ダーク・ボール~狂気のGM~

YO-SUKE

第五話「8月、スランプ」(脚本)

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〇更衣室
  試合を終えたライナーズSの選手たちが
  着替えをしている。
  疲労困憊の選手たちを
  心配そうに見つめる清宮。
清宮泰助(八月に入って、うちのチームは三位に 付けている。充分優勝が狙える圏内だ。 だが・・・)
スタッフ「皆さん。若林選手の件ですが、 やはり肉離れのようでした。 一度二軍に落ちることになると思います」
  スタッフの言葉に意気消沈する選手たち。
清宮泰助(連日連夜の激戦で俺たちの疲労も ピークに来ている。 さらに主力の怪我まで)

〇施設の休憩スペース
  清宮が新聞を読んでいる。
  『ライナーズS、正念場。
  相次ぐ主力の怪我で、死のロードに突入』
  死のロード。夏場に地方球場を延々と周り
  ホームグラウンドでの試合がなく
  アウェイでの試合が続く
  ライナーズSは
  地獄の13連戦に突入しようとしていた
清宮泰助(雨でも降れば試合が流れるのに・・・ 予報だと二週間先までずっと 晴れになっている)
  空いた窓から外を見つめると
  花ケ崎が何かを車に運んでいる。
清宮泰助「あれは・・・!」

〇霊園の駐車場
  花ケ崎が何かを運んでいる。
清宮泰助「何をやってるんだ?」
花ケ崎健治「なんだ。キャプテンか」
清宮泰助「何を運んでいる? また何か悪だくみを しているんじゃないのか?」
清宮泰助(こいつ・・・やっぱり変だ。 闇カジノの件といい、信用しちゃならない)
花ケ崎健治「さっき雨乞いをしてみたんだが、 全く効果はなかった」
清宮泰助「はあ? 当たり前だろ」
花ケ崎健治「週末に台風でも来れば試合が潰れて 少しはあいつらも休めるだろうに」
清宮泰助「さすがのお前も天気までは操れないな」
花ケ崎健治「うちは戦力が揃った。優勝も見えている。 あとは最後のひと山を上り切るまでの 体力が残っていない・・・そうだろ?」
清宮泰助「ああ。残念だがな・・・」
花ケ崎健治「主力選手を強制的に休ませよう」
清宮泰助「できるわけないだろ! 大事な試合が続くんだ。 一つも落とせない」
花ケ崎健治「相手チームも主力選手が 出なければ問題ない」
清宮泰助「! おい、それはどういう意味だ?」
花ケ崎健治「さあな。それじゃ、また明日」
  花ケ崎は車に乗って立ち去る。
清宮泰助「あいつ、なにする気だ・・・」

〇シックなリビング
  試合のスコアデータを見ている清宮。
清宮泰助(確かに連戦の中では、 うまく主力選手を休ませなくてはならない)
清宮泰助(だが花ケ崎に任せておいたら、 どんな非人道的な行為に走るか・・・)
  妊婦の清宮由芽(きよみやゆめ)が
  隣りに座る。
清宮由芽「遠征の支度しといたから。 下着は多めに入れてある」
清宮泰助「ああ。助かるよ」
清宮由芽「あなた、疲れてる?」
清宮泰助「いや、大丈夫だ。心配かけてすまない」
清宮由芽「そっか・・・じゃあ先に寝るね。 この子のためにも」
清宮泰助「俺ももうすぐパパになるんだ。 しっかりしないとな」
清宮由芽「予定日まであと三か月だもんね。 おやすみ、パパ」
  由芽はお腹をさすりながら
  寝室へと消えて行く。
清宮泰助(生まれてくる子どものために、 ここで俺がしっかり頑張らないと──)

〇トレーニングルーム
  遠征先・宿舎トレーニングルーム
  清宮が筋トレをしている。
監督「キャプテン。連戦続きなんだ。 今はあまり追い込むなよ」
清宮泰助「監督。すみません」
監督「まあお前は体力有り余っているからな。 心配なのは他の選手たちだ」
監督「今日あたりから、 少し休ませようと思っている」
清宮泰助「でも今は一つも試合を落とせないはずです」
監督「ああ。だからこういうのは不謹慎なのかもしれないが、神の恵みだと思ったよ」
清宮泰助「え・・・?」
監督「なんだ。朝のニュース見てないのか?」

〇車内
  ラジオニュースを聞きながら、
  険しい顔で車を飛ばす。
ニュース「トンネル落石事故の続報です」
ニュース「トンネル内に閉じ込められた大型バスには 今夜試合予定だったベッツの選手たちが 乗っているとの情報が入ってきました」
清宮泰助「くそっ! タイミングが良すぎる! やはりこの事故も・・・!」
ニュース「現場の状況はまだわかっていませんが、 今夜のライナーズSとの試合も 中止になる可能性があり──」

〇山奥のトンネル
  事故現場に多くの人が集まっている。
清宮泰助「すみません・・・! ベッツの選手たちは?」
警察官「幸い、事故には巻き込まれていない。 別のバスに乗って球場に向かうって 話は聞いたが」
清宮泰助「・・・・・・!?」
警察官「あれ? あんたもしかして──」

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