チャイルドレイク

びわ子

生い立ち(脚本)

チャイルドレイク

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〇荒野

〇空

〇火山のある島

〇総合病院

〇病院の廊下

〇手術室
医師「──」
看護師「──」

〇病院の廊下
神野アヤト「──────────────────!!」
神野ナヲコ「──────────────────!!」

〇大樹の下
  手首を掴まれる──
  望んでいなくても
  涙で前が見えないと言ってるのに
  良くも悪くも時間ってヤツは
  こちらの都合を気にせずに
  明日に向かって
  俺を無理やり引っ張っていく──

〇大樹の下

〇総合病院
  とーちーが旅立った、あの日から数週間
  俺は政府が用意した病院に入院していた

〇病室
神野アヤト「・・・」
神野アヤト「・・・」
  コンコン・・・!!
神野アヤト「うん・・・何だ・・・」
  コンコンコン・・・!!
神野アヤト「はい!!」
  コンコンコンコン!!
神野アヤト「えっ!?」
  コンコンコンコン!!コンコンコンコン!!
神野アヤト「な、なんだ!!」
神野マツリ「どおりゃ──!! 大きな声で返事をしろぉアヤト──!!」
神野アヤト「わわっ!!マツリ!?」
神野マツリ「アヤト元気出た──!?」
神野ナヲコ「こらこら・・・マツリ、お兄ちゃんはまだ完全に回復してないんだから・・・」
神野アヤト「かーちー・・・」

〇湖のある公園
  テレビでは連日、琵琶湖の様子が映され
  あることないこと放映されていた

〇テレビスタジオ
  なにせ琵琶湖の底の底から
  救出された子供ということで
  マスコミがこぞって俺にコメントを
  求めようとしているのだが
  政府は先ず俺から底の底の状態を
  内密に聞きたいらしく
  プライバシー保護を理由に
  上手く匿ってくれている

〇病室
神野マツリ「ねえねえアヤトは、まだお家に帰れないの?」
神野ナヲコ「毎日いろいろ検査とか受けてたけど、 今度の土曜には退院できるみたいだよ」
神野アヤト「えっ!それ、ほんと!?」
神野ナヲコ「ついさっき先生に教えてもらったのよ!」
神野マツリ「やったね!!」
神野アヤト「やっとここから出れるのかー・・・ 長かったような短かったような・・・」
神野マツリ「アヤト聞いてー! テレビでさ私達がいた所をね」
神野マツリ「”チャイルドレイク”って言ってたよ!!」
神野アヤト「”チャイルドレイク?”」
神野アヤト「なんなのそれ?」
神野マツリ「うーん、マツリわかんない!!」
神野ナヲコ「滋賀県では琵琶湖は”マザーレイク”って 呼んでいるんだけど」
神野ナヲコ「琵琶湖の下でもう一つの湖を 大きく育ててたことから」
神野ナヲコ「”もう一つの湖=子供”と見立てて・・・ マザーレイクの子供だから」
神野ナヲコ「” チャイルドレイク”って名付けたみたいよ」
神野アヤト「ふーん・・・」
神野アヤト「”チャイルドレイク”か・・・」
神野アヤト「とーちーみたいな発想だな・・・」
「・・・」
神野アヤト「・・・」
神野ナヲコ「アヤト・・・」
神野ナヲコ「心の方はもう落ち着いてきた?」
神野アヤト「うん・・・忘れることはないけど」
神野アヤト「時間が・・・」
神野アヤト「ゆっくり癒やしてくれた・・・」
神野アヤト「だから・・・」
神野アヤト「聞かせて欲しい・・・」
神野アヤト「俺とマツリの生立ちのことを・・・」
神野ナヲコ「・・・」
神野ナヲコ「わかったわ・・・」
神野ナヲコ「ややこしくて少し長くなるけどいい?」
「うん・・・」
神野ナヲコ「わかった・・・」
神野ナヲコ「・・・」
神野ナヲコ「今から10年以上前の話よ──」

〇レトロ喫茶
  私には2つ年上のカナコという姉がいて
  とーちー・・・いや・・・
  ツカサ君と結婚していたの──
  そして私はとーちーの双子の弟である
  神野修二と結婚していたの──
神野ツカサ「遅くなってゴメン!!」
カナコ「大丈夫よ、おかげでナヲコと楽しい時間を過ごせたわ!」
神野ツカサ「そうかよかった──」
神野ナヲコ「こんにちはツカサさん お気になさらずに」
神野ツカサ「こんにちは!!ああ良かった・・・ カナコに晩御飯抜きにされるとこだったよ」
カナコ「ツカサく──ん・・・」
神野ツカサ「わわっ!うそうそ!冗談!冗談!!」
神野ナヲコ「ハハハハハ!」
カナコ「まったく──」
神野ナヲコ「じゃあ姉さん、そろそろ病院の 予約時間だからいくね」
カナコ「うん、わかったわ」
神野ツカサ「あれ?修二とアヤト君は?」
神野ナヲコ「2人は家で荷造りしてます!!」
神野ナヲコ「また引っ越す前に 時間作って全員で挨拶に来るから」
神野ツカサ「そうなんだ、外寒いから気をつけてね!」
カナコ「2人によろしくね!!」
神野ナヲコ「うん、ありがとう!!またね!」
カナコ「子供か・・・」
神野ツカサ「カナコ・・・」

〇病院の診察室
  2人は子供が欲しかったが出来なかった
  いや・・・
  正確にいうと、つくれなかったのだ・・・
  姉のカナコは幼少期から体が弱く
  学生時代に癌の手術もしていている
  そして・・・先天的に女性の腟が欠損し、
  機能性子宮を持たない疾患
  ロキタンスキー症候群
  またツカサも精液中に
  精子が全く見られない状態が続く
  無精子症
  2人はお互い子どもは持たない
  ・・・いや、持てないことを
  お互いわかって結婚したの

〇駅前広場
  ある日、仕事の都合で
  東京を離れる事になった私達家族は
  最後のお別れに姉さん達と食事をしようと
  待ち合わせに向かっていた
神野ナヲコ「修二君、アヤトの手を離さないでね」
神野修二「わかってるって」

〇商店街の飲食店
神野ツカサ「!!」
神野ツカサ「あ!!あれ修二だろ! 同じ顔だからすぐわかる!」
カナコ「ほんとだ!!」
カナコ「おーい!!」
神野ツカサ「危ない!!」
カナコ「キャッ!!」
神野ツカサ「な、何だあの車!?」
カナコ「キャー!ナヲコ!!」
神野ツカサ「お、おい!!修二!アヤト!」

〇モヤモヤ
  大変だ!人が轢かれたぞ!
  救急車!!
  子供は生きてるぞ!
  痛いよ──!!

〇総合病院

〇病院の入口

〇病院の廊下
  なんの前触れもなく
  修二君は死んだ──
  運転手は八十歳の高齢者
  アクセルとブレーキを
  踏み間違えたのが原因だった
神野ナヲコ「姉さん・・・修二君は・・・」
神野ナヲコ「修二君は私とアヤトをかばって・・・」
神野ナヲコ「ああ・・・」
「・・・」
神野ナヲコ「私・・・これからどうしたらいいのか・・・」
神野ナヲコ「こんなに苦しいなら・・・」
神野ナヲコ「一緒に死ねば良かった・・・」
カナコ「ナヲコ!ダメ!死ぬなんて!ダメよ!!」
カナコ「『生きなさい』どんなに苦しくても・・・」
カナコ「アヤト君や・・・ 生まれてくる赤ちゃんの為にも・・・」
神野ナヲコ「姉さん・・・う、う、うわ────ん!!」
カナコ「・・・」
神野ツカサ「カナコ・・・俺達ができることがあれば何でも協力してあげよう・・・」
カナコ「・・・ナヲコ」
神野ナヲコ「・・・グス・・・ヒック!!ヒック!!」
カナコ「ナヲコ・・・ 貴方達、私達と一緒に暮らさない?」
カナコ「私達は家族よ・・・ 落ち着くまででいいから・・・」
カナコ「ツカサ君・・・お願いします!」
神野ナヲコ「・・・でも」
神野ツカサ「・・・俺達の家は古いけど 無駄に広いし部屋は困らない」
神野ツカサ「カナコの言う通り、落ち着くまででも良かったら来てくれないかな」
神野ナヲコ「あ、あ・・・ありがとうございます!!」
カナコ「ツカサ君・・・ありがとう・・・」

〇大きな一軒家

〇実家の居間
  2人は気落ちする私のため
  アヤトとお腹にいるマツリの為に
  とても親身になってくれた

〇街中の公園
神野ツカサ「みて!アヤトが砂を握ってお山を作ってる」
神野ツカサ「天才だ!」
カナコ「すごいわ!!」
神野ナヲコ「いやいや、普通ですよ司さん・・・」
カナコ「ねぇ、ナヲコ・・・」
カナコ「アヤト可愛すぎるから 誘拐されないか心配だわ・・・」
神野ツカサ「た、たしかに・・・」
神野ナヲコ「ちょっと何言ってるの姉さんまで・・・」
神野ツカサ「うわー!アヤトが石を持ち上げたー! すごいチカラだ!」
カナコ「このまま育ったらトラックも 持ち上げちゃうじゃない・・・」
神野ナヲコ「2人とも・・・ 一歳なら小石ぐらい掴めますよ」
神野ナヲコ(恥ずかしいな・・・)

〇植物園の中
  植物園や

〇水中トンネル
  水族館

〇クリスマス仕様の畳部屋
  あの時支えてもらえなければ
  不安と葛藤に私は潰れていたと思う
  私に考えさせる時間を作らせないように
  いろんな場所へ連れて行ってくれたり
  イベントを開いて
  私の心を癒してくれた・・・

〇病院の診察室
  半年ほど経った頃・・・
  カナコ姉さんの癌が再発した・・・
  余命は1年──
  彼女は自宅療養を選んだ

〇アパートの中庭
  外に出ることもなく
  日に日に衰弱していく姉
  同じようにツカサさんも
  元気がなくなっていった
  数ヶ月が過ぎた頃
  とても穏やかで暖かい日に
  姉さんは私達に話があると中庭に呼んだ
カナコ「・・・」
カナコ「今日はいい天気ね・・・ このまま外に遊びに行きたいわ」
神野ツカサ「そうだな・・・」
カナコ「ナヲコのお腹も大きくなったね アヤトは寝てるの?」
神野ナヲコ「うん、居間の安全な場所で寝ているわ」
神野ツカサ「どうした・・・?」
カナコ「2人にお願いがあるの・・・」
カナコ「貴方達・・・」
カナコ「結婚しなさい!!」
「はあぁ────────!?」
神野ナヲコ「ちょ、ちょっと姉さん何言ってるの!?」
神野ツカサ「ふざけてるのか・・・」
カナコ「私は本気よ・・・」
カナコ「私が死んだらツカサ君は悲しみに暮れ」
カナコ「私と結婚する前の だらしない生活しちゃうけど」
カナコ「ナヲコがいると、 そんなことできないでしょ!」
神野ツカサ「な、なんだと」
カナコ「ナヲコも1人で子供達を育てるのは難しい」
カナコ「精神面でも金銭面でも ツカサ君の存在はとても頼りになるわ」
神野ナヲコ「いやいや・・・急に何言ってるの?」
カナコ「ツカサ君・・・ナヲコ・・・」
カナコ「お願いします!!」
カナコ「2人は私にとってどちらも大切な人なの」
カナコ「あなたたちなら素敵な家族になれるわ」
カナコ「私の最初で最後のお願いよ・・・」
神野ツカサ「そんな・・・」
神野ナヲコ「・・・」
カナコ「ウッ!ゴホッ!ゴホッ!!」
神野ツカサ「カナコ!!」
神野ナヲコ「姉さん!!」
カナコ「2人とも・・・」
カナコ「約束よ──」
神野ツカサ「ナヲコさん!救急車を!!」
カナコ「──」

〇葬儀場
  別れは突然やってきて
  また私を暗闇に引き戻そうとした──

〇実家の居間
「・・・」
神野ツカサ「ナヲコさん・・・」
神野ナヲコ「・・・」
神野ツカサ「俺はカナコが好きで好きで・・・」
神野ツカサ「大好きだったんです・・・」
神野ナヲコ「私も・・・修二さんが大好きでした・・・」
神野ツカサ「・・・」
神野ナヲコ「同じように姉も・・・大好きでした・・・」
神野ツカサ「・・・ナヲコさん」
神野ツカサ「偽装結婚でもいい・・・」
神野ツカサ「貴方とアヤトと お腹にいる子どもが成長するまで」
神野ツカサ「俺に手助けさせて欲しい・・・」
神野ナヲコ「・・・」
神野ツカサ「何もなくなった俺に未来をください・・・」
神野ナヲコ「・・・」
神野ナヲコ「私・・・私・・・」
神野ナヲコ「修二さんの全てを無くしたくないんです・・」
神野ナヲコ「だから子ども達にツカサさんを 『父さん』と呼ばせられません」
神野ナヲコ「だから・・・結婚は無理です・・・」
神野ナヲコ「・・・」
神野ナヲコ「でも・・・誰かいないと1人では・・・」
神野ツカサ「・・・」
神野ツカサ「・・・修二の為にもカナコに誓って結婚しても貴方に手を出すことはしません」
神野ツカサ「その事を忘れないようにアヤト達には俺の事を『 父さん』とは呼ばせない」
神野ツカサ「俺は貴方達の『たいまつ』となって先を照らす存在になるだけで良いんです!」
神野ツカサ「だからアヤト達には 俺のことは・・・あだ名で・・・」
神野ツカサ「『とーちー』とでも呼ばせますよ・・・」
神野ナヲコ「・・・」
神野ナヲコ「もし・・・アヤト達が自分から『父さん』と言う日が来たら──」
神野ナヲコ「その時は本当に結婚しましょう」
「・・・」

〇病室
神野ナヲコ「そして今日まで一緒に暮らしていたの──」
神野アヤト「とーちーは俺達のために 無理して父親になってくれたの!?」
神野ナヲコ「カナコ姉さんの 最後のお願いもあったと思うけど・・・」
神野ナヲコ「無理矢理じゃなくアヤトやマツリと生活することを心から喜んでいたわ・・」
神野ナヲコ「隠しててごめんなさい・・・」
神野アヤト「俺は、そんなことも知らずに、 とーちーに酷いことを・・・」
神野アヤト「そうなんだ・・・ 本当の親は”修二”って言うのか・・・」
神野マツリ「私達を守って死んじゃったんだね・・・」
神野アヤト「修二父さんはどんな人だったの?」
神野ナヲコ「とーちーとは全く正反対の性格」
神野ナヲコ「見た目は瓜二つだけどインドアでどちらかというと無口なタイプだったわ」
神野ナヲコ「記念日は必ず覚えてて、いつもさりげない優しさで私達に接してくれたの」
神野マツリ「えー!!見たかったなー、 修二父さんに会いたかった・・・」
神野アヤト「俺も全然覚えてないや・・・」
神野ナヲコ「修二君が亡くなった時 アヤトはまだ1歳だったから・・・」
神野アヤト「そうなんだ・・・それで”とーちー”は」
神野アヤト「育ての親として接してくれたんだね・・・」
神野マツリ「アヤト・・・」
神野ナヲコ「アヤト、マツリ・・・ 隠しててごめんね・・・」
神野マツリ「かーちー・・・」
神野マツリ「ほんとに!!なんで隠してたの!!」
神野ナヲコ「────!!」
神野マツリ「2人も父親だって・・・」
神野マツリ「2人も父親がいたら2倍嬉しいじゃない!!」
神野マツリ「アヤト!私達には 産みの親と育ての親がいるんだね!」
神野マツリ「なんか家族いっぱいいると楽しいじゃん!!」
神野アヤト「・・・」
神野アヤト「ああ・・・マツリの・・・」
神野アヤト「マツリの言うとうりだ!!」
神野マツリ「思い出も2ば〜い!2ば〜い!!」
「ハハハ!!」
神野アヤト「そういうことだから、 かーちー気にしないで!!」
神野ナヲコ「うん・・・うん・・・ありがとう・・・」
神野ナヲコ「ありがとう2人とも・・・」
神野ナヲコ「・・・」
神野ナヲコ「もう直ぐ検診かな?」
神野ナヲコ「じゃあまた、後で来るわね!」
神野マツリ「また後でねー!!ではさらばじゃ!!」
神野アヤト(マツリ・・・お前の明るさで)
神野アヤト(かーちーも救われたよ いつも笑顔をありがとうな・・・)
神野アヤト「・・・」
神野アヤト「とーちー・・・」
神野アヤト「”たいまつ”を英語で”torch”と読むから ”とーちー”と名付けたのか」
神野アヤト「俺達の前を ずっと照らしてくれたんだな・・・」

次のエピソード:約束

コメント

  • とーちー…
    アンタカッコ良すぎるよ…

    母なる湖、琵琶湖にて、子は育ち、強くなった。
    まさにチャイルドレイク…
    ナイスなネーミングです!

  • とーちー!!😭😭😭
    そんな過去があったのか…最高の父親すぎる😭
    「チャイルドレイク」と「とーちー」の回収に感嘆しました!

  • 車が突っ込んできたときはここでも鉄かと…!←
    タイトル回収、そしてとーちーの過去が明らかに…
    この場面にとーちーがいないなんて…😭

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