枯れ木に花を咲かせましょう

落花亭

5本目:間宮シノブについて(脚本)

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〇渋谷の雑踏
  人は、大なり小なり悩みを抱えている

〇ラーメン屋
  ──10月9日

〇ラーメン屋のカウンター
「醤油ラーメンと餃子定食 お待ち!!」
間宮 シノブ「お待たせしました!」
間宮 シノブ「醤油ラーメンと餃子定食です!」
水野 ユカ「やっと着いた〜! いい匂い!」
水野 ユカ「食券食券っと・・・」
間宮 シノブ「いらっしゃいませ! 食券 頂きますね──」
間宮 シノブ「あっ!!」
間宮 シノブ「も もしかして ツブヤイッターしてませんか!?」
水野 ユカ「してますけど・・・ なんで知ってるんですか?」
間宮 シノブ「本物のYU-KAさんだー!! フォローさせていただいてます!!」
水野 ユカ「待って!フォロワーさん? ごめん 知らなかった!」
間宮 シノブ「仕方ないですよ! 私のアイコン 動物にしてますし」
間宮 シノブ「この間の花屋の投稿 素敵でした!!」
水野 ユカ「でしょ!? 店長のおじいさんもイケてて──」
「おい サボってねぇで仕事しろォ!」

〇ラーメン屋
間宮 シノブ「お先に失礼しまーす」
間宮 シノブ(今日はラッキー 憧れのYU-KAさんが来てくれて)
間宮 シノブ(しかも宣伝までしてくれて!!)
間宮 シノブ(美人で性格もイイとか女神じゃん)

〇SHIBUYA109

〇アパレルショップ
間宮 シノブ(また来ちゃった)
間宮 シノブ(かわいい服ばっかで つい見ちゃうんだよなぁ)
間宮 シノブ(”体が男”だから長くいられないけど)
女性「いらっしゃいませぇ」
女性「ごゆっくり・・・えっ」
間宮 シノブ「あっ!」
男性「なぁ。あの客 男じゃん」
男性「なんでウチみたいなお店にいるの?」
女性「マネージャー お疲れ様ですぅ」
女性「最近流行りの ”女装男子”じゃないですかぁ?」
男性「あー 噂には聞いてたけど。 生理的に受け付けねぇなぁ」
間宮 シノブ(”心は女”なんだけどな・・・)
間宮 シノブ(まぁ こんな風に言われるのは慣れっこ)

〇一戸建て

〇男の子の一人部屋
間宮 シノブ「YU-KAさんのおかげで バイト先の口コミが広まってる!」
  @コウヘイさんからのメッセージ
  ──この投稿 シノブのバ先じゃねw
  ──今度食いに行くから奢って!!
間宮 シノブ「コウヘイくんからのメッセだ!!」
間宮 シノブ(嬉しいっ!! なんて返そっ!?)
間宮 シノブ「・・・やっぱり私 コウヘイくんのことが好き」
間宮 シノブ「でも 告白したら 今の関係も終わる・・・」
間宮 シノブ「私──”体が男”だから」
  物心ついた頃から
  性に違和感があった
  だけど
  親にも友達にも話せなくて
間宮 シノブ「つらい・・・」

〇大きな木のある校舎
  ──10月14日

〇学校の廊下
「シノブ!! 今日バイト!?」
間宮 シノブ「コウヘイくん!? うん これからバイトだよ」
コウヘイ「じゃ 後からダチと行くわ!!」
コウヘイ「奢り 期待してっから!!」
間宮 シノブ「コウヘイくんだけだったら考えた」

〇ラーメン屋
  ──夕方

〇ラーメン屋のカウンター
コウヘイ「シノブ 来たぜー!」
間宮 シノブ「いらっしゃい!」
間宮 シノブ「食券買ったら好きな席に座って」
コウヘイ「奢りじゃねーの!?」
コウヘイ「お前 何にする? てかメニュー少なっ」
男子生徒「それな あと古臭いっつーか写真詐欺?」
「・・・シノブの知り合いか?」
間宮 シノブ「店長! ”友達”です SNS見て『食べたい』って──」
「俺は”ガキ”が嫌ェなんだよ 食ったらとっとと帰らせろ」
間宮 シノブ「ちょ ちょっと酷くないですか──」
水野 ユカ「こんにちは!また来ちゃった」
間宮 シノブ「YU-KAさん! この間はありがとうございます」
水野 ユカ「いいって いいって!美味しかったし」
コウヘイ「シノブ 食券!!」
水野 ユカ「友達?」
間宮 シノブ「はい 大好きな・・・”友達”です」

〇ラーメン屋のカウンター
  ──数分後
間宮 シノブ「醤油ラーメンと味噌ラーメンです!!」
間宮 シノブ「次はYU-KAさんに──」
男子生徒「──ブフッ!! ゴホッゴホッ」
コウヘイ「うわ 汚ぇ!」
男子生徒「おいアレ!どう見ても男だよな!?」
コウヘイ「女だったらヤバいだろ てか 目ぇ合うんだけど」
男子生徒「お前 狙われてんじゃね!?」
コウヘイ「やめろや 気持ち悪ぃ!!」
  『キモチワルイ』
間宮 シノブ(・・・そうだよね 『気持ち悪い』って思うよね)
間宮 シノブ(あれ?おかしいな? 慣れっこなのに心が痛い)
間宮 シノブ「”女の体”に生まれたかったっ・・・」
「・・・おい」
「オメェもう上がれ そんなんじゃ仕事になんねぇだろ」
間宮 シノブ「店長 迷惑かけてすみません すみません──」

〇ラーメン屋
「ちょっと待って!!」
水野 ユカ「さっきはごめんなさい あたし 知らなくて・・・」
間宮 シノブ「・・・もう行ってもいいですか?」
水野 ユカ「あの 余計なお世話かもしれないけど──」

〇街中の道路
  ──フローリスト・ハナサカ前
水野 ユカ「マジ!? 今日休み!?」
間宮 シノブ「ここ 例の花屋ですよね? 私と何か関係あるんですか?」
水野 ユカ「うん・・・ 悩みとか聞いてくれるんだよね」
水野 ユカ「あっ!!」
謎の男「ん?私に何か?」
水野 ユカ「お兄さん!!」
水野 ユカ「訳有りで来たんですけど お店閉まってて・・・」
謎の男「ああ。花咲さんなら ご家族の様子を見に行くと」
水野 ユカ「タイミング悪っ」
謎の男「よろしければ ご用件を承りますが?」
水野 ユカ「それはちょっと・・・」
間宮 シノブ「YU-KAさん。私なら平気です」
間宮 シノブ「『慣れっこ』ですから」
水野 ユカ「慣れっこって・・・」
水野 ユカ「お兄さん」
水野 ユカ「人を好きになるのに 性別は関係あると思いますか?」
謎の男「私ですか?」
謎の男「うーん。人間ですし感情もある 関係ないとは言い切れないでしょう」
謎の男「ですが」
謎の男「愛するという行為は 同性であれど尊いものだと思いますよ」
謎の男「フォローに なっていないかもしれませんが」
水野 ユカ「白黒 つけられない問題ってことか・・・」
間宮 シノブ「皆さん ありがとうございます」
水野 ユカ「何も出来なくてごめんなさい」
間宮 シノブ「そんなことないです」
間宮 シノブ「それより暗くなってきましたし もう帰りましょう──」

〇学校の廊下
  ──翌日
コウヘイ「おいおいシノブ。昨日はどした?」
間宮 シノブ「何でもないよ」

〇ラーメン屋のカウンター
  ──放課後
間宮 シノブ「ありがとうございましたー!」
「・・・シノブ。腹空いてねぇか? 何か作ってやるよ」
間宮 シノブ「最近 食欲湧かなくて・・・ でもせっかくなので少し頂きます」
「俺ァ 口下手だからよ あまり上手ェこと言えねェんだが」
「シノブにとって過酷な道でもよ 俺はオメェを応援してるぜ」
間宮 シノブ「・・・店長 知ってたんですか?」
「そりゃ見てたら分かるってモンよ」
「だからよォ 珍しくオメェが 知り合い連れてきたときは考えたよな」
「なんだ 見た目で判断する ”ガキ”じゃねぇかって」
  あぁ だから──
「一応 俺もエスエヌエス? 見てるが手術があるんだってな?」
「人様の人生だ」
「簡単に勧められねェが つらいならそういう手もある」
「今まで誰にも言えなかったんだろ?」
「もう独りで抱えなくていいんじゃねェか」
「・・・伸びっぞ。ラーメン」
間宮 シノブ「あはっ・・・しょっぱい」
「出て行く涙でちょうど良くなるさ──」

次のエピソード:4本目:水野ユカについて

コメント

  • 店長! 店長ーー!!😭
    店長の立ち絵ないけど絶対イケオジだ!!w

  • 心情描写が繊細でとても素敵な回ですね。性的マイノリティの方々は、何気ない日常会話の一言でも心に刺さってしまうことがあり、それで悩み苦しむ人も多いですから。トランスジェンダーからしたら、女装癖で片づけてほしくないですよね。。。
    フローリスト・ハナサカがお休みで焦ってしまいましたが、その分ユカさんと店長さんの素晴らしさに触れられて何だか得した気分ですw

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