〇住宅街
？？？「どなたか応答願います」

〇街の全景
？？？「こちら東京、聞こえますか？」
？？？「えっと」

〇地球
？？？「誰かー！　返事してー！」

〇オタクの部屋
？？？「くう」
？？？「100日連続空振りかぁ」
？？？「だから言ったニャ」
？？？「こんな辺境で惑星間通信飛ばしても 意味ないニャ」
？？？「でもビット、このままだと 私たち野垂れ死によ？」
ビット「ボクはAIマシンだから 死んだりしないニャ」
ビット「シャロンは死ぬかもしれないけど」
ビット「あ、そうだ！」
ビット「シャロンが死んだらインストールされてる 葬送曲を歌ってあげるニャ」
シャロン「ちょっと、ビット！」
シャロン「避けないのっ！」
ビット「AI虐待反対！」
シャロン「あなたってどうして」
ビット「バイトが帰って来たニャ！」
バイト「また喧嘩してるのか？」
シャロン「違うわ、教育的指導ってやつよ」
シャロン「で、どうだった？」
バイト「アメリカ大陸も結果は同じだった」
バイト「もう諦めた方がいいな」
シャロン「何てことなの」
シャロン「よりによって漂着した先の星が」

〇地球
シャロン「人類逃亡後の惑星だなんて！」

〇城の廊下
　　約４ヶ月前──
王「待たんか、シャロン！」
シャロン「いいえ、待ちません！」
シャロン「勝手に縁談を進めるなんて 信じられない！」
シャロン「こんな星、出て行ってやる！」

〇巨大な城門
シャロン「ビット、バイト！　行くよ！」
バイト「いいのか？」
シャロン「いいの！　メインエンジン点火！」
ビット「はいニャ！」
王「シャロンー 帰ってきてくれー！」

〇宇宙空間

〇潜水艦
バイト「当てはあるのか？」
シャロン「うん。天体観測で目星はつけてたの」
シャロン「地球って星」
シャロン「同じタイプの 人類が何億人も住んでるのよ」
シャロン「やっと王女の束縛から逃れられる！」
シャロン「そしてあわよくばイケメンの地球人と！」
バイト「おい！　前を見ろ！」
シャロン「わっ！」

〇宇宙空間
シャロン「巨大隕石群!?」
バイト「いかん、ぶつかる！」

〇潜水艦
シャロン「キャアア！」
ビット「慣性制御と非燃推進ニャ！」
バイト「もうやってる！」
バイト「不時着する！　衝撃に備えろ！」
シャロン「いやああ！」

〇地球
シャロン「落ちる──！」

〇街の全景

〇荒廃したセンター街
シャロン「いたた・・・」
シャロン「どうやら地球には着いたようね」
シャロン「あれ？」

〇街の全景
シャロン「人がいない？」

〇荒廃したセンター街
バイト「空を見ろ」
シャロン「空？」

〇空
自動操縦ヘリ「こちらは地球統一政府です」
自動操縦ヘリ「まだ、避難がお済みでない皆様は お急ぎ指定の避難場所に・・・」

〇荒廃したセンター街
シャロン「どういうこと？」
バイト「天体望遠鏡での景色は過去の姿だ」
バイト「母星から地球の距離は300光年」
バイト「君の見ていたのは300年前の地球だ」
ビット「その間に何かあったんだニャ」
バイト「情報を集めよう。あと寝食の確保だ」
バイト「計算上、あと二時間で日が落ちる。急げ」
ビット「はいニャ～」
シャロン「・・・」
シャロン「イケメン地球人どころの話じゃないわ」

〇中央図書館（看板無し）

〇図書館
ビット「なるほど、地核のマグマが 活性化したんだニャ」
ビット「いずれこの星は火だるまになるニャ」
ビット「人類は近くの惑星に 移住したみたいニャ」

〇大きい研究施設

〇諜報機関
バイト「人類のために、ある程度の インフラが自動化されてる」
バイト「ここの住居は使えるな。 保存食の保管場所は・・・」

〇空
シャロン「へっくし！」

〇荒廃したセンター街
シャロン「寒っ。せめて空調だけでも 直らないかなぁ」
シャロン「ここをこうして・・・」
シャロン「あっ！」
シャロン「駄目だ、こりゃ」
バイト「行くぞ。適当な住居を見つけた」
シャロン「ありがとう、バイト」

〇街の全景
　　一週間経過──

〇オタクの部屋
シャロン「完成よ！」
ビット「それは何かニャ？」
シャロン「惑星間無線通信装置～」
シャロン「これで時差なく通信できるわ！」
バイト「それは受信側にも 同じ装置が必要なのでは？」
シャロン「え？」
シャロン「惑星間無線通信って一般的だよね？」
ビット「星によって技術力は全く違うニャ 期待しない方がいいニャ」
シャロン「嘘だぁ！ １ヶ月もすれば絶対誰か応答するわよ！」
バイト「・・・」

〇空

〇空

〇空

〇空

〇オタクの部屋
シャロン「もしもーし。こちら東京です」
ビット「もう諦めた方がいいと思うニャ」
バイト「しかしここもいつまで安全かわからん」
バイト「ロケットの材料がない以上、 助けを求めるより方法はないんだ」
ビット「しかしだニャー」
？？？「ザザ・・・君は、誰？」
シャロン「私の声が聞こえるの？」
シャロン（子供の声だ）
？？？「僕はシューイチ。 ネオ地球に住んでる12歳だよ」
シューイチ「通信装置を自作してて 試しに地球にアンテナを向けたんだ」
シューイチ「そうしたら君の声が聞こえた 君は逃げ遅れた人？」
シャロン「ううん。私はシャロン。 宇宙を旅してて地球に不時着したの」
シャロン「でも、ロケットが壊れちゃってて」
シューイチ「そんな！」
シューイチ「シャロン、今すぐにげて！ 地球はもうすぐ火の海になる」
シャロン「えっ！　でも」

〇入場ゲート
シューイチ「地球人用のシャトルが 近くにあるはずだよ！」
シャロン「あった！」
シャロン「ネオ地球行きシャトル」
シャロン「これでとりあえずその星まで行けば」
シャロン「なに!?」
バイト「大変だ！ 地面からマグマが吹き出し始めた！」
ビット「僕らがバリアを張って 少しの間マグマを抑えるニャ！」
シャロン「で、でもビットとバイトは？」
バイト「我らの命は君のためにある」
バイト「振り向かずに走れ！　シャロン！」
シャロン「バイト！」
シャロン「ごめん！」
ビット「元気で、シャロン」

〇近未来の開発室
シャロン「えっと、コクピットは・・・」
システム「シャトルは自動化されております」
システム「ポッドの中で10年のコールドスリープを している間に、ネオ地球へと到着します」
シャロン「大丈夫なのかな・・・ でも、行くしか、ないよね」

〇黒
シャロン（ビット・・・バイト・・・ありがとう）
シャロン（また・・・いつか・・・）
シャロン（・・・）

〇近未来の開発室
？？？「・・・さん」
？？？「シャロンさん、起きて下さい」
シャロン「え？　はわっ！」
？？？「大丈夫ですか？」
シャロン「あ、はい。あなたは？」
？？？「ああ、えっと。 そっか、声も変わっちゃってるからな」
？？？「シューイチ、って言えばわかるかな？」
シャロン「シューイチ？　ああ、通信の。 でも彼は確か子供で・・・」
シャロン「あっ！」
シャロン（そっか、あれから10年経ったんだわ）
シューイチ「あれから僕は発明が認められて このステーションの所長になりました」
シューイチ「シャロンさん。会いたかった」
シューイチ「僕は今日をずっと待っていました」
シャロン「10年も私を？」
シャロン（しかもイケメン！）
シューイチ「さあ、こちらへどうぞ」
シューイチ「落ち着いたら是非このネオ地球を 案内させて頂きたいです」
シャロン「は、はい」

〇地球
　　こうして、私の新しい生活が始まった

〇川沿いの公園
シャロン（ああ──家出して、本当に良かった）

〇空

〇宇宙空間

〇城の会議室
王「どうじゃ、シャロンの様子は」
ビット「『ドキドキ惑星脱出で大恋愛』 作戦は大成功ニャ」
王「模擬惑星を用意したり、 色々予算もかかったが」

〇川沿いの公園
王「まあ娘が幸せならいいか！」
ビット「とんだ親バカニャ」
ビット「めでたしめでたしニャ」