かかし村の恐ろしい秘密

gaia

かかし村(脚本)

かかし村の恐ろしい秘密

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〇田園風景
渡海好男「かかし村...」
渡海好男「無事ついたけど...帰りてえ...」
  田舎だった。
  緑、山、畑、木の家、木。
  5拍子揃った田舎だった
  俺、渡海好男(とかいすきお)は雑誌の編集者だ。
  雑誌といっても大きな雑誌ではない。
  マニアが好むようなオカルト雑誌である。

〇山間の集落
  今回のテーマは「不思議な村」
  そこでこの「かかし村」の調査に派遣されたのが俺ってわけだ。

〇田園風景
  しかし俺は既に帰りたがっていた。
  原因はこの村にある。
  本来は「安賀村」(やすがむら)という名前があるのだが
  流石「かかし村」と呼ばれることだけある
渡海好男「めっちゃ顔リアル」
渡海好男「かかしの顔、めっちゃリアル」
渡海好男「こええええよ!!こえーよ!!」
渡海好男「さっさと聞くこと聞いて帰りたいぜ!」
  雑誌歴2年、取材歴2年の俺だが
  相変わらず不安になる場所だぜ
  このかかし村っていう不思議な村は
  田畑に並ぶかかしにイケメンや美少女がいればまた別なんだが
  おばあちゃんとかおじいちゃんとか、この村に住んでそうな人々の顔をしたかかしなのだ

〇寂れた村
飯仲「よくきてくださいました」
飯仲「渡海さんだね」
飯仲「遠いところからごくろうさんでござった」
渡海好男「は、はい!ありがとうございます」
  飯仲さんは、最初取材の電話をした時すごく怖かった。

〇黒
  「深夜にかかしに悪さをしにきたり、村を荒らしにくるなら病院送りを覚悟しておけよ」
渡海好男「お、俺はそ、そんなことするような人間じゃないですよ!」
渡海好男「それより、前にテレビで若い雑誌の人が村に来て欲しいっていってましたよね!?」
  「...」
  「わかりました!」
  「お気をつけていらしてください!」

〇寂れた村
  怖い人を想像してたけど、めっちゃいい人
  正直あのクソ怖い電話から既にビビっていたのだ。

〇古民家の居間
飯仲の奥さん「よくいらっしゃいました」
飯仲の奥さん「若い人にたくさん来て欲しいでね」
飯仲の奥さん「村のPRの件よろしくお願いしますね」
  飯仲さんの奥さんもすごくいい人だ
  俺は嘘をつく罪悪感にちくりと胸が痛んだ
  最初は載せちゃえば後の祭りだって思ってたけど
  俺、おばあちゃん子だった

〇古民家の居間
渡海好男「おばあちゃんの作るごはんうますぎっす!」
飯仲の奥さん「ありがとね 渡海さんがよければ毎日作ってあげるよ」
飯仲「この村に渡海さんみたいな若い男性がいたらよかったんでござんすがね...」
渡海好男「そういやこの村若い人見ないっすね 何かご存知ないですか?」
飯仲「...」
飯仲の奥さん「...」
  まずい!!バレたか!?

〇古民家の居間
飯仲「娘は、手先が器用でね」
  なんか急に始まったぞ
飯仲「かかしを作ったのも、娘なんだ」
飯仲「しかし、かかし職人になるといったっきり行方が分からなくてね」
飯仲「都会で聞かないかい? 倉橋由香って名前を」
飯仲の奥さん「渡海さん」
渡海好男「は、はい!」
飯仲の奥さん「ここが有名になったらまた、娘が戻ってきてくれると信じてるんです」
飯仲の奥さん「どうか、よろしくお願いします」

〇古民家の居間
  俺は嘘をつくのが苦手だ。
  すぐ顔に出ちまう
  バレてないといいが、どうだろうか。
渡海好男「...」

〇黒
  かかし村
  東京の若者たちが4人。
  ここに旅行に行ったっきり、行方不明になっている村。
飯仲「深夜に絶対に家から出てはいけませんよ」

〇寂れた村

〇田園風景
渡海好男「...」
飯仲「どこに逃げるんだね」
飯仲の奥さん「最後の一人が、オカルト雑誌のルポライターっていうのは本当だったんだね」

〇田園風景
渡海好男「どうしたんですか?お二人共」
飯仲「お前が娘を殺した最後の一人だな」
飯仲の奥さん「逃げようったってそうは無駄だよ」
渡海好男「やだなぁ」
渡海好男「何言ってるんです?」
飯仲「ワシらの娘は村で唯一若い娘だった」
飯仲「村中の皆から可愛がられている、優しくて気立のいい子だった」
飯仲「辺鄙なところだから、バスで2時間かけて学校に通ってたんだよ、娘は」
飯仲「それなのにクラスメイトから酷いいじめにあったんだ」
渡海好男「...」
飯仲「娘は学校に通わなくなった」
飯仲「しかし、手先が器用なもんで、大好きな村の皆のかかしを作ったり畑仕事を手伝ってくれたんだ」
飯仲の奥さん「皆に恩返しがしたいってね」
飯仲「娘も大きくなったある日。 かかし村が有名になった」
飯仲「その時村にやってきたのが、娘をいじめていた主犯格グループ」

〇田園風景
  深夜にかかしに悪さをしようとしてたんでしょう
  その時娘が気づいて止めにいったんだ
  そしたら、男たちに酷い辱めを受けたそうでね。
  朝になったらそいつらはいなくなって、娘は納屋で首吊ってました

〇黒
飯仲の奥さん「娘の遺書に全部書いてあったで」
飯仲の奥さん「それからあたし、夜眠れんのよ」
飯仲の奥さん「今でも娘が、酷い目あっとるんじゃねえかってさぁ、さぁ、さぁ」

〇不気味
  俺の悪友たちが次々と行方不明になっていったのを知った
  俺は悪くない!
  俺は手足を押さえつけただけだ!

〇田園風景
渡海好男「飯仲に苗字を変えやがったんだな!」
渡海好男「卑怯なやつらめ!」
  行方不明になった俺の友達はどうしたんだよ!
  お前ら犯罪者だぞ!
「もういいか」
飯仲の奥さん「ええ、殺そう」

〇田園風景
  「うわぁあああ!!!!」
  村中の家から灯りがついて、皆がぞろぞろ出てきている

〇農村

〇村の眺望
渡海好男「はあっ、はぁっ」
  「お、お前ら何持ってるんだよ」
村人「やっと終わるんだね」
村人「よかったねえ、由香ちゃん」
村人「ちゃんとこいつの首。 みんなで切り落とすからね」

〇黒
  「な、何言ってんだよ」
  「洒落にならないだろ」
飯仲の奥さん「洒落にならんことしたのはどっちや?」
飯仲の奥さん「ゆうてみ?」
飯仲の奥さん「なぁ?なぁ?なぁ?なぁ?」
  なぁ?なぁ?なぁ?なぁ?なぁ?
飯仲「やれ」

〇手
  「うわあああああああ!!!」
  「やめろ!触るな!」
  「田舎女っていじっただけじゃねえか!なんで俺がこんな目にあうんだよ!」
  「俺のダチを...!警察に」

〇流れる血

〇墓石
飯仲「由香、みろ」
飯仲の奥さん「全員の首が揃ったよ」
飯仲の奥さん「皆かかしみたいに木に差し込んでやったわ」

〇骸骨
  「そこからよう見えるやろ?」

コメント

  • これほど恐怖を味わったのに、まとまりのある上質なストーリーなので読後感がいいのです。素晴らしい構成だと思います。主人公を単なるルポライターとインプットさせて、最後に事実を叩きつけられ、圧倒的なフィナーレでした。

  • 怖かったです。
    出だしとは大きくかわる話が、何とも言えず引き込まれていきます。
    でも因果応報なのかもしれません。
    自分がやったことに対する責任は取らなくてはね。

  • めちゃくちゃ怖かったです…。短い話のなかにすごくしっかりストーリーが詰まってて、ハラハラドキドキしながらあっという間に読めました。

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