1話完結(脚本)
〇貴族の部屋
エミリアは、一週間後に隣国に嫁ぐことになっている
彼女は、生まれてから、一度も自分の暮らしている国の街に行ったことがなかった
彼女は、嫁ぐ前に一度でいいから自分が暮らした国の街に行ってみたいと思っていた
エミリア「ララ!」
メイド「エミリア様。何ですか?」
エミリア「私!一度だけでもいいから街に行ってみたいの!」
メイド「街ですか?」
エミリア「そう、街」
メイドは、考えながら言った
メイド「突然、どうされたのですか?」
エミリア「私は、生まれてから一度も街に行ったことがないから、隣国にお嫁に行く前に、自分が生まれて育った街を見てみたいと思ったの」
メイド「そう、言われましても。 エミリア様の言っていることは分かりますが、王様が許可してくれるかどうかは分かりませんよ」
エミリア「お父様には、これから頼みに行こう思っているところよ」
そう言いながら、エミリアは部屋を出ていってしまった
〇謁見の間
王宮の広場に行くと、王様とエミリアの兄がいた
エミリア「お父様、お話があります」
王様「何だね、エミリア?」
エミリア「私、街に行ってみたいの」
王様「街に出てみたい? それはなぜじゃ?」
エミリア「私は、生まれてから一度も街に行ったことがありません」
エミリア「嫁ぐ前に、一度でいいので、自分の目で自分が生まれ育った国の街を見てみたいのです」
エミリアは、父親である王様に訴えた
王様「エミリア。そなたは、一週間後に婚約を控えている身。 街に行くことよりも、することがあるじゃろう」
エミリア「そうですが。一時間だけでも行ってみたいのです」
王様「それは、認められん」
エミリア「なぜですか?」
それまで、王様とエミリアのやり取りを静かに聞いていた、エミリアの兄が言った
アサニエル「父さん、一度でいいので、エミリアが街にいくことを許してもらえないでしょうか?」
王様「それは、できん。街には、人がたくさんいて危険な所がある」
王様「婚約を一週間後に控えているエミリアに何かあったら、隣国になんて言ったらいいのか分からなくなってしまう」
アサニエル「私は、街に行ったことがありますが、そんなに危ない所ではありませんでしたよ」
王様「それでも、許すことはできん」
王様「エミリア、わしは何度言われても考えは、変わらん。だから、自分の部屋に戻って、婚約の準備をしなさい」
エミリアは、少し経ってから言った
エミリア「分かりました、お父様」
〇貴族の部屋
メイド「エミリア様。どうでした?」
エミリア「反対されたわ」
エミリアとメイドが話していると、部屋の扉がノックされた
エミリア「どうぞ」
部屋の中に入って来たのは、エミリアの兄のアサニエルとエミリアが嫁ぐ、隣国の王子だった
アサニエル「エミリア。さっきは大変だったな」
エミリア「お兄様。先ほどは、フォローありがとうございました」
アサニエル「いやいや、結局は許してもらうことができなかったからな」
ロベルト「話は、アサニエルから聞いたよ。 エミリアは、街に行ってみたいんだね。 じゃあ、僕と行ってみるかい?」
エミリア「ロベルトと?」
ロベルト「僕と一緒であれば、大丈夫じゃないかな。僕は、街に行ったことがあるから、案内できるよ」
エミリア「私!街に行ってみたい。 よろしくお願いします」
ロベルトは、笑いながら言った
ロベルト「了解、エミリア!!」
こうして、エミリアは、婚約者の王子と街に行くことになった
〇ヨーロッパの街並み
街は、人でにぎわっていた
ロベルト「エミリア、ここが街だよ」
エミリア「すごい、にぎわってるね」
ロベルト「そうだね。 ここは、街一番の大きい通りに面しているからね、人も多いんだよ」
お姫様は、目を輝かせて、街を見ていた
王子さまは、そんなお姫様を優しいまなざしで見ていた
エミリア「ロベルト、自分の国ではないのに、詳しいのね?」
ロベルト「自分の婚約者の国を知っておくのは、当然のことだよ」
ロベルト「それに、自分が将来関わることは、小さい頃から決まっていたから、英才教育をずっと受けていたんだよ」
エミリア「そうなんだ」
エミリアも小さい頃から、ロベルトの国の事を聞かされていた
エミリアとロベルトが歩きながら話していると、街の人が集まってきてしまった
ロベルト「エミリア。街の人達が集まって来てしまったから、あそこにいったん、避難しよう」
エミリア「うん」
〇湖のある公園
エミリアとロベルトは、街の人達が集まってきてしまったため、近くにある湖に避難した
ロベルト「ここなら、人がいないから大丈夫だね」
湖は、水が澄んでいてとても綺麗で幻想的だった
ロベルトは、エミリアが街に行きたいといったため、連れてきたが、彼女がなぜ街に行きたかったのか理解していなかった
ロベルト「エミリアは、なぜ街に来たかったの?」
エミリア「エミリアは、ロベルトの問いに驚きつつも言った」
エミリア「生まれた国の街を離れる前に、訪れてみたかったの。今まで、一度も来たことがなかったから」
エミリア「この目で自分の国の人達を近くで見てみたかった」
エミリア「そうじゃないと、自分の国のことが分からない」
エミリア「自分の国の人々のことが分からなければ、ロベルトの国の人々のことも理解できないと思ったから」
ロベルト「そうだったんだ」
エミリア「私が、自分勝手なわがままで来たいって言ってると思ってた?」
ロベルト「そんなことは、思ってないけど」
エミリア「お父様は、そう思ったかもしれないけどね」
ロベルト「エミリア。 もうそろそろ帰ろっか?」
エミリアは、うなずきながら言った
エミリア「うん。今日は、連れて来てくれてありがとう」
ロベルト「どういたしまして。僕も楽しかったよ」
〇王宮の入口
数日後、エミリアとロベルトの結婚式が行われ、エミリアは隣国へと嫁いでいった
婚約者のロベルトの方がエミリアの国の街に詳しいとは皮肉な話です。同じ王族でも女性の方が自由が少ないんでしょうね。嫁ぎ先のロベルトの国では、二人でお忍びで街を散策できるといいですね。
立場が立場だと行きたい所に行けないもどかしさもあるのでしょうね。好きな時に好きな場所に行ける自由のありがたみを改めて実感しました!
面白いです!
楽しいお話でした!