こちら、デスゲーム運営課

hitoka

#1(脚本)

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〇オフィスの廊下
  ゲームの運営とは、世界を司ることである
              ――田中ロト丸
  オンラインゲームを運営する者は
  ゲームの世界に風を吹かせ
  それを止ませる力がある。
  売上のために修正という名の風を吹かせ
  育成をがんばってきたプレイヤーの努力を
  無にすることも容易だ。
  プレイヤーの努力など
  まるで砂のようにたやすく吹き飛ぶ──
  小さなゲーム会社でそんな経験を積んだ
  俺は、中規模のゲーム会社へと転職した。
  現実世界には運命という風が吹いている
  この転職が文字通りどう転ぶかは
  神のみぞ知るところだろう。
  このドアの先には新オフィス
  新人は噛まずに元気なあいさつ──

〇オフィスのフロア
田中ロト丸「おぱようごzyえまひゃ!」
「制限時間は2時間・・・ 死は思わぬところからヤッテクルものデス ではゲーム開始」
  注意を払った上でバカほど噛む
  そこにかぶせて気色の悪い
  謎のナレーションが聞こえた。
????「いーね! 感じ出てる!」
????「推理小説とか好きなので・・・」
田中ロト丸「あの、初出勤の田中ロト丸です!」
????「ん? おっ、やっと来たか期待の新人 待ってたよ」
????「あたしは黒木マリア この分野は経験浅いんだけど 一応ディレクターね」
黒木マリア「こっちの子も今日が初出勤よ」
????「雪宮リコ ミステリー系のゲームとか 考えて読み解くのが好きです」
田中ロト丸「田中ロト丸 俺は格ゲーとか・・・ あんま頭使わないのが好きかな」
黒木マリア「さ~て、あんたたちには早速ゲームの 運営現場に入ってもらうけど・・・ その前に、これ。新人のミッションよん」
黒木マリア「読み上げたり見せたりしちゃダメね それぞれに期待するあたしの想いが 書いてあるんだから!」
黒木マリア「二人とも胸の内に秘めて切磋琢磨してね♪」
  俺の紙には・・・
  「無理ゲー」とだけ書いてあった。
  運営として、そんな言葉を言われないよう
  真摯に取り組め・・・ということか?
雪宮リコ「・・・」
黒木マリア「じゃ、会場に行くわよ」
田中ロト丸「・・・会場?」

〇秘密基地のモニタールーム
田中ロト丸「何だ・・・これ?」
  薄暗い地下の部屋に
  無数のモニターが並ぶ。
  映像にはお揃いのジャージを着た人々が
  何かを飲んでいる姿が映っていた。
黒木マリア「ふふ・・・」
黒木マリア「ゲームはゲームでも デスゲームの運営なので~す!」
田中ロト丸「デスゲームって・・・」
雪宮リコ「映画とかでよくある・・・?」
黒木マリア「そ、うちの会社が新たに始めた事業でね 道楽をやり尽くした金持ち相手のBtoCよ」
黒木マリア「借金の個人情報買ってきて そいつ誘拐してぇ。大金チラつかせて ときに顔面グーパンで参加させてるのよ」
黒木マリア「そんなまともなルートで人を集めることも あれば、いつの間にか参加しちゃってる ”サプライズパターン”もあるわ」
黒木マリア「いろんな可能性を探りながら 絶賛事業拡大中よん♪」
田中ロト丸「ホントお世話になりました。退職します」
黒木マリア「待て待てい! ガチだって!」
雪宮リコ(・・・サプライズパターン!?)
田中ロト丸「・・・モニターの向こうの人たち 何飲んでるんです?」
黒木マリア「醤油一升だけど?」
田中ロト丸「徴兵逃れたい人が昔飲んだやつ!」
田中ロト丸「もうふざけてますって!」
黒木マリア「醤油一升飲んだら死ぬって 婆っちゃが言ってたし!」
田中ロト丸「そりゃ大量に飲んだら死ぬかもですけど 飲まない選択もできますよね?」
黒木マリア「飲んでもらわないと困る!」
田中ロト丸「困る! とかじゃなくて!」
田中ロト丸「なぜかこれ、飲んだら死ぬ競技に なっちゃってるんで なら飲まなきゃいいのでは?」
黒木マリア「・・・」
黒木マリア「・・・・」
黒木マリア「・・・・・」
黒木マリア「あっ!」
田中ロト丸「すごい間使って気づいたなー 遅かったなー」
黒木マリア「ものすごい怖い感じで 「飲め」と念押しだ。雪宮!」
雪宮リコ「やれます!」
田中ロト丸「バカすか!? これ、全員飲まなかったらルール上 どうなるんです?」
黒木マリア「引き分けかな」
田中ロト丸「なんだろう デスゲームの引き分けってなんだろう?」
雪宮リコ「こういうのって ゲーム制作現場でもあるよね?」
田中ロト丸「“仕様バグ”ってやつだな 仕様の段階でシステムが破綻した状態だ」
雪宮リコ「・・・・・・」
田中ロト丸「どうすんすか? にんにくおろし醤油で刺し身食ってる じいさんもいますよ?」
田中ロト丸「てかこれ、本当はリアル系の イベント運営かなんかでしょ?」
黒木マリア「ふっ、そこまで言うならば分かった・・・」
黒木マリア「ゲームに参加スル諸君。一回ストップ チョット仕様を練り直してカラ再開とスル」
田中ロト丸「って止めるんかい!」

〇秘密基地のモニタールーム
田中ロト丸「ったく、これ初戦ですよね? なら制限時間ギリで死ぬかどうか みたいなのはNGでしょう」
田中ロト丸「開始1、2分で一人は死ぬルールにする そうすれば参加者に緊張感が生まれる わけです」
黒木マリア「つめが甘かったか・・・今後の糧にしよう」
雪宮リコ「出来の悪いゲーム・・・ プレイヤーからの最大のけなし言葉で 言うところの・・・」
田中ロト丸「まあ、”クソゲー”ってやつだ、こりゃ」
雪宮リコ「ふふ・・・」
雪宮リコ「やっと言った♪」

〇黒背景
  雪宮の言葉の意味を理解する間もなく
  ドスッドスッと鈍い音が響き頭の中を直接
  金槌で叩かれたような衝撃が襲う。
  視界が停電のようにバツッと途切れ
  すぐに光が戻ったかと思えば空間が
  ぐにゃりと大きく歪んでいた。
「な・・・にを・・・?」
雪宮リコ「これ」
  雪宮の手には”クソゲー”と書かれた
  紙切れがかすかに見えた
  その傍らには拳銃を持った黒木マリア。
黒木マリア「田中ロト丸、NGワード発言。脱落」
雪宮リコ「先に気づいた私の勝ちよ」
雪宮リコ「死は思わぬところからヤッテクルものデス」
  視界は再び闇に覆われていた。
  彼女らの声だけは聞こえていた気がする。
  俺の意識は急速に失われていく。
  まるで、風に吹かれた砂のように──

コメント

  • こちらがデスゲームを製作して眺める側の運営だとばかり思っていたら、私もおなじく見事に騙されました。あぁ殺されるところでした。それにしてもこんなサプライズパターンに気づいたリコはやり手ですね。

  • 最後まさかの展開で、驚き面白かったです!
    いつのまにかデスゲームに参加させられているなんて、せっかく期待を胸に入った会社だったのに、怖すぎですね。

  • 最後のどんでん返しにやられました!俯瞰していているかと思いきやデスゲームに参戦していたとは。早くに気がついた同期の彼女は本当に賢い!わたしも最後まで気が付かず同じ道を辿りました!

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