〇港の倉庫
有栖川マナミ「ここに ジュンちゃんが連れていかれたの？」
クロ「う、うん」
クロ「それに この世界の君も拘束されてるみたい」
クロ「時間的にも おそらくここで植月ジュンは殺される」
クロ「そして タイムリープが起こってしまう・・・」
有栖川マナミ「・・・・・・」
クロ「マナ、どうする？」
有栖川マナミ「うーん」
有栖川シホ「マナ・・・」

〇廃ビルのフロア
植月ジュン「う、うーん・・・」
植月ジュン「こ、ここは!?」
田中「ようやく起きたか・・・」
植月ジュン「誰だ・・・お前？」
植月ジュン「会のメンバーか!?」
田中「フン」
田中「知らないのも当然か・・・」
田中「俺は汚れ仕事専門だったしな」
植月ジュン「あの時の車もお前か!?」
田中「どうだろうな」
植月ジュン「こんなことして何になる？ お前の目的は何だ？」
田中「復讐だよ」
田中「全てをむちゃくちゃにした お前へのな・・・」
植月ジュン「組織は解体された！ お前達はもう終わってるんだ！」
田中「黙れ！何も終わってない！」
田中「俺が・・・俺達がやらないと──」
田中「何も終わらないんだよ！」
植月ジュン「は？」
田中「大導師も大導師だ！」
田中「なぜ戦わない!? なぜ動いてはいけない!?」
田中「女神に見捨てられただと？ ふざけるな！」
田中「俺達の苦悩は何だったんだ！」
植月ジュン「何を・・・言っている？」
田中「お前には分からないだろうな！」
田中「人類の苦しみも・・・ 俺達がやろうとしたことも・・・」
田中「・・・・・・」
田中「俺達の崇高な目的の邪魔をした お前の罪は大きい・・・」
田中「だからお前には罰が必要だ」
田中「これを見ろ」
有栖川愛実「ジュンちゃん・・・」
植月ジュン「ま、愛実！」
植月ジュン「お前、愛実に指一本でも触れてみろ！ ぶっ殺してやるからな！」
田中「安心しろ 何もしちゃいないさ」
田中「まだな・・・」
植月ジュン「テメー・・・」
植月ジュン「愛実、心配すんな 必ず助けるからな！」
有栖川愛実「うん・・・」
田中「残念だが この女はここで死ぬ」
植月ジュン「お、おい・・・」
田中「魂の成長には絶望が必要なんだ」
有栖川愛実「ジュンちゃん・・・」
植月ジュン「やめろ！やめてくれ！」
植月ジュン「頼む！何でもするから！ 愛実を助けてくれ！」
田中「植月ジュン」
田中「安心しろ 死こそが救いだ」
植月ジュン「ま、愛実！」
有栖川愛実「ジュンちゃん・・・」
有栖川愛実「私・・・」
有栖川愛実「私・・・ジュンちゃんのこと・・・」
植月ジュン「あ・・・あ・・・」
植月ジュン「愛実・・・」
植月ジュン「クソ！また・・・」
植月ジュン「まただ・・・！」
植月ジュン「また救えなかった・・・」
植月ジュン「ごめん・・・ ごめんな・・・」
田中「植月ジュン」
田中「次はお前の番だ」
植月ジュン「・・・・・・」
植月ジュン「やれよ？殺せ・・・」
植月ジュン「だが忘れるなよ？」
植月ジュン「お前達の思い通りになんて 絶対にさせない！」
植月ジュン「次で・・・」
植月ジュン「次で決着をつけてやる！」
田中「何を言ってる？」
田中「次？」
田中「次なんて無い！」
田中「お前はここで死ぬんだからなぁー！」
田中「うっ・・・！」
有栖川マナミ「ハァ・・・ハァ・・・」
有栖川マナミ「あんたなんかに ジュンちゃんを殺される訳にはいかないのよ」
植月ジュン「君は・・・」
有栖川マナミ「ジュンちゃん・・・」
有栖川マナミ「その様子だと やっぱり覚えてないのね」
クロ「当然さ」
クロ「僕達は”次の世界“から 彼は“前の世界”からやって来ているからね」
植月ジュン「猫・・・？」
有栖川マナミ「そっか・・・ じゃあ何をしても忘れちゃうんだね」
クロ「だからって 変なこと考えないでね？」
植月ジュン「お前たちさっきから 何を言ってるんだ？」
植月ジュン「それに、その声・・・ もしかして愛実か？」
有栖川マナミ「いいえ・・・」
有栖川マナミ「マナミよ」
有栖川マナミ「あなたが見捨てた世界のね」
植月ジュン「見捨てた？」
有栖川マナミ「ジュンちゃんにとっては ずいぶん昔のことになるのかな」
有栖川マナミ「大丈夫 必ず連れて帰るからね」
クロ「タイマーは完全に止まってる」
クロ「やっぱりさっきの拳銃が タイムリープを引き起こしたみたい」
クロ「マナ・・・ あとやることはわかってるね？」
有栖川マナミ「ええ・・・」
植月ジュン「お、おい・・・ 何するつもりだ？」
有栖川マナミ「ごめんねジュンちゃん・・・」
有栖川マナミ「私、もっとジュンちゃんと 居たいんだ」
有栖川シホ「マナ！」
有栖川マナミ「お姉ちゃん!?」
クロ（有栖川シホ？ 何故ここに・・・？）
植月ジュン「シホ!?」
植月ジュン「ここは危険だ！早く逃げろ！」
有栖川シホ「嫌だよ・・・」
有栖川シホ「だってジュンちゃん このままじゃ殺される」
有栖川マナミ「・・・・・・」
有栖川シホ「マナ・・・」
有栖川シホ「どうしてこんなことするの？ あなたは一体・・・」
有栖川マナミ「お姉ちゃん・・・」
有栖川マナミ「お願い・・・邪魔しないで」
クロ「マナ！ もう迷ってる暇はない！」
クロ「早く植月ジュンを！」
有栖川マナミ「う、うん！」
有栖川シホ「マナ！ダメ！」
　　お姉ちゃんは躊躇う様子もなく
　　私の元へ駆け出した
　　私から剣を奪おうと
　　取っ組み合いになる
　　その時だった・・・
有栖川シホ「うっ・・・」
　　剣はお姉ちゃんの
　　胸に突き刺さってしまった・・・
有栖川マナミ「・・・・・・」
植月ジュン「シホー！」
有栖川シホ「ジュンちゃん・・・ ごめんね・・・」
有栖川シホ「助けてあげられなくて・・・」
有栖川シホ「ジュンちゃんは いつも助けてくれたのに・・・」
有栖川シホ「ごめんね・・・」
植月ジュン「そんな・・・そんなこと・・・」
有栖川シホ「ジュンちゃん・・・ 顔をよく見して・・・」
植月ジュン「あ・・・あ・・・」
有栖川シホ「・・・・・・」
有栖川シホ「愛してるよ ジュンちゃん・・・」
有栖川シホ「ずっとずっーと・・・」
植月ジュン「シホ・・・」
植月ジュン「何で・・・いつも・・・」
植月ジュン「クソ！クソォォォ！」
クロ「マナ！マナ！しっかりして！」
有栖川マナミ「・・・・・・」
　　どうしてこんなことに？
　　どうしてお姉ちゃんが・・・
　　いや・・・それよりも・・・
　　何かがおかしい
　　あるべき感情が
　　こぼれるはずの物がこぼれない
　　おかしい
　　おかしい
　　何で・・・
　　全然悲しくないの？

〇黒
　　なんでだろう？
　　全部無かったことになるから？
　　いやでも
　　お姉ちゃんを殺しちゃったんだよ？
　　大好きなお姉ちゃんを・・・
　　あれ？