冷たくて暖かい飲み物

鍵谷端哉

読切(脚本)

冷たくて暖かい飲み物

鍵谷端哉

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〇男の子の一人部屋
玲奈「洋兄ぃ、ピザ食べたい」
洋一「・・・玲奈。人の部屋に無断でやってきて、第一声がそれかよ。大体、お前、ダイエットしてるって言ってただろ」
玲奈「いいの。もう、その必要がなくなったから」
洋一「はあ・・・。またフラれたのか」
玲奈「フラれてないもん。諦めただけ」
洋一「ったく、何があったんだ?」
玲奈「ピザ食べながら話す」
洋一「はいはい・・・」
玲奈「酷いと思わない!? 彼女いたんだよ!?」
洋一「うーん。まあ、別にいないって言われたわけじゃないんだろ? お前がいないって勘違いしただけでさ」
玲奈「だって、あんなに優しくされたら、私に気があるのかなって思うじゃん!」
洋一「お前は、中学生男子かよ・・・」
玲奈「あー、もう、腹立つ! ダイエットして損した! ・・・・・・あー、ピザ美味しい!」
洋一「けどまあ、お前が頑張った分は、ちゃんとお前の中に残るんだ。損じゃないさ」
玲奈「でも、今、ピザたくさん食べたから、戻ったかも」
洋一「じゃあ、食うの止めろよ」
玲奈「はーあ。恋したいなー」
洋一「フラれたばっかりなのにか? ある意味たくましいな」
玲奈「だーかーら! フラれてないですー! 私がフッたんですー」
洋一「いや、フッてはいないだろ」
玲奈「それより、洋兄ぃは?」
洋一「ん?」
玲奈「彼女、作んないの?」
洋一「俺が彼女作ったら、お前、ひがむだろ。それに、フラれたお前を誰が慰めるんだよ」
玲奈「ええー。そんなこと言って、作れないだけじゃないの?」
洋一「うっ! そ、そんなことないって。俺、意外と大学だとモテるんだぞ」
玲奈「うっそー。洋兄ぃがモテてるのなんか、見たことないんだけど」
洋一「うっさいな」
玲奈「あははは」

〇男の子の一人部屋
玲奈「ねえ、洋兄ぃ。男の人って、デートするならどこがいいの?」
洋一「・・・勝手に家に入って来るのはまあいいけど、部屋に入るときは、せめてノックしてくれ」
玲奈「無難に映画かなー? でも、映画だと見てる間はお話できないよね? 時間勿体ないと思うんだけど」
洋一「・・・デートは大体、男の方がプランを考えるんじゃないのか?」
玲奈「え? そうかな? 私に全部任せて! 凄いデートプラン練るから、って言っちゃったよ」
洋一「なんで、自分でハードル上げるんだよ?」
玲奈「だって、その方が格好いいじゃん」
洋一「格好いいか? 今どきの高校生は、よくわからんな」
玲奈「ねえ、どこがいいかな?」
洋一「んー。動物園とかでいいんじゃないか?」
玲奈「でも、あっち、動物嫌いだって」
洋一「じゃあ、水族館は?」
玲奈「えー、つまんない」
洋一「・・・じゃあ、遊園地でいいだろ」
玲奈「お金ないもん」
洋一「はあ・・・」
  財布からお札を出して渡す。
洋一「ほら」
玲奈「きゃー! 洋兄ぃ、マジ天使! 大好き!」
洋一「貸すだけだからな! ちゃんと来月返せよ!」
  玲奈が携帯で電話をかける。
玲奈「あ、もしもし? 明日、遊園地にしよう! うん、10時に待ち合わせね」
洋一「・・・ったく」

〇遊園地の広場
玲奈「・・・さむっ!」
  ポケットから携帯を出して、時間を見る玲奈。
玲奈「あはは・・・遅いな」
  洋一が現れる。
洋一「・・・もう12時だ。無理だろ」
玲奈「・・・・・・」
洋一「・・・連絡は?」
玲奈「ない・・・」
洋一「そっか・・・」
玲奈「う、うう・・・。好きって言ってくれたのに。・・・私も、好きだったのに」
洋一「付き合う前に本性が知れてよかったじゃないか」
玲奈「・・・・・・」
洋一「はあ・・・。ほら、これ飲め。暖まるぞ」
  ポケットから缶コーヒーを出して渡す洋一。
玲奈「ありがと・・・って、冷たっ!」
洋一「え? ちゃんとホット買ったはず・・・」
玲奈「・・・何時間前に買ったの? これ?」
洋一「あー、いや、まあ、なんだ。新しいの買ってくるよ」
玲奈「ううん。これでいい」
洋一「・・・?」
玲奈「温かいよ」
洋一「・・・・・・」
玲奈「冷たいけど・・・とっても温かい」
洋一「・・・なんだよ、そりゃ」
玲奈「えへへへ」
洋一「・・・さてと、帰るか」
玲奈「うん」
  二人が並んで歩いて行く。
  終わり。

コメント

  • なんとも言えない関係性ですね。このあと進展してほしいなぁ。
    冷たいコーヒー渡すところは見ているこっちも心温まる表現だなぁと感じました!

  • とってもステキな関係性ですね!家族とも友人とも違う、まだ恋人ともちょっと違う距離感というのは!
    2人の関係は最終的にどう落ち着くのか、想像するのも楽しくなりますね。

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