読切(脚本)
〇豪華なリビングダイニング
正「はいはい、いい子でちゅね~」
生後8ケ月の娘、陽菜のオムツテープを剥がす正。寝かせている横にスマホが。
正はオムツを取り出すところで、スマホを片手に上から激写「カシャ!」
正「ああ、はずかし、はずかしぃ~」
寝かせている大きなタオルで身体を拭きながらコチョコチョすると、陽菜はキャッキャッ言って喜んでいる様子。
そこをすかさずまた瞬写「カシャ!」
正「さあ、新しいオムツでちゅよ~」
オムツをセットすると、リビング隣部屋の揺り篭に陽菜を寝かし、また「カシャ!」
そしてゆっくりと篭を揺らすと、穏やかなムードに暫し包まれる親子。幸せ~。
しかし玄関のドアが勢いよく開く音がすると、正の妻、果歩が勤務先から帰宅する。
果歩「あああ、ったく!腹立つ」
果歩はリビングの長椅子に自分のバックを放り投げる。
正「おつかれ様。大丈夫?裁判大変だったの?」
果歩「ちがうちがう。これは言い回しがおかしくないか?もっと完結に記録できないか?だと?!」
果歩「うっせーわ、あの出席だが、書籍だが知らんけど、偉そうに」
正「それ首席書記官じゃない?偉いからその人」
果歩「父に云って飛ばしてもらうか」
正「それ、職権乱用でしょ」
『わーーーーーーーーー』陽菜が泣きだした。
正「ああ、陽菜ちゃん、よしよし。ママ、ちょっと落ち着こうね」
果歩はリビングの長椅子に寝ころび、テレビをつける。
テレビではニュースが流れ、裁判の映像が報道されていた。
そこには果歩の父、林太郎が裁判官として中央に座り、その下に書記官として果歩の
姿が映っていた。
果歩「そうそう、これこれ。この事件でうるさいんだよ、あのヒョットコ」
正「首席書記官だから。なにもカブってないから」
正((心の声)『しかし、テレビに映る姿からは想像もできない。あの清楚で大人しそうに見える女性は?』)
正((心の声)『ああ、これか~。想像できない。絶対近所に知られてはならない』)
果歩は横になりながら片手でお尻を掻いている。
正から大きなため息がもれる。
〇高級マンションの一室
『ピンポーン』玄関のベルが鳴る。
正「え?誰?」
果歩「ああ、ウーバー頼んどいたの」
果歩は飛び起きて玄関先へ。
正は陽菜をあやしながら、耳を玄関に向けて聞き耳を立てていた。
果歩「ご苦労様です。・・・いえいえ主人と食べ盛りの子供といただきます。・・・はい、ありがとうございました」
正は身震いがした。家にいる時の果歩とは別人のような会話に。
果歩はリビング机の上に届けられた食材の箱を取り出す。
すぐさま、ひとつひとつの箱を開くと・・・
果歩「いや~、おいしそう~」
果歩は箸を手にして、全ての食材を味見する
果歩「ああ、おいしいわ。ねえ食べて食べて。なくなるよ~」
正「いや、まだ陽菜が寝てないし」
果歩「ここ置いとくね」
果歩は一番大きなピザ箱をとり、また長椅子に寝ころぶ
テレビを見ながらピザにかぶりつく
♪♬(^^♪~』果歩のスマホが鳴る
スマホに『痔』の文字
果歩はテレビを消音にして、スマホをスライドする
果歩「はい、こんばんは、お父様。今日もお疲れ様でした。・・・・はい、・・・はい」
正はまた身震いがした。この会話はママじゃない、そう云い聞かせて揺り篭を揺らす
果歩が電話の途中で正に近づき話しかける
果歩「孫が見たいってさ」
正は揺り篭から少し距離を置く
そこに、さも自分が娘をあやしていたかのように果歩が揺り篭を揺らしながら、スマホをテレビカメラにして陽菜を写し出す
果歩「ほら、おじい様ですよ、陽菜ちゃん」
正((心の声)『凄い、才能だこれは。大事な時に、大事な処でいる!不器用な俺とは真逆』)
正((心の声)『お父さんは現役の裁判官、娘も将来は裁判官。こっちは民間のサラリーマン。人間の出来が違えば環境も違う』)
正((心の声)『なんだこの格差は。このマンションも買ってくれた。逆玉か俺は。こんな家庭なんて友達にも両親にも云えないよな』)
果歩「ああ、おわったおわった。食べ直そう」
果歩は父との電話が終わって、またリビングの長椅子に寝ころびながらピザを食べる
テレビの消音を解除し、バラエティー番組を見る
果歩「がっ、ハハハハハ」
正((心の声)『云えないよな、云えない』)
正は揺り篭をまたゆっくりと揺らす
ぷ~(^^♪
正「あ~?かわいいオナラ、でちゃいまちたね~。匂いもかわゆい・・・・ん?」
正は何か、もやもやした雰囲気をリビングから感じる。曇っているような・・・もやっとしたような。そして段々と匂いが増してくる
正「えっ?」
『プーーーー、ブ、ブッフォ~~!!』
正「あ~、これは。あ~、かっ、くさ!」
果歩「か、草」
正「(心の声)『知られてはならない、絶対』」
奥様、外でこんなにがんばって日々素敵な奥様を演じていたら、家の中ではリラックスしたくなりますね。こんなにリラックスして素でいられるのは
やはり旦那さまが包容力があって、素晴らしいからでしょう。
奥さんは最高に幸せものです。仕事でストレスが溜まっても、家に帰ってきたら好きなだけストレス発散が出来て、素敵な旦那さんが居て。
奥様はほんっとうに幸せものだと思います!こんな旦那さんいてくれたら、仕事に没頭できるだろうなあ。
きっと奥さんは、旦那さんのことを誰よりも信頼してると思います。