お父さんは映画監督になりたかった(脚本)
〇女の子の部屋
夢見カナ「ふおぉぉぉぉぉ〜〜っ!」
夢見カナ「ファンクエの新キャラ紹介来た!」
夢見カナ「カッコいい!」
夢見カナ「かわいい!」
夢見カナ「発売日まであと1週間か・・・」
夢見カナ「プレイし出したら、ゲーム三昧だろうから」
夢見カナ「今のうちに自作ゲームのシナリオを 進めておこう!」
夢見照士「カナ、ヘッドホン貸してくれ」
夢見カナ「お兄ちゃん、いたの」
夢見カナ「会社は?」
夢見照士「今日はリモートで会議だと〜。 逆にめんどい・・・」
夢見照士「お、またマンガ描いてるのか?」
夢見カナ「これはゲームシナリオ」
夢見照士「同人って、儲かるの?」
夢見カナ「儲かるわけないでしょ。 趣味よ、趣味」
夢見カナ「好きでやってんの」
夢見照士「でも、有名アニメの二次創作とか」
夢見照士「めっちゃ売れてんだろ?」
夢見照士「おまえもそれでバーンと稼いでくれよ!」
夢見カナ「アホか! そんなのは一部だけだし なにより──」
夢見カナ「二次創作には愛が必要なんだよ!!」
夢見照士「お、おう・・・?」
夢見照士「じゃあ、ヘッドホン借りてくわー」
夢見カナ「まったく お兄ちゃんは、なんもわかってない!!︎」
夢見カナ「ていうか」
夢見カナ「競馬新聞持ってたじゃねーか!!」
夢見カナ「仕事しろ仕事!!」
夢見カナ「・・・あ〜 なんかやる気なくした」
夢見カナ「動画でも見て インスピレーションをもらうか・・・」
夢見カナ「いや、ここはあえて・・・」
夢見カナ「昔の名作DVDだ!」
〇レンタルショップの店内
夢見カナ「お父さーん」
夢見杉照「お、カナ。 店を手伝いに来てくれたのか?」
夢見カナ「手伝うほど流行ってないでしょ」
夢見カナ「DVD観たいんだけど、オススメある?」
夢見杉照「オススメと言われても どういうのが観たいんだ?」
夢見カナ「なんか、いいインスピレーションを もらえそうな?」
夢見杉照「そんなの最初からわかってたら お父さんも観てるよ」
夢見カナ「あ、これ、好きな俳優さん」
夢見杉照「カ、カナ! それは・・・!」
夢見カナ「ん?」
夢見杉照(娘に男性同士の 恋愛モノとは言いづらい・・・!)
夢見カナ「あ、これBLだ」
夢見杉照(BLってなんだー!?)
夢見カナ「お父さん、これ借りる」
夢見杉照「えっ!?」
夢見杉照「本当にいいのか!? そ、それは・・・!!」
夢見カナ「え、なに?」
夢見杉照(む、娘よーーーー!!)
〇綺麗な部屋
夢見カナ(なんだ、 お母さんテレビ観てんじゃん・・・)
夢見テンナ「あら、カナ。どうしたの?」
夢見カナ「ううん、なんでも〜」
夢見カナ(お母さんの唯一の楽しみを奪うのは 気が引ける・・・)
夢見カナ「しゃーない、一旦返してくるか」
〇レンタルショップの店内
夢見杉照「あれ、カナ。 DVD観るんじゃなかったのか?」
夢見カナ「お母さんが、テレビ観てた」
木部「おう、杉ちゃん」
夢見杉照「いらっしゃい、木部っさん」
夢見カナ「いらっしゃーい」
木部「お、おう、カナちゃん・・・」
木部「杉ちゃん、これ、こっそり 返却頼むわ」
夢見杉照「了解〜」
木部「おっ、杉ちゃん、それは──」
夢見杉照「ええ、昔の8ミリフィルムです」
夢見カナ「懐かしい〜。 子供の頃、見せてくれたよね」
夢見カナ「え、この一際でかいフィルムは?」
夢見カナ「「サルビアのように」?」
夢見杉照「それは、」
夢見杉照「実は、昔お父さんが撮った映画だ!」
夢見カナ「えー!?」
夢見杉照「お父さん、映画監督に憧れてな」
夢見杉照「当時知り合いだった女優の谷さんに 相談してみたんだ」
夢見杉照「そしたら、出演OKもらって、」
夢見杉照「谷さんの後輩の俳優さんにも 出演してもらえたんだ!」
夢見カナ(え、それって──)
夢見カナ(私が同人ゲームでプロの声優さんに 出演してもらったのと一緒じゃん・・・!)
夢見カナ(血は争えないのか・・・!)
木部「実は、俺も出てるんだ!」
夢見カナ「ええっ!?」
夢見杉照「あの時、木部っさん すごく気合い入れてくれて」
夢見杉照「役になりきるために、家から衣装 着てきた! って張り切っちゃって」
〇田園風景
〇レンタルショップの店内
夢見カナ「お父さん、これ観たい!」
夢見杉照「そうか!」
夢見杉照「でも、それがなぁ・・・」
夢見杉照「再生する映写機が壊れて」
夢見杉照「修理しようにも 部品がもう作られてないらしくて・・・」
夢見カナ「えっ、どうにもならないの!?」
夢見杉照「実は、このフィルムをDVDに変換して くれるサービスがあるんだが──」
夢見カナ「なんだ、できるんじゃん!?」
夢見杉照「それが・・・昔頼もうとしたら 料金が高すぎて、手が出なかったんだ」
夢見カナ「昔・・・?」
夢見カナ「それってどれくらい昔?」
夢見杉照「数年前かなぁ」
夢見カナ「数年前!?」
夢見カナ「待って、お父さん!」
夢見カナ「諦めるのはまだ早い!」
夢見カナ「最近は調べたの!?」
夢見杉照「いや、もう諦めてた・・・」
夢見カナ「今から調べる!!」
夢見杉照「えっ?」
夢見カナ「ほら、お父さん!」
夢見カナ「ここなら、数千円でやってる!」
夢見杉照「本当だ・・・!」
夢見カナ「こういうのは 年月が経てば、料金が変わる事が多いの」
夢見カナ「諦めずに調べてよね!」
夢見杉照「お父さん、スマホとかパソコンとか 苦手だからなぁ・・・」
夢見カナ「原始人か、現代に生きろ」
夢見カナ「いい加減、スマホ持ってよ」
夢見杉照「いやぁ。お父さんはいいよ」
木部「スマホなら、俺も持ってるぞ」
夢見杉照「えー」
夢見カナ「ほら〜、木部っさんだって 持ってるんだし」
夢見カナ「それに、今はスマホひとつで 映画が作れる時代だよ?」
夢見杉照「そうなのか?」
夢見カナ「そうなんです」
夢見杉照「いや、うーん・・・ しかし、家計がなぁ・・・」
夢見カナ(しまった、これはお小遣いアップが 言いづらくなった・・・)
〇綺麗な部屋
数日後──
DVDになった
「サルビアのように」が届いた。
夢見テンナ「懐かしいわ〜。 お父さん、頑張って作ってたものね〜」
夢見杉照「いやぁ、谷さんと みんなの協力があってこそだよ」
夢見杉照「あと、カナが 諦めずに探してくれたおかげだよ」
夢見カナ「ええっ?」
夢見カナ「照れるな〜」
夢見照士「早く観ようぜ!」
〇山並み
「サルビアのように」
〇山の中
〇綺麗な部屋
「・・・・・・」
夢見カナ「こ、これは・・・」
夢見照士「なんというか・・・」
夢見杉照「どうだった!?」
夢見カナ「グロい」
夢見杉照「えっ?」
夢見照士「あと、無駄な時間多すぎ」
夢見杉照「酷評ー!」
夢見テンナ「まあ、子供向けでは・・・ ないわよね・・・」
夢見カナ「なんで山のシーンとか、移動シーンとか 無駄に長いの?」
夢見杉照「それはなぁ・・・」
夢見杉照「お父さん、長編映画を作りたくて!」
夢見杉照「2時間映画にするために わざと何もないシーンを長くしたんだ!!」
夢見照士「うわ、意味ねぇ──」
夢見杉照「辛辣!!」
夢見カナ「お父さん」
夢見カナ「リベンジしよう、リベンジ!」
夢見杉照「リベンジ?」
夢見カナ「スマホ買って、映画撮ろう!」
夢見カナ「そんで、私を主演女優に!」
夢見照士「いいな、俺も出たい!」
夢見テンナ「えっ、お母さんも出るの?」
夢見杉照「えっ? えっ?」
夢見杉照「よ、よーし、やるかぁ!」
〇綺麗な部屋
数日後──
夢見杉照「こ、これがスマホ・・・!」
夢見カナ「そんな、伝説の何かを手に入れた みたいに・・・」
夢見杉照「どうやるんだ?」
夢見カナ「カメラはここを押して・・・」
夢見カナ「ここを押すとシャッター」
シャシャシャシャシャシャシャ
夢見カナ「押しすぎ押しすぎ! 連写されてる!!︎」
夢見杉照「映画はどうやって撮るんだ?」
夢見カナ「カメラを動画モードにして・・・」
夢見カナ「はい、撮ってみて」
〇綺麗な部屋
〇綺麗な部屋
夢見カナ「ちょっと待ってて」
夢見カナ「ちょうどいいから 着替えてくる!」
夢見カナ「もう一回撮って、お父さん」
〇綺麗な部屋
〇綺麗な部屋
夢見カナ「では、さっき撮った二つの動画を 編集アプリで合体させまーす」
夢見杉照「アプリ?」
夢見カナ「お父さんには ソフトの方が馴染みがあるかな」
夢見カナ「必要そうなアプリは ダウンロードしておいたから」
夢見杉照「ダウンロード?」
夢見カナ「だめだこりゃ」
〇綺麗な部屋
〇綺麗な部屋
夢見杉照「これは、“一瞬で早着替え”!」
夢見杉照「こんな簡単に〜!」
夢見カナ「お父さんも、覚えてね」
夢見杉照「くっ・・・老眼がキツい・・・」
夢見杉照「タイトルを入れたい!」
夢見カナ「入れられるけど──」
夢見杉照「気に入ったフォントがない」
夢見杉照「サルビアの時みたいに 僕がデザインしたのを入れたいな」
夢見カナ「あー、それは」
夢見カナ「できなくはないけど 今は手間がかかる」
夢見カナ「違うアプリでタイトルだけ作ろう」
夢見杉照「この、緑はなに?」
夢見カナ「背景を緑にしておくと」
夢見カナ「緑の部分が透明になって 簡単に合成できるの!」
夢見杉照「あっ、それは知ってる! “ブルーバック”の合成方法だな!」
夢見カナ「今は、クロマキー合成って言うらしいけど」
夢見カナ「とまあ、こんな感じで」
夢見カナ「お父さんは、まず映画のシナリオ よろしくね!」
〇商店街
〇山の中
夢見カナ「──よって、この事件」
夢見カナ「あなたが犯人です!!」
夢見テンナ「ええー そんな」
夢見テンナ「お母さんは 犯人じゃないわよ」
「カーーーーット!!」
〇山の中
夢見杉照「そこは“お母さん”じゃないでしょ」
夢見テンナ「しまった」
夢見カナ「しかも、超棒読み」
夢見杉照「お母さんに、セリフ言わせるの 無理だなぁ」
夢見テンナ「えぇ〜」
夢見カナ「お兄ちゃんと死体役変わって」
夢見照士「よっしゃあ!」
〇レンタルショップの店内
木部「おーい、杉ちゃん」
夢見杉照「いらっしゃい、木部っさん」
木部「映画、撮ってるんだって?」
木部「俺も入れてくれよ!」
〇商店街
木部「おお、俺は見たぞ!」
木部「怪しい男が走っていくのをな!」
夢見カナ「その男の特徴は?」
木部「黒い服で──」
夢見カナ(木部っさん、お母さんより上手!)
〇綺麗な部屋
こうして──
なんとか映画が出来上がった
タイトルは──
〇山の中
夢見カナ「バクロ探偵 漠 芦世奈《ばく ろせな》!」
夢見カナ「あなたの黒歴史 暴露します!!︎」
「いや、探偵守秘義務w」
「暴露したらあかんw」
動画サイトへ投稿し、
それなりの評価をもらった
〇レンタルショップの店内
数日後──
木部「ヨォ、杉ちゃん」
夢見杉照「いらっしゃい」
木部「あれからどうよ?」
木部「また、映画作るんなら 呼んでくれよな!」
夢見杉照「あ〜・・・」
木部「どうした?」
夢見カナ「実はさ〜」
夢見カナ「スマホ壊しちゃって」
木部「は?」
〇レンタルショップの店内
夢見杉照(自分でやってみよう)
〇レンタルショップの店内
夢見杉照「僕が触ると、いつもこうなんだよね〜」
木部「杉ちゃん・・・」
木部「いい加減、現代に生きろよ・・・」
夢見カナ「それ、私のセリフ!」
数日後、
スマホは修理されて無事に戻ってきた。
家族みんなで映画を創るって面白いですね。
家族みんなのいい点(?)を出し合えば、きっといい作品ができるはず…カナ頼りになりそうですが。
作り手さんがどんな作品を創りたいかであらゆるジャンル、展開の作品ができるので、楽しい作品になりそうです。
癒されました( ´ ▽ ` )
お父さんに色々やらせてみるという意味では、家族というテーマに合ってていいですね!!
イイネを辿って見にきてみました。
昔、8ミリフィルムやビデオで自主映画を撮ってたので懐かしかった…