素直になれない真白さん(脚本)
〇教室
僕のクラスには「姫」がいる。
・・・・・・「冷酷な姫」が。
田中「真白さん消しゴム落としたよ」
真白「あら、あなたに拾われるなんて不愉快です」
そう言うと真白さんは強気なセリフとは打って変わり、悲しそうな表情を浮かべ駆け出してしまった。
しかし、これは珍しいことではない。
真白さんはいつもこうして冷たい言葉を誰彼構わずに言い放つ。
その度に顔色を変えて逃げ出す。
そしてこの行動には僕だけが知っている真白さんの『秘密』がある。
〇教室
一週間前。
放課後。
僕は一人、日直の仕事を行っていた。
田中「ん? これ、日記?」
掃除をしていると誰のか分からない日記を拾った。
落とし主が分からないままではどうしようもない。
少し気は引けたが、中身を拝見した。
田中「これって!」
日記の中にはこう書かれていた。
『また今日も酷い言葉を言い放ってしまった。田中くんの目の前では拾ってもらったプリントを破くなんてことも』
『本当はありがとうと言いたいのに。
本心を行動に移さないといけないのに』
内容を読むにこの日記は真白さんの物だ。
ここで僕の中に一つの仮説が出来上がった。
──真白さんの本心と行動は逆である、と。
〇学校の廊下
そしてあの日以来、僕は真白さんに興味が湧いた。
田中「真白さーん。 僕も手伝うよ」
真白「手伝ってくださらなくて大丈夫です。 ・・・・・・邪魔です」
言うと決まって真白さんの表情は曇る。
この数日、真白さんの手伝いを積極的に行っている内に分かった。
あの仮説。
──真白さんは本心と行動が逆。
というのはかなり濃厚のようだ。
田中「はい、はい。 このノートを職員室に持っていけば良いんだよね?」
だからこそ僕はいくら酷いことを言われても真白さんの本心は理解している。
今は、
「手伝ってくれてありがとう」と言っている。
〇教室
最近、無意識の内に真白さんを探してしまっている。
と言うのも、真白さんとの距離を縮めるために手伝いを始めたまでは良かった。
だがその手伝いは自分で見つけなければいけない。
なぜなら本心を言葉にできない真白さんは人に頼むことができない。
これがまた苦労で、真白さんは仕事を断れない。それを良いことに使われたなのか、常に真白さんは仕事に追われている。
今どこで真白さんは仕事をしているのかと、駆け回らないといけなくなってくる。
〇古い図書室
田中「やっと見つけた」
図書室にやって来ると真白さんは本に囲まれながら、大慌手に仕事をしていた。
僕の存在に気づかないほど忙しそうだ。
ここまで大変そうな真白さんを僕は見たことがない。
田中「手伝うよ」
真白「帰ってください・・・」
田中「はい、はい」
真白さんの言葉が本心ではないのは百も承知。
有無を言わさずに僕は手伝いを始める。
真白「・・・・・・」
そんな僕に真白さんが何か言おうと、一呼吸置く。
しかし言葉を吐き出すことはなく、開こうとする口を必死に両手で押さえ込む。
きっと真白さんなりの配慮なんだろう。
本心とは違う、攻撃性のある言葉で僕のことを傷つけないように。
言葉を抑えこめ終え、落ち着いた真白さんは近くにある紙とペンを持ち出した。
そして文字を無造作に書いていく。
そして書き終えた紙を僕に渡してくる。
真白さんから渡された言葉は──
「ありがとう」
初めて真白さんの本心からの言葉を聞けて、感情が高鳴ってしまう。
田中「よしっ! ガンバロー!!」
エネルギーをもらい、張り切って仕事に取り掛かっていった。
〇古い図書室
結局仕事が終わる頃には、すっかり外は暗くなってしまっていた。
田中「ふぅ・・・」
僕は完全に疲れ切って、備え付けの机に突っ伏している。
吹き出す汗と荒い呼吸を整えていると──
真白「あ、あの田中くん!」
田中「どうしたの!?」
突然の真白さんの声に思わず肩が上がってしまった。
真白「・・・えっと、その、明日からも・・・だから私と一緒に・・・」
きっと真白さんは一生懸命に本心を吐き出そうとしている。
もしかしたらこのまま真白さんは変われるのかもしれない。
あとほんの少しなんだ──
真白「・・・あなたの事なんか大嫌いです」
真白さんから出てきた言葉は今まで通りの冷たい言葉。
しかしその言葉とは裏腹に、月の光に照らされる真白さんの顔は真っ赤に染め上がっている。
田中「それって──」
目の前に見える彼女はあまりにも幻想的で、美しくて、まさしく「姫」がそこに現れていた。
──こんな光景が見れるなら。
もう少しだけ真白さんの『秘密』を独り占めしていたい。
思春期だけではなく大人になっても、大好き過ぎる人にあってしまうと意識して思いもよらない言動に移してしまうの、女性としてとても共感できます。でも真白さんかわいい、筆談で『ありがとう!』って。全て気づいてくれてる彼がいてよかったですね!
姫にすてきな王子さまが見つかってよかったです♪
素直になれなくて、素直になりたいって想いはあるのに、はずかしいのかな、、。いつか、姫が王子に本心を言葉で伝えられる日がきますように。
不器用なんですね!
でも自分の性格と向き合って、行動を変えなきゃ!って気持ちに惹かれたんでしょうね。
人間変わるのにはキッカケが必要で、姫にはこれがキッカケだったんですね!