死亡確定令嬢 ~生存ルートを求めて~

逆境 燃

第七話『未来を求めて』(脚本)

死亡確定令嬢 ~生存ルートを求めて~

逆境 燃

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〇渓谷
クロムウェル「俺が」
クロムウェル「俺がもっと」
クロムウェル「もっと気を付けていればー」
レイリィース「そこまでにしてくださいまし!!」
クロムウェル「!?」
レイリィース「卑屈になるのはおやめください!!」
レイリィース「今回の件で悪いのは 王子様ではございませんわ!」
レイリィース「悪いのは私をおとしめ 謀略を巡らした人間です!」
レイリィース「王子様が負うところは ただの一つもございません!」
クロムウェル「だ、だが」
レイリィース「おだまり!!」
クロムウェル「うぉっ」
レイリィース「何度でもいいます!」
レイリィース「王子様は悪くありません!」
レイリィース「悪いのは私をハメた大貴族の連中ですわ!!」
レイリィース「あなたほど! この国のことを想い先々を考え!」
レイリィース「民を愛し!兵を愛し!土地を愛し!」
レイリィース「自らの全てを国家に捧げている人間が!」
レイリィース「他人の罪の責任まで取らねばならないと言う者があるのなら!!」
レイリィース「天が許しても この私が許しませんわ!!!!」
クロムウェル「・・・」
レイリィース「フーッ!フーッ!フーッ!」
クロムウェル「・・・」
クロムウェル「俺自身が言ってても許さねーのか?」
レイリィース「許しませんわ!!!!」
クロムウェル「フフッ」
クロムウェル「ハハハハハッ」
クロムウェル「すげーな」
クロムウェル「やっぱすげーよ、お前は」
クロムウェル「ほんと、すげー女だ」
レイリィース「それ、褒めてますの?」
クロムウェル「たりめーだろ」
クロムウェル「べた褒めだよ」
クロムウェル「やっぱり」
クロムウェル「お前に惚れてよかった」
レイリィース「また何を―」
クロムウェル「いいか、よく聞け、レイリィース」
クロムウェル「港に出たら北の端にある 黒い屋根の小屋に行くんだ」
レイリィース「?」
クロムウェル「そこに住んでる奴に ステイル村の古くからのよしみにより」
クロムウェル「船を1つ、用立てて欲しいと伝えろ」
レイリィース「だからそれはもう5度も」
レイリィース「・・・」
レイリィース「?」

〇黒背景
  月明かりのせい?
  王子様の顔色が・・・
  いや
  気のせいじゃない!

〇渓谷
レイリィース「王子様!!」
クロムウェル「さっき積んだ袋の中に 貴金属が入っている」
レイリィース「黙ってください!」
レイリィース「先ほどの傷を―」
レイリィース「!?」

〇モヤモヤ
  傷口の色が
  酷く変色して・・・
  これは・・・
  どく
  毒
レイリィース「毒!?」

〇渓谷
レイリィース「王子様!?」
レイリィース「どうして」
レイリィース「どうして何も言わなかったのです!?」
レイリィース「毒に侵されたこと あなたなら気付いたでしょう!?」
クロムウェル「・・・」
クロムウェル「ああ、気付いた」
レイリィース「なら何故!?」
クロムウェル「言ったらお前、俺を助けようとするだろ?」
レイリィース「当然です!!」
クロムウェル「だからだ」
クロムウェル「どっかに助けを呼びに行く」
クロムウェル「そしたらお前は捕まって」
クロムウェル「そのまま死んじまう」
レイリィース「私の、私のことなんか―!」
クロムウェル「俺だってそうだ」
クロムウェル「自分より、お前の方がずっと大切だ」
レイリィース「そんな・・・そんなの!」
クロムウェル「レイリィース・・・」
  グイッ
レイリィース「わっ!」
「お、王子様?」
クロムウェル「少し」
クロムウェル「少しだけこうさせてくれ」
「な、なにを」
クロムウェル「少しだけだ・・・」
「・・・」
クロムウェル「あったけぇな、お前」
「ちが」
「違いますわ」
「あなたが」
「あなたが」
「冷たいんですの・・・」
クロムウェル「フッ」
クロムウェル「そうか」
クロムウェル「まぁ」
クロムウェル「わるくねぇ」
「・・・」
  鼓動が
  弱く
  だんだん不規則に・・・
クロムウェル「レイリィース」
「なん」
「です?」
クロムウェル「生きろ」
「・・・!」
クロムウェル「生きてまた」
クロムウェル「空を舞え」
クロムウェル「俺はお前の」
クロムウェル「そんなところに惚れた」

〇宇宙空間
  側に来ては
  せわしなく動き回り
  目を離せば
  どこかに消えて
  ふとした時に
  またそこにいる

〇渓谷
クロムウェル「まるで自由に空を舞う」
クロムウェル「鳥のようなお前に」
クロムウェル「俺は惚れちまったんだ」
「・・・」
クロムウェル「レイリィース」
クロムウェル「俺のことなんか忘れちまえ」
クロムウェル「だから」
クロムウェル「だからいきて」
クロムウェル「いきてまた」
クロムウェル「そらを・・・」
クロムウェル「・・・」
クロムウェル「・・・・・・」
「うぅ」
「うううっ!」
レイリィース「勝手・・・」
レイリィース「勝手なことばかり言って・・・!」
レイリィース「どうして」
レイリィース「どうして!」
レイリィース「どう、して・・・」

〇黒背景

〇朝日
  レイリィース嬢 覚え書き
レイリィース「・・・」
  レイリィース・ジョゼフィーヌ・ヴィランガードは
  王国の東の果てにある
  国境沿いの領地、ヴィランガード伯爵領に生まれた一人娘だ。

〇黒背景
  調査したところによると
  お転婆姫として地元では有名で
  また好奇心が強く国境を行きかう人々の話を
  供もつけずに聞き込んで回ることも
  しばしばあったとか。
  制止もろくに聞かず、不安に思った両親は
  せめてもの安全策にと
  護身術を教え込んだが
  その護身術が更なる無謀にあいつを駆り立てた。
  一言で言えば
  おもしれー女。
  言い方を変えれば
  他とは違う女。

〇城の会議室
  今回のお見合いに来た令嬢連中は
  緊張していたり、不安を感じていたり
  気勢を張っていたり
  自尊心で凝り固まっていたり
  気に入られるために
  猫なで声を出してみたり
  そんな奴ばっかりだったが
  ただ一人、あいつだけは
レイリィース「オーホッホッホッホ!この私こそが!」
レイリィース「レイリィース・ジョゼフィーヌ・ヴィランガード!」
レイリィース「ヴィランガード伯爵家の一人娘ですわぁ!」
  めちゃくちゃ能天気だった。
クロムウェル「・・・」
  はっきり言って俺は虚を突かれた。
  まだいたのかと
  そう思った。
  この俺を前にして
  なんの気負いもなく
  なんの緊張もなく
  なんの狙いもなく
  こちらをじっと見つめてくるような女が
  俺を
  ただ一人の人間として見る奴が
  まだいたのかと
  そう思った。

〇黒背景
  クロムウェル・クォーツライト・アイリスは国家の人だ。
  一個人というよりは、政治の一部と言った方が近しい。
  そのことに対して
  特に思うところはない。
  仕事自体にやりがいを感じていたし
  多くの人間が行きかう中心点にあることを
  誇りにさえ思っていた。
  だが

〇空
  同時に酷くむなしく感じることもあった。
  クロムウェルは
  ただ一人のクロムウェルに過ぎないと
  俺はただ俺でしかないと
  王子である前に一人の人間だと
  そうありたいと
  思いたいことがあった。

〇城の会議室
  こいつを側におけば
  その願いが少しは叶うかもしれないと考え
  俺は婚約相手を決めた。
  だが―

〇外国の田舎町
  だが―

〇養護施設の庭
  だが―

〇闘技場
  だが―

〇上官の部屋
  レイリィースは
  あいつは俺が思っていたよりずっと
  ずっとすげー女だった。

〇城の廊下
  気付けば俺はあいつが現れるのを
  心待ちにするようになり
  その姿から目を離せなくなり
  その声を聞いて嬉しく思い
  あいつの影を
  ふとした瞬間に探すようになっていた。

〇黒背景
  またあいつ自身も
  そうであってくれたら嬉しいと
  そう思うようにさえなっていた。
  もっとも、それはありえないだろうが
  あいつが俺を見る目は
  『想い人』を見る目じゃない。
  それぐらいは分かる。
  だがそれでも構わない。
  いつかは
  いつかは必ず
  必ず─

〇朝日
レイリィース「・・・」
レイリィース「ほんとに」
レイリィース「勝手なお方・・・」
レイリィース「私は」
レイリィース「私はなにも答えていませんのに」
レイリィース「一人で全て抱え込まれて」
レイリィース「クロムウェル様・・・」

〇空
「鳥は」
「確かに空を飛ぶものですが」

〇宇宙空間
「夜になれば」
「大樹に寄り添い」
「静かに眠るものです」

〇朝日
レイリィース「・・・」
レイリィース「クロムウェル様・・・」
レイリィース「フッ!」
レイリィース「くろむうぇる」
レイリィース「さま・・・」

〇黒背景

〇立派な洋館

〇貴族の部屋
  ゴーン。ゴーン。ゴーン。
レイリィース「・・・」
  コンコン
レイリィース「お入りなさい」
セバスチャン「おはようございます、お嬢様」
セバスチャン「よく眠られましたでしょうか?」
レイリィース「ええ」
セバスチャン「本日は、大事な大事な『お見合い』の日でございます」
レイリィース「すぐに準備いたしますわ」
セバスチャン「・・・」
レイリィース「爺や」
セバスチャン「あっはい」
セバスチャン「それではご用意をば」

〇西洋の城

〇城の会議室
  王宮内、応接室にて―
レイリィース「・・・」
クロムウェル「・・・」
パパリィース「レ、レイリィース、なぜ黙ってるんだい?」
ママリィース「そ、そうですわ!」
ママリィース「今日なんだか変ですわよ、あなた!」
ママリィース「とにかく早く自己紹介なさいな!」
レイリィース「・・・」
レイリィース「私は」
レイリィース「レイリィース・ジョゼフィーヌ・ヴィランガード」
レイリィース「ヴィランガード伯爵家の一人娘」
レイリィース「そしてクロムウェル様」
レイリィース「あなたに一つ お伝えしたいことがございます」
クロムウェル「伝えたいこと?」
レイリィース「はい」
レイリィース「ぜひ聞いていただきたいことが」
クロムウェル「ほう」
クロムウェル「いいだろう。言ってみな」
レイリィース「はい。それでは・・・」
レイリィース「クロムウェル様」
レイリィース「あなたに惚れました」
レイリィース「どうかこの度のお見合い この私をお選びください」
パパリィース「レレ、レイ!?」
ママリィース「あなた急に何を!?」
クロムウェル「待て」
クロムウェル「・・・」
クロムウェル「少し聞かせろ」
クロムウェル「お前、俺に惚れたと言ったな」
クロムウェル「だが、俺たちはろくに話したこともねー」
クロムウェル「何故だ?」
クロムウェル「いったいどこに惚れた?」
レイリィース「・・・」
レイリィース「私は」
レイリィース「あなたの」
レイリィース「あなた様の」

〇渓谷

〇城の会議室
レイリィース「あなた様の『全て』に惚れました」
クロムウェル「・・・」
レイリィース「クロムウェル様は」
レイリィース「公人としても、私人としても」
レイリィース「己の全てを投げ出していらっしゃるお方」
レイリィース「全ての人のために、自己の犠牲をいとわないお方」
レイリィース「はっきり言っておバカですわ」
レイリィース「でも」
レイリィース「そんなおバカなあなた様だからこそ 私は惚れましたの」
レイリィース「どこまでも愚直で どこまでも真摯なあなた様だからこそ」
レイリィース「私の全てを捧げても構わないと」
レイリィース「そう思いましたの」
クロムウェル「・・・」
レイリィース「もう一度言います」
レイリィース「あなた様に惚れました」
レイリィース「私を婚約者にお選びください」
クロムウェル「・・・」
クロムウェル「どうやら」
クロムウェル「俺のことをよく調べたようだな」
クロムウェル「しかも人のことを バカだの愚直だのと」
クロムウェル「よくもまぁ言ってくれたもんだ」
レイリィース「・・・」
クロムウェル「フッ」
クロムウェル「フハハハハッ!」
クロムウェル「なんともぶっとんだ女じゃねーか」
クロムウェル「気に入ったぜ!」
クロムウェル「お前、俺の婚約者になれよ!」
レイリィース「はい」
レイリィース「謹んでお受けいたしますわ」
クロムウェル「おう!」
クロムウェル「これからよろしくな!」
レイリィース「はい」
レイリィース(そう)
レイリィース(これから)
レイリィース(そうこれから!)
  必ずあなた様と共に
  幸せな未来を生きて見せますわ!

コメント

  • 今回最高です。前回ちょっと会話長いとこあるなぁとか思ってごめんなさい!
    手動tapしてますが、今回キャラクターの台詞1tapと思考が飲み込む1tapがリンクするんですよね。ぐいぐい入ってくる。
    最後は一瞬焦りました。どんなアプローチをしても追いかけていた王子ですが、あのアプローチだと万一断るパターンあるかもとヒヤリとしました。
    またここからまたスタートですね。
    次も楽しみです。

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