青春の拳〜強すぎる家族と彼女の間〜

藤川莉桜

読切(脚本)

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藤川莉桜

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〇部屋の前
拳 一郎(コブシ イチロウ)「ふんふんふーん♪」
拳 闘子(コブシ トウコ)「あら、おはよう!一郎ちゃん!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「ああ、おはよう母さ・・・」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「っ!?」


〇部屋の前
拳 一郎(コブシ イチロウ)「や、やべ・・・首筋に危うく当たりかけた・・・」
拳 闘子(コブシ トウコ)「あら〜外しちゃったわ〜」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「母さん!朝一番に手刀を浴びせるのはもうやめてくれって言ったじゃないか」
拳 闘子(コブシ トウコ)「別に良いじゃない。ちゃんと避けたんだし」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「いやいや!そういう問題じゃないから!」
拳 闘子(コブシ トウコ)「大丈夫。一郎ちゃんの成長に合わせてちゃーんと手加減してるもの〜」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「その割に殺意高くない!?」
拳 闘子(コブシ トウコ)「それより、朝ご飯を食べましょう?父さん達も待ってるわ〜」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「はあ・・・」

〇おしゃれなリビングダイニング
拳 勇太郎(コブシ ユウタロウ)「こんな所だろう。今日はこれまで!」
拳 二郎(コブシ ジロウ)「おす!」
拳 闘子(コブシ トウコ)「あらあら〜。2人とも朝から元気ね〜!」
拳 二郎(コブシ ジロウ)「いやー、兄ちゃんがなかなか起きてこないからね」
拳 二郎(コブシ ジロウ)「せっかくだから稽古をつけてもらってたんだ!」
拳 勇太郎(コブシ ユウタロウ)「室内で物を一切傷つけずに闘う・・・二郎も「龍魔天撃拳」の極意を身につけつつあるようだな」
拳 闘子(コブシ トウコ)「まあ!二郎ちゃんの将来が楽しみね!」
拳 二郎(コブシ ジロウ)「へっへー!俺ってば、この調子だとお兄ちゃんから継承者の地位奪っちゃうかもねー?」
拳 闘子(コブシ トウコ)「あらあら!一郎ちゃんもうかうかしてられないわねー」
拳 一郎(コブシ イチロウ)(ぶっちゃけその方がありがたいよ・・・)

「見ての通り、俺の家族は普通とちょっと・・・いや、かなりかけ離れている」

〇炎
拳 一郎(コブシ イチロウ)「この世界には最強と名高い二つの拳法が存在した」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「一つは「龍魔天撃拳」」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「もう一つは「神虎冥撃拳」」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「2つの拳法は頂点の座を掛けて争う宿敵・・・」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「諍いはこの令和の時代においても尚続いていた」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「その片方の龍魔翔撃拳を代々伝承してるのが俺の家系なんだが、正直俺は継承者になる事には乗り気じゃない」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「両親は自分達と同じ武闘家の道を志してもらいたいらしいけど・・・」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「俺は拳法とは無縁の普通の高校生生活が送たいんだ」

〇おしゃれなリビングダイニング
拳 一郎(コブシ イチロウ)「じゃあ、学校行くから!」
拳 闘子(コブシ トウコ)「あら?最近早いわね?」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「最近小テストが多くてさ。その対策だよ」
拳 闘子(コブシ トウコ)「武闘家になれば成績なんて気にする必要は無いわよ?」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「か、考えとく!いってきます!」

〇一戸建て
拳 一郎(コブシ イチロウ)「ふう・・・武闘家になる気なんて無いって中々言いづらい」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「まあ、いいや!そんな事より・・・」
「拳くーん!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「っ!」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「おはようございます拳君。お待たせしてすみません」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「そ、そんな事ないよ!今日はたまたま早起きしただけ!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)(この子は隣のクラスの掌 舞香さん)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(何を隠そう俺の「彼女」だ!)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(彼女との馴れ初めは1週間ほど前・・・)

〇住宅街
同級生「でよー。勉強しろって母ちゃんがうるさくってさー」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「うんうん!すっごくわかるよ!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「俺も母親が修行しろってしつこいから!」
同級生「は?修行?」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「あ!いや、修行じゃなくて勉強!すまん言い間違えた!」
同級生「どんな言い間違いだよ・・・」
同級生「あっ!見ろよ拳!掌さんだぜ!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「え?どこどこ?」

〇市街地の交差点

〇住宅街
同級生「やっぱ超可愛いよなー掌さん!そうだろ?」
同級生「ん?おーい?拳ー?」

〇市街地の交差点
同級生「それでねー」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「うんうん!そうですねー」
同級生「舞香!危ないっ!」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「え?」

〇住宅街
同級生「あの車スピード出し過ぎだろ!このままじゃ・・・」
拳 一郎(コブシ イチロウ)(掌さんは車と衝突してしまう)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(常人なら車のスピードに反応出来るわけないし、例え見切っても身体が追いつかない)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(けど、俺なら!)

拳 一郎(コブシ イチロウ)(掌さんが衝突するまで約3秒)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(対して俺と彼女の距離は約120メートル)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(短い時間でこの距離を駆け抜けるには)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(全筋肉の動作を一点に集中して、爆発的に瞬発力を高める!)


〇市街地の交差点
拳 一郎(コブシ イチロウ)「ふう・・・ギリギリか。怪我は無い?」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「え?あ・・・はい・・・」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「全力疾走してたらたまたま掌さんを助けちゃうなんて運が良いなー」

拳 一郎(コブシ イチロウ)(この時をきっかけに俺はなんと掌さんから告白を受ける事になる)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(最初は戸惑ったけど、断る理由なんて無い。むしろ大歓迎だ!)

〇繁華な通り
拳 一郎(コブシ イチロウ)(そして、付き合って3日目はお待ちかね放課後デート!)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(すげえ普通の青春っぽい展開だ!)
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「こっちですよ!友達に教えてもらったオススメのふわふわパンケーキさんは!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「わっ!待って!そんなに引っ張らないで!」

〇テーブル席

〇大水槽の前

〇映画館の座席

〇見晴らしのいい公園
拳 一郎(コブシ イチロウ)(ああ・・・なんて素晴らしいんだ!)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(楽しすぎてあまりにも時間が早く過ぎてしまう!)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(ありがとう青春!)
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「拳君、今日は付き合ってくれてありがとうございました」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「楽しんでいただけましたか?」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「もちろんだよ!」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「それは良かったです!」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「それはそうと・・・人のいない公園に連れてきた意味・・・わかります?」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「え?」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「目を・・・つぶっていただけますか?」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「は、はいっ!」

拳 一郎(コブシ イチロウ)(やばいやばい!これって「あれ」だよな!)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(俺が掌さんとチュ・・・)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(こ、心の準備が・・・)

拳 一郎(コブシ イチロウ)「っ!?」


〇見晴らしのいい公園
拳 一郎(コブシ イチロウ)「殺意を感じ即動かなかったら、首筋を切り裂かれるところだった・・・」
拳 一郎(コブシ イチロウ)(こんな形で母さんの無茶な修行が役に立つなんて・・・)
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「くっ!あと一歩だったのに!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「なんのつもりなんだよ!掌さん!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「って!その構えはまさか!?」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「ふふっ・・・色仕掛けに惑わされる大マヌケだとばかり思っていましたが、どうやらそこまで御し易い相手ではないようですね」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「しかし、ここがあなたの墓標になる宿命は変わりません!潔く散りなさい!「龍魔天撃拳」よ!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「「神虎冥撃拳」!「龍魔天撃拳」とは対を成す、もう一つの最強の拳法!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「掌さんがその使い手!?」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「覚悟ォッ!!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)(速いっ!それでいて動きに無駄が無い!)
拳 一郎(コブシ イチロウ)(今まで戦った他流の武闘家の中でもダントツで洗練された技のキレだ!)
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「どうしました!?さっきから全くそちらから攻める気配を感じませんが!?」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「このまま成す術もないというのですか!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「・・・掌さんは最初から俺が龍魔天撃拳の使い手だと知ってて近づいたのか?」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「正確には、車の事故から救ってくれた時ですね」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「その気になれば、あのくらい自分で避けられましたが、まさかわざわざ私を助けるだなんて」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「あんな芸当が出来るのは我々を除けば龍魔天撃拳の使い手達以外にいるはずがありません」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「俺を好きだって言ってくれたのも嘘だったのか?」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「はい。その通りです」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「俺とデートしてる時の笑顔も・・・」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「全部全部!」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「全て嘘です。あなたを油断させるための」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「わかった」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「俺はたった今から・・・」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「龍魔天撃拳次期正当継承者として・・・君をここで倒す」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「雰囲気が・・・変わった!?」

拳 一郎(コブシ イチロウ)「君の神虎冥撃拳は素晴らしいよ」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「きっと類稀な才能と厳しい鍛錬で得た物なんだろう」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「けど、それだけじゃ駄目だ」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「君の拳にはあまりにも感情が乗りすぎている」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「龍魔天撃拳への勝利に対する過剰なまでの渇望。それが君の拳を僅かに狂わせているんだ」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「拳は敵に勝つための術にあらず。己に勝つための終わりなき道なり・・・」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「お祖父ちゃんが俺に遺した言葉だ」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「己の勝利のためだけに拳を振るう今の君じゃ俺には勝てない」

〇見晴らしのいい公園
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「私が・・・勝てない?」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「私には世界最強の武闘家になる夢があるんです!」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「あなたのようにぬるま湯に生きようとする腰抜けに負けてたまるものですか!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「龍魔天撃拳奥義・・・」

  昇龍一閃!!

〇見晴らしのいい公園
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「がばっ!」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「た、ただの正拳突きに・・・この私が?」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「そう。ただの正拳突きさ。俺のこれまでを全て込めた」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「・・・完全に負けました。早くトドメをお願いします」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「いや、そういう時代錯誤なのはいいから」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「それにさ。掌さんはまだ嘘ついてるでしょ?」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「え?」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「俺に近づいたのは企みあってかもしれないけど、デート中の楽しそうにしてる掌さんの姿は・・・」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「あれが全部演技とは思えないんだ」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「そ、それに・・・俺が掌さんを好きなのは今でも変わらないし」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「拳君・・・」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「良かったら・・・流派の因縁だとかそんなのは忘れて・・・」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「俺とまたやり直してくれないか?」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「い、良いんですか?私、あなたに酷い事を・・・」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「だから、それはもう良いって言ってるじゃん。掌さんはどうなの?」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「わかりました!ありがとうございます!」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「今日の埋め合わせも兼ねて、一緒に幸せになりましょう!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「こちらこそ嬉しいよ!一緒に普通の青春を・・・」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「はい!いずれ一緒に世界最強の武闘家を目指しましょうね!」
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「拳君と私ならきっと成し遂げます!」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「へ?」

  それから数日後・・・

〇おしゃれなリビングダイニング
掌 舞香(タナゴコロ マイカ)「お義母様には拳君とのお付き合いを認めて頂きます!」
拳 闘子(コブシ トウコ)「あら〜!駄目じゃない一郎ちゃん」
拳 闘子(コブシ トウコ)「神虎冥撃拳とお付き合いなんて言語道断よ〜」
拳 一郎(コブシ イチロウ)「俺は普通の青春が送りたいだけなのにー!」

コメント

  • 「拳」に対して「掌」という苗字に嫌な予感がしていたらやっぱり!この世で一番激烈な戦いである嫁姑の一騎討ちが早くも始まってしまいましたね。龍が勝つか虎が勝つか、興味津々です。

  • 楽しいお話し!
    格闘技が好きなので、いくらでもこの後の展開が思いつくし、続きが読みたいなあと思います♫
    ただの派閥同士の闘いではなく、精神論みたいなのが強さの秘訣であるというのが素敵です。
    殺意のスチルの使い方が、漢字一文字で表現されていたのも効果的で勉強になりました。

  • 10人目の読者でした。
    流派を巡るロミオとジュリエット!
    二つの流派が合わさったら最強になりそう

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