」
〇空
二週間後
〇ラーメン屋のカウンター
ミヨ子「いらっしゃいませ♪」
ふじお「なんだ、この行列は!すごいよ、ミヨ子!」
ふじお「下ネタばかりのあのバカと違って、なんだか客も店構えもストイックな雰囲気でいいよ!イイ!」
ミヨ子「でしょう?パパ♪ママ♪」
ミヨ子「では、私の自信作をお召し上がりください♪」
「じゃあ、いただきます」
「ハウアッ!!」
〇幻想空間
舌の上を駆け上がる、初恋のような甘酸っぱい刺激!
胸が苦しくなる程に、ほろ苦く混じり合う、初・体・験・食感!
〇ラーメン屋のカウンター
「うーん!アゴが落ちる程クソマズイ!」
ミヨ子「そうよ」
ミヨ子「これが私の考えた」
ミヨ子「ラーメンの新機軸」
〇落下する隕石
ミヨ子「ダイエット・ラーメン、ミヨザップよ!」
「み、ミヨザップ!!」
〇ラーメン屋のカウンター
ミヨ子「うちのラーメンを食べるとね」
ミヨ子「味覚障害や、胸やけ」
ミヨ子「下痢による強烈な脱水症状を引き起こし」
ミヨ子「何も食べる気が失せて」
ミヨ子「結果的に、ひどく痩せるのよ!」
お前・・・本当にコンサルなのか?
ミヨ子「ちなみにこのスープは、4歳になる私の娘が作ってるわ」
ミヨ子「そう!まさに泥遊びレベルの味なのよ!」
ミヨ子「オーッホッホッホ!」
「・・・」
〇公園の砂場
ぐちゅぐちゅ~煮込んでぇ~♪
ハイ!できましたぁ♪
〇ラーメン屋のカウンター
「・・・オエッ」
ミヨ子「今も娘は、裏の公園で、スープ作りに勤しんでいるわ」
ミヨ子「パパ、ママ」
ミヨ子「なぜこんな味で、ミヨザップが繁盛しているのか」
ミヨ子「お分かりかしら?」
ハツエ「客に毒を盛っているとしか、お分かりではないわ」
ミヨ子「世の中には、ラーメン好きな人間と等しく」
ミヨ子「いえ、もしかしたらそれ以上に」
ミヨ子「ダイエットに興味がある人達がいるのよ!」
ミヨ子「本屋でラーメンとダイエット、関連本の数を比べても、その差は歴然」
ミヨ子「ダイエットへの関心の方がはるかに高い!」
ミヨ子「そう」
ミヨ子「潜在的な顧客数の圧倒的な多さ」
ミヨ子「そして「痩せる」という、お客様のニーズに確実にお応えする、という点で」
ミヨ子「ミヨザップは他店の追随を許しません!」
ミヨ子「それに、うちのラーメンの味は」
ミヨ子「二度とラーメンが食べられなくなるトラウマを植え付けるのよ」
ミヨ子「だから、リバウンドも安心よ!」
ミヨ子「結果にコミットする、それが、我がミヨザップ!」
ミヨ子「どうでしょう!」
ふじお「なんか、食に対する考えが根本的に間違っているように思えるが・・・」
ふじお「不思議と一理あるような、ないような」
客A「うう、不味い」
客B「も、もう一杯」
客C「やっと目標達成したぞ・・・」
繁盛はしているが、店内の雰囲気は重苦しい
苦悶の表情を浮かべながらも、麺をすすっているお客達
一体、なんだ?この光景は?
何がここまで、彼らを駆り立てているのだ?
その答えは──
ふじお「・・・」
ふじお「これは」
ふじお「「夢」だ!」
ふじお「この苦しみの向こうにある」
ふじお「ナイスバディという、ホリゾンタル・グレイズ(憧れ)」
ふじお「そこに向かって箸を進めるその想い──」
ふじお「それこそが、このラーメンが食べさせているもの」
ふじお「味では無いのだ」
ふじお「これは」
ふじお「「夢」を食べさせている、という事かぁ!!」
ミヨ子「フフ、お分かりになられたようで」
ふじお「あ、あっぱれだよ!ミヨ子!!」
〇綺麗な病室
程なくして、客から入院患者が続出した事で、ミヨザップは潰れた
というか、メチャメチャ訴えられて、天文学的に借金が増えた
〇ラーメン屋
これは
巨大資本に対抗するとかいう前に
人知れず自滅した、ある一家の奮闘の物語
ふじお「色々あったな・・・」
ハツエ「でも頑張ったわ」
ミヨ子「夢は実現しなかったけど・・・」
ハツエ「悔いは無いわ」
ふじお「タケシ・・・」
ふじお「好奇心だけの向こう見ずな息子よ」
ハツエ「ありのままでいいのよ」
ふじお「ただ、ラーメンを愛する」
ふじお「その気持ちがワシら一家の絆じゃ・・・」
ふじお「敗者は去るのみ」
ふじお「では、行くかの・・・」
その時
ミヨ子「きゃあ!」
風に舞って来た一枚のチラシ
ハツエ「お父さん!これ!」
ラーメン・バトル選手権!
ネズミーランド主催
優勝賞金 10億円!
参加店、募集!
ふじお「なんじゃと・・・!」
ミヨ子「じゅじゅじゅ、十億円だって!!」
「・・・」
「俺たちの戦いはこれからだ!!」
─ 未完 ─
懲りないね、ホント・・・
〇草原
〇西洋の城
ムッキー「フフフ」
麺どくさい家族に麺くらって麺タルをやられてしまいした。塀の中のタケシにパンティー入りラーメンを差し入れしたくなるような素敵なファミリー・ストーリーでしたね。
私もラーメンが好きで、その発想力や創意工夫も合わせて楽しんでます。だからこそ、本作に出てくるラーメンには感動を覚えながら爆笑してましたwwwまさかのパンティ!
アイデアの奔放さはさておき、なんだかんだラーメンを売るという情熱が軸になっているところが本当におもしろいです! これからラーメン屋さんを目指す方には、役にたたない!?かもしれませんが!!