エピソード1(脚本)
〇岩の洞窟
レン「ハア・・・ハア・・・」
魔物の群れ「どこだ! あの剣士はどこへ行った!?️」
魔物の群れは 岩場の影に隠れたレンに気付かず どこかへ走り去っていく
レン「どうやら 撒けたようだな・・・」
レンはほっと一息つく
レン「よし行こう あと一踏ん張りだ」
ザッサッ──
レンは魔物の群れと逆方向の通路へ歩き出す
レン「それにしても この洞窟の魔物達は強敵揃いだな・・・」
レン「流浪の剣士として 各地を旅して早三年」
レン「その旅の途中 様々なダンジョンに挑戦してきた」
レン「洞窟や塔 ・・・城さえもあった」
レン「当然 様々な強敵と出会ってきた」
レン「その中でも この洞窟の深部の魔物達は 一番の強敵揃いだ」
レン「壁の中から攻撃してくるお化け 見えない所から炎を飛ばすドラゴン」
レン「ソイツらを倒すために 手持ちのアイテムを湯水のように使っていった」
レン「お陰でアイテムはもう空・・・矢の一本も残ってやしない」
レン「魔物と戦うには ヤバイ状態だ」
レン「いや・・・もっとヤバイのがある」
グルルル──
レン「・・・俺のお腹の状態だ」
レン「やっぱり あのおにぎりを食べたのはまずかった・・・」
レン「泥沼に浸かったりしたから デロデロだったし・・・」
レン「そんな明らかに腐った物を ドラゴンの炎で焼けたから 「焼きおにぎり完成だ」と自分に言い聞かせて食すのは 我ながらちょっと」
グルルルル──
レン「ヤバイ・・・突破寸前だ・・・」
レン「幸いにも現在地下98F 100Fの宝物庫は聖なる結界で守られているので 魔物が近寄れない」
レン「要するに 俺はここと次のフロアを下りてしまえばいいのだ」
レン「帰りは 宝物庫にある えすかれーたーに乗るだけだ」
レン「あれなら 地下100Fから地上まであっという間だ」
レン「・・・昔は往復しなくちゃいけなかったのに 今は往路だけ」
レン「本当 便利な世の中になったなあ・・・」
ザッサッ──
レンは魔物の気配を探りながら慎重に歩を進める
〇洞窟の深部
レンが通路から ある小部屋に入る
そこには階段があった
レン「魔物は誰もいない・・・よし 今のうちに・・・」
トントントン──
レンは階段を下りた
〇黒
――99F──
〇洞窟の深部
レンはどこかの大部屋につく
そして 部屋の中には下へと続く階段があった
レン「僥倖だ!」
レンは階段へと歩を進める
???「ニンゲン!?」
レンの背後から誰かが叫ぶ
レンは慌てて後ろを振り返る
そこには 特殊能力こそ無いが 全魔物中トップクラスのパワーを誇る 魔獣キンノウがいた
タッタッ──
レンは階段を目指して走る
タッタッ──
キンノウも後ろから追いかける
レン「(大丈夫・・・逃げ切れる!)」
レン「(キンノウはパワーこそ凄いが 素早さは然程無い・・・)」
レン「(階段を下りてしまえば 聖なる結界で守られた宝物庫だ)」
キンノウ「マテエェ!」
レン「(待て と言われて待つ奴が何処に・・・)」
レン「うわっ!」
突如 何かがレンの足に引っ掛かる
レンは足元を確認する
そこにはトラ挟みの罠が レンの両足を捕まえていた
レン「(クソッ! こんな所に隠し罠があるとは・・・)」
レン「(足に怪我は負っていないが・・・トラ挟みを外している間に キンノウに追いつかれてしまう・・・)」
レン「(・・・迎え撃つしかない!)」
レン「(大丈夫・・・イケる・・・)」
レン「(俺のカタナは 睡眠 混乱 目つぶし の特殊効果が付いている)」
レン「(きっと それらの効果の中で どれか一つは発動してくれるに違いない!)」
レンは振り返り キンノウと正対すると 腰に帯刀してある刀を抜き 構えを取る
キンノウ「ウオオー!」
キンノウは雄叫びを挙げ レンに勢いよく近づいてくる
レンは カタナを振り下ろすタイミングを測る
レン「(・・・今だ!)」
レンは渾身の力でカタナを振り下ろした
スカッ
だが 無情にもカタナは空を斬った
レン「(しまった! 両足が動かせないせいで バランスを崩すとは)」
キンノウ「ツギハコッチノバンダ!」
キンノウは強烈なストレートパンチを繰り出す
それがレンの腹部に直撃する
レン「ぐっ・・・」
強烈な一撃を レンは何とか持ちこたえる
だが・・・
レン「(何で よりにもよって腹に・・・駄目だ・・・突破する!)」
ブリブリブリブリ
キンノウ「アッ・・・」
レン「・・・」
キンノウ「・・・」
二人の動きは完全に止まる
レン「・・・」
キンノウ「・・・」
ヒュウウウ──
部屋の中には 風の音だけが響き渡る
その風は レンのアスタリスクから乱れ散った液体の匂いを運ぶ
キンノウ「・・・ガマンシテタノカ?」
キンノウはレンに尋ねた
レン「・・・」
レンはコクリと頷く
キンノウ「ソウカ・・・」
レン「・・・」
キンノウ「・・・オレモオサナイコロハヨクアッタ」
レン「(変に気遣うなよ! 余計に惨めだわ!)」
レン「(そもそも幼い頃って・・・今は漏らしてないだろ! 俺は成人なんだぞ! しかも小じゃなくて大だぞ!)」
レン「・・・有難う」
レンは心の声と裏腹に 気を遣ってくれたキンノウに感謝の言葉を述べた
キンノウ「ジャアナ・・・」
キンノウは踵を返す
そして 部屋から去っていった
レン「・・・」
レンはトラ挟みを外し 階段を下り始める
ヌギヌギ
ポイッ
降りる途中 レンはパンツとズボンを脱ぎ 99Fの中に投げ捨てた
〇黒
――宝物庫──
台座の上に置かれた この洞窟のお宝は 木彫りの手形だった
レン「この洞窟の運営団体はケチだな・・・余所だと剣や盾なのに・・・」
レン「さて えれべーたーに乗って帰るとするか」
レン「ブラブラさせてあるモノだが・・・マントを腰に巻いて誤魔化すか・・・」
レン「今回は黒歴史を作っただけだな・・・」
さっきまで闘ってたはずのモンスターの気遣いと、なんとなく漂うお腹を刺激してしまった申し訳なさがとても面白かったです。焼きおにぎりが目の前にあったらそりゃあ食べたくなりますよね〜。
面白かったです!
バトルファンタジーかと思っていたら違ってました!
会話のテンポも良くて、モンスターに同情されてるあたりが楽しかったです笑
ストーリーの展開がうまくされていて一気に読み終えました。会話のテンポもよく、クスッとなる時もあり楽しく拝見させて頂きました。