喰らえ!地獄の吸血鬼飯!(脚本)
〇神殿の門
ヴィンセント・J・テレサ「ここにいるのね・・・?生きたまま地獄に堕ちたっていう人間は」
下級悪魔・給仕「はい。こちらに1週間ほど捕らえております・・・が、しかし・・・」
ヴィンセント・J・テレサ「なによ。第二皇女の私に報告を言い淀むだなんて──」
下級悪魔・給仕「しかし、その・・・捕らえた人間の血が、どうやら砂利に近しい味わいとかなんとか・・・」
ヴィンセント・J・テレサ「じゃ、砂利ィ・・・?それって身体を巡る血がってことよね?地面にまみれた砂利のことよね?」
下級悪魔・給仕「はい。その認識で合っております・・・」
ヴィンセント・J・テレサ(ほ、ほんとに砂利、砂利なのぉ〜!?)
ヴィンセント・J・テレサ(高潔なる吸血鬼は成人の儀として人間の血を飲まねばならないというのに・・・!!)
ヴィンセント・J・テレサ(美食家の母に鍛えられた私の舌で砂利など嗜もうなら、細胞という細胞が死滅して脳幹が悲鳴をあげるわ・・・!!)
ヴィンセント・J・テレサ(それだけじゃすまないはず・・・!!きっと筋肉の弛緩や逆流性食道炎、食中毒にアナフィラキシーだって起きるわ!!)
ヴィンセント・J・テレサ「お父様は私に死んで欲しいのね!?そうなんでしょう、ええ!?うんとかすんとか言いなさい!!」
下級悪魔・給仕「収めてください!陛下は貴方様を一人前の吸血鬼にすべく──」
ヴィンセント・J・テレサ「だまらっしゃい!自分の死に場所は自分で決めるわ!お父様のご無体な試練になんて・・・」
ヴィンセント・J・テレサ「試練になんて・・・!!」
ヴィンセント・J・テレサ「このヴィンセント・J・テレサは屈しないわ!!」
下級悪魔・給仕「い、いや・・・行くんかーーーい!!」
〇城のゴミ捨て場
ヴィンセント・J・テレサ「あ、ああああ・・・!!あああ・・・」
ヴィンセント・J・テレサ「あんじゃこりゃーーーー!!!!」
ヴィンセント・J・テレサ「我がヴィンセント家の城内に掃き溜めが湧いて出たわよ!?ものの一週間で・・・豪奢なるお父様の城に・・・!!」
ヴィンセント・J・テレサ「こんな城内の恥部、とっとと焼き払うに限るわ!!とっとと吸血してオサラバあそばせるのよ!!」
ヴィンセント・J・テレサ「で、デデデデデデしなさい姿を、人間!ダないとタデじゃすまないんデから!」
「うーん・・・」
ヴィンセント・J・テレサ「ギャーーーーッ!!後生だから許ジでェ!!お父様ァ!!かわい子ちゃんの土手っ腹に鉛玉が捩じ込まれてしまいますぅッ!!」
「なぁに・・・?この金切り声にしてはアマアマな囀りは・・・」
「スズメ・・・?さてはさてはのスズメなの・・・?」
ヴィンセント・J・テレサ(ど、どうやら寝ぼけている様子・・・!なんとかやり過ごして寝込みを襲うしかないわ!!)
ヴィンセント・J・テレサ「そうですの!!私ったらスズメ(?)なのを失念していましたわ」
ヴィンセント・J・テレサ「スズメですのよ、私はスズメ!スズメ・・・?ともあれスズメなの!」
「あっそう、へぇ・・・じゃあさあ──」
赤路シュウ「スズメならチュンチュンって鳴けよォッ!!」
ヴィンセント・J・テレサ「ピギャーーー!!」
赤路シュウ「あれま、気絶した」
赤路シュウ「聞きたいことあったのにな・・・まぁしゃーない。青いもので山手線ゲームをして気を紛らわすついでに暇潰すかな」
3時間後
ヴィンセント・J・テレサ「うぅ・・・私としたことが不覚!!正念場を前にして仮眠で英気を養ってしまったわ・・・!」
赤路シュウ「地獄ってコンソメある?」
ヴィンセント・J・テレサ「フンギャーーーッ!!自堕落が肉を着て血を通わせているわ!」
赤路シュウ「人間の本質ってそれに限るよね」
ヴィンセント・J・テレサ「あら!意外と話が通じる人間じゃないのよ──」
ヴィンセント・J・テレサ「って、ニ、ニニニニンゲン!?」
赤路シュウ「びっくりましてだね。で、地獄ってコンソメあるの?ないの?」
ヴィンセント・J・テレサ「なによ!!この高潔なる私に振りかける気!?」
赤路シュウ「通じるってことはあるのか、コンソメ」
赤路シュウ「手下っぽいのにも言われたけど、ここが地獄ってのは本当なんだね」
赤路シュウ「次から次へと出される食事が味しなくって敵わないよ」
ヴィンセント・J・テレサ「なにを馬鹿抜かすのよ、コイツ!お抱えのコックに作らせた絶品を食べさせてもらっといて・・・!」
赤路シュウ「え・・・!?残飯の盛り合わせじゃなくて?てっきり囚人用の臭い飯かと」
ヴィンセント・J・テレサ「いいこと?私はアンタの血を飲まなきゃいけないの!だから食事には配慮を──」
赤路シュウ「え、ごめん。さっきも口直しに手持ちの食塩舐めてたわ。全指に絡ませて舐めた」
ヴィンセント・J・テレサ「こ、コイツ偏食家なうえに馬鹿舌で生活習慣病!?砂利すぎるわ!砂利がお似合いじゃないのよ!」
ヴィンセント・J・テレサ(このままじゃ命がいくつあっても足りない!コイツの血を飲むには足りないわ・・・!!)
ヴィンセント・J・テレサ「ちょっと待ってなさい!私自ら手を下してあげるわ!」
赤路シュウ「え!?やったー!もしや美味しいメシが私を待ってる?」
赤路シュウ「何時間でも待つよ!食塩舐めてれば暇なんていくらでも潰せるし」
ヴィンセント・J・テレサ「食塩は没収!精々、青いもので山手線ゲームでもしてなさい!」
20分後
ヴィンセント・J・テレサ「さぁ人間、餌付けの時間よ!」
ヴィンセント・J・テレサ「舌が確かなせいで見た目にこだわらない、地獄の吸血鬼飯をお見舞いしてあげるわ!」
ヴィンセント・J・テレサ(──とはいえ、この見た目じゃあいくら馬鹿舌でも戦慄するでしょうね)
赤路シュウ「ふーん・・・」
赤路シュウ「いいね!これは味がする見た目をしてる!美味しいよ絶対に」
ヴィンセント・J・テレサ「なっ・・・!!」
ヴィンセント・J・テレサ(見た目を理由に愛しのお母様には食べてもらえなかった私の吸血鬼飯を、食べてる!?)
赤路シュウ「──ふー、美味しかった!食塩もコンソメも、もういいや。おかわりないの?」
ヴィンセント・J・テレサ「ど、どうしてもって言うのなら・・・」
赤路シュウ「マジ!?どうしてもどうしてもどうしてもどうしてもどうしても──」
ヴィンセント・J・テレサ(コイツなら私の吸血鬼飯を食べてくれる、美味しいと言ってくれる)
ヴィンセント・J・テレサ(吸血による成人の儀さえしなければ・・・きっとその間はお父様もこの人間を生かしておくわよね・・・?)
赤路シュウ「──どうしてもどうしてもどうしてもどうしても」
ヴィンセント・J・テレサ「ええい、うるさいっ!作ってやるわよ、吸血鬼飯!」
ヴィンセント・J・テレサ「吸血に値する健康体になるまで私が面倒見てあげるわ──!!」
ヴィンセントもシュウも愛すべきポンコツキャラでいいコンビですね。「自堕落が肉を着て血を通わせてる」ってセリフが最高です。今度自己紹介で使わせていただきます。
名コンビ?迷コンビ?誕生ですね。個性的な二人で楽しいストーリーになりそうです。
相手の答えが自分の想像の上を行くと動揺が隠せなくなる、そんな姿が目に浮かぶようで可愛らしく感じました!
吸血鬼でも食べたい飲みたいものは選びたいですよねぇ。