二・五次元からの侵略

たぴおかしんたろう

二階堂ちづるの場合②(脚本)

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〇女性の部屋
  さわやかな日差しのもと、ちづるは目を覚ました
  軽く背伸びをし、あくびをすると急な空腹に襲われた
  昨夜、晩御飯を抜いたことを思い出すとちづるはリビングへ向かった

〇おしゃれなリビングダイニング
  テーブルにはご飯、味噌汁、焼き鮭
  白い湯気が食欲をそそらせる
  みそ汁をすするとだしの風味が口いっぱいに広がった
  鮭を箸で切り分けご飯と一緒にほおばる
  鮭の塩見が効いていたのか
  普段は小食のちづるがごはんを2膳完食してしまった
  ちづるは食器を流しへ片付けると洗面所へ向かった

〇白いバスルーム
  顔を洗うために鏡の前へ立った瞬間
  
  ちづるは初めて自分に起きた変化に気がついた
  ちづるは眼鏡をつけていなかった
  小学二年生の夏を境にちづるの視力は急激に低下していった
  
  それからちづると眼鏡は一心同体といってよかった
  鏡の前の自分をまじまじと見つめてみる
  
  鏡に映った姿は眼鏡のない自分としか思えなかった
  自分の体に起きた変化に驚きを隠せないちづるであったが
  
  朝の喧騒がちづるに戸惑う暇を許さなかった

〇ゆるやかな坂道
  ちづるは身支度を済ませると家を飛び出した
  
  朝の新鮮な空気が心地いい
  ちづるは弾む足取りで歩き出した
  
  ちづるの長い髪が揺れている
  今日は髪を三つ編みにする気分にはなれなかった
  ちづるは元来おとなしめの性格ではなかった
  幼少期活発な女の子だったちづるは
  日曜朝に放送している魔法少女物のヒロインにあこがれ、髪を伸ばし始めた
  無邪気に魔法少女にあこがれるちづるだったが
  
  皮肉にも憧れのヒロインに近づくほど
  長い髪がちづるの活動を阻害していった
  ちづるが邪魔な長い髪をおさげにしようと思い立つ頃には
  室内で本を読む今のちづるは完成していた

〇教室
  教室のドアを開けるとちづるはいつものように無言で自分の席に向かった
  クラスメイトが見知らぬ女の子の存在に気づくと
  皆、ちづるの長い髪が放つ異様な妖気に魅了された
  席に座り、イヤホンを耳につけ
  お気に入りの音楽を流そうとしたちづるに
  いつもは気にもとめないクラスメイトの話し声が聞こえてきた
  「あれちづる?」
  「コンタクトにしたのかな?」
  「結構かわいくね?」
  クラスメイトの話題が自分、しかも自分の風貌であることに気づくと
  ちづるは気恥ずかしくなってトイレに駆け込んだ

〇女子トイレ
  ちづるは誰もいないトイレの洗面台で自分の姿を見た
  自分が見られていることを意識すると
  
  急に化粧気のない肌の些細なくすみや
  髪のほつれが気になってきてしようがなくなった
  人に見られることに羞恥心を覚えたちづるは
  この日、何もせず
  ずっと下を向いて過ごした

〇女性の部屋
  図書室には向かわず、家に帰ってくると
  ちづるは母の化粧台を物色し始めた
  ちづるは化粧品一式を自室に持ち込むと
  
  鏡台の前に座り、ネットで調べておいた情報を頼りに化粧をし始めた
  髪をとかし
  薄くファンデーションを塗り
  眉、まつげを際立たせ
  口に朱を刺す
  すると、鏡の前に別人が現れた
  ちづるは鏡の中に現れた異世界の住人に魅了され続けた
  やがて、玄関のドアが開き、母が帰ってくるのを知ると
  ちづるは慌てて化粧を落とし始めた

次のエピソード:二階堂ちづるの場合 完

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