デスゲーム専門の不動産屋(脚本)
〇応接室
友田洋太「この度、イミイミ不動産桜ヶ丘支店に配属されました、友田といいます」
友田洋太「精一杯働きたいと思います! よろしくお願いします!」
小見山敬之「よろしく。私は桜ヶ丘支店の店長の小見山だ」
小見山敬之「友田くん、入社して早々ウチに配属されるなんて、大変だね」
友田洋太「?」
小見山敬之「すぐにわかるよ。 ウチはちょっとだけ特別な不動産屋だから」
仮面の客「すいませ〜ん」
友田洋太(え?何? 何らかの処刑人の人?)
小見山敬之「いらっしゃいませ! 本日はどのような物件をお探しですか?」
仮面の客「すいません。えっと・・・・・・こういうの初めてなんですが」
友田洋太「この見た目で初めての一人暮らし!? デスゲーム主催者とかじゃなくて?」
小見山敬之「初めてだと、色々と不安ですよね。 どんなイメージで物件を探されていますか?」
仮面の客「最初に犠牲者たちを大広間に集めて、 それぞれを殺人ギミックがある個室に振り分ける感じでイメージしてます」
友田洋太「やっぱりデスゲーム主催者じゃないですか!」
小見山敬之「当然だよ。ここはデス物(デスゲーム物件)を専門に扱っている店舗なんだから」
友田洋太「デスゲーム専門って、そんなことあります!?」
友田洋太「でも・・・言われてみれば、この店、古本屋で特定の本を押し込むと現れる、隠し階段の先にあるし、おかしいと思ったんです!」
仮面の客「あの・・・」
仮面の客「なるべくいい物件をお願いします!」
小見山敬之「もちろんです」
小見山敬之「ですが、お客様全員にとって最高の物件というのはこの世に存在しません」
小見山敬之「1日の内、物件で過ごされる時間が短ければ、間取りが少々狭くても家賃の安い物件が良い物件ですし」
小見山敬之「逆に物件で過ごす時間が長いのであれば、多少家賃が高くとも、ある程度の広さや設備があった方が満足度が高いです」
小見山敬之「お客様のライフスタイルによって最高の物件というのは変わってくるんです」
友田洋太「なんか普通の不動産屋が言いそうなこと言ってる!」
小見山、仮面の客の要望を事細かく聴いている。
小見山敬之「お客様のお話をまとめてみた感じ、8LDK(8部屋、リビング、デストラップ、キルギミック)という感じですかね」
小見山敬之「初心者の方は備え付けの物件がいいと思います」
友田洋太「リビングは普通にリビングなんだ・・・」
仮面の客「このデストラップとキルギミックってどう違うんですか? すいません・・・・・・初めてなもので」
小見山敬之「デストラップが回避不可能な死の罠で、キルギミックが知恵と犠牲で回避もできる仕掛けになります」
小見山敬之「全ての仕掛けをデストラップにするとサクサク殺せますが、盛り上がりに欠けるのが欠点です」
小見山敬之「なので、キルギミックを主軸として配置してデストラップはあくまでもアクセント的に使われるお客様が多いです」
仮面の客「色々あるんですね〜」
小見山敬之「こちらの物件はいかがでしょうか」
小見山、物件資料を客に見せる。
資料には『駅から5分』と書かれている。
仮面の客「駅近物件ですか・・・ 叫び声をたくさんあげさせたいので、できれば近所の人に迷惑をかけない駅遠の方が・・・」
友田洋太「駅遠希望!? モラルがあるのかないのか!?」
小見山敬之「今は防音設備がある物件がほとんどですし」
小見山敬之「実は駅遠の田舎の方が、近隣住民が人の出入りに敏感な分、発覚リスクが高いんです」
仮面の客「は〜そういうものですか、勉強になります」
友田洋太「この人この見た目で腰低いな!」
小見山敬之「こちらの物件などどうでしょう。 部屋数も多いですし、イメージに近いと思いますが」
仮面の客「間取りが広い割に家賃が安いですが・・・・・・でも、築年数28年ってちょっと古いですね」
小見山敬之「確かに築年数は結構いっていますが、リノベ済みで、キルギミックが備え付けられています」
小見山敬之「それに沢山の血を吸ってきた不穏さは新築には出せません。ただ・・・」
仮面の客「何か事情が?」
小見山敬之「心理的瑕疵物件、いわゆる事故物件になります」
友田洋太「デスゲーム物件はみんなそうでは!?」
小見山敬之「この物件は以前の家主が、参加者たちの返り討ちにあって亡くなっているんです。 スリリングなところが魅力とも言えますが」
仮面の客「ふむふむ。日当たりはどうですか?」
小見山敬之「南向きですし、周りに高い建物も無いので悪くないです」
小見山敬之「ただ、デスゲーム物件は基本的に窓がほとんどないのであんまり気にしなくていいと思います」
小見山敬之「一応、簡単な洗濯物が干せる程度のベランダがあります」
友田洋太「ベランダ!?」
仮面の客「あの・・・できれば狂犬を放ったり、実験体の生き餌にしたりしたいので生き物OKのところがいいです」
小見山敬之「承知しました。ペット可の物件で絞り込みましょうか」
友田洋太「怪物が出るタイプのデスゲームって、みんなペット可物件なんだ・・・」
小見山敬之「いくつか候補が絞り込めましたね」
小見山敬之「これからお時間大丈夫ですか? よろしければ内見に行きませんか」
仮面の客「はい。大丈夫です! 是非お願いします!」
小見山敬之「では内見に行きましょうか。 友田くんも来て」
友田洋太「は・・・はい」
『デスゲーム物件の内見』とはどんなものなのか。友田の受難はここから始まる・・・
テンポもいいしデスゲーム関連のリアルなネタもたくさん仕込んであっておもしろかったです。デスゲーム運営経験者の方でしょうか?
タイトルの名前に期待した通り、実に面白いですね。部屋の間取りや使用目的が斬新です。しかも、事故物件が家主が返り討ちで死んだこと。続きが読みたいです。
すごい所に就職してしまいましたね。普通だったら内容分かった段階で逃げてしまいそうですが、客と店長の淡々とあくまでも普通な会話に、かえって興味が沸いてしまったのかもしれないですね。とりあえず一つ内見した様子が知りたいです。