消灯屋ー幽守家のお仕事ー

夜缶

消灯屋のお仕事(脚本)

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夜缶

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〇ビルの裏
竹村拓「ハァッハァッ!」
竹村拓「クソがっ・・・! 何なんだよアイツら!!」
「まちなさーい!!」
竹村拓「きやがったっ!?」
幽守幸樹「ハァハァ」
幽守幸樹「逃げ足が早い・・・!」
幽守怜奈「確かあの人、陸上部だっけ?」
幽守幸樹「『依頼人』の話ではそうだったね」
幽守玲子「アイツは!?」
幽守怜奈「左に曲がった先」
幽守玲子「よっし! 二人とも走るわよっ!!」
「まてぇーいっ!!」
幽守幸樹「ちょっ。ママッ!?」
幽守怜奈「行っちゃった」
幽守幸樹「は、早く行かないと」
幽守怜奈「気配は?」
幽守幸樹「まだ感知できる範囲内」
幽守幸樹「けど時間の問題かも・・・」
幽守怜奈「分かった」
幽守怜奈「パパは先に行ってて」
幽守幸樹「怜奈は?」
幽守怜奈「大丈夫」
幽守怜奈「私は『あの人』の声が聴こえるから」
幽守幸樹「分かった。何かあったら連絡して」
幽守怜奈「うん」

〇ビルの裏通り
竹村拓「ハァハァ」
竹村拓「キ、キツイな──」
幽守玲子「追いつめたわよっ!」
竹村拓「マ、マジかよ」
幽守玲子「『その子』の身体から出てきなさい」
竹村拓「嫌に決まってるだろっ!」
幽守玲子「あーそう。これでも嫌かしらっ!」
竹村拓「は?」
竹村拓「あぶねぇっ!?」
竹村拓「どっから持ってきたその丸太!?」
幽守玲子「お店から貰ったのよ」
竹村拓「意味わかんねぇっ!?」
竹村拓「コイツの身体ぶっ壊れるぞっ!」
幽守玲子「あっ!? そうだった!」
竹村拓「イカれてんのかババァッ!?」
幽守玲子「何ですって!?」
幽守幸樹「追いついた!」
竹村拓「チャーンス!」
幽守幸樹「うわっ!?」
幽守玲子「あ、あなた!? 人前で抱きつくなんて!」
幽守幸樹「ご、ごめんそんなつもりじゃっ!」
竹村拓「うわ嫌なもん見ちまった」
幽守玲子「アッ?」
竹村拓「やっべ!」
幽守玲子「あっ!」
幽守怜奈「逃しちゃった?」
幽守幸樹「残念ながら」
幽守怜奈「そう」
幽守玲子「ごめんね二人とも」
幽守幸樹「謝ることないよ」
幽守幸樹「僕も不注意だったからお互い様だよ」
幽守玲子「あなた・・・」
幽守怜奈「ねぇ」
幽守幸樹「ん?」
幽守怜奈「いつまで抱き合ってるつもり?」
「ハッ!?」

  幽有町(ゆうゆうちょう)
  この町では幽霊が度々現れて
  人々を困らせていた
  しかしそんな幽霊達を懲らしめる──
  もとい成仏させる者達もいた
  幽霊に触れられる者
  幽霊が見える者
  幽霊の声が聴こえる者
  彼らが幽有町を護っているのだ
  そんな彼らの名は──

〇シックなリビング
  消灯屋・事務所にて
竹村智恵「それで取り逃がしたと?」
幽守幸樹「申し訳ありません」
竹村智恵「いいえ。あなた達は一生懸命だもの」
竹村智恵「責めるなんて理不尽なこと」
竹村智恵「私にはできないわ」
竹村智恵「それに──」
竹村智恵「あなた達しか、 この町の幽霊は成仏させられないもの」
幽守幸樹「竹村さん・・・」
竹村智恵「それにしても」
竹村智恵「何故よりにもよって私の孫が」
幽守幸樹「大丈夫です竹村さん」
幽守幸樹「絶対に我々が」
幽守幸樹「消灯屋が責任持って拓君を助けます」
竹村智恵「えぇ」
竹村智恵「どうかよろしくお願いします」
幽守玲子「ふぅ!」
幽守幸樹「き、君か。ビックリした」
幽守幸樹「どこに行ってたんだい?」
幽守玲子「た」
幽守幸樹「た?」
幽守玲子「拓君が見つかったわ!」
幽守玲子「よい、しょっと!」
竹村智恵「拓!?」
竹村拓「う、うーん」
竹村拓「あれ?」
竹村智恵「お、お婆ちゃんだよ? 分かるかい?」
竹村拓「婆、ちゃん?」
竹村拓「どしたの婆ちゃん?」
竹村智恵「拓!!」
竹村智恵「良かった!」
竹村拓「えっえっ!? どしたの?」
竹村拓「ていうかここどこ!?」
幽守幸樹「ここは消灯屋の事務所」
竹村拓「消灯屋って幽霊を成仏させる・・・」
竹村拓「つーことは」
竹村拓「俺、幽霊に取り憑かれてたのか」
幽守幸樹「理解が早くて助かるよ」
竹村拓「ごめんな婆ちゃん」
竹村智恵「ううん。アンタが無事なら何でもいい」
竹村智恵「ありがとうございます」
幽守玲子「いいえ。仕事ですから」
幽守玲子「分かってるわあなた」
幽守玲子「幽霊のことでしょ?」
幽守幸樹「うん」
幽守玲子「ギリギリで逃げられたわ」
幽守幸樹「あれ」
幽守幸樹「怜奈は?」
幽守玲子「へ?」
幽守玲子「怜奈なら後ろに──」
幽守玲子「いない!?」
幽守幸樹「まさか」
幽守幸樹「あの子一人で・・・!?」

〇川に架かる橋の下
幽守怜奈「・・・」
幽守怜奈(こっちの方で声が聴こえた)
幽守怜奈(はずだったけど)
幽守怜奈(聴こえなくなっちゃったな)
幽守怜奈(どうしよう──)
「あれ? 怜奈?」
朝川亜香里「こんな所で何してるの?」
幽守怜奈「亜香里」
朝川亜香里「あっもしかして」
朝川亜香里「お仕事中?」
幽守怜奈「そうよ」
朝川亜香里「それなら私も手伝うよ!」
幽守怜奈「えっ」
幽守怜奈「亜香里、これは遊びじゃ──」
朝川亜香里「分かってるって!」
朝川亜香里「ちょうど暇だったし!」
朝川亜香里「よーし! 幽霊さんを探しに行こう!」
幽守怜奈(ホントに分かってるのかな)

〇ゆるやかな坂道
幽守幸樹「どこで拓君を?」
幽守玲子「河川敷の方だけど・・・」
幽守玲子「かなり時間が掛かったから・・・」
幽守幸樹「仕方ない」
幽守幸樹「二手に分かれよう」

〇公園のベンチ

〇中庭

〇川に架かる橋の下
幽守玲子「怜奈・・・」
幽守玲子(私の馬鹿! 何でいつもこう不注意なの・・・!)
幽守玲子(早く怜奈を見つけなくちゃ──)
名もなき幽霊「・・・」
幽守玲子「今のは・・・!」
幽守玲子「さっきの幽霊・・・!?」

〇殺人現場
朝川亜香里「うーん」
朝川亜香里「見つからないね」
幽守怜奈「亜香里」
幽守怜奈「そろそろ帰った方がいいんじゃ」
朝川亜香里「怜奈はどうするの?」
幽守怜奈「私はまだ探す」
朝川亜香里「じゃあ私も探すよ」
幽守怜奈「な、何でそうなるの」
朝川亜香里「だって友達だもん」
幽守怜奈「し、知らないからね」
朝川亜香里「えー何が?」
  俺に襲われるからか?
幽守怜奈「!?」
幽守怜奈「今の声・・・!?」
朝川亜香里「怜奈?」
  そんなビビるなよ
  ちょっと体を借りるだけだ
幽守怜奈(まさか!?)
幽守怜奈「亜香里!!」
朝川亜香里「れ、怜奈っ!?」
幽守怜奈(憑依)「ふふ・・・」
朝川亜香里「怜奈・・・?」
幽守怜奈(憑依)「あっはははっ!!」
幽守怜奈(憑依)「馬鹿な女だなぁ」
幽守怜奈(憑依)「他人を庇うなんて・・・」
朝川亜香里「怜奈──」
朝川亜香里「アガッ!?」
幽守怜奈(憑依)「うるせぇなぁ」
幽守怜奈(憑依)「俺は怜奈って名前じゃねぇよ」
幽守怜奈(憑依)「まぁ。自分の名前は忘れたけど」
朝川亜香里「あ、あなた」
幽守怜奈(憑依)「あん?」
朝川亜香里「どうして、人に乗り移ろうと・・・?」
幽守怜奈(憑依)「どうして?」
幽守怜奈(憑依)「そりゃ満たされるからだ」
朝川亜香里「満たされる・・・?」
幽守怜奈(憑依)「だって俺より幸せそうな奴らによ」
幽守怜奈(憑依)「一泡吹かせられるんだぜ?」
幽守怜奈(憑依)「こーんなこと、やらなきゃ損だぜ」
朝川亜香里「あ、あなた」
朝川亜香里「だっさいわね」
幽守怜奈(憑依)「何だと!?」
朝川亜香里「後、私と怜奈は他人なんかじゃない・・・」
朝川亜香里「友達、よ!」
幽守怜奈(憑依)「うるせぇよ!」
幽守怜奈(憑依)「何が友達だよっ!」
朝川亜香里「グァッ!?」
幽守怜奈(憑依)「さっさとくたばれアマがっ!」

「うちの娘に何てこと言わせてんのよ!」
名もなき幽霊「ガハッ!?」

〇殺人現場
朝川亜香里「ケホッケホッ」
幽守玲子「大丈夫亜香里ちゃん!?」
朝川亜香里「おばさん!」
幽守玲子「一人で歩けそう?」
朝川亜香里「は、はい」
朝川亜香里「あ、でも怜奈が・・・」
幽守玲子「怜奈のことなら大丈夫」
朝川亜香里「で、でも」
幽守玲子「大丈夫だから」
幽守玲子「亜香里ちゃんも早く帰らないと」
幽守玲子「心配してたわよ?」
朝川亜香里「ありがとう。おばさん」
幽守怜奈(憑依)「邪魔しやがって!」
幽守玲子「さぁ。娘の身体から離れなさい」
幽守怜奈(憑依)「やなこった」
幽守怜奈(憑依)「な、何──」
幽守玲子「隙あり!」
幽守怜奈(憑依)「ぐぁっ!?」
幽守玲子「羽交締め成功!」
幽守怜奈(憑依)「く、苦しい・・・!」
幽守玲子「あら。これでも加減してるわよ?」
幽守怜奈(憑依)「このゴリラババァッ!!」
幽守玲子「ほんと可愛くないわねっ!」
幽守怜奈(憑依)「だがどうするつもりだ?」
幽守怜奈(憑依)「ただ自分の娘を痛めつけてるだけじゃないか」
幽守玲子「あなたを成仏させるための準備よ」
幽守怜奈(憑依)「何?」
幽守玲子「ね?」
幽守玲子「あなた」
幽守幸樹「遅れてごめん」
幽守玲子「グッドタイミングよ」
幽守幸樹「さぁ幽霊さん」
幽守幸樹「もう寝る時間だよ」
幽守怜奈(憑依)「!?」
幽守怜奈(憑依)「い、嫌だ」
幽守怜奈(憑依)「嫌だ嫌だっ!!」
幽守幸樹「始まりがあれば終わりもある」
幽守怜奈(憑依)「嫌だっ!!」
幽守幸樹「朝日が昇り、夜の帳が下りる」
幽守怜奈(憑依)「何で俺だけ苦しまなくちゃならないんだっ!」
幽守幸樹「おやすみなさい」
幽守怜奈(憑依)「いやだぁぁあ!!?」
幽守幸樹「消灯」
幽守怜奈(憑依)「ウガァアッッ!!?」

〇おしゃれなリビングダイニング
幽守怜奈「あれ」
幽守怜奈「ここ、どこだろ・・・」
「嫌だよ・・・」
名もなき幽霊「もうやめてよ母さん・・・!」
名もなき幽霊「暴力振るわないでよ・・・!」
名もなき幽霊「痛いっ!?」
名もなき幽霊「痛いよ・・・!」
名もなき幽霊「俺、何も悪いことしてないよ・・・!」
名もなき幽霊「痛い!?」
名もなき幽霊「嫌だ・・・嫌だよぉ・・・!!」
幽守怜奈(これは)
幽守怜奈(あの幽霊の記憶)
幽守怜奈(酷い・・・)
幽守怜奈(でも、今の私じゃ何もできない)
幽守怜奈(ごめんね)
名もなき幽霊「痛い・・・痛い・・・!」

〇殺人現場
幽守怜奈「ん・・・」
幽守怜奈「ここ、は・・・」
幽守玲子「怜奈!!」
幽守怜奈「ママ・・・」
幽守玲子「一人で突っ走って・・・!!」
幽守玲子「心配したんだから・・・!」
幽守怜奈「ごめんママ・・・」
幽守幸樹「身体は大丈夫そうかい? 痛まない?」
幽守怜奈「うん」
幽守怜奈「大丈夫だよパパ」
幽守幸樹「それなら良かった・・・」
幽守幸樹「ホントに無茶するな君は・・・」
幽守怜奈「ごめんパパ」
幽守玲子「さ! 帰ろう! 我が家に!」
幽守幸樹「そうだね」
幽守幸樹「帰ろう怜奈」
幽守怜奈「うん」
幽守玲子「夕飯どうする?」
幽守幸樹「遅くなっちゃったし、外食にしようか」
幽守玲子「それもそうね」
  許して・・・
  痛いのは嫌だよ・・・
幽守怜奈「私が許す」
幽守怜奈「あなたは充分苦しんだ」
幽守怜奈「もう苦しむ必要はない」
  ・・・
  ありが・・・とう・・・
「怜奈ー! 帰るわよー!」
幽守怜奈「今行くよ」
幽守怜奈「おやすみなさい」
幽守怜奈「幽霊さん」

  消灯屋・第一話
  『消灯』

コメント

  • 最後まで読んで、幽霊を成敗するのではなく成仏させる仕事という意味が分かりました。悲惨な記憶に縛られて彷徨う魂をこれ以上苦しまないようにゆっくり眠らせてあげるための「消灯」なんですね。家族三人にそれぞれの能力と役割があるのも見どころでした。

  • とても勇ましくユーモラスで温かい家族ですね。そして彼等の活動がすごく魅力的でした。いわゆる除霊のような作業だと思いますが、現実に需要高そうですね。

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