終焉のカナン

紗卦冬葉(さけとば)

『カナン』(脚本)

終焉のカナン

紗卦冬葉(さけとば)

今すぐ読む

終焉のカナン
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇黒
  終わりの見えない、暗闇の中で
  双子は、こう願いながら、歩き続けた

〇暗い洞窟
  終われ 終われ

〇岩穴の出口
  早く 早く

〇黒

〇睡蓮の花園
「綺麗」
???「これって『睡蓮の花』、だっけ?」
???「こんな綺麗な場所、あったんだね」
???「あっ、こっちも見て?」
???「この花、大きくて、すごく良い匂い」
???「『百合』の一種かな? たくさん咲いてるね・・・」
???「ここは、『聖域』だ」
???「王の許可なく踏み入った『ニンゲン』は」
???「私に食われる そういう『掟』だ」
(・・・)
???「・・・ボクらを食べても」
???「きっと美味しくないよ?」
???「・・・美味しくないの?」
???「・・・いや、大した事では無い!些事だッ!」
???「何故なら私は」
???「好き嫌いしないからなッ!」
(・・・)
???「覚悟しろッ!ニンゲンッ!」
???「ひと噛みで楽にしてやるッ!ふんすっ!」
(・・・)
???「可愛い」
???「・・・可愛いね」
???「な、んだとッ?」
???(なっ)
???(何を言ってるんだ此奴らはッ)
「『食べてもいいよ』」
???「でも、その前に教えて欲しいな」
???「この綺麗な場所と、可愛い君のこと」
???「・・・」
???「どういう事?」

〇水玉2
アバル「ボクの名前は『アバル』」
オバル「ボクの名前は『オバル』」
  私は
  自ら『命を差し出す』ニンゲンに会うのは
  初めてだった

〇山道
アバル「猫さんの名前はなんですか?」
守護者「私は『守護者』だ、そんなものない」
オバル「『守護者』って響き、なんかかっこいいね」
アバル「『しゅごにゃん』とかどう?」
守護者「『しゅごにゃん』はやめろ!」
オバル「しゅごにゃん、可愛いね」
守護者「可愛くないッ!」

〇草原
アバル「しゅごにゃんは何歳なの?」
守護者「知らん」
守護者「ニンゲン来る時以外 ずっと寝てるから、歳なんか分からん」
オバル「外の事、気にならないの?」
守護者「興味無い!」
守護者「王との『契約』を護る事こそ 私にとっての最重要事項!」
守護者「それ以外の事など些事ッ!」
守護者「よって、興味無しッ!」
オバル「・・・あと、 さっきの『黒い影』みたいなのって?」
アバル「ぶわっと出てきた奴」
守護者「『魔法』の事か?」
守護者「これ、当たったら超危ないぞ」
「空間とかを食べて 分解してるんじゃないかな?」
「私も原理は よく知らないんだけど、まぁ些事よ些事」
(・・・)

〇睡蓮の花園
アバル「今日は、色々見せてくれてありがとう」
オバル「そろそろ食べちゃう? それとも魔法、使っちゃうのかな?」
守護者(・・・)
守護者「なんだか、今はそんな気分になれない」
オバル「え?なんで!?」
アバル「猫は気まぐれだから!?」
守護者(・・・)
守護者「ついてこい!」

〇森の中の小屋
守護者「使ってない小屋だ」
守護者「今日はここで寝ろ」
守護者(なんで困った顔?)
守護者「大丈夫」
守護者「明日になったら、食ってやる!」
守護者「覚悟しておくんだなッ!ふんすっ!」
「しゅごにゃん」
  おやすみなさい、また明日ね
守護者「・・・おやすみっ」

〇睡蓮の花園
守護者(理由は分からないが)
守護者(あいつらなんで死にたがる?)
守護者(・・・)
守護者(仕留めやすいニンゲンのクセに)
守護者(食べる気になれないのは 何故なのだろう)
(なんだか、今日は)
(すごく、月が綺麗だな)
(ぴかぴかの)
(てかてか、だなぁ───)

〇ピラミッド
  人ならざるものよ
  命ずる
  我が『千年王国』
  久遠の繁栄の為に
  『聖域』を護れ
  『聖域への冒涜は、王への冒涜』
  王から賜りし『使命』を
  私はずっと護ってきた

〇洞窟の深部
  踏み荒らしに来たニンゲンは
  例外なく、全員屠ってきた
  罪人、病人、口減らし
  誰が来ようと関係ない
  王の為に
  使命を全うしなければ───

〇睡蓮の花園

〇森の中の小屋
オバル「しゅごにゃんだ」
アバル「しゅごにゃんだ」
「おはよう」
守護者「・・・」
守護者「・・・おはよう」

〇睡蓮の花園
守護者「お前たちを食べる前に こき使ってやる事にした」
守護者「ここ一帯に生えている『百合』を 根こそぎ狩りとれ」
オバル「なんで百合?」
守護者「苦手だからッ それだけッ」
守護者「ちゃんとやらなきゃ 食う前に拷問追加だからな!ふんすっ!」
アバル「百合は猫が食べると毒になるんだよ」
アバル「『苦手』って、そういう意味じゃないかな?」
オバル「流石に自分で食べる事はしないだろうけど」
オバル「何だか そのまま摘んじゃうのも勿体ないかも」

〇睡蓮の花園

〇睡蓮の花園
守護者(かなり摘んだな)
守護者(百合はニンゲンにとって栄養満点だ───)
守護者(・・・いや)
  何を考えてるんだ、私は
  使命を、全うしなきゃ

〇森の中の小屋
オバル「待ってたよ」
アバル「準備は、出来てるよ?」
オバル「これ、ついでだけど」
アバル「あげようと思って、作ったの」
守護者「・・・ッ」
守護者「いつも」
「何も、感じないのにッ」
守護者「なんでだろう・・・ なんで?」
オバル「なにも、泣くことないのに」
アバル「悲しまなくても、いいのに」

〇黒背景

〇黒
守護者「・・・え?」

〇黒
  ボク達が、目覚めた時

〇実験ルーム
  アンドロイドに
  『おはよう』と言ってくれる人間は
  誰一人、いなかった

〇荒廃した街

〇荒廃した教会

〇謎の施設の中枢
  人類はとっくに地球を捨て
  別の星に旅立っていた

〇荒廃した街
  何を理由に生きれば良いのか

〇荒廃した遊園地
  分からないまま、世界を彷徨った

〇黒
  何百年も、昔のはなし

〇森の中の小屋
アバル「生きる理由が無い」
オバル「かと言って、死ぬ理由も方法も見つからない」
オバル「ボク達には『自己修復機構』が備わってて」
オバル「爆弾の損傷でさえも、 無かったことに出来てしまう」
アバル「でも、しゅごにゃんの『魔法』は 正真正銘の『未検証要素』」
アバル「もしかしたら」
オバル「ボク達を終わらせてくれる」
「最後の、希望かも、しれないんだ」

〇黒
  正直、何を言ってるのか、分からなかったが
  2人には、嘘をつく理由なんて無い事くらい
  私にも、理解出来た

〇空
  王よ

〇ピラミッド
  貴女の掲げた理想は───
  千年王国は、もう

〇草原
  塵となって、消えてしまったのでしょうか
守護者「月が、いつもより綺麗なのは」
守護者「あそこに王が いるからなのかな?」
守護者「『魔法』は、使わない」
守護者「だって」

〇草原
守護者「お前たちがッ」
守護者「いなくなってしまったらッ」
守護者「私ッ」
守護者「ほんとうに」
守護者「独りぼっちになってしまうぅ」
「・・・ううぅ」
  ───ああ
  そうか
  いま、わかった
  ボクたちの
  生きる理由
守護者「2人と離れたくないよぉ」
オバル「うん、大丈夫」
守護者「王にも、また逢いたいよぉ」
アバル「探そう、一緒に」
  誰かの希望に
  なって
  みたかったんだ

〇黒
「私、名前を決めたぞ」
「しゅごにゃんで良くない?」
「それが嫌なの!」

〇睡蓮の花園
  カナンだ
  終焉を生きる、カナン
  じゃあ
  そろそろ
カナン「一緒に、行こう?」

コメント

  • これは美しい…!環境音のみで進んでいく静かな感じが、素晴らしい雰囲気を醸していました✨
    濃密ファンタジーから荒廃SFへの急転がまた、驚きを誘いつつとてもしっくりきて、完成された世界観に引き込まれました
    主を失って残された者同士、寄り添いあうのにこれ以上ないほど相応しい『百合』ですね🙏
    インパクトのあるしゅごにゃんとシンメトリーな双子ちゃんの取り合わせが、見た目にも味わい深かったです🤤

  • 最後の双子の「一緒に探そう」で涙腺崩壊しました……
    最初の状況にそぐわない双子の明るい言動が浮いているなーと思いましたが、最後まで読んでなるほど、と。
    切なくも温かく優しいお話でした。ありがとうございました!

  • キャラクターがすばらしいです!
    双子の出自にも驚きでしたが、カナンちゃんが月を気にしていた理由がわかった時、ホロリときました

コメントをもっと見る(24件)

成分キーワード

ページTOPへ