ようこそ『クラルスファミリア』へ!(脚本)
〇廃墟の倉庫
この時のアタシはまだ理解していなかった
『クラルスファミリア』とは何か
家族、その意味を──
〇デパ地下
強盗「金を出せ!!」
???「そこまでだッ!!」
強盗「誰だッ!!」
レオ「僕だッ!」
強盗「だから誰だッ!?」
ブルーノ「早過ぎだ、バカタレ」
強盗「何なんだ、お前ら!?」
強盗「手錠で繋がりやがって!!」
強盗「舐めんじゃねーぞ!!」
レオ「よっと」
ブルーノ「引っ張るな」
強盗「手錠で弾いた!?」
レオ「行け、ブルーノ」
強盗「ぐうぇッ!!」
強盗「なぜにボディプレス!?」
ブルーノ「からの逆エビ固め」
強盗「いでででででッ!!」
レオ「なんとまぁ」
強盗「やめて見ないでぇ!!」
〇デパ地下
強盗「クソッ!」
レオ「どうしてこんなことしたの?」
強盗「・・・家族のためだ」
〇ヨーロッパの街並み
強盗「ここ最近、よその連中がやって来てよ」
〇西洋の市場
強盗「みかじめ料が払えねェんなら出てけって 店を奪われちまった」
〇西洋の街並み
強盗「全部てめえらのせいだ!!」
〇デパ地下
レオ「ずっと1人で頑張ってきたんだね」
強盗「そうさ!」
ブルーノ「どけ、優男」
ブルーノ「家族のためっつったな?」
強盗「だから何だ?」
ブルーノ「俺の目を見ろ」
〇西洋風の部屋
〇デパ地下
ブルーノ「幸せな夢だなァ、おい」
レオ「全部ウソだったんだ」
レオ「悲しいね」
強盗「ッ・・・全部アイツらが悪いんだッ!!」
強盗「役に立たねェ金食い虫がッ!!」
レオ「貴方──!」
ブルーノ「もういい」
ブルーノ「夢を続きを見せてやるよ」
〇ヨーロッパの街並み
〇デパ地下
レオ「ドン・クラルスフィアの慈悲が あらんことを」
〇空
〇西洋風の部屋
ローザ「パーパ!」
ローザ「ど、どなたですか?」
レオ「父親(パードレ)はもう戻ってきません」
ブルーノ「選択肢は2つ」
ブルーノ「新たな家族を見つけるか」
レオ「僕らのもと──『クラルスファミリア』に 来るか」
ブルーノ「明日、答えを聞く」
〇空
〇噴水広場
〇西洋の街並み
〇古い洋館
〇洋館の一室
ローザ((ひっろ))
ミドナ「ようこそ『クラルスファミリア』へ」
ミドナ「案内役のミドナです」
ミドナ「よろしくお願いします」
ローザ「よ、よろしくお願いしますぅ~!」
ミドナ「そう固くならないでください」
ミドナ「まずは・・・そうですね 貴方に似合うドレスがありますの」
ミドナ「試していただけないかしら?」
ローザ「あ、はい!」
〇洋館の一室
ミドナ「よく似合っていますわよ」
ローザ「あ、ありがとうございますぅ~!」
マリー「何この下品なオンナ?」
ミドナ「ローザです。 今日からクラルスファミリアの一員ですよ」
ローザ((下品は否定しないのか))
マリー「ふぅん」
マリー「あたしはマリー。困ったことがあれば 頼ってくれていいのよ?」
ローザ「ありがとうございますぅ~!」
ブルーノ「やめとけ、ぶりっ子」
ブルーノ「そいつマジで何もできねェぞ?」
マリー「うきー! そんなことないしー!」
レオ「そうだよ、ブルーノ」
レオ「マリーは皿を割るのが得意じゃないか」
マリー「そーよそーよ!」
マリー「・・・えっ!?」
ブルーノ「くけけ、やっぱアホだな」
マリー「うきー!」
相談役(コンシリエーレ)「レオ様、ブルーノ様 ドン・クラルスフィアがお呼びです」
レオ「うぇ!?」
ブルーノ「勝手に突っ走ったからな」
レオ「だって、そうしなきゃ──!」
相談役(コンシリエーレ)「弁明はパードレの御前にて」
レオ「・・・はい」
ローザ「あの2人の手錠は何なんですか?」
ミドナ「『戒め』ですわ」
マリー「お互いに監視し合ってるの」
マリー「アイツら、2人で1人前なのよ」
ミドナ「いえ、逆ですわ」
ミドナ「2人で10人分の力を発揮しますのよ」
ミドナ「レオは触れたものに力を与えられますから」
ローザ「そうなんですかぁ~! すっご~い!」
マリー「うきぃ」
〇洋館の一室
ミドナ「さて、そろそろ始めましょう」
ローザ「何をですか?」
〇カフェのレジ
ミドナ「パン屋です」
ローザ((何で?))
マリー「表の顔は街の平和を維持する自警団」
マリー「裏の顔は街で暗躍するパン屋さん!」
ローザ((逆じゃね?))
ローザ「そうなんですかぁ~!」
ローザ「誰がパンを作っているんですかぁ〜?」
ローザ((え何で?))
ミドナ「いらっしゃい、ビリー 今日もご機嫌ですね」
ローザ((力つっよ))
ビリー「おはよう! 物騒な世の中だが だからこそ笑わないとな!」
ミドナ「ありがとうございました!」
マリー「とまぁ、こんな感じよ」
ローザ((マジで何もしてないな、この子))
〇空
〇古い洋館
ホロ「おかえりィ!」
ローザ((誰?))
ホロ「俺っちはホロ。庭師さ」
ローザ「はじめましてぇ~! ローザどぅえ~す!」
ホロ「可愛い嬢ちゃんだねェ」
ホロ「香りの良い豆が手に入ったんだが 1杯付き合っちゃくれないかい?」
???「眠れ」
ホロ「だはぁ~!」
クロエ「気をつけろ。 アイツは老若男女見境ない」
クロエ「わたくしはクロエ。 平和主義者だ」
ローザ((平和、主義者・・・?))
クロエ「なに、心配いらない。 医師ではないが慣れている」
ローザ「あっは~! よろしくお願いしますぅ~!」
ローザ((・・・えっ?))
〇地下の部屋
相談役(コンシリエーレ)「こちらが部屋になります」
ローザ((マジかぁ))
相談役(コンシリエーレ)「私の隣で良ければ空いておりますが」
ローザ「あはは~! ありがとうございますぅ~!」
ローザ「クソがッ!」
〇洋館の一室
ローザ「おはようございますぅ~」
ミドナ「おはようございます」
ミドナ「昨晩はよく眠れましたか?」
ローザ「おかげさまでぇ~!」
ローザ((背中痛った))
レオ「おはよう」
マリー「ジャラジャラうるさいんだけど」
ブルーノ「親父への文句か?」
マリー「うきぃ」
ミドナ「こら、マリーいじめも程々になさい」
ブルーノ「程々だ」
ミドナ「そうでしたか」
マリー「バカなの~!?」
ミドナ「好きなものほどいじめたくなるものですよ」
マリー「そっか!」
ブルーノ「やっぱアホだ」
〇カフェのレジ
〇カフェのレジ
ローザ「いらっしゃいま──」
ガラの悪い男「てめえらのせいで、俺はッ!」
ミドナ「ひいてください」
ガラの悪い男「てめえらのせいで俺は家族を!!」
ミドナ「愛想を尽かされたのでしょう?」
ミドナ「命があるのなら悔い改めるべきですわ」
ミドナ「これはドン・クラルスフィアのご慈悲」
ガラの悪い男「うるせぇ!!」
ミドナ「貴方に癒やしを」
ローザ「子守唄?」
ミドナ「せめて幸せな夢を」
〇空
〇古い洋館
ミドナ「職業柄、恨みを買うことが多いのですわ」
ミドナ「ですが」
ミドナ「私たちにはパードレより授かりし アストルムがあります」
ローザ「アストルム?」
〇西洋の街並み
ミドナ「ドン・クラルスフィア 主神ユピテルに選ばれし御方」
ミドナ「この街の自治を担い、私たちに アストルムをお与えくださりましたわ」
〇古い洋館
ミドナ「私のアストルムは癒やしの唄」
ミドナ「幸せな眠りを与えます」
マリー「ブルーノは直視した相手に幸せな夢を 与えるのよ!」
ローザ((いたんだ))
ホロ「お帰りローザちゃん!」
ホロ「今度、俺っちとデートしない?」
ホロ「美味しい紅茶の葉をもらったんでよォ!」
ホロ「だはぁ~!」
クロエ「名案だ。皆で出かけようじゃないか」
ローザ((え何で打ったの?))
ミドナ「みんなでピクニック! 素敵ですわ~!」
マリー「良かったわね 今度の休みは晴れみたいよ」
ローザ「わぁ~! 楽しみですぅ~!」
〇桜の見える丘
ブルーノ「おいこら、クソチビ」
マリー「うき~! ごめんてぇ~!」
レオ「いててててッ!」
ローザ((さみぃな))
ミドナ「風流ですわね」
ホロ「言えてらァ!」
ホロ「だはぁ~!」
クロエ「今日は運が良い」
ローザ((集団ポジティブむ~り~!))
クロエ「やや? どうしたローザ?」
ローザ「あ、えーっとぉ」
ローザ「やぁ~ん! アタシ雨だぁい好きぃ~!」
ローザ「酸性雨おいすぃ~↑↑」
ローザ((墓穴掘ったわ))
ローザ((でも))
ローザ「やぁ~ん! 一口飲んでみてくださいよぉ~!」
ブルーノ「あががががッ!」
※良い子はマネしないでネ!
レオ「ブルーノォ!」
ミドナ「やりますね」
ローザ((やっべ))
〇桜の見える丘
ローザ((ヘンな人たち))
ローザ((でも・・・))
???「よぉ」
〇桜の見える丘
レオ「ローザは?」
クロエ「矢文か」
ローザは預かった
指定の場所にドン・クラルスフィア
1人で来い
〇廃墟の倉庫
アルベルト「ついにこの街も俺のもんだ!」
アルベルト「嬢ちゃんには感謝しねぇとなぁ!」
ローザ((アタシの人生って・・・))
〇西洋風の部屋
〇西洋風の部屋
〇黒
ローザ((家族ってこういうものなんでしょ?))
ローザ((でも))
ローザ((もう、辛いよ・・・!))
ローザ((助けて・・・!))
???「ローザ!」
〇廃墟の倉庫
アルベルト「誰だッ!?」
レオ「僕だッ!!」
アルベルト「ドン・クラルスフィアはどうした!?」
レオ「ドンなんていないよ」
ブルーノ「俺たちの作り出した偶像 それこそがドン・クラルスフィア」
アルベルト「ふざけるな!!」
アルベルト「だったらその力は何だ!?」
ミドナ「逆ですわよ」
クロエ「パードレよりアストルムを 授かったのではない」
クロエ「アストルムという能力で ドンという偶像を作り出したのだ」
ホロ「親が家族をつくるんじゃねェ」
ホロ「家族が親をつくるんだ」
アルベルト「話が違ェじゃねェか!!」
ブルーノ「てんめえ・・・!」
アルベルト「粋がるなよ、駄犬」
アルベルト「てめえらのブキはわかってんだ」
アルベルト「やれッ!!」
ローザ「鎖が!」
アルベルト「繋がってなけりゃ無力ってな!」
レオ「え?」
アルベルト「は?」
レオ「別にずっと繋がってる必要なくない?」
ブルーノ「俺たちはただ、与え合うだけだ」
〇廃墟の倉庫
アルベルト「くっ!」
レオ「ローザ、帰ろう」
アルベルト「くくく・・・!」
ブルーノ「イカれちまったか」
アルベルト「ひゃーはっはっは!!」
アルベルト「いいのかぁ!? コイツはなぁ、俺らの協力者だぜぇ!?」
〇西洋風の部屋
〇廃墟の倉庫
ローザ「みんな、私・・・!」
ブルーノ「もういい」
マリー「行くわよ、ローザ」
クロエ「今日はクロエのマジカルクッキング!」
クロエ「ジャックポットのヨ・カ・ン♪」
ホロ「ローザちゃ~ん! 俺っちの胸に飛び込め~!」
ホロ「だはぁ~!」
ミドナ「帰りましょう、ローザ」
ローザ「・・・うん」
〇空
〇地下の部屋
〇黒
〇古い洋館
???「ローザ」
ローザ「レオ・・・!」
レオ「やっと名前呼んでくれた」
ローザ「ごめぇ~ん! ちょっと散歩でぇ~!」
ブルーノ「もういい」
ローザ「ブルーノ・・・」
ミドナ「欲しい言葉をかけなくていいのですよ?」
ローザ「ミドナ・・・」
ローザ「や、やだなぁ~!」
ローザ「私バカだから、そんなのムリムリぃ~!」
ブルーノ「俺の目を見ろ」
〇桜の見える丘
〇古い洋館
ブルーノ「そいつは幸せな夢」
ブルーノ「正夢だ」
レオ「また行こうよ」
クロエ「今度は晴れる」
クロエ「わたくしの予報は絶対だ」
ミドナ「家族とは与え合うもの」
ホロ「それこそが『クラルスファミリア』の 家訓(オメルタ)さ」
マリー「意味わかる?」
ローザ「与え合う・・・」
ミドナ「ローザはもう、わかっていますわ」
レオ「ここはもう、ローザの『居場所』だよ」
ブルーノ「おかえり」
〇空
ローザ「ただいま」
〇西洋風の部屋
アンジェラ「心から笑顔をあげたい人」
アンジェラ「それが家族よ」
〇黒
ローザ((アタシ、見つけたよ))
〇空
〇カフェのレジ
ローザ「いらっしゃいませ!」
「ようこそ『クラルスファミリア』へ!」
虐待を受けてきて家庭の温かさを知らないローザが、個性的な老若男女が集まった擬似家族の中に自分の居場所を見つけるまでの物語ですね。シリアスかつコメディシーンも豊富で、丁寧な描写に引き込まれました。注射打たれすぎのホロが心配。「親が家族を作るのではなく、家族が親を作る」という言葉に、タイトル「クラルスファミリア」にも繋がる作品のテーマが凝縮されているように感じました。
世間一般の家族とはかけ離れたカタチの『クラルスファミリア』、でもその中身は温かさと優しさで溢れていますね。家族にとって大事な物、それを再確認させてくれますね。
すごく深いお話でした。
笑顔の裏に隠された物、造られた笑顔を皆見抜いていたのですね。
本当の家族と出会えて、本当によかったなぁと…。