舞台に立つために

ホリコ

読切(脚本)

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〇ホールの舞台袖
  『さぁ!始まりました!!』
  『第13回超お笑いグランプリ!!
  準決勝です!!』
  『司会の...』
  ついにここまで来た...
拓夢「はじまったな...」
明「・・・あぁ」
拓夢「ネタ、飛ばすなよ?」
明「大丈夫だよ。 忘れるのが難しいくらい何度も練習したじゃないか?」
拓夢「・・・おぉ。 そうだよな」
  拓夢と明は売れない漫才師。
  しかし、地道に実力を伸ばしてきて
  大きなお笑い大会の準決勝まで
  たどり着く事が出来た。
明「だけど、トップバッターだなんて ツイているのかいないのかわかんないな...」
拓夢「良いじゃないか。 最初に俺らが1番面白いって思わせて そのまま勝ち残れば気持ちいいだろ!」
明「・・・そうだな! やってやるか!!」
拓夢「で、本番前に言うのもなんだけど・・・」
明「どうした?」
拓夢「莉奈に子どもが出来た」
明「え?本当に!?」
拓夢「おぉ!昨日分かったんだ! だから何としても準決勝、 突破してやる!!」
  莉奈は拓夢の彼女で
  デビュー当時から付き合っていたので
  明とも仲が良い。
明「そうか... さらに気合入れなきゃな...」
明「・・・実は 俺も言いたい事があるんだ...」
拓夢「ん、なんだよ?」
明「いや、もうすぐ出番だ。 終わったら言うよ!」
拓夢「...そうか。 よし、行くか!!」
  拓夢に言わないといけない。
  明が自殺したという事を。

〇怪しい部屋
  昨日の事だ。
  アルバイトから帰ってきたら、
  明が首を吊って自殺していた。
陽「え、 あ、明!!??」
陽「うわぁーー!!!!???」
  明と陽(ひかる)は双子。
  一卵性双生児で、他人から見たら
  見分けがつかないほど似ていた。
陽「なんで... 明日が準決勝じゃないかよ...」
  突然の事で頭が回らない陽。
  ふとテーブルを見ると
  『疲れた。』という遺言書みたいな物と
  明のスマホが置いてあった。
陽「暗証番号は...」
  誕生日だった。
  陽は明のスマホを見て
  自殺の原因を探ろうとした。
  朧げながらも
  それはすぐに分かった。
陽「何で...こんな事で...」
  明のスマホには
  明への誹謗中傷が残されていた。
  『拓夢が作るネタは面白いのに
  明のリアクションで台無しにしている。』
  SNSで明と拓夢の名前で検索をすると
  明への誹謗中傷が多いくらいだった。
  さらにはダイレクトメールで
  『拓夢とのコンビを解消しろ。』
  『せっかくテレビに出れたのに
  明くんは一回も発言が無かったね?笑』
  ファンなのか複数の人からの
  メッセージで溢れていた。
陽「こんな事になってたなんて...」
  一緒に住んでいたのに
  明の苦しみに気付かなかった...
  陽は自分への情けなさで
  今にも死にたい気持ちになった。

〇ディベート会場(モニター無し)
「どーも!ありがとうございました!!」
  大学生の時に明と陽はコンビを組んで
  サークルで漫才をしていた。
明「陽... 俺はやっぱプロになりたいよ!」
  明はプロを目指していた。
陽「・・・ごめん」
  しかし、引っ込み思案で人見知りな陽は
  プロになるだなんて考えていなかった。
  明と漫才を始めたのも
  大学で居場所が無い陽を見兼ねて
  明が無理矢理、漫才サークルに入れたためだった。
明「そっか... でも、俺はテレビに出る人気芸人になってやるからな!」

〇怪しい部屋
  明との思い出に浸っていた陽...
陽「もうすぐ、だったじゃないか...」
  しかし、ふとある事が陽の脳裏に浮かんだ。
陽「自殺したのは僕...?」
  自殺をしたのは明ではなく陽。
  明として明日の大会に出れば、
  明の夢は叶うかもしれない...
  幸い、というか
  明と陽は両親と死別をしている。
  明が死んだ事は陽しか知らない。
  明を応援している事だけが
  生き甲斐だった陽が、
  それを行動に移すのに
  そう時間はかからなかった。

〇ホールの舞台袖
「はぁ...はぁ...」
拓夢「やったな! まだ会場中が湧き上がっているよ!」
  出番が終わり、確かな手応えを感じた2人。
明(陽)「あぁ、やったな!!」
  明への応援が全てだった陽は
  ネタを完璧に覚えていた。
拓夢「...で、話ってなんだよ?」
明(陽)「あぁ...実は...」
明(陽)「陽が自殺した」
拓夢「はぁ!? 何言ってんだよ?? 笑えない冗談やめろよ!」
明(陽)「本当なんだ...」
明(陽)「拓夢には漫才に集中して欲しくて... 今まで黙っててゴメン...」
拓夢「本当なのか...?」
拓夢「何で...陽...」
  もちろん拓夢は陽の事を知っている。
  2人の住処にネタ作りで泊まり込みもしていた。
  そして...

〇黒
  明が自殺をした事も知っていた。
  昨日、陽よりも先に
  明の自殺現場にいた拓夢。
  明のスマホから、
  『お前はいつまで俺の足を引っ張るんだ!』
  自分とのやり取りのメッセージを消して
  現場から立ち去っていた。
  自分の女性ファンを使って
  明への誹謗中傷を送らせていたのも拓夢だった。
  明を精神的に追い詰めていたのは拓夢だった。

〇ディベート会場(モニター無し)
  学生の時に拓実は
  明と陽の漫才を
  観客として見ていた。
  その時に目を付けたのは陽だった。
  陽は天性の物を持っている。
  実際、明より陽の方が面白かったのだ。
  しかし、お笑い養成所で出会ったのは明だった。

〇黒
  こうも上手く行くとは思っていなかったが、
  無事に陽を相方にする事が出来た拓夢。
拓夢「これからよろしくな!陽!! 2人で人気芸人になろうぜ!!」
  大会の結果はまだ出てないが、
  確かな手応えを感じた拓夢だった。

コメント

  • 最後すっごく怖かったです。
    才能のある方を選びたかったのはわかりますが、自殺に追い込むまでやったら、人としてダメな気がします。
    でも、このままこのコンビは人気になっていくんだろうなぁとも思うんですよ。

  • 陽の才能を見込んで大学生の時からコンビを組むことを考えていたとは。そこで明を自殺に追い込む事で見事にコンビが組めたなんて凄すぎです。漫才師以外の才能があります。

  • いやぁまさかまさかの展開でした。
    でも最初からの計画通り…。
    いつかはバレるのかなぁ…。
    それともこの先ずっと影武者でやっていくのか…。

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