3days(脚本)
〇幻想
ソレイユ「本当にいいのね?」
エトワール「うん」
ソレイユ「一度人間になったら、もうエルフには戻れないのよ」
エトワール「わかってる」
ソレイユ「しかも人間になれる時間はたったの・・・」
エトワール「それでもいい」
エトワール「短い間でもいいから、普通の人間になって普通の生活がしてみたい」
ソレイユ「わかったわ」
ソレイユ「あなたの願いを叶えてあげるわ」
エトワール「ありがとう」
ソレイユ「それじゃあ、いくわよ」
エトワール「うん」
ソレイユ「エトワール・・・」
〇海岸の岩場
12月22日
湊「さすがに夜は寒いな」
エトワール「きれい・・・」
エトワール「こんばんは」
湊「えっ!」
湊「ど、どうも」
エトワール「あ、あの」
湊「?」
エトワール「今日、あなたの家に泊めてもらえませんか?」
湊「は!?」
〇温泉旅館
湊(無視して立ち去ったのに、なぜかついてきてるし・・・)
洋子「湊、遅かったわね」
洋子「ん、そちらは?」
湊「えっと、この人とはさっき偶然会って・・・」
エトワール「エトワールです」
湊「実はこの人がうちに泊めて欲しいって」
エトワール「ご迷惑でしょうか?」
洋子「そんなことないわよ」
湊「えっ!?」
洋子「ちょうど空いている部屋もあるから、ゆっくりしていきなさい」
エトワール「ありがとうございます!」
洋子「さ、中に入って」
エトワール「はい」
湊「母さん、いいのかい?」
洋子「あんな美人が急に泊めてくれだなんて、何か事情があるに決まってるでしょ」
洋子「大丈夫。悪い子じゃないわよ」
〇旅館の和室
洋子「さあ、好きなだけ食べてね」
エトワール「おいしそう。いただきます!」
エトワール「おいしい!」
エトワール「こんなにおいしいもの食べたの初めてです」
洋子「たくさん食べてね」
エトワール「はい!」
洋子「じゃあ、何かあったら遠慮せず言ってね」
エトワール「おやすみなさい」
エトワール(おいしいお料理)
エトワール(湊さんとお母さんもすごくいい人だし)
エトワール(今日はすごく楽しかったなあ)
〇旅館の和室
12月23日
洋子「エトワールちゃん、今日の予定は?」
エトワール「えっと・・・何もありません」
洋子「じゃあ、少し町を歩いてきたらどう?」
洋子「湊が案内するから」
湊「えっ!」
エトワール「いいんですか?」
湊「う、うん。特に予定もないし」
エトワール「うれしい♥️」
〇海辺の街
エトワール「きれいな町ですね」
湊「まあ、何もない田舎町だけどね」
エトワール「とっても素敵な場所ですよ」
〇イルミネーションのある通り
エトワール「きれい・・・」
エトワール「けっこう賑やかですね」
湊「明日はクリスマスだからね」
エトワール「湊さんはクリスマスはどうされるんですか?」
湊「近所の施設で、子ども達と一緒にクリスマス会をやる予定なんだよ」
エトワール「素敵ですね」
エトワール「あの・・・私も一緒に行っていいですか?」
湊「えっ!?」
湊「それは構わないけど」
エトワール「ありがとうございます!」
〇温泉旅館
洋子「湊、ちゃんとエトワールちゃんを案内してるかしら」
ソレイユ「すみません」
洋子「はい?」
ソレイユ「エトワールのことなんですが」
洋子「エトワールちゃんの知り合い?」
ソレイユ「エトワールのこと、よろしくお願いします」
ソレイユ「彼女、短い期間しか生きられないので」
洋子「えっ!? 短い期間って?」
ソレイユ「・・・3日間です」
洋子「3日間!? それを過ぎると・・・」
ソレイユ「消滅してここから消えます」
洋子「えっ・・・」
洋子「ちょっと待って。3日間というと」
ソレイユ「昨日、今日、そして明日が最後です」
洋子「そんな・・・」
ソレイユ「彼女がそれを望んだのです」
洋子「3日間だけ。明日まで・・・」
〇旅館の和室
エトワール「今日は湊さんと町歩き」
エトワール「これをデートっていうのかな」
エトワール「きゃっ、恥ずかしい」
エトワール「明日は子ども達とクリスマス会かあ。楽しみだな」
エトワール「そして、明日が終わると・・・」
〇温泉旅館
12月24日
洋子「エトワールちゃん、今日は思いっきり楽しんでくるのよ」
エトワール「はい」
洋子「湊、ちょっと」
湊「?」
洋子「実は・・・」
湊「えっ!」
湊「エトワールが今日までしか!?」
湊「嘘だろ・・・」
洋子「だから、あの子に最高の思い出を作ってやるのよ」
〇クリスマス仕様の教室
男の子「湊兄ちゃんの彼女!?」
女の子「こんな美人なお姉さんが!」
湊「いや、彼女というわけでは・・・」
エトワール「みんな、よろしくね」
エトワール(楽しい)
エトワール(子ども達も湊さんもみんな楽しそう)
女の子「お姉さんも何かお話を聞かせてよ」
エトワール「えっ!?」
男の子「聞きたい! 聞きたい!」
エトワール「・・・」
エトワール「わかった」
エトワール「じゃあ、今からある物語を聞かせるね」
〇水玉2
一人の女の子がいました。
女の子は体が弱くて、外に出ることができませんでした。
でも、女の子は外の世界に行ってみたかった。
お友達と遊びたかった。
だから、女の子は無理を言って、3日間だけ外に出させてもらいました。
女の子はその3日間を毎日楽しく過ごしました。
3日後、女の子は病気で亡くなってしまいました・・・
でも、女の子は最後まで笑顔でした。
〇クリスマス仕様の教室
女の子「3日間しか外に出られないなんてかわいそう」
男の子「でも、その子はどうして最後まで笑っていたの?」
エトワール「それは、みんなと過ごした3日間が、本当に、本当に、楽しかったからだと思うよ」
湊「エトワール・・・」
〇イルミネーションのある通り
エトワール「クリスマス会、楽しかったですね」
湊「うん」
湊「エトワール、さっきの物語だけど」
湊「とってもよかったよ」
エトワール「ありがとうございます」
湊「でも、あの物語には続きがあると思うんだよ」
エトワール「えっ・・・」
〇ゆめかわ
女の子はみんなと過ごしてとても満足しました。
もう思い残すことはないと思いました。
でも、女の子はやっぱりまたみんなに会いたかった。
だから、女の子は誓った。
いつかまた絶対みんなに再会しようと。
女の子は最後まであきらめなかった。
・・・そして、いつの日か、女の子はみんなと再会しました。
〇イルミネーションのある通り
エトワール「素敵な物語ですね」
湊「物語じゃないよ」
湊「これは君の話だ」
エトワール「えっ・・・」
エトワール「・・・知ってらしたんですね、私のこと」
湊「エトワール」
エトワール「ありがとう、湊さん」
エトワール「湊さんやみんなに会えて、私、本当に幸せだった」
エトワール「そろそろ時間です」
エトワール「湊さん、本当にありがとう。そして、さような・・・」
湊「エトワール」
湊「「さようなら」じゃない。「また会おう」だよ」
エトワール「はい」
エトワール「湊さん、また会いましょう」
湊「エトワール、また会おう」
〇クリスマスツリーのある広場
10年後・・・
湊「今日も残業で遅くなったな」
湊「そういえば今日はクリスマスか」
「湊さん」
湊「何だ、今の声は」
〇海岸の岩場
湊「10年前、初めて彼女に会ったのはここだった」
湊「あそこにいるのは!」
ただいま、湊さん
お帰り、エトワール
これはゲームではありません。ドラマです。
どうしよう、思わずうるっときちゃった……
本人には伝えずに湊にこっそり伝える洋子も素敵だし、知ってて普通に過ごす湊も恰好いいし、「また会おう」って言えるのも素敵だし、10年後の再開はクリスマスの奇跡……!
登場人物たちがみんな温かいんですよね。なんだかドロドロした心が洗われていくようなお話でした。ほっこり☺️
現代版「人魚姫」を彷彿とさせる切ないお話でした。
命を失っても叶えたい願いが感動的で素直に描かれていたと思います。