わらやまは序盤神の夢を見るか(脚本)
〇撮影スタジオ(机あり)
わらやまさん、本日は取材を引き受けていただきありがとうございます
わらやま「いえいえ、なんでも聞いてください」
ありがとうございます
わらやまさんといえばTapNovel界隈ではコンテスト初日投稿系序盤神として有名ですが
何か秘訣とかってあるんですか?
わらやま「秘訣なんて大袈裟なものはないです」
わらやま「ただ私は森羅万象への思考を常に行なっているので」
わらやま「コンテストテーマが出た時はその内容にあわせて」
わらやま「思考のチューニングをして創作しています」
わらやま「数学者が数式や命題に対して日常生活を送る中で思考するようなものです。 並行思考というやつですね」
並行思考
なるほど
現在TapNovelでは『序盤神決める』というワードで初日投稿するムーブメントがありますが、どうお考えですか?
わらやま「いやー、私が言うのも何ですけど、皆さん凄いですよね」
わらやま「どれもこれも面白い作品ばかりですし」
わらやま「まぁ、序盤神なんていくらでもいていいんじゃないですか?」
わらやま「多神教ですからね ヒンドゥー教とか神道と一緒で」
ヒンドゥー教とか神道と一緒
わらやま「そろそろ次の仕事があるので、 次が最後の質問でいいですか?」
あ、はい!
わかりました
では、ズバリ
あなたにとって『序盤神』とは?
わらやま「決まっているでしょう」
わらやま「『生き様』です」
生き様
〇高層ビルの出入口
(そろそろかしら)
「わらやまさんよ!!」
ファンの女性「こっちに目線くださぁい」
ファンの女性「ちょっとアンタ私の方が序盤に並んでたんだから自重しなさいよ!!」
ファンの女性「何言ってんのよ!!私の方が序盤だったわよ!!」
わらやま「ははは、参りましたね」
わらやま「皆さん等しく序盤神ですから 喧嘩はしないでください」
ファンの女性「J(ジョバンシン)!! J(ジョバンシン)!! J(ジョバンシン)!!」
わらやま「ふぅ」
〇車内
わらやま「マネージャー、この後のスケジュールは?」
13時からは常磐線の車輌ラッピング広告デザインについて打ち合わせ
18時からショパンピアノコンサートのゲスト挨拶
その後は明日締切の公式作品、
序盤投稿のすゝめVol.13の執筆となっています
わらやま「おいおい、忙しすぎるだろ」
わらやま「もう年の瀬だからゆっくりしたいなぁ」
わらやま「忙しいのは年の序盤だけにしてほしいよ」
わらやま「はっはっは」
・・・客さん
お客さん
わらやま「なんだぁ?」
???「お客さん」
〇シックなバー
マスター「お客さん!!」
わらやま「う・・・」
マスター「やっと起きたか・・・」
マスター「あんた飲み過ぎだよ いくらうちが安いからって」
わらやま「・・・すみません」
わらやま(そうか、つい眠ってしまっていたか)
わらやま(嫌な夢を見たもんだ)
新人タップライター「・・でよ、今回初めてコンテスト参加しようとしてんだけどさぁ」
新人タップライター「なんかZwitter上で『序盤神』とかいうワケわかんねぇワードがあったんよ」
新人タップライター「ちょっと調べたら『わらやま』とかいう奴の造語だったワケ」
友人「なんだよソレ笑」
友人「ソイツ何?すごいワケ?」
新人タップライター「それがさぁ」
新人タップライター「全然すごくないんだわ」
新人タップライター「入賞した事もないし、予選通過もほとんどしてねぇし」
新人タップライター「マジで投稿が早いだけなんだわ」
友人「序盤神笑」
新人タップライター「ほんとソレ」
わらやま「・・・」
わらやま「マスター・・・酒だ」
マスター「あんたもうよした方が──」
わらやま「いいから」
マスター「・・・わかったよ」
わらやま「・・・」
マスター「ほら」
わらやま「分かってんだよ・・・俺だって・・・」
〇シックなバー
わらやま「結構飲んじまったな・・・」
チーフ「ようやく婚活パーティーが終わった・・・」
チーフ「ん?」
チーフ(アレは・・・わらやま!?)
チーフ(えらく神妙な面持ちだな・・・)
チーフ(これも何かの縁・・・か)
チーフ「お兄さん・・・隣いいかい?」
わらやま「ん?あ、ああ・・・」
チーフ「マスター、ビール」
マスター「あいよ」
チーフ「相変わらずここは早くて安いな」
わらやま(早くて安い・・・)
チーフ「そして美味い」
わらやま「・・・」
チーフ「どうした?元気がないな?」
わらやま「いや・・・別に」
チーフ「私で良かったら話してみたらどうだ」
わらやま「え、いや、悪いんで・・・」
チーフ「悩みがあるんだったら吐き出したほうがいい」
チーフ「若者の悩みを聞くのも年長者の務めだ」
わらやま「・・・」
わらやま「実は私はタップライターなんですが」
わらやま「今やっている投稿スタイルを貫くかどうか悩んでいるんです」
わらやま「コンテストの序盤・・・ まぁ、ほとんどが初日なんですけど」
わらやま「そのタイミングで投稿するスタイルで」
わらやま「フォロワーの皆様からは概ね好意的にとられていると思うんですけど」
わらやま「心の中の鬼が囁くんです」
〇炎
鬼「早い投稿をするだけなど誰でもできます」
鬼「Teihinshitsu Novel Makerですね」
鬼「どこにアイデンティティを見出してるの?」
鬼「滑稽だね」
鬼いさん「お主の作品はキャラが弱いんじゃよ」
鬼いさん「物事の上べを撫でているだけじゃからな」
〇シックなバー
わらやま「平たく言えば自信を無くしているんです」
チーフ「・・・」
チーフ「わらやまよ」
わらやま「な、なんで俺の名前!?」
チーフ「さっきの話でわかったよ」
チーフ「何を隠そう、私もタップライターだ」
チーフ「お前さんは『序盤神わらやま』だろ?」
わらやま「は、はい(恥ずかしっ!!)」
チーフ「私もお前さんの作品は読んでいるよ」
わらやま「え、あ、ありがとうございます」
チーフ「これは私の一個人の意見だが」
チーフ「お前さんの投稿スタイルと作品の品質は切り分けて考えろ」
チーフ「私が思うに」
チーフ「コンテストで結果が出なくて不安なんだろうが」
チーフ「お前さんはTapNovelの運営を疑っているか?」
わらやま「・・・いえ」
チーフ「であれば全力でぶつかるだけだ」
チーフ「そこには投稿のタイミングがどうかは関係がない」
わらやま「・・・仰る通りかと」
チーフ「実はな」
チーフ「私もかつては序盤神と呼ばれていた」
〇古い畳部屋
もう30年近く前の話だ
私はとある文学賞受賞を目標に執筆活動をしていた
少しでも目立てればと募集開始の日に編集部に着くように郵送していたよ
だが、なかなか結果は出なかった
〇雑誌編集部
で、当時の私は、自分の作品が実は届いていないのではと思い、編集部に直接持ち込む事にした
今思えばひどい若気の至りだな
するとそこで
若かりし頃のチーフ「あそこが文藝芥川直木の編集部だな」
若かりし頃のチーフ「ん!?」
編集者「今回もまたたくさんの作品が投稿されてくるんすよね」
水島編集長「だろうな」
編集者「読まれもしないのに」
若かりし頃のチーフ(なっ!?)
水島編集長「夢を追う若者ってのは愚直で面白いよな」
水島編集長「本当は毎回デビューさせたい新人に箔付けるための出来レースなのによ」
編集者「また今日あたり”あの人”から届くんすかね」
水島編集長「ああ、いつも募集初日に届けてくるイカれた奴だろ」
「通称、序盤神笑」
「わははははは」
若かりし頃のチーフ(・・・)
その日以来・・・
私は筆を折った
〇シックなバー
わらやま「・・・」
チーフ「信頼できる運営の元、コンテストに参加出来る」
チーフ「それだけでも幸せな事だ」
わらやま「あなたは」
わらやま「そんな辛い経験がありながら、何故今タップライターを?」
チーフ「お前さんのおかげだ」
チーフ「お前さんがキュンで52番目、長編で8番目、怪人で1番目・・・」
チーフ「序盤に投稿している様に昔の自分を重ねた」
チーフ「今一度勇気をもらったのだ」
わらやま(そ、そんな影響が)
チーフ「私だけではない」
チーフ「そもそもコンテスト序盤への投稿は、ことコンテストの受賞を目指すのであればメリットは無いが」
チーフ「序盤神がミーム化する事で一種のお祭りのようになっている」
チーフ「かくいう私も次のコンテストでは序盤神決めるつもりだ」
わらやま「・・・」
チーフ「そして、これはお前さんに限った話ではないが」
チーフ「誰のどんな作品でも」
チーフ「読んだ人に影響を与え」
チーフ「心を震わせる可能性はある」
チーフ「たとえ受賞作品でなくても」
わらやま「・・・」
チーフ「ま、作品の品質向上のためにしっかりした基礎と工夫を凝らすことは当然必要だがな」
わらやま「俺・・・」
わらやま「そもそも序盤投稿を始めたのは」
わらやま「単純に初日なら目立つだろうと」
わらやま「準備期間が短くても、ここまでやれるんだぞっていう誇示・・・」
わらやま「そんな気持ちでした」
わらやま「でも今は」
わらやま「あなたや」
わらやま「全国にいる序盤神のみんなと」
わらやま「コンテストを盛り上げていきたい」
わらやま「そして誰でもいい」
わらやま「序盤神から受賞者が出て欲しい」
わらやま「そんな気持ちでいっぱいです」
チーフ「そうか」
わらやま「ここで飲んだくれている場合じゃないっすね」
わらやま「俺、帰ってすぐ執筆します!!」
わらやま「見せつけてやりますよ!!」
わらやま「『生き様』を!!」
わらやま「今日は本当にありがとうございました!!」
わらやま「一緒に頑張りましょう!!」
チーフ「若き序盤神よ」
チーフ「思いっきり悩むといい」
チーフ「今は辛くどん詰まりのように感じていても」
チーフ「それは行き止まりではなく越えるべき壁で」
チーフ「輝かしいタップライター人生の」
チーフ「”序盤”なのかもしれないのだから」
面白かったですっ❣️
まさかのショパン君の名前が
文章中に出るとは❤️🤣
あと、チーフ、顔変わり過ぎ‥🤣
それと辛い思い出話のシーンは
フィクションですよね⁉️酷過ぎる‥
基本、早かろうが遅かろうが自分自身楽しんでやればいいと思ってます。笑(私は)そんな考えもあるのかと思わされる一作品でした
全ライターに刺さるであろうお言葉で満載ですね!序盤神……最高じゃないですか!ファーストペンギンのごとく、後続の流れを決定づける存在なのですから。序盤投稿しか勝たん、じきにそういう空気になると信じています。