〇病室
　　コンコン!!
田仲「こんにちはアヤト君」
神野アヤト「あなたは!?」
神野アヤト「とーちーを運んでくれた・・・ 自衛隊の方ですよね？」
神野アヤト「確か・・・田仲さん」
田仲「うん・・・元気そうだね」
田仲「・・・」
神野アヤト「・・・あの・・・今日は？」
田仲「預かっていたものを君に返そうと思って」
神野アヤト「えっ!?俺なんか預けてましたか？」
田仲「いや・・・君のお父さんからだ・・・」
神野アヤト「コレはとーちーの鼻うがいの袋・・・」
田仲「あの地下でお父さんから”大事な物”だから」
田仲「拾ってくれと言われ ずっと持ってたんだが・・・」
田仲「あんな事があって返しそびれてね・・・」
神野アヤト「・・・」
神野アヤト「・・・そうだったんだ」
田仲「・・・」
田仲「お父さん『絶対無くさないでくれ』って 俺に言ってたよ!!」
田仲「余程大事なモノだったんだね・・・」
田仲「はい・・・アヤト君・・・」
神野アヤト「あ・・・ありがとうございます！」
田仲「じゃあ!!俺はこれで・・・」
神野アヤト（とーちーの鼻うがいの袋・・・）
神野アヤト（最後まで拾って欲しいなんて・・・ ”とーちー”らしいや!!）
神野マツリ「戻ってきたよー!!」
神野ナヲコ「あら？その袋・・・」
神野アヤト「とーちーが最後まで大事にしてた袋を 自衛隊の人が持ってきてくれたんだ」
神野アヤト「鼻うがいの袋 中身は何にも入ってないんだよ」
神野マツリ「えー！見せて見せて!!」
神野マツリ「ほんとに中身何もないね・・・」
神野アヤト「あるのは、こぼれ落ちた お塩ぐらいじゃないかな？」
神野ナヲコ「確かにとーちー、 その袋大事にしていたわね・・・」
神野マツリ「あれ!?」
神野マツリ「これ裏返しじゃないの？」
神野アヤト「えっ!!」
神野マツリ「だって、こっち向けたらホラ・・・」
神野マツリ「ねっ!!絵が出てきたでしょ!!」
神野マツリ「なんだろうね”ラクガキ”かなぁ？」
神野アヤト「・・・こ、これは!!」
神野マツリ「ア、アヤト・・・どうしたの・・・!?」
神野マツリ「何!?どこか痛いの？」
神野マツリ「えっ？かーちーまで何で泣いてるの？」
神野アヤト「これは・・・あの時の・・・」

〇音楽室
幼稚園児「先生できたよ──!!」
幼稚園児「私も──!!」
神野アヤト（どうしよう・・・上手く描けない・・・）
　　先生『はーい！じゃあ今日作った袋は──持って帰ってお家の人に見せてください』
「先生さよなら──!!」
幼稚園児「バイバ──イ!!」
神野アヤト「あっ・・・みんな・・・」
神野アヤト（うーん・・・もうこれでいいや!!）

〇桜並木
神野ツカサ「アヤト迎えにきたよ!!」
神野アヤト「む──!!」
神野ツカサ「どうしたんだ!?」
神野ツカサ「今日は工作で ”絵や布を貼ってオリジナル袋作ろう” だったんだよな？」
神野アヤト「これ・・・」
神野アヤト「上手く出来なかった・・・」
神野ツカサ「うわー!!凄い！いいよ、いいよ！この袋!!」
神野ツカサ「この袋の絵が楽しくていいね！」
神野ツカサ「俺アヤトの絵大好きだよ！ だって見ると元気になるもん！」
神野ツカサ「いいなー！羨ましいなー!!」
神野アヤト「だったら・・・」
神野アヤト「とーちーにあげるよ・・・」
神野ツカサ「えっ!!うそ!!」
神野アヤト「先生が自分で使ってもいいし、おうちの人にプレゼントしてもいいって言ってたもん」
神野ツカサ「その代わり一生大事にしてね・・・」
神野ツカサ「する！する!!」
神野ツカサ「俺の宝物にするよ!!」
神野ツカサ「やったー！今日はいい日だ！」
神野ツカサ「そうだ！晩御飯はアヤトの好きな ”ほうれん草チヂミ”にしよう！」
神野アヤト「やったー！」
神野アヤト「じゃあ家まで競走だー!!」
　　神野アヤト『へっへーん！
　　 ここまでおいで！』
神野ツカサ「わっ！ズルいぞアヤト──」
　　神野ツカサ『まてー！アヤトー！』
　　ああ──
　　とーちー本当に
　　一生大事にしてくれたんだね
　　──
　　俺もとーちーのように
　　暴力を好まず
　　誰にでも親切に接して
　　家族を愛せる人間になりたい
　　──
　　俺達を見守ってくれて
　　父親になってくれて
　　ありがとう
　　──
　　円城寺さん、野々原さん、拳也・・・
　　救ってもらったこの命
　　皆んなの分まで
　　大事に生きていくよ