episode1:小さな夜(脚本)
〇洋館の一室
小夜啼 沙羅「いい雰囲気じゃない」
ここは、郊外にある寂れた洋館。
──ここには奇妙な噂があった。
車いすに乗った少女に
『貴方を撮ってもいいか』
と聞かれる噂
その真相を確かめるべく今に至るわけだ。
こういう雰囲気をまとった場所は
いくつか回ってきた。
それでも、
──大体はガセネタだったが
小夜啼 沙羅「ここなら、、、」
小夜啼 沙羅「雰囲気もばっちりだし」
小夜啼 沙羅「──THE☆廃墟ってかんじね」
ぎぃ──
どこかのドアが開いたような音。
すると、、
小夜啼 沙羅「!?」
突如として轟音が響く
それが、雷だということに気づけないほどだった。
小夜啼 沙羅「ああ、、あわわ、、」
あたりは、いつの間にか暗闇で満ちていた
暗闇の恐怖から
冷静な判断ができずにいた。
とにかく、
ここではないどこかに行きたいと
強く願った。
ふと、紙のようなものが指先に触れた。
小夜啼 沙羅「何かしら、、これ」
〇洋館の玄関ホール
ぱっとあたりが明るくなる。
ふと、後ろを振り返ると──
車いすに乗った少女がいた
リアリス・フィルマー「ようこそ、いらっしゃいました」
リアリス・フィルマー「私が、この屋敷の主人 リアリス・フィルマーと申します」
リアリス・フィルマー「どうぞ、ゆっくりしていってください」
小夜啼 沙羅「あ、、なたは」
リアリス・フィルマー「?」
小夜啼 沙羅「幽霊ですか!?」
リアリス・フィルマー「、、はぃ!?」
小夜啼 沙羅「そうでしたか!!お会いできて光栄ですわたしは 小夜鳴沙羅といいますああちなみによみかたはさよなきさらですよ」
小夜啼 沙羅「お会いできた記念に一つお聴きしたい事がいつ頃から此処にいらっしゃるのでしょうかどうして未だ此処に留まっているのでしょう」
小夜啼 沙羅「どう言った経緯で此処に留まっておられるのでしょうか宜しければそこのところ詳しくお聴かせ願えないでしょうかああああ!!?」
リアリス・フィルマー「ヒッ──」
カラン──
小夜啼 沙羅「行ってしまいました、、」
小夜啼 沙羅「──ん?」
小夜啼 沙羅「これは・・・」
リアリス・フィルマー「ハッ──」
小夜啼 沙羅「ん?──」
先ほどの少女が酷くおびえながら
戻ってきた
じり、じり、と警戒しながら近づいてくる
リアリス・フィルマー「──」
リアリス・フィルマー「それはわたしっの」
リアリス・フィルマー「──かえしてッ ください!!」
小夜啼 沙羅「──っ」
有無を言わさないその力強いその声に
思わず身を一歩引いてしまった。
リアリス・フィルマー「あっ──」
小夜啼 沙羅「──」
──無言で鍵を差し出す。
小夜啼 沙羅「──」
リアリス・フィルマー「・・・」
リアリス・フィルマー「・・・すこし、移動しましょう」
そう言って彼女は奥に続く廊下へ私を
いざなった──
〇洋館の廊下
リアリスの乗っている車いすの
キィ・・・キィ・・・
という音と
私の、コツ、コツといった
ローファーの音。
二つの音だけが息をしている
やけに長い廊下には
所狭しと両側の壁一面に写真が飾られていた
しかし、その飾り方は何とも不思議で
透明な蓋が付いた木箱の中に
細い釘を写真に刺して固定している
まるで、
──まるで、
──写真自体が標本のようだ。
小夜啼 沙羅「・・・写真、お好きなんですね」
リアリス・フィルマー「ええ」
リアリス・フィルマー「──でも、」
リアリス・フィルマー「どんな写真もいつかは死んでしまう」
リアリス・フィルマー「だからこうして、 きれいにとっておくんです」
リアリス・フィルマー「素敵でしょう?」
小夜啼 沙羅「──」
小夜啼 沙羅「──そうね」
──そうして、一つの部屋にたどり着いた
〇屋敷の書斎
(カチャリ)
リアリス・フィルマー「──ようこそ。 サラ」
リアリス・フィルマー「──私の書斎です」
小夜啼 沙羅「へぇ、、」
リアリス・フィルマー「──といっても ・・・もとはお父様の書斎だったんです」
リアリス・フィルマー「お父様が亡くなって もうすぐ、十年」
リアリス・フィルマー「お母様も、、」
リアリス・フィルマー「屋敷に住んでいた人たちも みんな、、」
小夜啼 沙羅「・・・」
リアリス・フィルマー「・・・」
リアリス・フィルマー「──フフフッ ごめんなさい」
リアリス・フィルマー「・・・なんだか、 しんみりしてきちゃいましたね」
小夜啼 沙羅「(──あ) ・・・そんなことないわ」
小夜啼 沙羅(同情してるように見られたかしら)
──最低だ
私だって嫌なのに、、
リアリス・フィルマー「・・・」
リアリス・フィルマー「──そうだ、せっかくなので写真 取らせてください」
──!
小夜啼 沙羅「・・・」
──『貴方を撮らせて』
──じゃなかったの?
リアリス・フィルマー「・・・どうでしょう」
小夜啼 沙羅「・・・(これも真相を確かめるためね)」
小夜啼 沙羅「・・・お願いしようかしら」
リアリス・フィルマー「──では、行きましょう」
小夜啼 沙羅「ええ」
〇英国風の部屋
導かれてやってきたのは
半地下の一室。
リアリス・フィルマー「よっと、、」
小夜啼 沙羅「・・・?」
リアリス・フィルマー「本当は、お父様が使っていたような キチンとしたカメラで撮りたいのですが」
リアリス・フィルマー「──私が使えるのはこれだけなんです」
そう言って、箱に空いた小さな穴を
こちらに向ける
小夜啼 沙羅「──」
こちらも箱の前まで歩き
中をのぞく
──なんとなく気になった
目の前にある真っ黒い穴
よほどしっかり密閉されているのだろう。
黒は黒と言いたげな暗さ。
それでいて、目に触れる空気がねっとりとうごめいているようだ
・・・正直気分が悪い
──頭がぼぅっとしてくる
リアリス・フィルマー「──すこし準備を手伝ってもらいます」
リアリス・フィルマー「あちらの机の そばにある椅子を 暖炉の前まで 移動させて そこに座ってください」
小夜啼 沙羅「・・・」
リアリス・フィルマー「すこし、体をこちらに傾けて」
小夜啼 沙羅「・・・ん」
リアリス・フィルマー「顔も あ、視線もこちらにお願いします」
リアリス・フィルマー「──じっとしていてくださいね」
小夜啼 沙羅「・・・」
──数分後
リアリス・フィルマー「はい。もういいですよ ──サラ」
小夜啼 沙羅「──そういえば、あの廊下に飾ってあった 写真はリアリスがとったのよね」
リアリス・フィルマー「ええ」
小夜啼 沙羅「一体そのカメラで、どうやって 『写真』 にしたの?」
リアリス・フィルマー「──内緒です♪」
小夜啼 沙羅「・・・ふぅーん」
リアリス・フィルマー「・・・サラのおかげでいい写真がとれたよ」
リアリス・フィルマー「──ありがとう」
リアリス・フィルマー「──サラ」
〇洋館の廊下
かたん
・・・長い廊下の壁に新しい木箱が加わった。
写真には、
暖炉の前で椅子に座りこちらを見ている少女の姿があった
──まるで、標本のように
・・・そういえば、こんな話を耳にした。
写真というものは
──魂を抜き取ってしまうらしい
──フフフッ
標本として展示するところがまさにマッド・コレクターという感じで不気味さが増しますね。リアリスの目のブルーがいかにも人の魂を吸い取ってしまいそうに澄み切っていてゾッとしました。もしかして両親や使用人たちも皆彼女の標本に?・・・。
昔の人は写真は魂を抜かれると思っていたそう。今なら違いと分かっても、その当時は謎だったのでしょう。興味本位で、行ってしまった結果は、チョット怖かった。
怖い物見たさ、というのは私も気持ちはわかります。
幽霊、超能力、催眠術…色々なものがありますが、実際に自分でこの目で見ないと信じれませんよね。
ただ写真は綺麗に残るってのはすごく共感できました。