マーダーファミリー

戸羽らい

人間讃歌(脚本)

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〇魔法陣のある研究室
職員「うわあぁ!」
職員「やめろ、来るな」
職員「ゔっ」

〇個室のトイレ
職員「・・・」
職員「・・・」
職員「・・・」
職員「ひっ・・・」
職員「・・・!」

〇学校のトイレ
「うわっ!ああ!」
佐藤 幸子「ふぅ」
佐藤 幸子「月が綺麗だなぁ」

〇近未来の手術室
職員「何をする・・・つもりだ」
佐藤 孔雀「うーん・・・楽しいこと?」
職員「やめろ・・・」
佐藤 孔雀「いいわねぇ。恐怖に歪んだその顔」
佐藤 孔雀「可愛いわぁ。食べちゃいたいくらい」
職員「や、やめ・・・」
  うわあああああ!

〇ビルの地下通路
  まずい、まずいぞ・・・
  このままでは、私たち全員──
佐藤 理人「こんばんは」
佐藤 理人「廊下は走っちゃいけませんよ」
  ウワ・・・ァ・・・
佐藤 理人「大丈夫ですか?」
佐藤 理人「酷く錯乱されているようですが」
  アアアアアッ!
佐藤 理人「おやおや」

〇地下に続く階段

〇殺風景な部屋
  ハァ・・・ハァ・・・
  まさか・・・そんな
佐藤 久美子「あれまぁ、所長さんかい?」
佐藤 久美子「こんな夜遅くまで、ご苦労様」
佐藤 士郎「・・・」
所長「ア・・・ア・・・」
佐藤 士郎「所長様。この度は私たちに家族を与えてくださり、心より感謝致します」
佐藤 士郎「本日はそのお礼をさせて頂きたく」
所長「クソが・・・」

〇地下に続く階段
所長「ウワッ」
佐藤 理人「貴方の実験は成功ですよ」
佐藤 理人「僕たちはもう、立派な家族です」
所長「す、すまないと思ってる。私もこんな非人道的な実験、反対したんだ・・・」
所長「でも、上が・・・」
佐藤 理人「何を謝る必要があるのです」
佐藤 理人「人道に背いているのは僕たちの方ですよ」
所長「・・・」
佐藤 理人「でも、僕はその“人道”とやらが、よく分からないのですが」
所長「ギャアアアアアッ!」

〇殺風景な部屋
  とある実験施設に収容されていた
  死刑囚6名が逃走
  国はこの事実を隠蔽し、
  秘密裏に捜索を開始する
  死刑囚リスト
  ①佐藤 桃源
  8名の男性を日本刀で襲い殺害。切断した首をコインロッカーに集めていた
  ②佐藤 孔雀
  知人の男性を殺害。殺人の他にも恐喝・詐欺・殺人幇助・死体遺棄など、多くの余罪があると予想される
  ③佐藤 理人
  早朝の駅にて、5名の男女をナイフで殺害
  ④佐藤 幸子
  眠っている両親をゴルフクラブでめった打ちにして殺害。その後、近所の小学校にて生徒を無差別に殺害
  あまりの凄惨さに事件は大々的に報じられ、未成年では特例となる死刑判決が下される
  ⑤佐藤 士郎
  拉致監禁・拷問の常習犯であり、被害者の数は25名にも及ぶ。監禁した被害者たちを殺し合わせるなどした
  ⑥佐藤 久美子
  親族の集まる宴会にて毒の入った豚汁を振る舞い9名殺害
  以上6名。彼らは皆同じ佐藤姓だが、血は繋がっていない

〇部屋の扉

〇一人部屋
佐藤 幸子「お兄ちゃん、ご飯だよ」
佐藤 理人「やぁ妹よ。いい朝だね」
佐藤 幸子「もう〜妹じゃなくて名前で呼んでよ」
佐藤 理人「ごめんごめん。馴れ馴れしいかなと思って」
佐藤 幸子「家族は馴れ馴れしくするものでしょ」
佐藤 理人「そうだね」

〇おしゃれなリビングダイニング
佐藤 孔雀「ちょっとー、あんたたち。冷めちゃうわよー」
「はーい」
男性「やめろ・・・やめてくれ」
男性「せめて妻だけは・・・」
女性「あなた・・・」
佐藤 桃源「フフ。武士の情けをかけても良いが」
佐藤 孔雀「かけなくていいわよ〜。こんな情けない男に」
佐藤 孔雀「泣くくらいなら吠えてみなさいよ〜」
佐藤 理人「流石に可哀想だよママ。男は弱い生き物なんだから」
佐藤 理人「僕は弱いから、彼の気持ちがよく分かるよ」
男性「うぅ、どうしてこんなことに」
佐藤 理人「分かるよ。理不尽だよねこんなの」
佐藤 理人「君は何も悪くないよ」
男性「なら・・・」
佐藤 理人「でもね、社会ってそういうものなんだ」
佐藤 理人「理不尽で不条理で、どうしようもない」
佐藤 理人「こんなのよくあること。いちいち泣いてちゃ・・・ダメ!」
男性「うぅ」
女性「どうして・・・私たちが何かしたの?」
佐藤 幸子「してないよ」
女性「なら、どうして」
佐藤 幸子「?」
佐藤 久美子「あらあら」
佐藤 理人「不条理に立ち向かうにはね、君自身も不条理になるべきなんだ」
佐藤 理人「拘束は解くよ。さぁ、僕たちを殺してごらん」
男性「え・・・」
佐藤 孔雀「ちょっと!何してんのよ!」
佐藤 孔雀「せっかくあたしが縛ったのに!」
佐藤 幸子「これで自由だよ〜」
女性「・・・」
佐藤 孔雀「ちょっと久美子さん!なんとか言ってやりなさいよ!」
佐藤 久美子「あらあら。ふふふ」
「・・・」
佐藤 理人「さぁ!僕たちを殺してごらん!」
佐藤 幸子「ん」
佐藤 理人「ほら、使いなよ」
男性「こいつらおかしい」
男性「に、逃げよう」
女性「う、うん」
佐藤 桃源「軟弱者!敵に背を向けるとは何事だ!」
佐藤 桃源「生き恥を晒すな!叩き斬るぞ!」
男性「うっ」
男性「はぁ、はぁ」
女性「あなた・・・」
男性「・・・」
男性「無理だよ・・・人殺しなんて」
男性「嫌だよ、なんで・・・」
佐藤 桃源「フ」
佐藤 理人「あははっ!冗談だよ冗談!」
佐藤 孔雀「全部ドッキリよ〜ん」
佐藤 孔雀「極限の状態で人は人を殺してしまうのか!という名の企画でした〜」
男性「え、ドッキリ?」

〇黒

〇おしゃれなリビングダイニング
女性「きゃあああ!」
佐藤 桃源「またつまらぬ男を斬ってしまった」
女性「あ、あ」
佐藤 幸子「お姉さんは幸せなんだね」
佐藤 幸子「幸せだから、人を殺せない」
佐藤 幸子「私も・・・幸せになりたいな」
佐藤 理人「なろうよ!僕たちはそのための家族なんだから!」
佐藤 幸子「・・・うん」
女性「やめてよ」
女性「貴方たちはどうかしてる」
女性「人間じゃない」
女性「人間じゃないからこんなことが」
佐藤 幸子「・・・」
佐藤 理人「人間だよ」
佐藤 理人「君たちと同じ、理性を持った人間」
佐藤 理人「人間だから──」
佐藤 理人「──殺すんだ」

〇黒

〇一戸建て
佐藤 理人「いい天気だ」
佐藤 幸子「うん」
佐藤 理人「居場所があるっていいね」
佐藤 理人「皆といると凄く安心する」
佐藤 幸子「私も」
佐藤 理人「皆といると、僕の悩みなんてちっぽけなものに感じるよ」
佐藤 幸子「悩みをちっぽけなものにするために通り魔したんだっけ?」
佐藤 理人「うん。僕って、些細なことで思い詰めてしまうからさ」
佐藤 理人「些細なことを、本当の意味で些細なことにしたかった」
佐藤 幸子「・・・」
佐藤 理人「でも、人を殺したところで全てが上書きされるわけじゃなかったよ」
佐藤 理人「悩みは、それよりも大きな悩みを抱えることで解決するものだと思ってたけど、そんなことなかった」
佐藤 幸子「・・・うん」
佐藤 幸子「殺しても殺しても・・・全てがどうでもよくなるくらい殺しても・・・」
佐藤 幸子「朝起きた時の前髪のうねりは、どうしても気になっちゃう」
佐藤 理人「全て忘れて、植物のように生きたいのだけど」
佐藤 久美子「ボケても、昔の記憶は覚えてるものよねぇ」
佐藤 久美子「忘れられたらいいのだけど」
佐藤 桃源「百人斬れば無の境地に辿り着ける。そう思ってはいるが・・・」
佐藤 孔雀「あたしたちは何人殺そうが変わらないのよ」
佐藤 孔雀「超人なんかにゃなれやしない」
佐藤 理人「結局、悩むのなら・・・」
佐藤 理人「皆と一緒に悩みたいですね」
佐藤 幸子「ふふ」
佐藤 幸子「捕まったら今度こそ死刑かな。怖いな」
佐藤 理人「怖いね〜」
佐藤 士郎「死よりも怖いものはあるぞ」
佐藤 久美子「あら怖い」

〇空
  こうして、僕たちの「日常」が始まった

〇テーブル席
佐藤 幸子「だ、大丈夫かな」
佐藤 理人「不安?」
佐藤 幸子「私たちの顔、報道されてるし、こんな変装じゃ・・・」
佐藤 理人「人の印象は髪型が7割だよ。大丈夫だって」
佐藤 幸子「それでも、お兄ちゃんは・・・」
佐藤 理人「みんな自分のことで精一杯だよ。僕の顔なんて気にしてる暇ないさ」
佐藤 幸子「・・・」
佐藤 理人「それにしても、幸子は未成年なのに顔を公表されたんだ」
佐藤 幸子「ネットニュース・・・だけど、被害者遺族の無念がどうとかで」
佐藤 理人「遺族感情、か」
佐藤 幸子「私の場合は本当に特例だよ。今の時代だからこそ、私みたいな悪は裁かれるのかも」
佐藤 理人「悪、ね。まるで正義がいるようだ」
佐藤 幸子「私、遺族の気持ちが分からない」
佐藤 幸子「遺族の気持ちに寄り添えるほど、心に余裕がない。自分のことで頭がいっぱい」
佐藤 幸子「頭がいっぱいいっぱいで、ぐちゃぐちゃだから、何度も人を殺してしまう」
佐藤 理人「「しまう」なんて言わないで。幸子はそれで良いんだから」
佐藤 理人「“遺族の気持ちが分からない君”の気持ちは誰にも分からない」
佐藤 理人「誰にも止める権利はないし、君が後ろめたさを感じる必要はない」
佐藤 幸子「・・・」
佐藤 幸子「後ろめたさ・・・かぁ」
佐藤 幸子「それよりも、怒りとか苛立ちが勝っちゃうね」
佐藤 幸子「自分の中の、自分だけの感情が私を動かす」
佐藤 理人「幸子らしいね」
佐藤 幸子「でも、いつか自分だけじゃなく」
佐藤 理人「・・・家族」
佐藤 幸子「大切な人を失う悲しみ、私も味わってみたいな」
佐藤 理人「幸子にとって両親は“大切な人”じゃなかったもんね」
佐藤 幸子「うん」
佐藤 幸子「私は家族が分からなかった」
佐藤 幸子「でも、みんなといることで「これが家族なんだ」って実感してる」
佐藤 幸子「人を思いやる気持ちとか・・・人間らしさのようなものが、分かりかけてきたような」
佐藤 理人「人間らしさ・・・ね」
佐藤 理人「幸子はさ」
佐藤 幸子「何?」
佐藤 理人「僕が死んだら悲しんでくれる?」
佐藤 幸子「うーん・・・」
佐藤 理人「えっ」
佐藤 幸子「悲しめたら、幸せなんだけどな」
佐藤 理人「・・・」
佐藤 理人「あははっ。じゃあ当面の目標は幸せになることだね」
佐藤 幸子「・・・うん」

〇空

〇空

〇おしゃれなリビングダイニング
佐藤 孔雀「ふぅ」
佐藤 孔雀「やっと片付いたわ」
佐藤 久美子「・・・」
佐藤 久美子「ルミノール反応が見られるわねぇ」
佐藤 孔雀「勘弁してくださいよお義母さん〜」

〇教室
  夜の校舎に閉じ込められた
  6人の少年少女
  『この中に人狼がいる』
  そう言い、教壇に立つ
  「先生」を名乗る謎の老人
  『この社会で生きていくためには、人間らしく在らねばならない』
  人間らしい者は受け入れられ
  人間らしくない者は追放される
  人間社会の縮図を模したゲームの中で
  本当の人間らしさとは何か?
  彼らは問うことになるだろう

〇放送室
  次回、マーダーファミリー
  『ヒューマン・ドラマ』
佐藤 孔雀「次回もサービスしちゃうわよ〜」
佐藤 久美子「あらあら・・・」

コメント

  • これは…最高!全員、実利ではなく観念的な理由で殺人を犯す、魂からの殺人鬼なのに、それぞれ違う価値観を持ってるのが凄い!キャラ紹介の時点でシビれました
    高いハードルを超えないと参加権は得られませんが、このキャラ達で自分が作品を描く事を想像すると、すごくワクワクします…!
    毎回ゲストをお迎えして殺す形でテンプレ化もできそう
    デスゲーム開催者がいたりルミノールいびりで笑いましたw
    言葉遊びも最高でした✨

  • ヤバイやつが多すぎて笑いました。
    20人のライターが人それぞれの倫理観や解釈で殺人犯達を調理すると思うと面白そうですね。

  • 倫理観が壊れていて好きです! 平和な食卓で人が殺されている感じや、人を殺したあとで平和なBGMが流れている感じが、本物のサイコパスですね! 人殺しなのに死ぬのが怖いと言うのもリアルです😱
    「幸せだと人を殺せない」という言葉が深いなと思いました。私たちが善良に生きる理由は、きっと善意を与えられて育ったからですよね。
    犯罪者主人公のお話が大好きで、私もこの家族の物語を書いてみたいと憧れます!

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