推しの秘密を知ってしまった

Akizuki

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〇街中の階段
  推しの秘密を知ってしまった。
太田くるみ「う、嘘でしょ・・・?」
美女「ん・・・」
推し「・・・」
太田くるみ(私の推しが・・・)

〇コンサート会場
推し「マイハニー❤ 愛してるぜ!」
太田くるみ「きゃー! カッコいい!」
  24時間365日。
  私の頭の中を支配している推しが・・・

〇街中の階段
太田くるみ「女と路チューしてるところに 居合わせちゃうなんて・・・」
  目の前の出来事が信じられず、
  ただ呆然と立ち尽くしてしまう。
推し「・・・」
太田くるみ(え、てか長い長い長い・・・!)
太田くるみ(ここ外だよ!?  どんだけチューすんねん)
  私のいらぬ心配をよそに、
  2人は熱烈なキスを続ける。
太田くるみ(はあ、最悪・・・。 よりによって何で今日なの?)
  今日の私は全体的にツイてなかった。
太田くるみ(朝から近所の犬に吠えられるし 上司には理不尽なミスを押しつけられ)
太田くるみ(お昼に入ったラーメン屋では スープの中に髪の毛が入ってるし)
太田くるみ「そして極めつけがこれ・・・」
推し「・・・」
美女「ん・・・ふ・・・」
太田くるみ(疲れ果てた残業帰りに 路チューしてる推しに遭遇・・・)
太田くるみ(厄日にもほどがない!?)
太田くるみ(私、前世で何かした? 罪人? 前世もしかして罪人なの?)
太田くるみ(こんなミーグリ求めてないんですけど!?)
  ※ミーグリ
  ミート&グリートの略。
  推しと間近で交流できるイベントのこと。
太田くるみ(こういうセクシー系がタイプだったんだ。 雑誌のインタビューでは、 黒髪の清楚系が好きだって言ってたのに)
太田くるみ(推しのタイプに合わせて わざわわざ黒髪清楚系目指してた私。 無駄な努力じゃん・・・)
  これ以上は見たくないはずなのに、
  なぜかその場から動けず、
  推しと美女をガン見してしまう。
美女「ふっ・・・」
  美女が甘い声を漏らした、その時・・・
  ドサッ・・・
太田くるみ「え・・・!?」
  美女はフラッと後ろ向きに倒れ、
  そのまま石段から滑り落ちてしまった。
太田くるみ「!? だ、大丈夫ですか!?」
美女「・・・」
  思わず駆け寄ってみたものの、
  美女は気を失っていて反応がない。
太田くるみ「た、大変!」
太田くるみ(こんな石段から落ちたら、 頭を打っていてもおかしくない)
太田くるみ「とにかく救急車・・・!」
太田くるみ(というか、その前に私の推しは・・・?)
  石段の上に目を向けると、
  推しにジッと見つめ返される。
推し「あー、やべ。見られてたんだ」
太田くるみ「え・・・」
  トン、トン、トン・・・
  推しは特に焦った様子もなく、
  ゆっくり石段を下りて近づいてくる。
太田くるみ(お、推しが近づいてくる・・・! って、今はそんなこと言ってる場合じゃ)
太田くるみ「あ、あの、今すぐ救急車呼びますね」
推し「いや、その必要はない」
  推しは私の手からスマホを奪い、
  ニヤッと不敵な笑みを浮かべる。
推し「その女の人、触んない方がいいよ。 悪い気が移るから」
太田くるみ「えっ? 悪い気って・・・?」
美女「うう・・・」
  そうこうしてるうちに、
  女性が苦しそうにうめき出し・・・
太田くるみ「!?」
  一瞬のうちに姿が無くなってしまった。
太田くるみ「何が起こったの!?」
  焦る私の頭に、
  推しがポンと軽く片手を乗せる。
推し「大丈夫、心配いらないよ」
推し「この世に存在してはいけない悪魔を 消し去っただけだから」
太田くるみ「悪魔!? な、何言っちゃってるんですか!?」
太田くるみ(ますます意味が分からないんですけど!?)
太田くるみ(こんなスピリチュアルなこと・・・ でも、現に今、女性が消えるところを 目撃してしまったし)
太田くるみ「ああ、そうか。 これはきっと悪い幻覚ですね」
推し「え?」
太田くるみ「私、今日ものすごい厄日だったし、 推しの幻覚を見るくらい疲れてるんだ」
太田くるみ「でも心身共にヘトヘトすぎて 悪魔とか訳分かんない幻覚になっちゃった」
太田くるみ「どうせ推しの幻覚見るなら、 もっと甘い方がよかったのになぁ」
太田くるみ(大丈夫。 これは絶対に現実じゃない)
  そう思い込もうとしたけれど・・・
推し「甘いって、例えばこんな感じ?」
太田くるみ「!!」
  長くて綺麗な指に顎をすくわれ、
  推しの顔がゆっくり迫ってくる。
太田くるみ(あれ? お、推しに触れられてる感覚、 やけにリアルなんだけど・・・)
推し「厄日だったんだ。 いろいろ大変だったね。 でも君はよく頑張った」
推し「お疲れ様。 それから俺のこと、 いつも応援してくれてありがとう」
太田くるみ「・・・っ」
  耳元で囁かれ、熱い吐息がかかるだけで
  胸がドキドキと早鐘を打つ。
推し「感じるでしょ? 俺の吐息・・・ 幻覚じゃなくて現実だよ」
太田くるみ「そ、そんな・・・」
推し「ていうか俺のファンだったんだ。 一番見られたくない相手だったなぁ」
  推しはジッと私を見下ろし、
  ニヤッと不敵な笑みを浮かべる。
推し「さーて、これからどうしようか? 見られた以上、タダで返すわけには いかないよね」
太田くるみ「!?」
太田くるみ「わ、私が見てしまったものは一体・・・ あなた何者なんですか!?」
推し「何者ね。普段は君の推しかな」
推し「でも、さっきみたいな状況では、 普通の人間じゃいられなくなるんだよね」
推し「この地球を守るためにね」
太田くるみ「地球を、守る・・・?」
太田くるみ(それって、どういうこと・・・?)
  混乱する私を抱き寄せ、
  推しは再び耳元で優しく囁いた。
推し「俺の正体はね・・・」
太田くるみ「!!」
  推しととんでもないミーグリをした夜。
  熱愛報道なんかよりもずっとヤバい、
  推しの秘密を知ってしまった・・・。

コメント

  • いや〜推しのこんな場面、どっかから情報きいただけでも辛いのに、見てしまった日のどん底に落ちるような気分、共感できます。推しっていわば空想の中に生きる王子さまなんですよね。でもどんでん返しで推しの秘密をしってしまって、秘密を共有できるのはちょっと嬉しいかもしれない。

  • 途中からの展開に驚きました。こんな目情があったら貪り読みます…。嫌なことがあった日に限ってとか、黒髪清楚系が好きなんだと思ってたのにとか、すごいリアリティを感じました。大変な秘密を共有してしまいましたが、頑張って推してる主人公さんが報われて?よかったです。

  • タイトルにもある”推しの秘密”が、偶然出くわした熱愛模様かと思いきや、まさかの展開にやられました。くるみの心中は察することができないカオス状態ですね!

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