隠しキャラの沢田さん

せんぶり

隠しキャラの沢田さん(脚本)

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〇大きな木のある校舎
  期待と不安を胸に幕をあけた高校生活

〇教室
  木漏れ日が差す学び舎には

〇教室の教壇
  青春を分かち合うクラスメイトたちと
  ・・・
  隠しキャラ

〇教室
「今日も沢田さんに首ったけだな!」
原田 ユキヤ「そんなに見つめて、飽きないの? いつ見ても一緒じゃん?」
片橋 ユキタカ「う、うるせーなぁ! あー見えて、 微妙な喜怒哀楽があるんだよ!」

〇教室の教壇
  ほら見ろ、楽しそうだろ!?
  いや、全然分からん!
  あー、噂話に興味津々!
  意外と好奇心旺盛なんだなぁ!!
  間違い探しかよ!?
  まったく違いがわかんねぇよ!!

〇教室
片橋 ユキタカ「とにかく。 俺は沢田さんの事がもっと知りたい!」
原田 ユキヤ「でも、隠しキャラだからなぁ・・・」
  そう、沢田さんは隠しキャラだ。
  その素性は、杳として知れない。
  なにからなにまでシークレット。
  隅から隅まで隠されている。
片橋 ユキタカ「読書感想文だって、 ぜんぶ黒く塗り潰されてるんだぜ?」
原田 ユキヤ「ははっ! 川端康成の小説のドコに 機密事項があるってんだよなぁ!」
片橋 ユキタカ「卒業文集はどうするんだよ!? 卒アルの写真もシルエットなのか!?」
原田 ユキヤ「ま、まぁまぁまぁ。 俺らまだ1年だし、 そこまで考えなくても・・・」
片橋 ユキタカ「なに悠長な事言ってんだよ!」
片橋 ユキタカ「こうしてる間にも、 沢田さんの貴重な青春時代が 黒塗りにされているんだ!」
片橋 ユキタカ「なんとかしなくちゃダメだ!」
  まったく同感でありますぞぉっ!!

〇教室
???「同志よ・・・・・・」
片橋 ユキタカ「誰?」
???「麗しのヒロインの真実、 その禁断の果実に手が届きそうな男 とでも申しましょうか」
原田 ユキヤ「いや、お前B組の松本だろ? アイドル研究部・部長の」
片橋 ユキタカ「あ~ 推しの缶バッチを体中に纏って その重みで動けなくなって 都会の真ん中で行き倒れたって噂の!」
松本 ユミオ「ははは ご、ご存知でしたか、 お恥ずかしい限りで!」
片橋 ユキタカ「それはそうと・・・」
片橋 ユキタカ「さっき言ってた、 ヒロインの真実に手が届きそうって、 沢田さんの?」
松本 ユミオ「おぉ、そうでしたそうでした! いかにも沢田氏! 隠しキャラの事で間違いありません!」

〇教室
松本 ユミオ「先程も同志と申しました通り、 私も沢田氏の現状を憂いているのですよ」
原田 ユキヤ「んで? 松本は沢田さんの何を知ってんだよ?」
松本 ユミオ「まぁまぁ、そう焦らずに!」
松本 ユミオ「実は、これまで 密かに独自の調査を行ってきたんです」
片橋 ユキタカ「ど、独自の調査って・・・・・・!?」
松本 ユミオ「・・・・・・」
松本 ユミオ「尾行です」
原田 ユキヤ「ストーカーじゃねぇーか!」
片橋 ユキタカ「迷惑オタクでストーカー 二冠王だ・・・・・・!!」
松本 ユミオ「失礼なっ! 学外での沢田氏の行動を観察する事で 真相に近づこうとしたんじゃないですか!」
原田 ユキヤ「それで? 何が分かったんだ?」
松本 ユミオ「それなんですが・・・・・・」

〇通学路
  尾行も1ヶ月も続けると慣れたもので
  適度な距離感を体が覚えるのです
  しかし

〇神社の石段
  慎重さと引き換えに失ったもの・・・
  スピードの差は
  如何ともし難いわけで・・・
  どんどん離されていくわけで
  息が苦しいわけで
  膝メッチャ痛いわけで
  気付いた時には
  もう彼女の姿はないわけで
  策に溺れるとはこういう事かっ!!

〇教室
「太ってるからやっ!!」
原田 ユキヤ「策に溺れるとかいう話じゃなかったな」
片橋 ユキタカ「結局、沢田さんについては 何も分からなかったって事か」
松本 ユミオ「いえ! 今回の失敗で、 むしろ可能性はひとつに絞られた そう私は確信していますよ!」
原田 ユキヤ「どういう意味だよ?」

〇魔法陣2
松本 ユミオ「簡単な事です 我々の力不足ゆえ 隠しキャラの真相に辿り着けなかった」
松本 ユミオ「つまり!」
松本 ユミオ「我々のパラメーターが 隠しキャラ解放の条件に 達していない!!」

〇教室
原田 ユキヤ「何言ってんだよ?ゲーム脳?」
松本 ユミオ「原点に立ち返ったまでです! 女子の攻略には 高パラメーターは必須!」
原田 ユキヤ「マジで言ってる!?」
片橋 ユキタカ「たしかに、何の努力もせずに 欲しいモノは得られない!」
原田 ユキヤ「ちょいちょい!」
片橋 ユキタカ「松本、俺やるよ!」
松本 ユミオ「ガッテン承知!!」
原田 ユキヤ「も~好きにすれば~!?」

〇綺麗な図書館
  その日から
  俺と松本の鍛錬の日々が始まった
  心・技・体
  あらゆる事を吸収する!

〇滝つぼ
  限界まで己を追い込み・・・

〇露天風呂

〇トレーニングルーム
  ひたすらガムシャラに、
  ひたすら真っ直ぐに!!

〇男の子の一人部屋
片橋 ユキタカ「ふぅ、相対性理論も だいぶ板についてきたな・・・」
  ブーブーブー
片橋 ユキタカ「ん? クラスのLIMEグループか」
  画面には次々と
  カラオケで盛り上がる
  クラスメイトたちの写真が
  アップされていく
  原田はともかく、
  松本もカラオケに興じている事に
  いささかの当惑と憤りを覚えつつ、
  俺はアプリを消去した

〇空港の外観
  俺は更なる成長を求め、
  イギリスへの留学を決めた

〇文化祭をしている学校
  月日は流れ・・・・・・

〇大きな木のある校舎
  1年後──

〇教室
松本 ユミオ「片橋氏が帰国したというのは 本当ですか!?」
原田 ユキヤ「あぁ、ほらあそこ」

〇教室の教壇
  なぜだ沢田さん!?
  なぜ隠しキャラのままなんだ!?
  俺はこんなに!
  こんなにパーフェクトになったのに!!
松本 ユミオ「方向性見失ってるーーー!!」
原田 ユキヤ「片橋、沢田さんはもう 隠しキャラじゃないんだ 俺たちにとっては」
片橋 ユキタカ「どういう事だ?」
原田 ユキヤ「課金したんだよ──」
片橋 ユキタカ「なっ!?」
松本 ユミオ「か、課金ーーーっ!? 私は聞いてませんぞ!!」
原田 ユキヤ「そりゃそーだ クラスのLIMEグループに 入ってるヤツなら 全員知ってる情報だ」
原田 ユキヤ「松本はそもそもグループに入ってないし 片橋、お前、アプリごと消したろ? あの後、課金のお知らせがあったんだよ」
片橋 ユキタカ「そ、そんな・・・・・・ ちなみに幾らだ?」
原田 ユキヤ「500円」
片橋 ユキタカ「沢田さん・・・・・・ 課金するよ」
松本 ユミオ「わ、私も!」
  ピロリン♪

〇白
  パァーーーーッ

〇教室の教壇
片橋 ユキタカ「・・・」
松本 ユミオ「シ、シルエット詐欺だーーー!!」

〇大きな木のある校舎
  片橋が泡吹いて倒れたぞー!
  担架持ってこーーーい!!
  完

コメント

  • 確かにシルエットのみの隠しキャラ…気になる…。
    みんなの行動力が凄い!というか本当にただのストーカーじゃないですか笑
    とても楽しませて頂きました!

  • 行動力がすごいです笑
    どのセリフも面白くて、飽きずに読み終わりました。相対性理論とイギリスでああなってしまうのが不思議で仕方ありません。

  • サクサク読めて話の展開も面白かったです。
    隠しキャラで黒塗りになっている女の子が教室にいてそれを受け入れているクラスメイトという幕開けからオチが課金という見事な展開でした。新作も期待しています。

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