反町第三小学校 中島先生と林先生の話(脚本)
〇散らかった職員室
林多恵「じゃあこれはどうでしょう 『鶴子の恩返し』」
中島さゆ「つるこ?鶴子ってなに?」
林多恵「鶴なんですよ。助けてくれた恩返しに『私は何もできませんが』と言って、一枚一枚と着ているものを脱いでいくんです」
中島さゆ「待ってよ、なんで脱ぐの?」
林多恵「だってそりゃ、星彦さんは男で鶴子は女だから、男と女の恩返しと言えば・・・」
中島さゆ「その星彦って誰だよ」
林多恵「だから鶴子を助けてくれた殿方ですよ」
中島さゆ「『とのがた』って・・・」
林多恵「ちなみに星彦の名前は、七夕の彦星を逆に使ってアレンジしてあります」
中島さゆ「あーそうですか」
林多恵「どうです?この話? 男女の情愛を昔話に例えてみました」
中島さゆ「いや無理でしょう!小学校の演劇なんだよ!そんな大人の事情を持ち込まれても」
林多恵「そっかー・・・ あっ、じゃあコイならどうです?」
中島さゆ「『こい』?『こい』って何?」
林多恵「だから鯉ですよ魚の。 泳いでる鯉」
中島さゆ「あーその鯉ね。 えっ、鯉の恩返し的な話になるの?」
林多恵「はい。『私には何もできませんが、ご恩に報いるために』と一枚一枚・・・」
中島さゆ「だから、服を脱ぐとかは!」
林多恵「『私の鱗を剥がして、この鱗を海洋性コラーゲンとして再利用したサプリメントなどに使って下さい』って言うんです」
中島さゆ「・・・そんな使い道があるんだね」
林多恵「どうです?鯉子?」
中島さゆ「鯉子って・・・まあ自然問題を扱うってのは無しでは無いんだけど、なんか遠回し過ぎると言うか・・・」
林多恵「なるほどー」
中島さゆ「それに恩返しの話って、本人に気づかれないようこっそりやるものじゃない?何と言うか、秘密で恩返しするというか」
林多恵「秘密ですか・・・。うーん、じゃあこれ、 『たえの恩返し』」
中島さゆ「『たえ』?『たえ』ってどんな生き物?」
林多恵「『たえ』は『多恵』と書きます。 18歳の女の子です」
中島さゆ「あっ、へー。 で、どんな話になるの?」
林多恵「『私には何もできませんが、ご恩に報いるために』と、一枚一枚来ている服を脱いでいくんです」
中島さゆ「待って待って!えーっと、相手は星彦のまま?」
林多恵「そうです、星彦32歳、独身」
中島さゆ「ほぼ淫行の話になってるんだけど?」
林多恵「違いますよ!多恵は親に虐待されたから家出をして来たんです」
中島さゆ「あーなんだ、純愛的な感じ?」
林多恵「家出をして行く先の無い多恵が生きるために見つけた手段、それが『パパ活』だったんです」
中島さゆ「いやだから、小学生のやる演劇なんですけど!」
林多恵「ちなみに『パパ活』って『papa活』ってすると、何かファッショナブルな響きになりません?」
中島さゆ「なりません」
林多恵「『ご恩』も『ごON』ってすると、何かいいですよね、『go on』みたいで」
中島さゆ「いやわかんないです」
林多恵「恩返しをは最後まで続けなくてはならない!そう、『show must go on』にも通づるものがありますよね」
中島さゆ「あのー、話しを戻してくれる?」
林多恵「すいません、そうですよね。 だから『papa活』だったんです」
中島さゆ「ごめん、カタカナのほうにしてくれる?」
林多恵「『パパ活』です」
中島さゆ「で、いちおう聞いてあげますけど、 この後はどうなります?」
林多恵「はい。苦しみのなか、パパ活をしようとしていた多恵に、星彦は声を掛けたんです」
中島さゆ「はいはい」
林多恵「『こんな事してちゃいけないよ、行くところが無いなら僕の家においで』って」
中島さゆ「僕の家においで・・・」
林多恵「そして星彦の家に行った多恵は、星彦の恩に報いるために、着ているものを一枚一枚と・・・」
中島さゆ「はい待ったー!アウトだからー!」
林多恵「星彦 『いやでも、僕は恥ずかしいけど経験が無くて・・・』 多恵 『大丈夫、多恵・・・初めてじゃないから』」
中島さゆ「おいおい一人芝居してんじゃねーよ! なに星彦32歳で未経験なの?」
林多恵「そうなんです、秘密にして下さいね」
中島さゆ「いや興味無いから!てゆーか出来ないでしょ、こんな話!どうすんの?明日までに内容決めなきゃいけないのに?」
林多恵「ですよねー、困りましたね。 ところで『多恵の恩返し』の続きですけど・・・」
中島さゆ「いらないから! どうしよう、主任に怒られるよー・・・ あれっ?」
林多恵「はい?」
中島さゆ「林先生って、確か下の名前、 『多恵』じゃなかったっけ?」
林多恵「はい」
中島さゆ「じゃあ、『多恵の恩返し』って・・・」
林多恵「はい」
中島さゆ「あー・・・」
林多恵「秘密にして下さいね」
おしまい
あ、これ
直球で面白いです
途中から「来るよ来るよ」と思っていると
「キター!」
うん、いいね!
こんな小学校でこんな先生たちだったら働くのも毎日楽しいでしょうね♪たえ先生が見た目は清楚なのに言ってることが微妙にぶっとんでてそのギャップもよかったです。
職員室で先生たちがこんな面白い話をしていたら混ざりたいなと思ってしまいました。二人の掛け合いがリズムカルであっという間に読んでしまいました。