神様は嘘をつかない

白星ナガレ

秘密のおはなし(脚本)

神様は嘘をつかない

白星ナガレ

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〇ソーダ
  私の親友、エミには秘密がある。
  エミは魔法使いなのだ。
  病弱な私、ユカは週に一度、エミの魔法でお互いの体を入れ替わらせてもらっていて
  その日を楽しみに過ごしていた。

〇屋敷の門
ユカ「エミのおかげで外で遊べて嬉しい!」
エミ「私だって、ユカの豪邸で過ごせて楽しいよ。 お互い様だね!」
ユカ「いつもありがとう、エミ」
エミ「ううん、ユカも、いつもありがとう。 私、ユカのこと大好きだよ!」
  私たちは、親友だった。
  いつか二人で、入れ替わらなくても遊べる日を願っていた。

〇黒
  私、エミには秘密がある。
  私は魔法使いなんかじゃない。

〇山中の坂道
  近所の山に古い祠があって
  そこに神様がいる。
  神様と仲良くなった私は、神様にお願いしてユカと入れ替わっている。
エミ「神様、明日お願いね」
神様「ああ、構わないけど」
神様「いつも言ってるけど、僕は悪い神様だよ」
神様「そんなにお願いばかりしていいのかな?」
エミ「いいよ!お願いします!」
  神様はいつもそう言うけど、今まで悪いことなんて起きていない。
神様「そう。じゃあやるよ」
  神様は懐から白い石を取り出して、それに向かって祈る。
神様「はい、完了。明日は入れ替わってるはずだ」
エミ「ありがとう!神様!」
神様「・・・」
神様「・・・面白いなぁ、人間って」

〇屋敷の門
エミ「(ユカ) ねえ、悪魔って信じる?」
ユカ「(エミ) 何、急に?」
エミ「(ユカ) エミ、そういうの好きそうだから」
ユカ「(エミ) ま、まあ信じるかな・・・」
ユカ((エミ) 神様がいるくらいだしね)
エミ「(ユカ) 悪魔は嘘つきなんだよ」
エミ「(ユカ) 人を騙して、命を奪うの」
ユカ「(エミ) 怖いんだね・・・」
エミ「(ユカ) でも神様はね、優しいんだよ」
エミ「(ユカ) 嘘なんてつかないし」
エミ「(ユカ) 願いを叶えてくれるの」
ユカ「(エミ) へ、へえ~」
ユカ((エミ) まあ、確かに・・・)
ユカ((エミ) 自称は”悪い神様”だけどね)
エミ「(ユカ) 私、毎晩、神様にお祈りしてるの」
ユカ「(エミ) お祈り? 何を?」
エミ「(ユカ) 病気が治りますように、って」
エミ「(ユカ) いつか、二人で外で遊びたいから」
ユカ「(エミ) ユカ・・・きっと、治るよ!」
エミ「(ユカ) うん・・・ありがとう」

〇黒
  次の日からユカは体調を崩して
  それはどんどん悪化していった。
  とても見ていられないくらいに。
  だから、私は神様に
  最後のお願いをすることにした。
  私の大切なユカのために。

〇山中の坂道
  雨の中、神様に会いに祠へ行く。
  しかし、そこに神様はいなかった。
エミ「な、なんで・・・?」
  隠れていやしないかと、祠の周りを探す。
  すると、祠のかげに置き手紙を見つけた。
  愚かで愉快なエミへ
  今まで楽しませてくれてありがとう。
  僕は別の場所へ移ることにしたよ。
  君たちを見ているのも飽きたからね。
  残念だけど、僕がいなければ
  君たちの入れ替わりごっこはもうできない。
  これからは誠実に自分たちの人生を歩んでくれ。
  それじゃあ、元気で。
エミ「な、何それ・・・突然・・・」
エミ「よりによって、こんなときに・・・」
エミ「最後のお願いにしようと思ったのに・・・!」
  思わずしゃがみこむと、神様が持っていた石を見つけた。
エミ「神様・・・確かこの石に祈ってたよね」
エミ「じゃあ、私も真似すれば・・・!」
  石を拾って、両手で握る。
  目を瞑り、最後の願いを心で唱えた。
  ユカが死ぬとき、
  私と入れ替わってますように。
  そうすればきっと、ユカは私の体で生きられる。
エミ「これで、よかったんだ・・・」
  私は、ユカが何より大切だから。

〇葬儀場
  それから間もなくして、
  ユカの心臓は鼓動を止めた。
  もうすぐユカの体は燃やされる。
エミ「どうして・・・」
  最後の入れ替わりは失敗した。
  ユカはユカのまま、死んだ。
  ユカの言葉を思い出す。
  ”神様は嘘なんてつかない”
  それは本当だったんだ。
  だって、神様の手紙に書いてあった。
  ”残念だけど、僕がいなければ
  君たちの入れ替わりごっこはもうできない”
  神様は、嘘なんてつかなかった。
  神様がいなくなったから
  入れ替わることはできなかったんだ。
  ユカの代わりに私が死ぬはずだったのに。
  泣いても、喚いても、ユカはもう帰ってこない。
  うずくまった視界の端で、神様が嘲笑しているように見えた。
神様「だから、僕は悪い神様って言ったのに」
神様「バカだなぁ、本当」

コメント

  • 切ないお話でしたが、人間が神様にお願いをする時には、何かの代償が必要な場合が多いですよね。
    自分で「悪い神様」というわりに、それをとらなかったのは、残した優しさのような気もするんです。

  • 悲しい終わり方ですが、受け入れるべき運命がそのとおりに来ただけだという気もします。自分を悪い神様だと言うのは、なんとなく優しさを感じさせられました。最後の入れ替わりは素敵なアイデアですが、成功していたらお友達が悲しんだんじゃないのかな…。辛いけど自分の人生は自分の人生で、幸せな記憶は幸せな記憶なのですね。

  • この神様が悪い神様だとしたら、、、中途半端に人助けをして最後の最後で突き放すくらいだったら最初から助けるなってことだったのか、それとも対価として寿命もしくは体力を吸収していて、それさえなければ彼女はもっと長生きできたのか、もしくは友達の元気な体に入れ替わっている間も彼女自身の体力を消費して死への道を早めていたのか、、いろいろ深読みできて、考えれば考えるほどおもしろい作品ですね。

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