好きな人が男装した私を好きだった件について

大松雪草

誰か嘘だと言ってくれ(脚本)

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大松雪草

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〇見晴らしのいい公園
伊織「好きだ。俺と・・・付き合ってほしい」
  密かに想いを寄せていた伊織からの告白に、私は目を丸くする。
  嬉しい・・・けど、素直に喜べない。
  だって今、私──
那月(男装してるんだもん!!)
  ちなみに髪はウィッグだ。
那月(ど、どうしよう・・・)
  伊織とは3ヶ月前、オンラインゲームで知り合い仲良くなった。
  ゲームが得意な私はネットでも男性キャラを使っていて、
  またリアルでも電車で頻繁に痴漢の被害にあっていた私は、外出時は男装するようになっていた。
  だから伊織は、私が女だということを知らない。
  それに男装してる私が好きってことは──
那月「伊織は・・・その・・・男が好きなのか?」
伊織「・・・うん」
  まじか!!!!
伊織「・・・引くよね」
那月「ううん!耐性はあるから!」
  主に漫画とか同人誌で。
伊織「そっか、よかったぁ・・・」
那月「・・・」
  ホッとする伊織を見ていると、複雑な気持ちになる。
  なぜなら私は女だから。
那月(本当のことを言った方がいいよな)
那月(でも、本当のことを言ったら伊織とは付き合えない・・・)
伊織「そろそろ・・・返事を聞いてもいいかな?」
  これ以上、伊織を騙すのはよくない。
  本当のことを言うんだ、那月!!
那月「俺で良ければ!!」
  私の馬鹿ー!!

〇テーブル席
  ──翌週
伊織「那月さ、ゲーム内のランクまた上がったでしょ?」
那月「へへっ。バレた?イベントも始まったから大忙しだよ」
伊織「今回のイベントコスチューム、かっこいいやつ多くない?」
那月「もう課金済み」
伊織「まじ!?・・・うわ、ほんとだ!」
  スマホのアプリを開いた伊織が、私のプロフィール画面を見て驚く。
伊織「相変わらず仕事が早いな、那月は」
那月「だろー?」
那月(・・・って、なに普通に過ごしてんだ私は!!)
  カミングアウトのタイミングを完全に逃したまま、一週間が経ってしまった。
  結局、いつものように伊織とゲームの話をしている。
那月(だけど・・・この時間がすごく好き)
  伊織とは趣味が同じだし、話も合うから一緒にいて楽しい。
  だから私は伊織を好きになったんだけど・・・。
那月(伊織は私のどこを好きになったんだろう?)
伊織「なに?」
那月「べ、別に!?なんでもないよ!」
  私は慌てて伊織から視線をそらし、目の前にあったケーキをガツガツと食べた。
那月「こ、ここのケーキうまいな!」
那月「そんなに甘ったるくないし、これなら俺、何個でも食べれそう!!」
伊織「そんなにおいしいなら一口ちょうだい」
那月「えっ・・・」
  伊織が椅子から腰を浮かす。
  気づいた時には、伊織の指が私の唇を優しくなぞっていた。
  それを伊織は、ペロッと舌で舐めて──
伊織「うん。おいしい」
  由々しき事態だ!!
那月「お、おおおおお前!公共の場で何やってんだ!」
伊織「イチャイチャしてる。ダメ?」
那月「ダメに決まってるだろ!」
伊織「なんで?だって俺たちもう──」
伊織「恋人同士、でしょ?」
那月「っ!」
  私にだけ聞こえるように、伊織が甘く囁く。
  乙女(私)の心臓はドキドキしてるけど、絵面はモロBLだ。
伊織「ははっ」
那月「笑うな!」
伊織「いつもゲームで無双してる那月しか知らないから、あたふたしてる顔は貴重かも」
伊織「可愛い」
那月「なっ!?」
  ボンッと顔が赤くなる。
那月「お前はまたそういうことを・・・!もう行くぞ!」
  幸せそうに笑う伊織の手を引いて、私はすぐに店を出た。

〇電車の中
那月(ドキドキして疲れた・・・)
那月(伊織は至って普通だし。私ばっかり振り回されてる)
  隣に立つ伊織を横目でチラリと盗み見る。
那月(私・・・伊織を騙してるんだよね)
那月(やっぱり本当のことを言おう。このままはよくない)
  そう覚悟を決めた時、誰かの手がお尻に触れたような気がした。
那月(この感覚・・・前にも・・・)
  私の反応をうかがうかのような触り方。
  不快感が体中に広がっていく。
那月(痴漢だ・・・。男の格好してるのに、どうして・・・)
那月(怖くて声が出ない・・・)
那月(誰か気づいて──!!)
伊織「おい、お前!なにやってんだ!!」
  伊織が私に触れていた男の手を捻りあげる。
伊織「次の駅で降りろ!!」

〇見晴らしのいい公園
那月「伊織、さっきは助けてくれてありがとう」
伊織「なに言ってんだよ。ゲームでは那月がいつも俺を助けてくれてるだろ?」
伊織「俺、そんな強くてかっこいい那月を好きになったけど」
伊織「ずっと思ってた。いつか・・・俺が那月を守ってあげたいって」
那月「伊織・・・」
  そんな風に思ってくれてたんだ・・・
那月「実は・・・昔からよく痴漢に遭うんだ」
伊織「那月、可愛い顔してるもんね・・・」
那月「そうじゃなくて!」
那月「実は、俺──」
  ウィッグをぐっと掴む。
那月「女なんだ!」
伊織「ええっ!?」
那月「ずっと騙しててごめん」
伊織「でも、話し方とか・・・」
那月「兄貴が2人いるんだ。だから元々こういう言葉遣いで・・・」
伊織「そんな・・・そんなことって・・・」
  伊織は声を震わせながら、両手で顔を覆っている。
那月(ショックだよな・・・)
那月(男の私を好きだって言ってくれたのに、本当は女だったんだもん・・・)
那月「本当にごめ──」
伊織「神様ありがとー!!」
那月「は?」
伊織「実は、那月のことが好きだって気づいた時、めちゃくちゃ悩んだんだ」
那月「えぇ!?でも伊織、男が好きだって・・・」
伊織「那月のこと男だと思ってたんだもん。そういうことになるだろ?」
那月「それじゃあ私たち、色々と勘違いしてたってこと!?」
伊織「そうなるね」
那月「なんだよ〜」
  芝生にペタンと座る私の前に、伊織がしゃがみ込む。
伊織「・・・俺さ。那月が男でも女でも関係ないのかも」
那月「え?」
伊織「那月の・・・全部が大好きだから」
那月「伊織・・・」
  秘密のない今なら、胸を張って伝えられる。
那月「私も!伊織が大好き!」

コメント

  • ほのぼのしたいいお話ですね。
    結局のところ男女は関係なくて、彼女自身が好きだったという、最高のハッピーエンドでした!
    二人ともお幸せに!

  • 伊織から好きだと言われた事で、本当は女だと告げることができなかったのは伊織の事が好きだからですかね。嫌われたくなかったのですかね。

  • いいお話しです!!ホッとしました。全部が大好きと受け入れてもらえるのってとても幸せですよね。ドキドキしながら読ませて頂きましたが最後は幸せでよかったです。

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