電車に乗ったらサメがいた

かこす

電車に乗ったらサメがいた(脚本)

電車に乗ったらサメがいた

かこす

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〇電車の中
  発車ベルが鳴り響く中、電車に乗り込む
  車内には俺と少女、それから
サメ「キューー!!!!」
海野「は・・・・・・?」
  サメがいた。
海野「・・・・・・!早く、こっち!」
  突っ立ったままの少女の手を引いてサメから距離を取る
  最後尾の車両
  車掌や他の乗客はいない
  武器もない
  電車は特急でしばらく止まらない
  絶望的な状況だ
少女「大丈夫、落ち着いて」
  少女はそう言うと、サメに近づき頭を撫でた
少女「私とこの子、二人とも幽霊なので」
海野「はぁ?!」
  突拍子もないが、電車の中に本物のサメがいるより幽霊のサメがいる方がまだ信憑性がある
  マイナス×マイナス=プラスとはこういうことか
少女「一緒に死んだから、一緒に行動してるんだ」
海野(サメと一緒に死ぬってどういう状況だったんだ)
少女「そして私達が見えるということは、貴方も幽霊ということです」
海野「いやいや、改札で財布を落とした女の子にお金を貸したぞ。その子も幽霊だってことか?」
少女「じゃあ駅の中で死んだんだね」
少女「生き返りたい?」
少女「今身体に戻ればまだ間に合うかもしれない」
海野「戻るって、この電車は特急で・・・・・・」
サメ「キュー!!!!」
少女「やってやれないことはない、だよ!」

〇線路沿いの道
少女「はやーい!」
海野「いやサメに乗って道路を泳ぐって!せめて海だろ!」
少女「地下でも宇宙でもサメは泳げるんだから、道路くらい普通だって」
海野「どこのサメ映画だよ」
少女「細かいことはいいの!急いで戻るんでしょう?」
海野「あぁ。頼むぞサメ!」
サメ「キュー!!!!」

〇非常階段
  辿り着いた駅で見つけたのは、階段から落ち頭から血を流した”俺”だった
海野「マジで死んでる」
少女「早く身体に飛び込んで!」
  やってみるが身体をすり抜けてしまい上手くいかない
少女「身体の鮮度が悪いと戻れないのかも」
  焦っていると、先程お金を貸した女の子が柱の影からこちらを見ていることに気がついた
海野「あ!おーいそこの女の子!」
海野「ちょっと手を貸してくれ!」
海野「って、幽霊だから声は聴こえないんだよなぁ」
  気付けばサメと少女もいなくなっていた
  このまま自分も消えて無くなってしまうのだろうか
  その時
女の子「!」
  何かを決意したように女の子が”俺”に駆け寄り、心臓マッサージを始めた
  視界がぼやけて、全ての感覚が薄れて行く
  足元がふらつき”俺”の身体に倒れ込んだところで意識を失った

〇綺麗な病室
  目覚めると、そこは病室だった
  頭に巻かれた包帯を触り、駅で階段から落ちたことを思い出す
海野「すごい夢を見ていたような・・・・・・」
少女「夢じゃないよ!」
サメ「キュー!!!!」
海野「うわっ!どこから出てきたんだよ!」
少女「幽霊は時も場所も超えられるんだよ」
少女「生き返った気分はどう?」
海野「あぁ、おかげさまで頭が痛い以外は何ともない」
海野「ありがとう、命の恩人だな」
サメ「キュー!!!!」
  サメの頭を撫でてやろうとしたが、すり抜けてしまい触ることができなかった
少女「もう幽霊同士じゃないから触れないんだ」
少女「ひとつお願いがあるんだけど」
海野「何だ?俺にできることなら協力する」
少女「私とこの子、一緒に死んだって言ったでしょ?」
少女「私たちが死ぬのは今から10年後なの」
海野「未来人ってことか?」
少女「幽霊は時を超えた存在だから」
少女「10年後、私たちを助けて欲しい」
海野「助けられるんなら助けたいけど、一体どうやって・・・・・・」
少女「それは」
  少女が言いかけた時、誰かがドアをノックした
少女「もう行かなきゃ」
海野「いや、ちょっと待て!もう少し説明を」
少女「会っちゃいけない決まりなんだ」
海野「じゃあ、せめて名前だけでも」
少女「うーん・・・・・・秘密」
  少女は悪戯っぽく笑った
少女「またすぐに会えるから、私に聞いて」
サメ「キュー!!!!!!」
  サメの鳴き声と共に、幽霊達は跡形もなく消えてしまった
海野「何だったんだ、一体・・・・・・」
女の子「あの、入ってもいいですか?」
  声を掛けながら病室に入ってきたのは、駅で出会った女の子だった
海野「えっと、君は」
女の子「私、ラムっていいます」
女の子「昨日はありがとうございました」
  そう言って手渡してきた可愛いポチ袋
  中には昨夜貸した電車賃が入っていた
海野「あぁ、別に返さなくても良かったのに」
海野「それより、こちらこそお礼を言わないとな」
海野「俺が生き返れたのは君のおかげだ、ありがとう」
  すっかり照れてもじもじし始めたラムの対応に困り、手元のポチ袋を見る
  ポチ袋の口を留めていたのはサメの形のシールだった
海野「サメ好きなの?」
女の子「好き!」
女の子「あのね、それはホホジロザメっていうサメでね、すごく大きくて可愛いんだよ」
海野「そうなんだ」
海野(昨日乗ったなんて言ったら驚くだろうな)
女の子「でもねでもね、ホホジロザメよりすっごーく大きくて、人も他のサメも全部食べちゃうサメもいるんだよ!」
女の子「私、そのサメに会いに行くのが夢なんだ」
海野「へー」
女の子「外国にいてね、危ないから大きくならないと会えないんだ」
女の子「あと10年したら会えるの。楽しみだなー!」
  10年
  10年後?
海野「ダメだ!!!!!!」
海野「あぁ、いや、ごめん」
海野「危ないから、やめておいた方がいいんじゃないか?」
女の子「うーん」
女の子「でも、きっと仲良くなれるよ」
女の子「やってやれないことはない、だよ!」
女の子「ママが待ってるから、そろそろ行くね」
女の子「また会おうね」
  そう言うと女の子は病室を出て行ってしまった
海野「はー」
  ラムは、きっと好奇心旺盛でサメが大好きな少女に育つのだろう
  そして、巨大なサメに会いに行き・・・・・・
海野「チェーンソーでも買っておくかな」
  会いに行くのを止められないなら、その先で助ける方法を考えよう
  やってやれないことはない

コメント

  • 電車にサメがいたらびっくりしますよね。
    でも、その後の展開の方がびっくりしました!
    幽霊って時を超えられるんですね。お金を貸した彼女が大きくなって…なんでしょうね。
    チェンソー買っておかなくては。笑

  • 笑った!サメに笑った!何で電車に居るんだ?というか、サメも幽霊になるんだ。何から何まで突拍子の展開で笑った!続きもよろしくお願いします。

  • 電車に入ったらサメ、という突拍子もないスタートから、しっかりとしたストーリー展開で楽しませてもらいました。ラストへの収束が見事でした。

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