〇渋谷駅前
　　突然だが
　　私は『見える』人間だ
　　幽霊、妖怪、神様
　　そういった存在を見ることが出来る
　　そう言う家系らしい
　　だから、今更どんな幽霊が出ても
　　驚くことなんてないと思ってたんだけど―
マッチョな幽霊「がんばれぇええ!! 負けぇえるなぁ!!」
レイコ「やばぁ」
　　エアギターをしながら歌う
　　とんでもない筋肉幽霊なら話が別だった

〇渋谷駅前
マッチョな幽霊「お前の鼓動はぁ♪ まだ止まっちゃいないんだろぉ♪」
レイコ（ほ、ほんとに幽霊？）
レイコ（足は透けてるけど）
レイコ（でも、元気すぎるでしょ）
レイコ（普通、幽霊って）
幽霊Ａ「─」
　　あんなのとか
幽霊Ｂ「ぁー」
　　そんなのとか
　　ちゃんと死んでる感じがするのに
　　あいつは
マッチョな幽霊「がんばれぇえ!! 負けえるなぁああ」
レイコ（メチャクチャ生き生きしてる）
レイコ（初めて見たあんな奴・・・）
マッチョな幽霊「─」
レイコ（ん？）
レイコ（なんで―）
マッチョな幽霊「・・・」
レイコ（うわっ）
レイコ（見てるのバレた？）
マッチョな幽霊「お前」
レイコ（無視 無視無視無視）
レイコ（下手に反応するとどうなるか）
レイコ（とにかく無視）
マッチョな幽霊「・・・」
レイコ（?）
マッチョな幽霊「よっし！」
マッチョな幽霊「俺の歌を聞きな!!」
レイコ（!?）
マッチョな幽霊「がんばれぇええ!!」
レイコ（!?!?）
マッチョな幽霊「負けえるなぁああ」
マッチョな幽霊「その魂に燃える意志がまだあるなら！」
マッチョな幽霊「さぁ目を開いて！一歩前へぇ～！」
レイコ「・・・」
レイコ（終わった？）
マッチョな幽霊「闇がうごめくまーちで」
レイコ（Ａメロに入りやがった!?）
レイコ（クソッ！）

〇センター街

〇モヤイ像

〇繁華な通り
レイコ「・・・」
マッチョな幽霊「がんば―!!」
レイコ「うるさあああい!!」
レイコ（し、しまった！）
レイコ（つい大声を・・・）
会社員「なんだぁ？」
学生Ａ「こわ・・・」
レイコ（チッ）
レイコ「こっち」
マッチョな幽霊「ああ？」
レイコ「いいからこっち来て！」
マッチョな幽霊「お、おう」

〇ビルの裏
レイコ「はぁ～」
レイコ「で？なんの用？」
マッチョな幽霊「ああん？」
レイコ「さんざん付きまとって 何の用かって聞いてるの！」
マッチョな幽霊「?」
レイコ「早く答えて！」
マッチョな幽霊「いや、別に用なんてねぇよ」
レイコ「はぁ!?」
マッチョな幽霊「俺はただお前が ツマンナそうな顔してるから」
マッチョな幽霊「元気づけてやろうとしただけだ」
マッチョな幽霊「この俺の歌でな!!」
レイコ「──」
レイコ「意味が」
レイコ「分かんないんだけど」
マッチョな幽霊「何が？」
レイコ「私が『見える』人間だから 追いかけて来たんじゃないの？」
マッチョな幽霊「違うが」
レイコ「えぇ・・・」
レイコ「ほ、ほんとにそれだけ？」
マッチョな幽霊「ああ」
レイコ「他になんかないの？」
マッチョな幽霊「他にって？」
レイコ「ほら！」
レイコ「やり残したことが～とか」
レイコ「この世に未練が～とか」
レイコ「普通、幽霊って見える人間に会ったら」
レイコ「そんな感じの手伝いを 頼んでくるもんじゃないの!?」
マッチョな幽霊「バカ言うな！」
レイコ「はぁ!?」
マッチョな幽霊「俺はたかだか幽霊になっただけだ！」
マッチョな幽霊「他人の力なんて借りるつもりはない！」
マッチョな幽霊「俺の夢は！」
マッチョな幽霊「俺自身の力で叶える!!」
レイコ「──」
レイコ（こいつ）
レイコ（急に夢とか）
レイコ（ハズイ奴・・・）
レイコ（でも・・・）
マッチョな幽霊「ふっ」
マッチョな幽霊「嬢ちゃんも下ばっか向いてんなよ」
マッチョな幽霊「ツマンねー顔してるより 元気な顔の方が似合ってるぜ」
マッチョな幽霊「じゃあな」
レイコ「ちょっ」
マッチョな幽霊「ん？」
レイコ「あの」
レイコ「あんたの」
レイコ「あんたの夢って」
レイコ「なに？」
マッチョな幽霊「俺の夢？」
マッチョな幽霊「俺の夢はな」
マッチョな幽霊「都会でＢＩＧになって！」
マッチョな幽霊「俺の歌で！」
マッチョな幽霊「全人類を元気にすることだ!!」
マッチョな幽霊「あばよ！」
レイコ「なに」
レイコ「あいつ」

〇黒背景
　　夢
　　夢・・・
？？？「私も」
？？？「私も家族の皆みたいに」
？？？「立派な対魔師になりたい！」
父親「・・・」
父親「無理だ」
父親「お前には『見る』力があっても」
父親「『祓う』力がない」
父親「触れることも、干渉することも出来ない」
父親「だから」
父親「お前は対魔師にはなれない」
？？？「で、でも!!」
父親「無理な物は無理だ」
父親「あまりに危険すぎる」
？？？「・・・」
？？？「でも」
？？？「でも私」
？？？「昔からずっと―」

〇教室
レイコ「ッ！」
レイコ（ゆ、夢）
レイコ（クソッ）

〇渋谷駅前
レイコ「・・・」
マッチョな幽霊「いつかの光求めて！」
マッチョな幽霊「まだ旅を続けているぅ！」
レイコ「あいつ」
レイコ「まだいる」
会社員「─」
学生Ａ「─」
幽霊Ｂ「ゥー」
レイコ「誰も聞いてないのに」
レイコ「バカな奴」

〇渋谷駅前

〇渋谷駅前

〇渋谷駅前

〇一人部屋
　　カキカキ
レイコ「・・・」
レイコ「がんばれー」
レイコ「まけーるなー」
レイコ「クソッ」
　　コンコン
「レイコ？ ちょっといい？」
レイコ「どうぞ」
レイコ「なに、お姉ちゃん」
ユウコ「うん」
ユウコ「ちょっとお姉ちゃん 仕事で家を空けるから」
ユウコ「数日の間、一人で留守番お願いね」
レイコ「ん」
ユウコ「あっ、あと」
ユウコ「今日ぐらいに『空亡（くうぼう）』が 来るみたい」
ユウコ「人には無害だけど、一応知っておいて」
レイコ「うん」
ユウコ「・・・」
ユウコ「それじゃ気を付けてね」
ユウコ「行ってきます」
レイコ「・・・」

〇黒
　　空亡
　　神様たちが作った
　　全自動浄化術式
　　闇の存在を魅了する漆黒の太陽が
　　夜間、町の上を飛び
　　魔の者を引き寄せ

〇白
　　一気に浄化する。
　　まぁ、知恵のある妖怪とかは
　　事前に逃げ出すから効かないらしいけど
　　でも、ただの幽霊相手なら効果は抜群だ。
　　そう
　　ただの幽霊相手なら―

〇一人部屋
レイコ「私には」
レイコ「関係ないし・・・」

〇渋谷駅前

〇一人部屋
レイコ「・・・」
レイコ「あーもう!!」

〇通学路
レイコ（空亡）
レイコ「もう来てる!?」
レイコ「クソッ」

〇開けた交差点

〇センター街

〇繁華な通り

〇池袋西口公園
レイコ「ちょっと!!」
レイコ「この！」
レイコ「なんか答えなさいよ！」
レイコ「ぐっ」
レイコ「ちょっと聞いてんの!?」
会社員Ｄ「ほにゃ？」
レイコ「あーいや、違くて」
レイコ「あっ」

〇線路沿いの道
レイコ「ぐぬっ・・・」
レイコ「ちょっと」
レイコ「あんた何やってんのよ」
レイコ「あんたには夢が」
レイコ「夢があんでしょ!!」
レイコ「死んでも諦められないような夢が!!」
レイコ「一人っきりで!!」
レイコ「誰にも聞こえなくても!!」
レイコ「それでも歌い続けるくらい!!」
レイコ「叶えたい夢があるんでしょ!!」
レイコ「なのに」
レイコ「なのに！」
レイコ「なのに!!」
レイコ「なにしてんのよ!!」
レイコ「全人類を元気にするんじゃなかったの!?」
レイコ「都会でＢＩＧになるって 言ってたじゃない!!」
レイコ「そのために！」
レイコ「そのために」
レイコ「そのために歌ってたんじゃ」
レイコ「なかったの？」

〇ビルの裏
マッチョな幽霊「ツマンネー顔してるより」
マッチョな幽霊「元気な顔の方が似合ってるぜ」

〇線路沿いの道
マッチョな幽霊「──」
レイコ「あんただってそうよ」
レイコ「・・・」
レイコ「──！」

〇渋谷のスクランブル交差点
レイコ「闇がうごめくまーちで」
レイコ「君は一人さまよおっている」

〇線路沿いの道
レイコ「いつかの光求めて！」
レイコ「まだ旅を続けているぅ！」
レイコ「誰もがみんな夢を描いてぇ」
レイコ「現実に押しつぶされてぇ」
レイコ「それでも！胸にやどおった小さな炎が！」
レイコ「俺たちを！何度でも！奮い立たせる！」

〇宇宙空間
レイコ「がんばれぇええ!! 負けぇえるなぁ!!」
レイコ「お前の鼓動はぁ！ まだ止まっちゃいないんだろぉ！」
レイコ「がんばれぇえ!! 負けえるなぁああぁ」
レイコ「その魂に燃える意志がまだあるなら！」
レイコ「さぁ、目を開いて！」
レイコ「一歩前へぇ～！」

〇見晴らしのいい公園
マッチョな幽霊「・・・」
マッチョな幽霊「やるじゃねぇか」
レイコ「!?」
マッチョな幽霊「また」
マッチョな幽霊「聞かせて―」
レイコ「──!!」
レイコ「ちょっと」
レイコ「なんで」
レイコ「なんでよ」
レイコ「こんな」
レイコ「こんなのって」
レイコ「ないでしょ・・・」

〇渋谷駅前
　　半年後ー
レイコ「いるわけないか」
レイコ「私もバカだな」
レイコ「?」
レイコ「!?」
「それじゃ」
「一曲目聞いてくれ！」

〇空
「頑張れ！負けるな!!」