2人でひとつのキオクタビ

もものうち

読切(脚本)

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〇空
  いつも通りの日常、いつも通りの風景。
  人が行き交う道路の真ん中で、今までの日常が崩れようとしていた。
  その原因は今、目の前に飛び込んで来た光景を見れば一目瞭然だ。
  目の前に映るのは、電柱にぶつかったのであろう、助手席側のガラスが粉々になったトラック
  その前には2人の少年がいた。
  1人は呆然とした様子で座りこんでおり、もう1人の少年は、未だに呆然とした様子の少年を庇うかのようにしていたのだった。

〇学園内のベンチ
「おーい!祐何処だー!」
  9月下旬のとある放課後、まだ暑さが残る外を歩き周りながら、俺はある人物を探していた。

〇学園内のベンチ
  (祐の事だからまた不思議な事を考えて、何かやってるのかもな)

〇学園内のベンチ
  さっきから俺が探している「祐」という人物は、俺のクラスメイト兼親友で中学2年からの付き合いだ。
  親同士も仲が良く、互いの家を行き来したり、夕飯も食べたりする。

〇中庭

〇中庭
佐川 卓(さがわ すぐる)「祐!ここに居たんだな」

〇中庭
  俺は何故か蹲っていた祐に声をかけると、祐は急に声をかけられ驚いたのか、一瞬体をびくりとさせた。
堂島 祐(どうじま ゆう)「卓?どうしたの。何かあった?」
  祐は、俺が来た理由が分からない様子だった。
佐川 卓(さがわ すぐる)「授業が終わってトイレに行ったっきり20分以上帰って来ないから、何かあったのかと心配してな」
佐川 卓(さがわ すぐる)「それにしても、何で校庭の隅に蹲ってたんだ?」
堂島 祐(どうじま ゆう)「今言わなきゃ駄目?別にやましい事はしてないよ。ただ・・・・・・」
佐川 卓(さがわ すぐる)「ただ?」
堂島 祐(どうじま ゆう)「・・・・・・今は秘密」

〇中庭
  祐はそう言うと、微笑みながら右の人差し指で唇を押さえた。
佐川 卓(さがわ すぐる)((まあ誰にでも秘密はあるものだからな。))
佐川 卓(さがわ すぐる)「それなら仕方ないな!じゃあ一緒に帰るか」
堂島 祐(どうじま ゆう)「・・・・・・うん。もう5時半だもんね」

〇住宅街
佐川 卓(さがわ すぐる)「今日の夕飯はなんだろうなぁ。祐も食って行かないか?母さんも喜ぶだろうし」
  そんな話をしながら、俺はいつもの通学路を祐とともに歩く。
堂島 祐(どうじま ゆう)「卓はいつもぼくの事を心配してくれるよね。今日もそうだったし」
佐川 卓(さがわ すぐる)「そりゃあ心配するさ、中学2年からの親友なんだしな」
佐川 卓(さがわ すぐる)「祐は不思議な事を良く思い付いては試したりして、一緒にいて面白いし楽しいんだよな」
堂島 祐(どうじま ゆう)「そう?そんなに不思議かなぁ」
佐川 卓(さがわ すぐる)「俺からしたら十分不思議だぞ、この前の色んな味の飴玉溶かして、金太郎飴作ろうとしてたやつとかな!」
  俺は祐の不思議な行動を思いだし、声をあげて笑う。

〇住宅街
  俺はしばらく笑っていたが、ふと祐との出会いを思い出す。
佐川 卓(さがわ すぐる)((祐と初めて中学で会った時、不思議な言動と行動で、初めこそは戸惑ったが・・・・・・))
佐川 卓(さがわ すぐる)「祐と一緒に居ると、昔から知ってるような・・・・・・懐かしい気分になるんだよなぁ」
堂島 祐(どうじま ゆう)「・・・・・・」
佐川 卓(さがわ すぐる)「それにこの前その事を親に話した時、一瞬だけ時間が止まったような・・・・・・」
堂島 祐(どうじま ゆう)「・・・・・・」
佐川 卓(さがわ すぐる)「けどその後は普通だったし、俺の勘違いだから気にしないでく──」
  俺は、隣で歩いていたはずの祐に言いかけていた言葉を止めた。
  祐が俺の後ろで立ち止まり、無表情で立っていたからだ。
  先程の発言を思い出し、申し訳ない気持ちになった。
佐川 卓(さがわ すぐる)「悪かった!!お前を心配させるような事を言って・・・・・・」

〇住宅街
堂島 祐(どうじま ゆう)「そうじゃない。卓は悪くないよ」
堂島 祐(どうじま ゆう)「この前、最近夢を見るって言ってたよね。どんな夢か覚えてる?」
  祐は俺にそう聞いてきた。何故夢の事を聞くのかは分からないが、俺はあるだけの記憶をかき集め、頭の中で整理する。
佐川 卓(さがわ すぐる)「(確か小さい子が2人いて道を歩いてたら、前からトラックが──あれ?)」
佐川 卓(さがわ すぐる)「トラック?」
  俺は今この「トラック」という文字が、頭の中にこびり付くのを感じた。
佐川 卓(さがわ すぐる)「俺、この場面知ってる」
  俺は頭の中で知らない方が良いと叫ぶ声を無視し、なぜ知っていたのかを考える。
堂島 祐(どうじま ゆう)「・・・・・・どうしたの?」
  祐の「声」を聞いた瞬間、今まで俺が忘れていた記憶が、走馬灯のように流れて来た。
  その中にあった小さい子ども2人の記憶、そうだ。あれは──!
佐川 卓(さがわ すぐる)「小さい頃の俺達だ・・・・・・あの頃から、祐と一緒だった」

〇住宅街
堂島 祐(どうじま ゆう)「やっと思い出してくれた?」
  祐は前から知っていたのか、驚いている俺に落ち着いた様子で俺に話しかけてきた。
堂島 祐(どうじま ゆう)「あの日学校から帰る途中、飲酒運転のトラックに引かれそうになった卓をぼくが庇った」
佐川 卓(さがわ すぐる)「祐はすぐ病院に運ばれて、一命は取り留めたが──事故に遭ったショックで記憶を無くしちまった」
堂島 祐(どうじま ゆう)「うん」
佐川 卓(さがわ すぐる)「その後父さんの転勤が決まって引っ越す時に、祐と居た記憶を忘れれば楽になると思った」
堂島 祐(どうじま ゆう)「そう。それがぼくの、ぼく達の「秘密」」
  俺は今まで祐の事を忘れてたのか・・・・・・
佐川 卓(さがわ すぐる)「祐が記憶を無くした時、俺はショックだった」
佐川 卓(さがわ すぐる)「なのにその俺が祐の存在を忘れちまうなんて・・・・・・」
堂島 祐(どうじま ゆう)「ぼくも卓と中学で再会して、暫く経ってから思い出したよ」
堂島 祐(どうじま ゆう)「けど卓には言わなかった。気付いてほしかったから」
堂島 祐(どうじま ゆう)「両親やおじさんおばさんにも話して、ぼく達に関する事を言わないようにお願いしたんだ」
佐川 卓(さがわ すぐる)「そうだったのか・・・・・・」

〇住宅街の道
  俺の家に着くまでの間、お互いに今までの記憶の溝を埋めるかの様に語り合った。
堂島 祐(どうじま ゆう)「じゃあ今日からまた旅が始まるね」
佐川 卓(さがわ すぐる)「旅?」
  また不思議な事を言うなぁと思いながら、俺は祐に聞き返した。
堂島 祐(どうじま ゆう)「そう。これから2人で、新しい記憶の旅」
  そう言って笑う祐の顔は、今まで見てきたどの顔よりも嬉しそうだった。

コメント

  • これから悪いことが起きるんじゃ…とハラハラしましたが、まさか過去のこととは思いませんでした。思い出してくれるのを「待つ」というのに友情を感じました。記憶がない間でもこんなに仲良くなれたなら、きっと二人はこれからもずっと親友なのでしょうね。ハッピーエンドでよかったです。

  • 発想が楽しいと思いました、「記憶をたどる」今、過去に戻るとどんな感じ方をして、何を訂正するのでしょうか。色々と考えながら読ませて頂きました。

  • 特に隠す必要のないはずのことでも互いに相手を思って秘密にしておく。それが先の未来にどういう影響を及ぼすかはわかりませんけど相手のことを思う気持ちは素晴らしい。
    この物語ではお互いに記憶を取り戻して結果的に良い方向に転がったので良かったです。

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