最終話 殺人サンタ(脚本)
〇お化け屋敷
卓也と同僚警官は
付近での、脱走犯の目撃情報を知る
孤児を施設に戻して
早く、捜査に加わりたいと願っていた
そこへ、雪瑠の車が来る
雪瑠(ゆきる)「卓也! 子供達って、もしかしてひまわり園の・・・」
卓也(たくや)「どうしてここへ?」
雪瑠(ゆきる)「あなたが子供たちを確保してるって それで・・・」
卓也(たくや)「なんで、俺の居場所がわかった?」
雪瑠(ゆきる)「お互いアプリ入れたじゃない 位置情報の・・・」
卓也(たくや)「アッ!!」
同僚「勤務中は私物の持ち込み禁止だぞ お前、スマホ持ち歩いてんのか?」
卓也(たくや)「出掛けに彼女に電話して・・・ 置いてくの忘れちゃった」
雪瑠(ゆきる)「ごめんなさい、私が勝手なことを・・・ でも子供達は?」
卓也(たくや)「大丈夫、ちゃんとパトカーに乗せてある」
しかし、後部座席は空だった
同僚「ガキが逃げたぞ!!」
雪瑠(ゆきる)「大変! すぐに探さなきゃ!!」
卓也(たくや)「この辺は危険だ、早く帰るんだ雪瑠! 子供は俺たちが探すから」
同僚「付近に、殺人犯が潜んでいるんだ!」
雪瑠(ゆきる)「解った、じゃあ・・・子供達のこと頼むね」
こうして自分の車に乗り込み
発進する雪瑠
〇トラックのシート
しばらく運転すると
海翔(うみと)「キャッキャッキャッ」
海翔(うみと)「ブーン、ドライブドライブ~!」
陸翔(りくと)「黙れ、海翔」
後部座席に隠れていた二人
雪瑠(ゆきる)「どうして君たち?」
陸翔(りくと)「あんなパトカーに いつまでも乗ってるわけねーだろ」
陸翔(りくと)「姉ちゃんの車が、隣に止めてあったんで あんたらが話してる間に こっそり乗り込んだ」
雪瑠(ゆきる)「もう! なんて子供達なの」
雪瑠(ゆきる)「仕方ない、あなたたちを このまま施設に送ってあげる」
陸翔(りくと)「空蘭はきっと、まだあの家にいる 引き返してくれ!!」
雪瑠(ゆきる)「いいえ、このまま施設に返します 園長が探してた 私、見たの」
陸翔(りくと)「空蘭が危ないんだ!!」
雪瑠(ゆきる)「それは警察に任せて」
陸翔(りくと)「あいつ、これ落としていったんだ きっと、苦しんでる」
雪瑠(ゆきる)「ダメ、大人の言うこと聞きなさい!!」
雪瑠(ゆきる)「警察が一杯いたでしょ? 脱走犯がいるのよ」
海翔(うみと)「それで、パトカーがあんなに・・・」
陸翔(りくと)「だったら、なおさらほっとけない」
雪瑠(ゆきる)「・・・・・・」
陸翔(りくと)「元はといえば、俺のせいだ・・・ 俺がサンタ狩りなんて・・・」
陸翔(りくと)「空蘭に何かあったら・・・何かあったら・・・」
陸翔(りくと)「お姉さん! 頼む!!」
海翔(うみと)「この人、鬼なんでしょ?」
陸翔(りくと)「鬼じゃないよ、いい人だよ この人は、俺たちを助けてくれる!」
雪瑠(ゆきる)「今更、おだてたってムダ このまま連れて行きます!」
海翔(うみと)「やっぱ鬼だ」
陸翔(りくと)「海翔、シッ!」
雪瑠(ゆきる)「卓也に電話しとくから、心配しないで」
信号で停車中に電話する
だが、つながらない
雪瑠(ゆきる)「アプリの件で怒られたから 私物の電話に、出ないのかしら?」
陸翔(りくと)「空蘭は喘息で苦しんでるかも・・・ お姉さん!」
信号が青になった
雪瑠(ゆきる)「・・・・・・」
なかなか発進しない
後ろの車が、クラクションを鳴らす
陸翔(りくと)「やっぱり鬼だ! あんたには、わかんないんだ 孤児の気持ちなんて!!」
雪瑠(ゆきる)「わかるわよ!」
車を発進させ、急ハンドルを切る
進行方向と逆に向かう
雪瑠(ゆきる)「私もあの施設で育ったのだから!!」
〇お化け屋敷
戻ると
外には誰もいなかった
〇洋館の玄関ホール
玄関ホールへ
海翔(うみと)「イタい!!」
何かに、つまずいて転ぶ
それは、先刻の警官ふたり
雪瑠(ゆきる)「卓也、同僚さん、どうしたの!?」
烏頭狗(うずく)「🎵ジングルベルジングルベル鈴が鳴る」
雪瑠(ゆきる)「!!」
烏頭狗(うずく)「🎵今日は楽しいクリスマス」
雪瑠(ゆきる)「あなた、ニュースの・・・ 卓也に何したのよ!!」
返事をせず、歌い続ける烏頭狗
陸翔(りくと)「オイ!! 空蘭を返せ!!」
烏頭狗(うずく)「🎵ジングルベルジングルベル鈴が鳴る」
向こうの部屋から、空蘭の咳き込む声
陸翔(りくと)「空蘭!!!!」
〇洋館の一室
陸翔(りくと)「空蘭!! 大丈夫か!?」
空蘭(そらん)「ゴホゴホ」
空蘭と神楽坂は、縛られていた
吸入器を差し出す陸翔
しかし、烏頭狗に吸入器を奪われる
陸翔(りくと)「この野郎!! 返せ!!」
拳銃を向ける烏頭狗
烏頭狗(うずく)「孤児なんだろ? 女の子に聞いたぞ」
足を引き摺りながら、雪瑠が駆け込む
雪瑠(ゆきる)「大丈夫!?」
陸翔(りくと)「おまわりさんは?」
雪瑠(ゆきる)「無事よ、救急車も呼んだ」
烏頭狗(うずく)「金目の物、探ってたら こんなもんあったぜ」
烏頭狗がテーブルの上に放り出したのは
「老人ホームの事業計画書」
烏頭狗(うずく)「孤児院を潰して、老人ホームを建てるって 書いてある」
烏頭狗(うずく)「俺は正義の味方さ」
そう言って、不気味に笑う
雪瑠(ゆきる)「どこが、殺人鬼でしょ?」
烏頭狗(うずく)「俺のアパートの近くに公園があってな 子供がよく遊んでた」
烏頭狗(うずく)「ガキがうるせえって、訴えた爺がいてな そいつのせいで、公園がなくなった その爺は、上級国民なんだと」
烏頭狗(うずく)「上級国民ってなんだ?」
烏頭狗(うずく)「ちょと刺したら、勝手に死にやがった 迷惑な話さ」
烏頭狗(うずく)「俺はガキの声が好きなんだ 俺の方が、上級国民だろ?」
雪瑠(ゆきる)「・・・・・・」
烏頭狗(うずく)「二人目はな、感染症が流行ってる時に マスクしてないって、ガキを殴った爺だよ」
烏頭狗(うずく)「そいつは近所で喚いてた 「マスクしない方が悪い 俺の暴力は、全然悪くない」ってさ」
烏頭狗(うずく)「暴力は全然悪くないって、言ってたから その通りにしてやった」
烏頭狗(うずく)「俺は正義の味方さ! 俺も、お前らと同じ孤児院育ちだ」
額から、血を流した卓也が入ってくる
卓也(たくや)「銃を返せ・・・」
雪瑠(ゆきる)「無理しないで! 救急車が来るから、待ってて!!」
卓也(たくや)「烏頭狗、お前は孤児じゃないだろ 裕福な家庭に育ってるじゃないか・・・ お前の資料、読んだぞ」
烏頭狗(うずく)「資料が間違ってる、俺は孤児だ」
卓也(たくや)「違う! お前は自分の両親を殺したんだ 自ら孤児になったんだよ!!」
烏頭狗(うずく)「今は、親ガチャ外れて言うんだろ? 欲しいものくれない親に、意味あるか?」
烏頭狗(うずく)「そんな大人、イラナイ だから奪っちまえば、いいんだよ!!」
〇大きな箪笥のある和室
陸翔(りくと)「他の家には持ってくるくせに 俺たちには持ってこないだろ・・・ だったら、奪えばいい!!」
陸翔(りくと)「サンタから、プレゼントぶんどる サンタ狩りだ!!!」
〇洋館の一室
海翔(うみと)「陸翔と同じこと言ってるね? あの、サンタさん」
陸翔(りくと)「あんな奴 サンタじゃない・・・」
烏頭狗(うずく)「さあ、お前も奪うんだ!!」
烏頭狗(うずく)「住まいを取り戻せ!! 俺からのクリスマスプレゼントだ」
烏頭狗(うずく)「🎵今日は楽しいクリスマス」
包丁を渡される陸翔、手が震える
烏頭狗(うずく)「殺せ、どうせ老害だ」
海翔(うみと)「違うよ、ぬらりひょんだよ 僕がやっつけてやる!」
陸翔(りくと)「お前は手を出すな、俺が決着つける!!」
雪瑠(ゆきる)「やめて! そんな事!! ダメよ!!」
卓也(たくや)「(力なく)やめるんだ・・・」
烏頭狗(うずく)「汚ねえ大人の話は、聞くな 俺が正義だ」
陸翔(りくと)「・・・・・・・・・」
烏頭狗(うずく)「自分の力で、孤児院を取り戻せ!!」
陸翔(りくと)「・・・・・・」
空蘭(そらん)「ゴホゴホ、ゴホゴホ」
烏頭狗(うずく)「吸入器、渡してやらないと その子が危ないぞ、早くしろ!!」
陸翔(りくと)「うおおおお!!」
包丁を捨てる陸翔
陸翔(りくと)「あんたはインチキだ!! 俺はインチキな大人にはならない!!」
卓也(たくや)「ええい!!」
烏頭狗に飛びかかる卓也
膝から崩れる卓也
雪瑠(ゆきる)「卓也、卓也!!」
神楽坂の頭を、銃で狙う烏頭狗
引き金を引こうとする
その瞬間
陸翔が仕掛けた紐を引き、留め具が外れた
老人に近寄った時
丁度、犯人がトナカイの下に居たのだ
烏頭狗(うずく)「ガキを先にぶっ殺す!!」
けん玉を投げる海翔
けん玉を踏んで、転ぶ烏頭狗
雪瑠が、壁のスイッチ押す
床がスライドして開く
犯人の股間を蹴り上げる陸翔
無様に奈落の底に落ちる
ボタンを押し、再び床を閉める
空蘭と神楽坂のロープを解きながら
語る雪瑠
雪瑠(ゆきる)「床下は深いワインセラーになってるの・・・ 何で、そんなこと知ってるのかしら?」
神楽坂(かぐらざか)「お前、もしかしたらお前は?」
神楽坂(かぐらざか)「紅玉!!」
雪瑠(ゆきる)「違います、私は雪瑠」
陸翔(りくと)「それは、園長がつけた名前じゃないか?」
神楽坂(かぐらざか)「足を引き摺っていたな! 幼い頃、この穴に落ちて大ケガを・・・ 悪かった、全部ワシのせいだ!!」
神楽坂(かぐらざか)「戻っておくれ! ワシのルビー!!」
空蘭(そらん)「ゴホゴホ」
烏頭狗が落とした吸引器を拾い
空蘭に吸わせる
陸翔(りくと)「大丈夫か空蘭?」
空蘭(そらん)「ジョンが守ってくれたの!! 犯人に飛びかかって それでジョンが、ジョンが・・・」
神楽坂(かぐらざか)「ジョンは幸せだよ 大好きな紅玉を守れて・・・ きっと、そのつもりだったんだ」
雪瑠(ゆきる)「思い出した・・・ 会いたかった・・・」
雪瑠(ゆきる)「ごめんね、ジョン・・・」
雪瑠(ゆきる)「・・・・・・」
トナカイの鼻にキスする空蘭
空蘭(そらん)「トナカイさんも・・・」
空蘭(そらん)「守ってくれてありがとう💛」
陸翔(りくと)「これは、あんたの好きにしろ・・・ でもな、大人になったら絶対取り返す!」
神楽坂(かぐらざか)「・・・・・・」
「老人ホームの事業計画書」を
引きちぎる神楽坂
神楽坂(かぐらざか)「ワシも・・・ インチキな人間にはなりたくない」
海翔(うみと)「え? 妖怪じゃないの??」
〇おんぼろの民宿(看板無し)
空蘭の誕生会が行われた
神楽坂と雪瑠
退院した卓也も呼ばれた
神楽坂(かぐらざか)「遅くなったが、子供たちに クリスマスプレゼント」
海翔(うみと)「ワーイ!! ゲーム?」
空蘭(そらん)「私、お人形がいい!!」
将棋盤と囲碁盤
そして博多人形だった
海翔(うみと)「ゲームだね・・・」
空蘭(そらん)「お、お人形・・・うれしい」
埋まらないジェネレーションギャップ
雪瑠(ゆきる)「お父さんにもプレゼントが・・・」
雪瑠(ゆきる)「ジョン2世よ 犬種が違うけど・・・」
神楽坂(かぐらざか)「おお、ジョン、ジョン 生まれ変わったんだな、ジョン2世!!」
ジョン二世「ワン!!」
海翔(うみと)(ワンコいいなぁ)
空蘭(そらん)(やっぱり、プレゼント微妙よね・・・)
陸翔(りくと)「よし! もう一度サンタ狩りだ!! 今度こそ、良い物を・・・」
海翔(うみと)「もう、ヤダよ!!」
空蘭(そらん)「絶対イヤ!!!!」
笑いのたえない、ひまわり園だった
おしまい
読了しました。
神楽坂さんが計画を破棄したお陰で、孤児院が潰れる事無くて良かった。
家族関係を修復出来た神楽坂さんと紅玉さん。
一方で家族を殺して孤独になった殺人鬼は惨めですね。
完結おつかれさまでした。
剣呑なストーリー展開の中、笑顔で溢れるエンディングへとお見事に感じました。陸翔くんの勇気溢れる言動、目頭が熱くなりますね。
クリスマスイブの夜、子供達の精いっぱいの姿とハッピーエンド、ステキなものを頂きました。