家具家電家のクリスマス(脚本)
〇広い玄関(絵画無し)
オトヤ「実家には帰りたくねえ」
オトヤ「だが!クリスマスぐらいは帰るのも息子の役目・・・!」
オトヤ「ただいま!帰ったぜ」
オトヤ「おい!どうなってんだよ!」
オトヤ「おやじ!」
父「どうだ!レンジが似合うだろ?」
オトヤ「似合うだろ?じゃねーわ!」
オトヤ「なんで電子レンジ着てんだよ!おかしいだろ!」
父「父さんは教えてきたはずだ。家具家電を着こなすようにと」
オトヤ「着こなしたくねーわ!ってか家具家電は着るもんじゃねーだろ!」
父「ほら!父さんの頭のレンジでチキンが温められたぞ!」
オトヤ「ほら!じゃねえし!頭のレンジで温めたもんなんか食いたくねーし!」
オトヤ「母さんは?母さんは何をやってんだ?夫がレンチン野郎でいいのか?」
〇広い和室
オトヤ「おふくろ!帰ってきたぜ!」
母「おかえり。元気そうじゃないか」
オトヤ「タンス着こなしてるじゃねーか!」
母「収納こそ生活の知恵。私は収納を極めたの」
オトヤ「収納を極めたからって収納家具を着るこたぁねーだろうよ!」
母「何言ってるの。うちがこういう家系なのは知ってるでしょ」
オトヤ「いやこんな家系ねーわ!」
父「寂しいなあ。お前も小さい頃は家具を着こなそうと頑張ってただろ」
オトヤ「小さい頃の話なんざ覚えてねーわ!」
母「私の左足の収納にはアルバムが入っている」
オトヤ「いやどうやってデカいアルバムを足に収納できるのよ?」
母「たたんでるのさ。私はたたむプロだからね」
父「父さんもレンジごとたたまれて押し入れに詰め込まれたことあるぞ」
オトヤ「どんな夫婦よ!」
母「ほら見なさい。3歳の頃のあなたは椅子を着こなそうと頑張っていた」
父「椅子を着こなしあらゆる者を座らせた先祖に憧れていた」
オトヤ「椅子王だろ?そんな伝説、今じゃ信じてませんわ」
母「ほらアルバム見なさい。扇風機じいちゃんと一緒に撮った写真」
父「扇風機じいちゃんはな。昔から全身に扇風機を着ててさ。いつも言っていたよ」
父「「人が普通に扇風機を着る時代がくる」と!」
父「みんなバカにしたさ。俺も自分の父親がおかしなことを言ってやがるとバカにしたもんさ」
父「ところがどうだ!最近ではマジで扇風機付きのジャケットが売っている!」
オトヤ「夏場に作業着の人が着てるやつな!いや確かにあれはすげえよ!ちょっと前まで扇風機着るなんておかしいことだったのに」
父「今やリアルに存在するヒット商品さ!じいさんは時代を先取りしていたんだ」
母「私達は時代の最先端を走っているのよ!」
オトヤ「ちくしょう!もっともらしいこと言いやがって!」
オトヤ「俺は家具家電を着るなんてクレイジーなことやりたくねえんだ!」
オトヤ「出て行く!」
父「寂しいことを言う・・・う!」
父「うううう!」
オトヤ「オヤジの様子がおかしい!」
母「家具暴走!家具家電を着るうちに精神が蝕まれ理性を失う現象よ!」
父「カグカグ!カグワー!」
〇畳敷きの大広間
父「ぐわー!」
オトヤ「オヤジが変身した!」
母「危険レンジモード!」
母「レンジは取り扱いを誤ると危険なモノ!まさにお父さんは今危険なレンジ状態よ!」
オトヤ「ほら言わんこっちゃない!」
オトヤ「家具家電を着こなせと言ったオヤジがこのざまだ!」
母「危ない!炎が飛んできた!」
〇屋敷の大広間
オトヤ「く・・・この姿は見せたくなかったが・・・しのごの言ってらんねえ」
オトヤ「家具和式・・・家電術!」
オトヤ「ヘッドフォンシールド!」
母「全身に巨大なヘッドフォンを装着し炎から身を守った!」
母「ふふふ・・・やるじゃない。さすが息子!」
母「「かぐわしい」という言葉は・・・「香」が「くわしい」、雅な良い香りがするという意味・・・」
母「というのは後付け!元は「家具和しい」と書き「家具」と人間が「調和」している状態を表していたのよ」
オトヤ「嘘つけ!」
母「息子よ・・・あなたは今まさに「家具和しい」!」
母「我が家系は代々家具を着こなすことで家具を用いた術を使えるようになった・・・」
母「これが「家具和式」!」
母「息子よ!家具和式で父の暴走を止めるのだ!」
オトヤ「めんどくせー」
〇実家の居間
オトヤ「オヤジ!目を覚ませ!オヤジの好きな曲を聴かせてやる!」
オトヤ「家具和式音声術!アンダースローヘッドフォン!」
母「なんと!ヘッドフォンをアンダースローで投げて相手の頭に装着させた!」
暴走父「うう!」
母「ヘッドフォンからの音を聴いて動きが止まった!」
オトヤ「オヤジ!正気を取り戻せ!」
暴走父「ううう」
オトヤ「ダメだ!なかなか戻らない!」
オトヤ「ホームチェンジ!CDプレーヤー!」
母「CDプレーヤーに衣装チェンジした!」
母「ここまで音系家電を着こなせるようになってたなんて!言いなさいよ〜」
オトヤ「家具和式家電術ダンシングメモリーディスク!」
オトヤ「過去の家族会話などを記録したディスクを直接ぶつける!」
暴走父「ウガー」
暴走父「カ、カゾク!」
〇広い畳部屋
父「うーん頭がレンジレンジする」
オトヤ「やっと正気を取り戻したか!手間がかかるオヤジだぜ」
母「やったわね。さすがよ」
母「う!」
母「うぅ!体内時計が狂いだす!」
オトヤ「今度は母親かよ!」
〇風流な庭園
母「うおー」
変身母「このバカ夫がー!」
オトヤ「落ち着けおふくろ!」
オトヤ「ヤバい!クローゼットに両足が収納された!動けない!」
オトヤ「俺も収納されるのか!」
妹「エンター」
妹「デリート」
オトヤ「足のクローゼットが消えた!」
オトヤ「サンキュー妹!キーボードを使った家具和式はすげえぜ!」
妹「クローゼットをコピー、母の上にペースト」
オトヤ「やるじゃねえか妹!コピペ技で母をクローゼットに閉じ込めた!」
妹「でもこれ一時しのぎにしかならない」
変身母「たたーん!」
オトヤ「やべえ!クローゼットを破ってきた!」
オトヤ「ヘッドフォン投げ!」
オトヤ「ダメだ!ヘッドフォンがクローゼットに跳ね返された!」
オトヤ「クローゼットを投げてきた!閉じ込められる!」
妹「クローゼットをデリート」
オトヤ「おし!投げられたクローゼットを消してくれてサンキュ!」
妹「ひたすらデリートしてるけど間に合わないね」
オトヤ「ちくしょー!」
〇風流な庭園
「申し訳ない」
オトヤ「この謝罪の声は!」
兄「申し訳ない」
オトヤ「来た!兄貴!」
オトヤ「伝説の椅子王の生まれ変わりと言われる男!」
オトヤ「ハンパねえ椅子の着こなしだ!」
兄「申し訳ない」
オトヤ「謝罪の言葉と共に大量の椅子を飛ばす家具和式!『ビッグシャザイス』!」
オトヤ「強制的に!相手を座らせる!」
変身母「座らせられるー」
変身母「うう」
母「うーん、いい椅子」
オトヤ「椅子に座らせることで正気を取り戻した!さすがアニキだぜ!」
兄「遅れて申し訳ない」
オトヤ「アニキ!無駄に謝らないで!椅子が飛び散るから!」
母「母を正気に戻してくれてありがとう」
母「みんな成長したね!」
オトヤ「成長したね!じゃねーわ!暴走すんな!」
〇クリスマス仕様の畳部屋
父「いやあ家族が無事に揃って良かった」
オトヤ「無事と言えるのか・・・」
母「みんな家具家電が似合うようになったね!母は嬉しい」
妹「いや似合いたくはない。ってか暴走しないで欲しい」
オトヤ「そうだよ!夫婦喧嘩で暴走して家を半壊させたのも一度や二度じゃねえだろ!」
父「まあ細かいことは気にすんな!さあ!父さんの足のレンジで温めたチキンを食べよう!」
母「そうよ!今日はクリスマスパーティー!」
オトヤ「全くしょうがねえ両親だ」
オトヤ「まあ乾杯すっか」
父「カンパーイ!」
父「あ!」
妹「ちょっと!キーボードの上にシャンパンこぼさないでよ!」
妹「バカー!タイピングの刑!」
父「ぐわー!」
オトヤ「やべえ!今度は妹が暴走して高速タイピングで罵詈雑言を父に叩きつけている!」
オトヤ「なんだよもー!どうしてうちはいつもこうなるんだよ!」
兄「悪い。長男の僕がしっかりしてないから・・・」
オトヤ「いやアニキはよくやってるよ!謝らないでいいよ!」
兄「頼りない長男で・・・ごめんなさーい!」
オトヤ「うわー!」
長男の超土下座椅子が発動し一家は見事にイスまみれになった
これが家具家電家の日常だ
メリークリイスマス!
スチルが追加されてパワーアップしてる…😂笑わせて頂きました😂
家具は着る物のパワーワードが強い
このシュールな世界観好きです💕
夏場の作業着のおじちゃんが着ているアレは、確かに扇風機が付いてますね…!
まさに「扇風機を着ている」と言えますし、思わず納得してしまいました(笑)
色々な家電を着る時代が、実際にやって来るのかもしれないですね!
快亭木魚さんの『着る』という発想に、いつも驚かされてます!
面白いです✨